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独居患者のニーズをめぐる支援体制の検討

長谷川 唯
2010/08/27 第15回難病看護学会学術集会 於:山形県立保健医療大学



【研究目的】
 本研究では、家族の支援がない難病患者が地域で独居生活を送るために必要な支援内容を明らかにすることを目的とする。筆者は、2008年度から筋萎縮性側索硬化症(以下ALS)患者の在宅独居生活支援活動を行なっている。ここでは、独居患者の提示する様々なニーズに焦点をあて、それが支援体制にどのような影響を及ぼすのかを事例を通して報告する。

【研究方法】
 上述の支援活動を通して、事例検討を行なう。調査対象者は、60歳代の男性でALS患者(以下S氏)である。調査期間は、2008年4月から2009年12月までで、この間にS氏は症状の進行により気管切開手術を受け、より医療的管理が必要な身となった。なお、S氏には、研究目的・研究方法・倫理的配慮についての説明を行い、自署困難のため代筆者により署名を得た。

【結果】br>  S氏は介助のやり方が合わないと言ってヘルパーを断ることがしばしばあった。このとき、S氏は自分が望む介助のやり方を細やかに何度もヘルパーに教えてきたと主張したが、ヘルパーはそのやり方に従って介助しているはずだと主張していた。こうした対立構造が一度生じると、当事者同士の話し合いでは収拾がつかず結局介助者側が辞めるという形で決着をつけることが多かった。支援者が双方の主張を聞いたうえであいだを取り持ち和解することもあったが、それでも事態が収まらないことはあり、そのようなときは本人のニーズに応えざるを得なかった。ひとりの介助者がS氏の介助を離れることで、ほかの介助者に過剰な負担が強いられる状況を生み出すことにもなった。ALSのきめ細やかな介助ニーズに対応できるヘルパーは少なく、それを引き受ける事業所も地域には少ないからである。また、このような対立構造は他機関とのあいだでも生じており、実際に訪問看護事業所ごと退いたこともあった。

【考察】
 患者の提示するニーズ自体が応えるべきニーズであるかどうかという判断基準を、周囲はもつことができない。その結果、本人のニーズに最大限応えざるを得ない状況に陥っている。患者に家族がいる場合、周囲は調整役割を担う家族の判断に委ねることができるが、独居患者の場合、支援者の調整役割には限界があり最終的に周囲は本人のニーズを優先せざるをえない。だが、独居の難病患者が地域生活を営むための資源は現状では満足に整備されていないため、上述のように患者のニーズを優先させることが本人の在宅生活を安定させることには直接つながらない場合もある。よって、独居患者が長期的に安定した在宅生活を送れるようなしくみをつくるためには、患者本人から提示されるニーズを応えるべきニーズとしてどのように判断するかが大きな課題である。


UP:20110707 REV:
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