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『リカバリー――医療保健福祉のキーワード』

野中 猛 20111001 中央法規,120p.

last update:20210204

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■ 野中猛,2011,『図説リカバリー――医療保健福祉のキーワード』中央法規出版.[amazon][kinokuniya]

■内容

(出版社ホームページより)
医療保健福祉の援助実践に広がる
「リカバリー」の概念。
理解を深める47の項目を、
先達の歩みや諸国の事例、最新の動向より
わかりやすく図解した待望の一冊!

病や障害をもっていても、自分の生活や人生を取り戻すことができる…。
今、精神保健医療福祉の現場に「リカバリー」の考え方が着実に広がっています。本書では、リカバリーの概念をその歴史、背景、支援プログラム、制度的課題等、見開きページに概略図を示しながらわかりやすく解説します。

■目次

まえがき
リカバリー論全体図
I.疾病や障害をめぐる考え方の変遷
リハビリテーションの歴史/社会的価値観の変化/心理社会的視点/科学的根拠と実践化/セルフヘルプグループ活動/国際生活機能分類(ICF)/障害学/障害の受容/疾患発症のメカニズム/リハビリテーション過程
II.リカバリー概念の誕生
リカバリー3つの概念/ユーザーの手記/リカバリーを生きる人々/回復の過程/年代ごとの課題/リカバリー構成要素/希望を喚起する/阻害要因と促進要因/リカバリー段階論/リカバリー評価/プロシューマー
III.リカバリー支援のプログラム
リハビリテーション関係/パートナーシップ/快食・快眠・快便/実存療法/作業療法/ストレングスモデル/ACT(Assertive Community Treatment)/IPS(Individual Placement and Support)/IMR(Illness Management and Recovery)/WRAP(Wellness and Recovery Action Plan)/PACE(Personal Assistance in Community Existence)/支援つき居住(Supported Housing)/家族心理教育(Psycho-education for families)/認知行動療法/愛することの支援/就学支援/グループ支援/当事者研究
IV.リカバリーへの制度的課題
サービスの断片化/職種の壁/ケースマネジメント/サービス統合の工夫/社会的包摂/権利擁護/日本のストレングス/リカバリーを支援する体制
参考文献
あとがき

■言及


■書評・紹介


■引用

p. 27
リハビリテーションの基本戦略も、北米では生活機能や技能に焦点があてられ、いかに個人の能力を伸ばすようにするかの工夫がされている。欧州では社会環境の整備に焦点があてられ、余分な苦労のない平等な社会環境が追求されている。だから、リハビリテーション・プログラムとしては北米にモデルが多く、社会保障制度では欧州に学ぶことが多くなる。

p. 39
リカバリー概念を発想した最初の出来事は、1980年代後半のアメリカ合衆国における精神科専門誌にユーザーが連載した一連の手記にある。ラブジョイ、ディーガン、リート、アンツィッカー(Lovejoy 1982; Deegan 1988; Leete 1989; Unzicker 1989)という4人のユーザーの手記について、2001年にリッジウェイがナラティブ分析をしている。共通項目として現れた事柄は、次の8つであった。

p. 47
2003年アメリカ合衆国連邦公衆衛生総監は、精神保健に関する大統領新委員会でリカバリーを精神保健行政の目標とすることに定めた。それに先だって全米のユーザー代表を集めて「リカバリー勧告団」を結成し、リカバリーという現象を構成する要素を特定するように依頼した。その結果、統一見解は次のような10項目であった。すなわち、@自己決定が前提として欠かせない。A個別的でその人中心のありようである。Bエンパワーメント(有力化)の過程である。Cその人の全体的な現象である。D経過は非直線的である。Eストレングス(強み)に注目する。F仲間の支えが欠かせない。G尊厳が重要な要素である。H自分の人生に対する責任をとる。I希望の存在が最も重要な要素である。

p. 47
リバーマンは、「障害は出発点であり、リカバリーは目的地であり、リハビリテーションは旅行くその道のりである」と整理した。他の人のようにできないことの悔しさを感じてはじめて出発できる。そこにリハビリテーションの機会があれば幸いである。

p. 51
国の政策の基本にリカバリーを取り入れた最初の国はニュージーランドである。契機は精神障害者による殺人事件であったが、隔離政策よりも精神障害当事者のエンパワメントのほうが、治療的にも社会的にも経済的にも有利であると判断した。1998年のブループリントにおいて、中枢に精神保健委員会を設置して医師と看護師のほかに当事者代表のメアリー・オヘイガンを加えた。すべての精神科専門技術者には、リカバリー概念や技術を学ぶようにCD-ROMが配布された。国の研修施設では当事者のリカバリー研修が定期的に実施されている。あらゆる病院には当事者が正職員として採用され、案内役やアドボケーターとして機能している。

p. 55
エビデンスに基づく活動や費用対効果を考える上で、リカバリーについても何らかの評価が求められている。しかし、次のような難しさを抱えている。まず、伝統的な成果評価は、リカバリーという現象を直接測定しているわけではない。次に、リカバリー状態の操作的定めて尺度化しようという考え方であるが、リカバリーの成果と過程を分離することは困難である。最後は、当事者の主観からリカバリー構成要因を尺度化する立場であるが、リカバリーは過程であるのに、やはりその時点だけの評価になるという限界がある。このうち日本語が使えるのは、コリガンらによる Recovery Assessment Scale: RASと、アンドレセンら(p.115)がステージ理論を応用して作成したSelf-indentifies Stage of Recovery Assessment Scale: SISRである。

p. 63
パートナーシップ関係を具現化した方式が共同意思決定(Shared Decision Making: SDM)である。意思決定の全過程に専門職と当事者がともに参加し治療方針を共同で決定する。ディーガンらはカンザス大学精神科において、“CommonGround”というコンピュータープログラムを開発している。患者は待合室でこのプラグラムソフトを開けると、ピアの体験談が視聴でき、「パワーステートメント」に自分の人生上で重要な事柄と、向精神薬に関する思いを書きこめる。「パーソナルメディスン」の欄には、症状を緩和する自助活動を書きこめる。これらに加えてリカバリー尺度、薬への不安などの質問に答える。こうした内容は診察中の医師にも表示されて、面接中の話題となる。

p. 77
IMR(Illness Manegement and Recovery)は、「リカバリーと病気の自己管理プログラム」などと訳され、定訳はまだない。アメリカ合衆国の実践化研究プログラムの一つとして整理されて、そのツールキットはわが国でも翻訳されている。モジュールの内容は、第1回が「リカバリー戦略」となっているが、以降は統合失調症など精神疾患に関する事実、ストレス脆弱性モデル、社会的支援の構築、薬物療法の効果的な使用法、再発を減らす、ストレス対処、問題や残遺症状への対処、精神保健制度の利用の9課程である。

p. 77
WRAP(ラップ:Wellness and Recovery Action Plan)は、「元気回復行動プラン」と訳されている。躁うつ病の病歴をもつメアリー・コープランド博士らが1990年代に開発したプログラムである。

p. 81
PACE(ペース:PersonalAssistance in Community Existence)は、「地域で暮らすための個別的な支援」と訳されている。ダニエル・フィッシャーが中心となって設立したナショナル・エンパワメントセンターが、10年間の質的研究と実践活動から開発し、2001年からPACEと名づけたワークショップである。


*作成:伊東香純
UP:20210204
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