ME/CFS世界啓発デーが日本にもたらした影響

石川 真紀


last: update: 20251011

◆石川 真紀 2025/10/25-26 「ME/CFS世界啓発デーが日本にもたらした影響」, 障害学国際セミナー2025, 於:京都(日本)
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障害学

石川 真紀 2025/10/25-26 「ME/CFS世界啓発デーが日本にもたらした影響」

石川 真紀

ME/CFSとは

 ME/CFS(筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群)とは、原因不明の激しい全身倦怠感や疲労感に加え、微熱、頭痛、筋肉痛、思考力低下、睡眠障害などの症状が、休養しても回復せず長期間(少なくとも6か月以上)続く、健康な人が突然発症する病気である。この病気は労作後倦怠感(PEM)を特徴とし、わずかな身体的・精神的負荷で症状が悪化することがある。この疾患は1934年にイギリスの医師メルヴィン・ラムジーによって初めて報告されて以来、多くの研究者がその生物学的病因を探ろうと奮闘してきたが、正確な原因は不明のままである。現在も明確な治療法は確立されておらず、原因も不明であるが、ウイルス感染後に発症することが多く、新型コロナ後遺症との関連も指摘されている。

ME/CFS世界啓発デーとは何か

 筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)世界啓発デーは、世界的な注目を集めるために、トーマス・ヘネシー・ジュニアによって創設された。5月12日は、近代看護の先駆者であるフローレンス・ナイチンゲールの誕生日(1820-1910)にちなんで選ばれた。ナイチンゲールが生きていた時代には、ME/CFSはまだ定義されていなかったが、ナイチンゲールは細菌感染の後、衰弱性の慢性疾患に苦しみ、晩年は頻繁に寝たきりになっていたと伝えられています。現在では多くの医学史家が、彼女の症状はME/CFSの症状に酷似していると考えている。トーマス・マイケル・ヘネシー・ジュニア(1954-2013)は、アメリカでR.E.S.C.I.N.D.Inc(現在は消滅)を創設し、啓発活動をリードしたME/CFS患者である。

背景

 ME/CFS患者の人権のために闘ったトーマス・ヘネシー・ジュニアの遺志を引き継いで、2013年にカナダの団体May12.org 主催のLight Up the Challenge企画として、5月12日の世界啓発デーにナイアガラの滝をライトアップしたのをきっかけに、世界規模のイベントに発展した。翌年の2014年にはME/CFS支援ネットワークの前身である慢性疲労症候群の理解を広める会が日本の団体としてアスパム(青森市)をブルーライトアップし、日本を含む7か国が参加した。毎年、この日に合わせて、啓発イベント、キャンペーン、シンポジウムなどが世界中で開催され、ME/CFSの患者やその家族が直面する課題に対する支援が呼びかけられている。また、研究の促進と医療制度改善の必要性を訴える機会にもなっている。

報道の変遷

 日本では、1990年に米国CDCの診断基準を満たす日本国内での初めての症例が日本内科学会にて報告されたが、社会の反応は鈍かった。しかしその直後に雑誌『ニューズウィーク日本版』(1990.11.15号)の表紙を飾り、「感染者は数百万 CFS 謎のウイルスを追え」と特集記事が組まれ、「第二のエイズ」「奇病」と不安をあおるセンセーショナルな報道が相次いだ。  1991年に旧厚生省CFS研究班が発足し、1992年には米国CDC基準との整合性を保ちつつ日本独自の診断基準が策定され、1994年には日本独自の診断基準をもとに実態調査が行われるなど、主に研究の動向が報道された。1996年に研究班が解散して以降、報道は下火になり「忘れ去られた病気」となる。  2011年頃から患者会や患者支援グループの活動が注目されだし、2012年には16年ぶりに国の研究班が組織され、2013年以降はME/CFS世界啓発デーに関する報道や患者の生活実態に関する報道が増えていった。2020年からは、新型コロナ感染をきっかけにME/CFSを発症する患者が増えたことで、再注目されている。

考察

 ME/CFSは、1990年に初めて日本で紹介された。センセーショナルな報道をされ、医療従事者より先に一般市民に知られるようになったが、報道熱は一過性で、数年後には、「忘れ去られた病気」となった。病気としての存在自体の論争が継続しているが、2010年代の当事者運動の高まりにより、2012年には16年ぶりに厚生労働省にCFS研究班が発足し、2013年のME/CFS世界啓発デーが始まってからは、再び注目を集めるようになった。2000年代まではME/CFSは、障害年金や障害者手帳の対象外とみなされ、ほとんどの患者は社会保障を受けられなかったが、現在では受けられるようになった。2012年に、厚生労働省がME/CFSの障害年金請求の事例集を公表してからは、それまで行われていた病名による排除がなくなり、現在では約4割の患者が障害年金を受給できている(重症度により対象とならない患者もいる)。また障害認定においては2014年度の調査によれば14%であったら、2023年の調査では30%に倍増しており、患者の生活の安定に大きく寄与している。

参考文献

  • "An Interview With International Awareness Day Founder and Leader of RESCIND, Tom Hennessy (May 2008)". March 6, 2011. Retrieved July 21, 2018.
  • Siegel ZA, Brown A, Devendorf A, Collier J, Jason LA. A content analysis of chronic fatigue syndrome and myalgic encephalomyelitis in the news from 1987 to 2013. Chronic Illn. 2018 Mar;14(1):3-12. doi: 10.1177/1742395317703175. Epub 2017 Apr 12. PMID: 28403636; PMCID: PMC6487662.
  • 山口浩二,2019,「歴史」,『専門医が教える筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群診療の手引き』,1-14



*作成:中井 良平 
UP: 20251001 REV:20251011
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