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『障害者の福祉的就労の現状と展望――働く権利と機会の拡大に向けて』

松井亮輔・岩田克彦 20111110 中央法規,362p.

last update:20210212

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■松井亮輔・岩田克彦(編),20111110,『障害者の福祉的就労の現状と課題――働く権利と機会の拡大に向けて』中央法規出版.[amazon][kinokuniya]

■内容

(出版社ホームページより)
障害者の福祉的就労については、労働法が適用されるのは一握りであり、大多数が労働者と扱われず、最低賃金の保障もされず、自立生活が困難な状況である。本書は、障害者の福祉的就労の現状について、海外・日本からの報告を踏まえ、今後の展望について検証し提言する。

■目次

序論福祉的就労障害者の働く権利と機会の拡大を目指して
第1編海外諸国における障害者就労の現状と労働法適用状況
はじめに
第1章アメリカ
第2章イギリス
第3章フランス
第4章ドイツ
第5章オランダ
第6章デンマーク
第7章障害者雇用・就労に関するEU法政策と保護雇用下の「労働者保護」
第8章海外諸国における一般雇用と保護雇用(就労)
第2編日本における障害者就労の現状と課題
はじめに
第1章福祉的就労支援現場の現状と課題
第2章福祉的就労見直し提案の経緯
第3章経済政策的観点からの検証
第4章福祉的就労の多様な実態に応じた労働保護法上の課題
第5章福祉的就労者の労働者性と個別的労働関係法の適用
第6章障害者就労で福祉政策と労働政策の一体的展開をいかに実現するか
第7章国際的動向からみる今後の課題と方向

■言及


■書評・紹介


■引用

(はじめに)
福祉的就労の原点ともいえる授産施設を、特にオランダやスウェーデンなど、欧州における保護雇用の一種であるシェルタード・ワークショップを参考に、労働法の適用が可能な雇用の場とするための動きが、授産施設関係者などを中心に1960年の後半から始まっている。そうした動きを受けて、1970(昭和45)年8月の身体障害者福祉審議会(現・社会保障審議障害者部会)では、「授産施設における作業は訓練の域を出ず、授産施設では身体障害者が社会人、労働者として生きがいのある社会生活を望むことを期待できない。このような労働能力はありながらも、一般企業に雇用されることが困難な者を、生産活動に従事させることは、各方面から見て肝要なことであり、福祉工場にこのような重度障害者を社会復帰させることは極めて有効な方法」とし、福祉工場の制度化を答申している。この答申を受けて厚生省(現・厚生労働省)が1971(昭和46)年度身体障害者授産施設の一種として制度化したのが福祉工場である。しかし、福祉工場に対しては支援職員など一部職員の人件費を含む、運営費補助などはあるものの、そこで雇用される障害者に最低賃金を保障するための賃金補填は、欧州の保護雇用制度とは異なり、制度化されておらず、賃金の支払いは、福祉工場の自助努力に委ねられていることから、福祉工場で雇用される障害者は、3400人程度(2005年10月現在)に限られていた。

(はじめに)
福祉工場に賃金補填制度を導入し、それを一般雇用と福祉的就労の中間的な雇用の場である保護雇用として再編することで、授産施設等で長期にわたり就労している障害者の相当部分を保護雇用の対象とすることを意図して検討を進めてきた「保護雇用研究会」(事務局はゼンコロ)から、1980(昭和55)年に「保護雇用制度への提言」が出されたが、その提言は実現を見ないまま今日にいたっている。

(はじめに)
2006(平成18)年10月に全面施行された障害者自立支援法では、授産施設や福祉工場は、一般就職が可能と見込まれる障害者を対象に移行支援サービスを提供する就労移行支援事業と、一般就職が困難な障害者で雇用契約に基づく就労が可能な者を対象とした就労継続支援A型事業、一般就職が困難な障害者で雇用契約に基づく就労が困難な者を対象とした就労継続支援B型事業などに再編成された。

(はじめに)
2008(平成20)年9月、「福祉的就労分野における労働法適用に関する研究会」(代表は筆者)がつくられた。同研究会では1年間にわたり福祉的就労分野、特に障害者自立支援法に基づく就労継続支援B型事業の利用者の就労実態の把握を通じて、福祉的就労の現状の問題点を明らかにするとともに、労働法適用の可能性、あるいそれにかわる法的保護のあり方について、この研究の一環として行う欧米諸国における関連法制度などの調査結果も参考にしながら、研究を行った。その研究成果を取りまとめた報告書(「国際動向を踏まえた福祉と雇用の積極的融合」)が、2009(平成21)年11月に出されている。本書は、同研究会の委員のご協力を得て、最新の文献、資料およびデータなども追加して、全面的に書き直したものである。

pp. 13-14
小規模作業所は、1960年代末から障害者の働く場を求めて各地の障害者の親の会、家族会、障害者団体等が主体となって設立した共同作業所に始まり、その後急速に増加したものである。当初は、「法外施設」「無認可施設」の扱いを受けてきたが、国の補助制度が1977(昭和52)年度に開始され、また、これとほぼ同時期に各地方自治体からの補助金制度の導入が行われるようになり、交付対象となる小規模作業所の数は年を追って増大することとなった。さらに2001(平成13)年度から社会福祉法および各障害者福祉法に基づく小規模通所授産施設制度が導入され、最低定員数が20人から10人に引き下げられるなど認可要件が緩和されたことにより、法内施設(社会福祉法第2条第4項第4号および同法施行令第1条各号による社会福祉事業)への移行の道が開けた。しかし、数千か所もある小規模作業所のうち、当該制度に該当できず、依然として法外施設の地位にある施設も多い。障害者自立支援法の制定により、これらの小規模作業所等は、障害者自立支援法に定める新体系による事業、例えば生活介護、就労移行支援、就労継続支援、地域活動支援センターなどのいずれかに、遅くとも2011(平成23)年度末までに移行することを迫られている。しかし、現時点で新体系への移行が終わっていない施設も多い。

pp. 14-16
障害者の福祉的就労の問題点 (1)低い平均工賃、(2)低い授産施設等から一般就労への移行率、(3)労働施策と福祉施策の分立:就労継続支援B型事業は、労働基準法や最低賃金法等の労働法規は適用されず、「労働者」ではなく、「訓練生」とされている。「労働者」ではないため、所得保障は二の次になりがちである。また、就労継続支援A型事業には労働法は適用されるが、労働施策ではなく福祉施策の対象であるので、就業面(一般労働市場への移行支援、職業リハビリテーション、仕事発注等)での対応が十分にはなされていない(p.16)。

pp. 16-17
2008(平成20)年9月、「福祉的就労分野における労働法適用に関する研究会」(代表は筆者)がつくられた。同研究会では1年間にわたり福祉的就労分野、特に障害者自立支援法に基づく就労継続支援B型事業の利用者の就労実態の把握を通じて、福祉的就労の現状の問題点を明らかにするとともに、労働法適用の可能性、あるいそれにかわる法的保護のあり方について、この研究の一環として行う欧米諸国における関連法制度などの調査結果も参考にしながら、研究を行った。その研究成果を取りまとめた報告書(「国際動向を踏まえた福祉と雇用の積極的融合」)が、2009(平成21)年11月に出されている。本書は、同研究会の委員のご協力を得て、最新の文献、資料およびデータなども追加して、全面的に書き直したものである。


*作成:伊東香純
UP:20210212
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