『クレイジー・イン・ジャパン――べてるの家のエスノグラフィ』
中村 かれん,監訳 石原 孝二・河野 哲也 201409 医学書院,296p.
last update: 20171123
■内容
内容紹介
インドネシアで生まれ、オーストラリアで育ち、アメリカで映像人類学者となり、今はイェール大学で教える若き俊英が、べてるの家に辿り着いた――。7か月以上にも及ぶ住み込み。10年近くにわたって断続的に行われたフィールドワーク。彼女の目に映ったべてるの家は果たしてユートピアかディストピアか? べてるの「感動」と「変貌」を、かつてない文脈で発見した傑作エスノグラフィ。付録DVD「Bethel」は必見の名作!
内容(「BOOK」データベースより)
日本の端の、世界の真ん中。インドネシアで生まれ、オーストラリアで育ち、イェール大で教える若き映像人類学者がべてるの家に住み込んだ―。テキスと映像による「異文化としての精神障害者コミュニティ」発見記。
■目次
謝辞
第1章 到着
潔の物語 記憶とカタルシス
第2章 べてるの設立
里香の物語 日本で大人になるということ
第3章 医者と病院
耕平の物語 UFO事件と集団妄想
第4章 べてる的セラピー
譲の物語 三七年間の入院生活
第5章 出発
玄一の物語 ピアサポート、そして意味のある人生
終章 べてるを超えて
付録1 日本の精神医療
付録2 べてるのルーツ
原注
監訳者あとがき
索引
文献
■著者略歴
中村 かれん
イェール大学大学院社会人類学部准教授。映像人類学者。研究領域は、障害学、フェミニスト人類学、日本の少数民族など多岐にわたる。最初の本『Deaf in Japan:Signing and the Politics of Identity』で、2008年全米アジア学会John Whitney Hall Book Prizeを受賞。エスノグラフィック・フィルム『A Japanese Funeral』で2010年映像人類学会フィルムフェスティバル・ショートフィルム賞、2011年東アジア人類学研究会David Plath Awardを受賞
石原 孝二
東京大学大学院総合文化研究科准教授。研究領域は科学技術哲学、現象学、精神医学の哲学など
河野 哲也
立教大学文学部教授。研究領域は現象学と心の哲学
■引用
■書評・紹介
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《傷ついた存在、あるいは、否定的な自己、というものを、そのままのすがたで肯定するという、非常に困難な課題に挑戦するために、べてるは、その理念にもあらわれるような、さまざまな「人間学」を発達させてきた。本書はまさに、べてるの人間に関する理論を学んだ人類学者によって書かれた、人間に関する理論である。》
−岸政彦(龍谷大学社会学部)(『図書新聞』第3191号 2015年1月17日)
「紙面掲載した書評をご紹介 「図書新聞」の書評コーナー」 [外部リンク:オンライン書店 e-hon]
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「べてるの家」魅力生き生きと
書評者:信田 さよ子(原宿カウンセリングセンター所長)
……原文は英語だが、訳者たちの文章も美しく、アメリカ文学を一冊読了したような読後感におそわれる。研究者という姿勢を超えて伝わる溢れんばかりの情緒のせいである。おそらくそれは著者の立ち位置と深くかかわっている。日本人の両親をもち4カ国で育ち、アメリカの大学で教える彼女のアイデンティティーの揺らぎと、べてるの家とが深いところで共振しているのだ。
研究者であることに加え、著者がこの国に対して抱いている幾重にも折り重なった距離感と、マジョリティーの世界からはるかに遠く排除されてきたべてるのメンバーたちの抱く独特の距離感は、時にしっかりと触れ合うのだ。DVD最後の、雪の舞う聖夜の場面はこの上なく感動的である。……
(『信濃毎日新聞』 2014年9月28日 書評欄)
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■言及
*作成:小川 浩史