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『希望の対話的リカバリー――心に生きづらさをもつ人たちの蘇生法』

Fisher, Daniel 2016 Heartbeats of Hope: The Empowerment Way to Recover Your Life ,National Empowerment Center,308p.
=20190915 松田 博幸 訳,明石書店,307p.

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last update: 20190911

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■Fisher, Daniel 2016 Heartbeats of Hope: The Empowerment Way to Recover Your Life,National Empowerment Center,308p. =20190915 松田 博幸 訳 『希望の対話的リカバリー――心に生きづらさをもつ人たちの蘇生法』,明石書店,307p ISBN-10: 4750348910 ISBN-13: 978-4750348919 3500+ [amazon][kinokuniya] ※ ds/ds

■内容

内容紹介:amazonより

 国際的な精神障害当事者運動のリーダーであり、精神科医として長年実践を重ねてきた著者による集大成の書を全訳。当事者の「私たち抜きで私たちのことを決めるな」の声に立脚し、リカバリー(回復)が対話を通して実現することを様々な具体例を示しつつ詳述。

■目次

私たち抜きで私たちのことを決めるな:日本のみなさんへ
各章の要約
語についての説明
はじめに

第1部 私の生をリカバーする

第1章 他者のために存在する
第2章 自分自身の声を見つけ出す
第3章 他者と調和して自らの生を生きる

第2部 エンパワメントを通した生のリカバリー

第4章 私の生のリカバリーを通して私が学んだこと
第5章 生をリカバーするためのエンパワメントの過程

第3部 情動的対話を通した生のリカバリー

第6章 生の対話的リカバリーとは何か?
第7章 自らの声を見つけ出す
第8章 エンパワーする対話をエモーショナルCPRを通して学ぶ
第9章 リカバリーの対話を通した文化変容
第10章 オープン・ダイアローグを通して生のリカバリーをうながす
第11章 コミュニティ・ライフのリカバリーに関する私の考え

謝 辞
付 録
文 献
訳者あとがき
訳 注

■著者略歴

著者・訳者紹介:amazonより

【著者紹介】

ダニエル・フィッシャー(Daniel Fisher)

生化学の博士号を取得後、国立精神保健研究所(National Institute of Mental Health)において神経化学の研究をおこなう。統合失調症の診断を受けたあと、愛情に満ちた結びつきやピアサポートを通してコミュニティでの生活をリカバーする。精神保健システムを人間的なものにするために諸活動を展開。医師免許を取得し、40年間にわたって精神科医として地域で活動する。また、ナショナル・エンパワメント・センター(National Empowerment Center)を設立。精神保健に関する新自由委員会(New Freedom Commission on Mental Health)のメンバーを務め、全国精神保健リカバリー連合(National Coalition for Mental Health Recovery)の設立にも関わる。エモーショナルCPRの開発に携わり、普及に努めている。本書の執筆もそのような諸活動のひとつである。結婚し、2人の娘の父。アメリカ合衆国マサチューセッツ州ケンブリッジ在住。

【訳者紹介】

松田博幸(まつだ ひろゆき)

大阪府立大学地域保健学域教育福祉学類准教授。大阪府立大学大学院社会福祉学研究科博士後期課程単位取得退学。専門は社会福祉学。著書に『社会福祉実践における主体性を尊重した対等な関わりは可能か:利用者-援助者関係を考える』(共著、ミネルヴァ書房、2015年)、『対論 社会福祉学〈4〉ソーシャルワークの思想』(共著、中央法規出版、2012年)など、訳書にピーター・B.ラービ著『哲学カウンセリング:理論と実践』(共訳、法政大学出版局、2006年)、ジュディ・チェンバレン著『精神病者自らの手で:今までの保健・医療・福祉に代わる試み』(共訳、解放出版社、1996年)などがある。

■引用

pp. i-ii
【私たち抜きで私たちのことを決めるな:日本のみなさんへ】この10年の間に、私は大きな発見をし、それは私の生をさらに豊かなものにした。その間、私は、エモーショナルCPR(Emotional CPR: eCPR)と呼ばれる共感的なコミュニケーションのトレーニングを発展させてきた。eCPRのCは、心と心のレベルで、共感をもって「つながること」(Connecting)を表す。Pはエンパワメント(emPowerment)を表す。私たちは、人びとが、パワーの源である、自分自身の情動的な「声」を見つけ出すことができるようにする。Rは蘇生(Revitalization)を表す。実際、2日間のトレーニングを通して、人びとは新たなエネルギーと希望を感じるようになっている。

p. 103
リカバリーの視点から見ると、情動的な苦しみは、自己変容を通した成長のための機会であり、自己変容は、愛と希望に満ちた結びつきによって支えられる。〔中略〕「リカバリー」という語は、2003年の精神保健に関する大統領新自由委員会報告書の中核に位置づけられたが、そのビジョン声明は、「私たちには、精神疾患をもつすべての人がリカバリーする未来が見える」というものだった。新自由委員会において、私は極度のメンタルヘルスの病気からリカバーした当事者体験をもつ唯一の委員だった。私は、私たちの勧告をまとめるにはリカバリーというビジョンがあるべきだと主張した。新自由委員会のビジョンは、世界中の当事者やアドボケイトに対して、私たちの人間性のリカバリーを個人の成長や集団の成長を通してうながすような文化を創造するよううながした。

pp. 105-106
私は、これまで何度も、リカバリーの基準を人びとに示して欲しいと言われてきた。そこで、私とNECチームとで、深刻なメンタルヘルスの病気から十全にリカバーした人の7つの特徴リストを作ったリカバーした人は:@自分自身で決定をおこなって、精神保健システムの外部の支持的な人たちと協業している。A意味があり、そして、充実した、友人のネットワークを精神保健専門職者たちの外部にもっている。Bサービス利用者(consumer)以外の、重要な社会的役割やアイデンティティ(学生、親、労働者、など)を獲得している。C・・・、D・・・、E機能の全体的評価尺度(Global Assessment of Functioning Scale)のスコアが61以上である。そのことが意味するのは、「非常によく機能しており、意味ある対人関係がある程度あり、『たいていの素人が見て病気だと思わない』ということである。F生活体験とピアとの交わりを通して自分自身によって明らかにされた、「自己」の感覚をもっている。

p. 106
パトリシア・ディーガンと私はリカバリーに関する質的調査を実施した。フィールドにおけるそれらの研究や体験から、私は、次のような、リカバリーをめぐる大切なこと(recovery value)を発見した。

p. 133
1981年、私、そして、システムのなかで専門職者として働いている何んかの他の元患者たちはNIMHに招かれ、システムにおいて必要とされている変化に関する私たちの考えを話して欲しいと言われた。また、NIMHは、リカバリーの当事者体験をもつ全国の専門職者のネットワークを立ち上げることを提案した。私がそのアイデアをジュディに伝えると、彼女は非常に否定的に反応した。「ダメだよ。・・・それは元患者運動の力を弱めるんじゃないかと思う」 彼女はなんと賢明だったのか。運動のリーダーたちが私を仲間として受け入れるようになるには長い年月がかかった。〔中略〕1983年、ジュディ、私、そして、ボストンの他のリーダーたちが、ルビー・ロジャーズ・ドロップイン・センター(Ruby Rogers Dropin Center)を立ち上げた。それは、全国の他の当事者運営のソーシャル・クラブのモデルとなった。1992年、ジュディ、パット・ディーガン、ローリー・アハーン、そして私はNECを立ち上げた。私たちが最初から目指していたのは、当事者体験をもつ人たちによって運営されるセンターを設立することだった。希望とエンパワメントを通したリカバリーというのは、これまで私たちのセンターの重要なテーマだった。ジュディは、2010年に彼女が亡くなるまで、NECとボストン大学(Boston University)の精神医学リハビリテーション・センター(Center for Psychiatric Rehabilitation)に積極的に関わり続けた。

p. 191
【エンパワーする対話をエモーショナルCPRを通して学ぶ】情動的苦しみを体験しているもう一人の人を助けることができるようにするトレーニングを作りたいという最初の思いは、私自身の当事者体験から生まれた。

pp. 270-271
【情動的対話を通した生のリカバリー】私は「コミュニティ・ライフの対話的リカバリー」(Dialogical Recovery of Community Life)を提唱している。〔中略〕私たちは自分だけで生をリカバーすることはできない。私たちは、展開していく、愛、信頼、共苦の輪のなかでお互いを必要としているのだ。私たちの協働的な任務は、「モノローグ的に何かをすること」(monological doing)から「対話的に存在すること」(dialogical being)へとものごとの方向を変えることによって、平和で凝集的な世界コミュニティを築くことである。

p. 303-304
【訳者あとがき】ダニエル・フィッシャーさんと長らく運動をともにしてきた故ジュディ・チェンバレンさんの著書、On Our Own(邦題『精神病者自らの手で』解放出版社)の内容に少し触れておきたい。同書において、精神医療サバイバーたちが自らの手で運営する組織の意義が強調されているが、同時に、そういった組織の活動が精神医療システムに取り込まれてしまう危険性についても指摘されている。〔中略〕近年、わが国の精神保健福祉領域において、精神疾患の体験をもつ人たちが事業所などに雇用され、「ピアサポーター」として支援をおこなうようになってきた。しかし、……本来、ピアサポートは、人と人とが対等な関係において、正直に自らの体験を語り、ていねいに仲間の語りに耳を傾ける行為、そして、そういった行為を通して生まれる情動的なつながりを通して、展開されるものである。……現在、「ピアサポ―ター」の「養成研修」が各地で、あるいは全国規模で実施されているが、ピアサポートをおこなう人にとってまず必要なのは、そのような研修ではなく、意識覚醒の場をもつコミュニティに継続的に参加し、アンラーン(unlearn:学び捨てる)し続けることであろう。本書において示されているように、医学モデルやモノローグに対して従順であることはリカバリーを妨げる。人びとがともにそれらから解放される過程が、ピアサポートの核となる過程なのではないだろうか。

■書評・紹介


■言及



*作成:岩ア 弘泰・更新:伊東 香純
UP: 20190911 REV:
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