last update: 20251024
◆青木 慎太郎, 安田 真之 2025/10/25-26 「当事者参加はどこまでできているか――日本の視覚障害者の外出を保障する制度の場合」, 障害学国際セミナー2025, 於:京都(日本)
◇障害学国際セミナー2025 ◇障害学国際セミナー
◇障害学
一方で、この制度に基づいて実際にサービスを行う人材を養成する研修に、当事者が十分に関与できていない現状がある。研修は各都道府県が事業者を指定して実施されるが、その指定要綱に研修への当事者の参加を明記していない都道府県が多い。その結果、視覚障害者と接した経験のない人材がプロの支援者として現場に送り出されている。
本報告では、こうした経緯や現状を整理し、障害福祉サービスの実践に当事者が関わることの有益性と課題について、我々が行っている人材養成研修の試みを踏まえて検討する。
[ヘルパーの資格要件]利用者の推薦による(それだけ)
ヘルパーによって支援はバラバラ
(中略)
2006年 移動支援事業
[問題点]①市町村事業(地域生活支援事業)であったこと
→ 市町村ごとにバラバラ
②代筆・代読、情報提供の位置づけが曖昧だった
↓ 当事者団体(日本盲人会連合)などの働きかけ
2011年 同行援護制度
[ポイント]①視覚的情報提供(代筆・代読を含む)
②移動の援護
③全国一律の制度(自立支援給付)になった
④資格制度の統一
↓ 当事者団体(日本視覚障害者連合)などの働きかけ
2025年 同行援護従業者養成研修カリキュラムの改定
※養成研修テキストが社会モデルに基づくものに変更
↓しかし
ヘルパー養成研修に当事者の参加が想定されていない
講師要件に視覚障害当事者を明記:4府県(科目「障害者(児)の心理」)
講師要件に資質向上研修※修了者を明記:15都県
講師要件ではないが当事者参加を推奨:3県
※視覚障害者移動支援従事者資質向上研修:研修事業者や講師の質を上げるための研修。厚生労働省からの委託を受けた日本視覚障害者団体連合が、「一般の部」(視覚障害のない人対象)、「視覚障害当事者の部」を実施。
*本データは2024年9月時点 [青木・安田:2024]
研修会場の手配、講義、演習を当事者中心に実施。
実技演習は、晴眼者に協力(助手)を求める。
②全科目を当事者が担当
講師間の密な連携
当事者の生の声を反映する
講師以外の当事者にも参加協力してもらう
③独自科目「障害福祉の理念」
障害平等研修(DET)の手法を取り入れる
研修の冒頭に実施
障害の「社会モデル」の獲得
④実際の交通機関を使って演習を行う
事前に地下鉄駅、バス車庫で演習。
⑤買い物演習は実際のショッピングモールで行う
⑥目的地と時間“のみ”を指定した実践的演習
実際の業務で必要となるスキルの獲得
[青木・安田:2023]
②当事者の受講も受け入れ(他では断られていることが多い)
③最大8人の少人数制で繰り返し実技体験ができる
④受講生からの評価
・当事者講師から、教科書に載っていない話をたくさん聞けた
・研修期間中に複数の当事者と過ごせたことそれ自体への好意的評価
・当事者の体験談や心理等の解説がある
・「なぜそうするのか」を納得しながら進めることができる
・実技を少人数で集中的・反復的に学ぶことができる
⑤独自科目への評価…社会モデルの獲得に成果
・「障害とは何か?」という質問
開始直後には個人の心身の機能に着目したものが目立つ
終了直前では社会・環境の様々な要素に着目したものが多い
・受講生相互のコミュニケーションがより活発になる傾向が見られた
→ その後の実技を交えた演習をより効果的なものにしている
[青木・安田:2023]
研修実施の場面では、不十分である。
②研修で当事者と関わることで、現場で必要な知識・技術・当事者とのコミュニケーションが図れる。
③私たち当事者も、積極的に支援者の養成に関わらなければならない。良い支援者は勝手に生まれない。
※第136回社会保障審議会障害者部会「同行援護従業者養成研修カリキュラムの改正について」(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課)2023年6月23日を基に作成。
※一般課程は従業者(ヘルパー)になるための資格であり、応用課程はサービス提供責任者になるために必要な資格である。
※●印は、盲ろう者向け通訳・介助員の資格を持つ人は免除科目となる。
*作成:安田 真之
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◇障害学
青木 慎太郎,安田 真之 2025/10/25-26 「当事者参加はどこまでできているか――日本の視覚障害者の外出を保障する制度の場合」
"The Extent of Disabled People's Participation: A Case Study on the Japanese System for Guaranteeing Outings of People with Visual Impairments"報告のあらまし
日本には、視覚障害者の外出を保障することを目的とした「同行援護」という制度がある。これは、「日本視覚障害者団体連合」を中心とする視覚障害当事者の長年の働きかけにより実現した制度である。特に、移動の支援だけでなく、外出先での代筆や代読がサービスに含まれていることは、当事者による積極的な働きかけの結果と言える。一方で、この制度に基づいて実際にサービスを行う人材を養成する研修に、当事者が十分に関与できていない現状がある。研修は各都道府県が事業者を指定して実施されるが、その指定要綱に研修への当事者の参加を明記していない都道府県が多い。その結果、視覚障害者と接した経験のない人材がプロの支援者として現場に送り出されている。
本報告では、こうした経緯や現状を整理し、障害福祉サービスの実践に当事者が関わることの有益性と課題について、我々が行っている人材養成研修の試みを踏まえて検討する。
1.外出支援制度の歴史
1974年 盲人ガイドヘルパー派遣事業 ※これ以前は何もなかった![ヘルパーの資格要件]利用者の推薦による(それだけ)
ヘルパーによって支援はバラバラ
(中略)
2006年 移動支援事業
[問題点]①市町村事業(地域生活支援事業)であったこと
→ 市町村ごとにバラバラ
②代筆・代読、情報提供の位置づけが曖昧だった
↓ 当事者団体(日本盲人会連合)などの働きかけ
2011年 同行援護制度
[ポイント]①視覚的情報提供(代筆・代読を含む)
②移動の援護
③全国一律の制度(自立支援給付)になった
④資格制度の統一
↓ 当事者団体(日本視覚障害者連合)などの働きかけ
2025年 同行援護従業者養成研修カリキュラムの改定
※養成研修テキストが社会モデルに基づくものに変更
2.問題点
制度ができる過程で当事者参加は一定程度できていた↓しかし
ヘルパー養成研修に当事者の参加が想定されていない
講師要件に視覚障害当事者を明記:4府県(科目「障害者(児)の心理」)
講師要件に資質向上研修※修了者を明記:15都県
講師要件ではないが当事者参加を推奨:3県
※視覚障害者移動支援従事者資質向上研修:研修事業者や講師の質を上げるための研修。厚生労働省からの委託を受けた日本視覚障害者団体連合が、「一般の部」(視覚障害のない人対象)、「視覚障害当事者の部」を実施。
*本データは2024年9月時点 [青木・安田:2024]
3.私たちの取組:同行援護従業者養成研修
①当事者中心の企画・運営研修会場の手配、講義、演習を当事者中心に実施。
実技演習は、晴眼者に協力(助手)を求める。
②全科目を当事者が担当
講師間の密な連携
当事者の生の声を反映する
講師以外の当事者にも参加協力してもらう
③独自科目「障害福祉の理念」
障害平等研修(DET)の手法を取り入れる
研修の冒頭に実施
障害の「社会モデル」の獲得
④実際の交通機関を使って演習を行う
事前に地下鉄駅、バス車庫で演習。
⑤買い物演習は実際のショッピングモールで行う
⑥目的地と時間“のみ”を指定した実践的演習
実際の業務で必要となるスキルの獲得
[青木・安田:2023]
4.成果
①6年間で計9回実施し、修了者は59名。②当事者の受講も受け入れ(他では断られていることが多い)
③最大8人の少人数制で繰り返し実技体験ができる
④受講生からの評価
・当事者講師から、教科書に載っていない話をたくさん聞けた
・研修期間中に複数の当事者と過ごせたことそれ自体への好意的評価
・当事者の体験談や心理等の解説がある
・「なぜそうするのか」を納得しながら進めることができる
・実技を少人数で集中的・反復的に学ぶことができる
⑤独自科目への評価…社会モデルの獲得に成果
・「障害とは何か?」という質問
開始直後には個人の心身の機能に着目したものが目立つ
終了直前では社会・環境の様々な要素に着目したものが多い
・受講生相互のコミュニケーションがより活発になる傾向が見られた
→ その後の実技を交えた演習をより効果的なものにしている
[青木・安田:2023]
5.考察と課題、そして提言
①制度設計において当事者参加は一定できているが、研修実施の場面では、不十分である。
②研修で当事者と関わることで、現場で必要な知識・技術・当事者とのコミュニケーションが図れる。
③私たち当事者も、積極的に支援者の養成に関わらなければならない。良い支援者は勝手に生まれない。
(参考)同行援護従業者養成研修カリキュラム
一般課程
| 区分 | 科目 | 時間数 |
|---|---|---|
| 講義 | 外出保障 | 1 |
| 講義 | 視覚障害の理解と疾病① | 1 |
| 講義 | 視覚障害の理解と疾病② | 0.5 ● |
| 講義 | 視覚障害者(児)の心理 | 1 |
| 講義 | 視覚障害者(児)福祉の制度とサービス | 1.5 ● |
| 講義 | 同行援護の制度 | 1 |
| 講義 | 同行援護従業者の実際と職業倫理 | 2.5 ● |
| 講義・演習 | 情報提供 | 2 |
| 講義・演習 | 代筆・代読① | 1 |
| 講義・演習 | 代筆・代読② | 0.5 ● |
| 演習 | 誘導の基本技術① | 4 |
| 演習 | 誘導の基本技術② | 3 ● |
| 演習 | 誘導の応用技術(場面別・街歩き)① | 4 |
| 演習 | 誘導の応用技術(場面別・街歩き)② | 1 ● |
| 演習 | 交通機関の利用 | 4 |
| 合計 | 28 |
応用課程
| 区分 | 科目 | 時間数 |
|---|---|---|
| 講義 | サービス提供責任者の業務 | 1 |
| 講義 | 様々な利用者への対応 | 1 |
| 講義 | 個別支援計画と他機関との連携 | 1 |
| 講義 | 業務上のリスクマネジメント | 1 |
| 講義 | 従業者研修の実施 | 1 |
| 講義 | 同行援護の実務上の留意点 | 1 |
| 合計 | 6 |
※第136回社会保障審議会障害者部会「同行援護従業者養成研修カリキュラムの改正について」(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課)2023年6月23日を基に作成。
※一般課程は従業者(ヘルパー)になるための資格であり、応用課程はサービス提供責任者になるために必要な資格である。
※●印は、盲ろう者向け通訳・介助員の資格を持つ人は免除科目となる。
【参考文献】
- 青木 慎太朗・安田 真之,2023,「当事者を支える人を、当事者が育てる――NPO法人ゆにでのガイドヘルパー養成研修の記録」,障害学会第20回大会ポスター発表.
- 青木 慎太朗・安田 真之,2024,「「当事者を支える人を、当事者が育てる」の現状――各都道府県の同行援護従業者養成研修指定要綱における当事者の位置づけを手掛かりとして」,障害学会第21回大会ポスター発表.
- 久野 研二編,2018,『社会の障害をみつけよう――一人ひとりが主役の障害平等研修』現代書館.