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『精神障害リハビリテーション論――リカバリーへの道』

野中 猛 20061204 岩崎学術出版社,208p.

last update:20210204

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■ 野中猛,2006,『精神障害リハビリテーション論――リカバリーへの道』岩崎学術出版社.[amazon][kinokuniya]

■内容

(出版社ホームページより)
訳者解題より
 本書は統合失調症を焦点にしており,その生物学的疾病性や障害構造論からはじめて,リハビリテーション実践技術や実践プログラムの研究動向をそろえ,最後に目標であるリカバリーについて総合的に論じており,本書だけでも精神障害リハビリテーションの全体像をとらえることができる。  第1編では,統合失調症という疾病の経過をとらえ,特に「精神の障害」とリハビリテーションの概要を俯瞰する。続いて,WHO国際障害分類の視点から統合失調症の障害を整理する。さらに,旺盛な研究が展開されている認知行動障害について,解明された部分までを確認する。そして,病識や疾病受容という概念に対する新しい見方を紹介する。病識というものが病と自分との関係を認識するという意味であれば,病のはじまり(第1編)のときに問われ,病のおわり(第4編)のために問われてくるものとなろう。  第2編では,リハビリテーションの実践技術を具体的に紹介する。最初の受理面接は,リハビリテーション導入において決定的に重要である。次に,リハビリテーションは一連の過程にそって進展することを理解していただく。提示された事例が参考になるであろう。また,リハビリテーションは社会生活に戻ることでもあり,原則的に集団形態を利用するため,集団精神療法の基本を紹介する。病院から地域生活に至るまで,利用者とサービスを適切につなげるケースマネジメントについても概略を述べる。さらに,リハビリテーションはチームアプローチであり,その実現にはケースカンファレンスの技術が必要なことを強調する。  第3編では,社会環境と個人との関係に注目し,社会への働きかけの原則や技術について述べる。まず社会福祉の原則を整理する。これはソーシャルワーカーの視点である。次に日常生活活動(ADL)と社会環境との関係を論じる。これは作業療法士の視点である。その後,住居支援と就労支援に関する実践研究の到達点を紹介する。世界的なレベルで最前線に至るまでの歴史を知ることは,後発するわが国において,改善のための最短路線を学べるという意義があろう。  第4編では,リハビリテーションの目標であるリカバリーをめぐって,世界の中でもシステマティックに取り入れているニュージーランドの様子を紹介する。次に,わが国の専門職にはまだなじみの少ないリカバリー概念の歴史や実証的研究を総合的に論じる。最後に,精神障害をもつ人々に役立つ専門職とは何か,その人材を育成するための方向についてふれて全編を閉じる。

■目次

第1編 
社会復帰と地域リハビリテーション
“慢性期”治療プログラムの要諦
国際障害分類の視点による精神障害
精神疾患における認知行動障害研究の動向/他

第2編 
リハビリテーション導入時の面接リハビリテーション過程
集団精神療法適用の意義と手続き
ケアマネジメントの実践
ケアマネジャーに必要なチームワークの技術/他 

第3編 
精神科医療における福祉
社会環境と日常生活活動
精神障害者に対する住居サービス技術の到達点/他

第4編
ニュージーランドにおける精神保健改革とリカバリー運動
リカバリー概念の意義
精神障害リハビリテーションにおける人材育成の重要性

■言及


■書評・紹介


■引用

p. 147
国際的には、精神障害をもつ人々に対する職業リハビリテーション技術がもっとも進んでいるのはアメリカ合衆国であろう。ヨーロッパにおけるリハビリテーションの戦略は、環境的に働きかけて権利を等しくしようとするものであり、イギリスのレンプロイ社やイタリアのコーポラティベなどに代表される保護的な事業所を足場にしてきた。一方、アメリカ合衆国のリハビリテーションは障害者自身の能力を伸ばすことに力点を置いてきた。歴史的な最初の試みは、メンバー自身で社会復帰施設を運営したクラブハウス活動にある。仕事を得るまでに、クラブハウス内での役割をこなし、外部の事業所にパート職を得てグループで出かけ、慣れるに従って単独の就職に挑戦していった。このシステムは過渡的就労(transitional employment: TE)と呼ばれている。

p. 148
(精神障害をもつ人々の職業的成果に関する)それまでの実践と研究に関して総括し、その後の立脚点としたのは1980年代のボストン大学リハビリテーションセンターの業績※である。すなわち、@・・・、H・・・である、とした。

p. 149
職業リハビリテーションの方法としては、援助つき就労(supported employment: sE)の有効性がほぼ確立している。つまり、長年にわたる職業訓練をしてから就職するのではなく、実際の現場に就労させて支援する方法である。健常者のわれわれ自身もそうして職業生活に適応してきたのである。2001年のコクラン共同計画に採用されたCrowtherらの総説では、標準的な病院内ケア、・・・クラブハウスモデル、援助つき就労、IPSモデルについて、18研究のメタ解析を行っている。その結果、たとえば就労1年の時点で、援助つき就労では34%が成功しているのに比し、前職業訓練では12%にすぎなかったなど、優位性は明らかであった。前職業訓練に対するクラブハウスモデルの優位性は見られなかったし、SEに対するIPSの優位性も不十分であった。〔中略〕わが国において2002年から始まった職場適応援助者(ジョブコーチ)制度はこうした考え方を理想としているが、全体状況の異なるわが国においては実務上の難点が残っている。

p. 151
就労支援の活動は支援者にとって苦労も大きいが、目標と成果が比較的明確で、何よりも・・・支援活動の手応えを実感できる。さらに、働く障害者は、自分自身のリカバリーを促進する一方で、社会的偏見を軽減する最良の存在となっている。最後に実務の参考になる書籍を良書なので紹介しておきたい。※

p. 154
リハビリテーションする主人公は障害をもつ者自身であり、専門職はその機会を提供するにすぎない。また、リハビリテーションは手段にすぎず、目標はリカバリーである。・・・最近の欧米では、リハビリテーションという言葉を避けて、代わりにリカバリーを前面に押し出す風潮もみられる。第4編では、リハビリテーションの目標であるリカバリーをめぐって、世界のなかでもシステマティックに取り入れているニュージーランドの様子を紹介する。


*作成:伊東香純
UP:20210204
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