『生によりそう「対話」――医療・介護現場のエスノグラフィーから』
土屋 由美 20070301 新曜社,216,2p.
■土屋 由美 20070301 『生によりそう「対話」――医療・介護現場のエスノグラフィーから』,新曜社,216,2p. ISBN-10: 4788510359 ISBN-13: 978-4788510357 \2310 [amazon]/[kinokuniya] ※
■内容
父が脳梗塞で倒れ、娘が付き添い介護をすることになりました。後遺症で上手く言葉をしゃべれず、身体も思うように動かなくなって、いらだつ父。そんな父にどう対処してよいかわからず、とまどう娘。そんな二人が、医療スタッフや補助スタッフ、他の患者たちとの出会いのなかで、特殊な「対話」のスタイルを発達させ、それが、障害を持って生きること、家族として接していくことに大きな変化をもたらしたのでした。この「対話」を中心に、医療・介護の現場でおきた出来事を読み応えのある筆致で記録したエスノグラフィー。
■目次
序章 本書のなりたち
第1章 入院
石田さんの怒り(その1)
「ほっといてくれ!」
怒りを向けられる家族
バフチンの発話整理とワーチの「特権化」
「医療文化の声」
石田さんの怒り(その2)
若手看護師への怒り
「価値基準の侵害」
「特権化」された「声」との出会い
第2章 リハビリが始まってからの生活
「散歩」
「いろんな人がいるなあ」
売店
「芝生の広場」
自販機コーナー
「秘密の特訓場」
「川村さんと会う場所」
「散歩」の空間・時間
「散歩」を通して出会った「声」
境界が生まれる
病院の時間
病室に新しく生まれた「声」
病室の中の「丁寧語」
違和感
「画廊」としての病室
多様な「声」
「周辺的な声」
「特権化された声」
「特権化された声」と「周辺的な声」の対話的相互関係
第3章 退院後の生活
「話すという行為」
誰とどんな「声」で
異なる印象
発話環境
生物学的機能の障害と社会的機能の障害
「声」の宛先――「学び」と「声」の視点から
須田先生に向ける「声」
自分の「声」をつくる対話相手の選択
退院後に生まれた「声」
新しい丁寧語
意味、そして対話的関係の交渉
第4章 「変わりつつあること」に寄り添う
「他者性」――違和感と「応答」
「声」とアイデンティティの軌跡
「移動」する人
「対話」
あとがき
引用文献
■引用
私の父は、65歳の誕生日を間近に控えた1990年8月16日、自宅で激しい頭痛を訴えた後、まもなく意識障害におちいり、駆けつけた救急車で大学病院に運ばれた。検査の結果、小脳梗塞であると診断され、約三ヶ月間入院して集中的な治療を受けた。後遺症として身体の片麻痺はなかったが、主として歩行のバランスと発語に障害があらわれた。…
私は父が退院後に障害を持った身体で新たに生活を始める過程において、とりわけ言語を獲得し直していく多くの場面を共にし、あるいは目撃した者として、人が「話す」という行為が、「自分を生きる」という営みととても深くつながっていること。さらには病気によってさまざまなものを失った状態から「自分をどう生きなおしていくか」を模索していく過程そのものであることを教えられた。
(pp. 2-3)
■書評・紹介
■言及
*作成:三野 宏治