『日本の雇用システム』
小池 和男 19941219 東洋経済新報社,259p.
■小池和男 19941219 『日本の雇用システム』,東洋経済新報社,259p.
・この本の紹介の執筆:W(立命館大学政策科学部2回生)
*目次*
第1章 日本の雇用システムのよさ
-1 流動化は善か
-2 アメリカではどうなのか
-3 定着化こそ
-4創造的な研究を生み出すため
第2章 日本の雇用システムを見誤っていないか
-1自己誤認の3類型
-2長期の戦争
第3章 日本の報酬制度
-1問題提起
-2資格制度
-3報酬の方式
-4まとめ
第4章 解雇と高年者雇用
-1解雇と日本の雇用システム
-2高年雇用と解雇
第5章 雇用からみた東京集中
-1本社の雇用
-2いままでの説明
第6章 外国人労働者問題
-1「ヒトの開国」
-2外国人労働者受け入れ議論の盲点
第7章 他国の方式と日本の方式
-1日本の仕事方式は海外に通用するか
-2アジアの職場と日本の雇用システム
第8章 江戸期の知的労働市場
第1章 日本の雇用システムのよさ
戦後から続く日本の雇用システムの批判に対する避難に対しての分析である。「年功制」で競争がとぼしく、非実力主義では働きに関わりなくサラリーが上がる「年功賃金」では日本経済の成長が望めないであろうとする批判に対しての擁護として書かれている。
日本の雇用システムである「終身雇用」と労働力の流動による効率化の矛盾が一つの議論として上げられる。定着か流動かという人的資源管理の問題をここで論じているが、重要な論点は技能の形成であるとしている。経済の効率化を決めるのは技能だけではない、機会などのハード、管理方式となるソフトが重要でもある、しかし、これらのものは資金があれば買えるが、技能を持つ労働力=人材は大量に流入させることはできない。その意味でも、技能の形成は経済を考えていく上で必要な議論である。
人材の流動化が善であるということは、どのような論拠に基づくのか。第一に、定着化は人材の適材適所を達成できないという考え方がある。労働者側も、若い間に職を変えることで、適した労働場所を見つけることができる。第二に、技能の高低に関する報酬の格差が生じにくいということがあげられる。企業に内に長くいさえすれば、報酬が上がっていくことでは、技能が問題になりにくい。
例えば、アメリカの弁護士の場合、移動による人材の高度化ではない。大きな法律会社では、選りすぐりの弁護士は内部昇進を」繰り返すことで、技能の高度化を行っている。初めの段階で、選ばれなかったものたちが転職を繰り返すことになっている。ここが、日本での認識と違う所である。
つまり、技能の形成に必要なのは、技能に対して公正な評価を行い、報酬を払うことである。定着か流動化というよりも技能の形成を効率的に行っていくことが本質となる。そして、これを支えるのに定着が有利になる理由の一つに、技能を形成するための査定をどのように行うのかという議論である。査定を公正に行うためには、査定がどのような基準で行うかを明確にしないといけない。
加えて、社内のOJTのコストにある。高度で専門的な技能形成を行うには大きなコストが発生する。
第2章 日本の雇用システムを見誤っていないか
日本は能力主義ではないという、言い換えれば同じ会社、学歴、勤続年数でも報酬には同じという、つまりこれを能力主義に変えるべきであるという。しかし、資格ごとに報酬は違う。日本の報酬は長期的な競争型であるという議論が上の議論を否定する。そして、日本の技能形成に関しては、長期の競争の中でプレーヤーが少なく、また外部(人材の流入)に対して閉鎖的であるということではなく、定期的に外部からの人材に対しては門戸を開いているが、技能評価をするのが難しくなかなか人材が入ってこない。
労働技能のうち、知的熟練を形成するためには資格制度、範囲給、定期昇給、査定の4つの柱が必要となる。そして、報酬に関しては、技能の伸びの幅を反映するべきで、それらは長期の期間に形成される。そして、この4つの柱は欧米のホワイトカラーの間にも 見られ、日本と欧米の雇用システムが違いそれによって、日本の雇用システムを非難するのは、少し違うという結果となる。
第3章 日本の報酬制度
現代日本の大企業生産現場では、報酬は技能を伸ばすように構成されている。そして、その中でも、もっとも重要な変化と問題をこなす知的熟練を形成するようにインセンティブ設計を行っている。そして、経験と問題処理の能力に関しては、欧米の職務給よりも優れている。
第4章 解雇と高年者雇用
現代の企業で行われてる解雇が日本の雇用システムを崩すのではないかという疑問に答える章である。当時の日本の雇用システムは解雇をほとんどおこなわす、企業内余剰を暗黙に認めている状態であった。それは欧米に比べても硬直的であるとされていた。
欧米の企業では、解雇を従業員の希望制退職として処理している、そしてこれは高い技能形成に役立っている。高い技能は、職場の長い間の経験によって醸成されることが普通である。解雇を行っていては、これらを達成できない。希望退職方式は、同じような職種での移動を可能にし、労働市場全体の技能形成に役立ってきた。
日本においては、高い年齢層の従業員を肩たたきとして解雇していくことが多い。これは今までの、長期によって形成されてきた技能を放出すること、また高年齢層は違う職種への転身にはまた一から技能を形成していかなければならす、市場全体としてのコストを多く支払っていることにも通じる。
第5章 雇用からみた東京集中
日本においては本社こそが、最も著しい雇用を生み出している点、そして本社がなぜ雇用の源泉となるかの点についての展開である。つまり、小さい本社はなぜ出来にくいかを説明することにもなる。
この議論の揮発点は、東京に比べて大阪の雇用状況が悪化しているとういう点において、同じ大都市に雇用の差が、大きく出る理由の説明にもなる。
本社の雇用増に関しては本社の機能の分析が有効であるとされている。
@企業戦略策定機能
A本部オペレーション機能
B内部調整やコントロール機能
が存在している。
本書では、この雇用の説明を「その場のその人の重要性が高く、これからますます高まるだろう」という仮説である。その場のその人とは、特に特殊な知識を持つ人がひつようであるからだということがいえる。職場の作業を観察し
第6章 外国人労働者問題
日本の労働市場における外国人労働者に対する議論である。日本は労働市場に関しては欧米に比べても閉鎖的であるという点に対して、欧米の外国人労働市場の相場は
@新たな外国人労働者の導入はごく少ない
A自国の失業を最も重視し、それによって門の開け方を大幅に変える
B自国経済への「著しい貢献」を、当然のことながら、導入の条件としている。
そして、日本が外国人労働者に対しての適切な策は欧米の先例を参考にできる。その条件とは
@日本にとって必要で、良質な、そして日本の失業を増やさない職業の人を受け入れる
A単純労働者は受け入れない
B企業側の協力を大いに求め、例えば雇用許可制度などを作り、不法労働に対処する
そして、これらを満たすのが大学教員、研究者、芸術家、外資系企業の管理者などとなる。
しかし不法労働者に関しては解決をした国がない。単純労働者つまり不熟練労働者のことであり何の技能や技術を持たない人を指し、そして国の底辺の仕事を請け負っている現状がある。そして、これらの人を受け入れなければうまくいかない社会構造にもなっている。
不法労働者が大勢入ってくるのは、それを利とする企業があり引っ張る力が現にあるからだとする考えもそこにはある。単に賃金が低いからというのではなく、その賃金で働く外国人は日本の物価で生活するので、当然安い賃金といっても極端には出来ない。加えて、外国人はその国では中流層クラスになると考えられる。つまり、渡航や情報の入手を行えなければ日本にはやってこれない。
そして、日本の底辺と考えられる仕事を日本人がこなすには、日本の活力を失った中年から高年の労働者である、一方外国人労働者は20〜30代の働き盛りであり、同じ賃金でも企業は外国人労働者を雇うことになるだろう。つまり、企業は確実なインセンティブから外国人を雇用する、つまり国が不法者の枠を拡大・縮小してもあまり効果がないといえる。
コメント
日本の労働慣習は現在の不況からの合理化によって大きく変わってきている。特に外資系の企業の移転や海外からの直接投資などによるコーポレートガバナンスの普及が、日本独自の終身雇用、年功序列賃金などを排除を進めている、しかし、この本では単に終身雇用が非効率であるなしの議論ではなく、労働者の技能をどう形成していくか?その技能を効率的に労働に結びつけるためにはどうすればいいか?という疑問についての答えを提示すべきだと考えている。この技能形成に関しての労働者のインセンティブに関して、また労働者に対する企業のインセンティブ構造などを紹介されており、労働を考えるいいきっかけになった。