last update:20200719
1 目的
精神障害者が住み慣れた地域を拠点とし、本人の意向に即して、本人が充実した生活を送ることができるよう、関係機関の連携の下で、医療、福祉等の支援を行うという観点から、統合失調症を始めとする入院患者の減少及び地域生活への移行に向けた支援並びに地域生活を継続するための支援を推進する。
2 実施主体
本事業の実施主体は、都道府県又は指定都市(以下「都道府県等」という。)とする。
なお、都道府県は、中核市で事業を実施した方が適切に事業実施できる場合については、中核市に事業の一部を委託することができるものとする。
また、都道府県等は、事業の全部又は一部を団体等に委託して実施することができるものとする。
3 圏域
都道府県等は、本事業を行うにあたり、二次医療圏などを踏まえ、適切な圏域を設定することとする。
4 事業内容等
(1)地域移行支援事業
ア 協議会の設置
都道府県等(委託して実施する場合は当該委託先の実施主体を含む。以下同じ。)は、地域移行支援に関する以下に掲げる業務を行うため、都道府県、市町村、精神科病院の医師、福祉サービス事業者、ピアサポーター等で構成する協議会(既存の協議会を活用することも妨げない。)を設置するものとする。
なお、協議会を運営するに当たっては、都道府県自立支援協議会や地域自立支援協議会との連携を図ることとする。
(ア)客観的に視点に立った対象者の決定(対象者本人の同意に基づき病院・施設等と退院・退所について合意を得るなど十分に調整を図った上で行うこと。)
(イ)退院整備のための調整
(ウ)困難事例の解決に向けた調整
(エ)事業の評価(地域における支援体制等に関する課題が明らかになった場合には、地域自立支援協議会に報告するなど、課題解消に向けた方策を検討するよう努めること。)
(オ)地域移行支援の推進のために必要な研修の企画および実施(精神障害者に対する支援を実施したことのない障害福祉サービス事業者、介護サービス事業者(ホームヘルプ等)に対して地域移行支援に必要なノウハウや知識を提供する研修、ピアサポーターの育成に関する研修等)
(カ)その他地域移行支援の実施に当たって必要な事項
イ 地域体制整備コーディネーターの配置
都道府県等は、精神保健福祉士又はこれと同等程度の知識を有する者のうち、精神障害者の地域生活への移行に必要な体制整備の総合調整の能力を有する者を地域体制整備コーディネーターとして、各圏域の相談支援事業者等に1名以上配置するものとする。
地域体制整備コーディネーターは、主に以下のような業務を行う。
(ア)圏域の市町村、病院及び福祉サービス事業者等の関係機関に対する周知鵜、本事業の円滑な実施のための体制整備に向けた整備
(イ)病院・施設等の関係機関に対する本事業への参加等必要な協力の要請及び地域の資源に係る情報提供、資源開発等に関する病院・施設等からの要請への対応
(ウ)下記ウの地域移行支援推進員(以下同じ。)と連携した各圏域市町村における必要な事業、資源(インフォーマルなものを含む。)の点検・開発に関する助言、指導
(エ)地域移行推進員が作成する個別支援計画(以下「個別支援計画」という。)への必要な助言・指導
(オ)個別支援計画に基づき地域移行推進員が実施する支援に対する必要な助言・指導
(カ)複数圏域にまたがる課題の解決に関する助言
(キ)関係者と協働した研修、シンポジウム等の企画、調整など地域移行に向けた普及啓発の推進 等
ウ 地域移行推進員の配置
都道府県等は、精神保健福祉士又はこれと同等程度の知識を有する者を、地域移行支援対象者の個別支援等に当たる地域移行推進員として、各圏域の相談支援事業者等に配置するものとする。
地域移行推進員は、対象者の入院・入所する病院・施設等の精神保健福祉士等と連携を図るとともに、必要に応じ当事者による支援(ピアサポート)等を活用しつつ、退院・退所及び地域定着に向けて主に次の支援を行う。なお、個別支援計画については、地域体制整備コーディネーターの助言・指導を受けながら策定し、及び支援するものとする。
また、入院・入所から一定期間関与することとし、退院・退所後の支援機関は原則6ヶ月を上限とする。
(ア)利用対象者に対する退院・退所に向けた相談・助言
(イ)主治医との調整に基づいた院外活動(福祉サービス体験利用、保健所グループワーク参加等)に係る同行支援等
(エ)対象者、家族に対する地域生活移行に関する情報提供及び相談・助言
(オ)地域体制整備コーディネーターと連携した、退院後の生活に係る関係機関との連絡・調整 等
エ 個別支援会議の開催
地域移行推進員は、協議会において選定された地域移行支援の対象者について、必要に応じ適宜支援内容の検討や地域移行個別支援計画の見直しを行うため、地域体制整備コーディネーター及び支援関係者の参画を求め、個別支援会議を開催するものとする。
オ ピアサポートの活用
都道府県等は、精神障害者の視点を重視した支援を自由実する観点や、精神障害者が自ら疾患や病状について正しく理解することを促す観点から、地域移行推進員による対象者の退院に向けた相談・助言、個別支援計画に基づく院外活動に係る同項支援等について、ピアサポートが積極的に活用されるよう努めるものとする。
なお、ピアサポートの活用に当たっては、ピアサポート従事者に対して、活動内容、報酬、活動時間等の条件を明確にし、契約書等を取り交わすとともに、地域体制整備コーディネーターが助言・指導を行い、支援関係者と連携を図り実施するものとする。
カ 精神科地域共生型拠点病院について
都道府県等は、地域移行を推進するため、管内の精神科病院で、以下に掲げる基準をすべて満たしている精神科病院を精神科地域共生型拠点病院として公表することができる。
(ア)地域移行を推進する専門部署又は担当者が配置され、地域の障害福祉サービス事業者等と十分に連携を図るなど、地域移行支援について積極的な取組みを実施していること
(イ)精神科救急医療体制整備事業に参画していること。
(ウ)本事業に協力している実績があること。
(エ)平均在院日数、長期入院患者等、在宅復帰率等を含め、病院の機能や診療実績に関する情報をホームページ等で具体的に公開していること。
(オ)公開講座の開催等、地域住民に対する普及啓発を実施していること。
(カ)自院の退院及び通院患者以外の者に対する訪問看護の実績があること。(併設の診療所、訪問看護ステーションとの連携により行う者を含む。)
(キ)デイケアの利用者に対して、必要に応じ障害福祉サービス事業者等と連携した支援を行う体制世があること。
キ その他の事業
円滑な地域移行を行うために一時的な入居先を確保すること等、地域移行支援のために特に必要と認められる事業。なお、事業の実施に当たっては、個別に当部精神・障害福祉課に協議すること。また、都道府県等の実情に応じ、障害者自立支援法(平成17年法律第123号)第88条及び第89条に規定する障害福祉計画の総合的な推進のために必要な場合には、本事業の一環として、精神障害者以外の障害者であって入所中の者の地域移行のための事業を行うことができる。
(2)地域定着支援事業
ア 精神障害者の参加による地域住民との交流事業の実施
都道府県等は、精神障害に関する周囲の正しい理解や行動を促し、精神障害に関する更なる普及啓発を図るため、地域において精神障害者と住民等が直接交流する機会の充実を図るものとする。
なお、交流事業については、協議会等と連携して企画、実施するものとする。
イ その他の事業
精神保健福祉センター、保健所、訪問看護ステーション等と連携して、地域定着支援体制を整備するための協議会の運営等、地域定着支援のため特に必要と認められる事業。
なお、事業の実施に当たっては、個別に当部精神・保健障害課に協議すること。
5 留意事項
(1)関係機関への周知
都道府県等は、圏域内の市町村、精神科病院及び福祉サービス事業者等の関係機関に対して本事業を広く周知するとともに、対象者の決定、協力施設の拡充及び支援体制の充実等事業の円滑な実施を図ること。
(2)関係機関との連携
都道府県等は、対象者の円滑な地域移行を図る観点から、保健所、精神保健福祉センター、相談支援事業者、その他福祉サービス提供者、保健医療サービス事業者等と連携を図ること。また、地域体制整備コーディネーターは、4(1)イで示す事業のほか、医療観察法に基づく指定入院医療機関に入院中の対象者について、社会復帰調整官が行う退院向けた生活環境の調整に必要な協力を行うこと。
(3)精神保健福祉センター及び保健所の役割
精神保健福祉センター及び保健所は、地域移行支援を実施する地域体制整備コーディネーター及び地域移行推進員に対して、地域の社会資源等の地域移行に必要となる情報や医療機関との連携に必要なノウハウ等を提供するとともに、医療機関への働きかけを行う際などにおいて必要な協力を行うこと。
また、地域定着支援の実施にあたっても積極的な協力を行うこと。
6 報告
地域体制整備コーディネーターは、その活動について、別紙様式1により日報に記録し、さらに別紙様式2にて月単位で都道府県等にほうこくすることとする。また、都道府県等は、地域体制整備コーディネーターからの報告内容に基づき活動状況を把握するとともに、集計のうえ、翌年度4月末までに、当部精神・障害保健課あてに報告すること。
7 国の助成
国は、都道府県等がこの実施要綱に基づき実施する経費については、厚生労働大臣が別に定める「精神保健費等国庫負担(補助)交付金要綱」に基づき、毎年度予算の範囲内で国庫補助を行うことができるものとする。
*作成:松本 彩見