『動物の権利・人間の不正――道徳哲学入門』
Regan, Tom 2003 Animal Rights, Human Wrongs : An Introduction to Moral Philosophy, Rowman & Littlefield Publishers=20220510 井上太一訳,緑風出版,240p.
last update: 20220802
■Regan, Tom 2003
Animal Rights, Human Wrongs : An Introduction to Moral Philosophy, Rowman & Littlefield Publishers=20220510
井上太一訳,『動物の権利・人間の不正』,緑風出版,240p. ISBN-10:4846122069 ISBN-13:978-4846122065
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*トム レーガン (トム・リーガン)
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「私が動物の権利を信じるのは、その権利を認める道徳理論が、それを認めない理論よりも、理性的に考えてより満足のいくものだからである。もしこの確信が当たっているなら、私たちはどのような生き方をすれば他の動物の権利を尊重できるのか」「私たちが食事の席に就くたびに、あるいは新しいコートを買いに行くたびに、何をすべきかを問う」
動物の権利否定派は、肯定派を不合理・感情的・反科学・人間嫌いなどと語ることが多いが、本書はその否定派の議論に一つ一つ反駁する。動物の権利の問題について道徳哲学から説き起こした入門書。
■書評・紹介・言及
「種差別
ロールズはこの批判に答えないが、哲学者のカール・コーエンは答える。種差別主義者を自認する(「かつそのことを誇りにする」)コーエンは、人間の苦しみは動物たちの同様の苦しみよりも重要であり、それは人間が人間だからだと考える。コーエンいわく、「人間の民族集団には道徳に関係する違いがない」のに対し、人間と他の動物のあいだには「道徳に関係する大きな違いがある」。特に、人間は「道徳的な自律性を持つ」が他の動物はそうではなく、私たちは道徳的な選択を行ってそれに道徳的責任を負うが、他の動物は違う。
この種差別擁護は全く擁護にならない。ここでは、かなりの割合を占める人間集団(例えば生後数年の子供など)が道徳的な自律性を持たないという事実が都合よく看過されている。が、そればかりでなく、道徳的な自律性はそもそも当面の問題に関わらない(ちなみに同じことはロールズの「正義の感覚」にもいえる)。一つ例を示せば理由が分かるだろう。
ある人物が、ジャックはジルよりも賢い、なぜならジャックはシラキュースに住み、ジルはサンフランシスコに住んでいるからだ、と言ったとしよう。二人の住んでいる場所は確かに違う。そして人々の住んでいる場所は時に意味のある勘案事項となる(例えば人口調査を行なう時や税金を取る時など)。しかし住んでいる場所の違いが賢さの違いと論理的に繋がらないことは誰にでも分かるだ1ろう。これに異を唱えるのは関連性の誤謬といって、初等論理学の授業を受けた人にはおなじみの△093 誤りである。
種差別主義者が、トートー〔動物でも人間でもよい〕の苦しみはドロシーの同等の苦しみよりも重要ではない、なぜならドロシーは道徳的な自律性を持ち、トートーは持たないからだ、あるいは、ドロシーは正義の感覚を持ち、トートーは持たないからだ、と論じれば、同じことになる。ジャックはジルよりも賢いか、が問題である場合、ジャックとジルは違う町に住んでいる、と言われても、どちらがどうと判断する有意味な根拠を得たことにはならない。同じく、トートーの痛みはド、どちらがどうと判断する有意味な根拠を得たことにはならない。同じく、トートーの痛みはドシーのそれと同等の重要さを持つか、が問題である場合、ドロシーは道徳的な自律性を持ちトートーは持たない、あるいは、ドロシーは正義の感覚を持ちトートーは持たない、と言われても。どらがどうと判断する有意味な根拠を得たことにほならない。
こうしたことが有意味な根拠にならないのは、道徳的な自律性の能力なり何なりが、人間と他の動物の利益に関する道徳思考に全く関わらないからではない。時にそれは意味を持つ。もしもジャックとジルがこの能力を持つなら、両名はみずからの良心にしたがって自由に行動できることを利益とするだろう(が、トートーは違う)。その意味で、ジャックおよびジルとトートーとの違いは,確かに道徳に関わる。しかし道徳的自律性が一種の利益を評価・考量するに当たって道徳に関わるしても、それが一切の利益を評価・考量するに当たって道徳に関わるとはいえない。そしてこの乙ても、それが一切の利益を評価・考量するに当たって道徳に関わるとはいえない。そしてこの能力が関わらない利益の一つに、痛みの回避によるそれがある。論理的にみて、トートーが道徳的自律性を持たないとの理由でトートーの痛みを軽んじるのは、ジルがシラキュースに佳んでいないない△094 との理由でジルの知性を軽んじることと完全に重なる。
したがって問題は、種差別的な判断を擁護できる有意味な根拠を示せるか、である。すなわち、人間の痛みと動物の痛みは、種以外の面で同等だつたとしても(これは同等な快楽・便益・被害・利益どにも当てはまるが)、常に人間の側が重要となるよう道徳的に評価すべきだと、正当な理由にもとづいて言うことができるのか。この問題に対して、ロールズもコーエンも論理的に有意味な回答を示せてはいない(その点は他のあらゆる哲学者も同様である)。人間の利益は人間の利益なのだから、他の動物の利益よりも重要である、とする判断への固執は理性的に擁護できない。種差別は道徳的偏見である。そして(コーエンが逆の確信を抱いていようと)それは不正であって正当ではない。」(Regan[2003=2022:93-95])
■書評・紹介・言及
◆立岩 真也 2022/12/20 『人命の特別を言わず/言う』,筑摩書房
◆立岩 真也 2022/12/25- 『人命の特別を言わず/言う 補註』,Kyoto Books
序章★04
■原著:https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-02-9780742533547
Animal Rights, Human WrongsAn Introduction to Moral Philosophy
Regan, Tom
RowmanLittlefield Publishers
Full Description
What gives an animal 'rights?' What makes product testing on animals wrong? In Animal Rights, Human Wrongs prominent activist and philosopher Tom Regan skillfully puts forth the argument for animal rights through the exploration of two questions central to moral theory: What makes an act right? What makes an act wrong? Taking into consideration moral theories such as contractarianism, utilitarianism, and Kantian ethics, Regan provides the theoretical framework that groundsresponsible pro-animal rights perspective, and ultimately explores how asking moral questions about other animals can lead tobetter understanding of ourselves. The necessity of makingtransition from moral theory to moral practice becomes startlingly clear as Reagan examines the commonplace, everyday choices that would be affected by believing inmoral theory that affirms the rights of animals. For the many people who have ever wondered 'what difference does it make if animals have rights,' Animal Rights, Humans Wrongs providesprovocative and intriguing answer. Fordiscussion of animal rights tailored tomore general audience, see Empty Cages: Facing the Challenge of Animal Rights (RowmanLittlefield, 2003).
Contents
Chapter 1 From Indifference to Advocacy
Chapter 2 How Animals Are Treated: Some Examples
Chapter 3 The Nature and Importance of Rights
Chapter 4 Indirect Duty Views
Chapter 5 Direct Duty Views
Chapter 6 Human Rights
Chapter 7 Animal Rights
Chapter 8 Objections and Replies
Chapter 9 Moral Philosophy and Change
*作成:立岩 真也