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「精神障害者社会復帰施設の設備及び運営に関する基準」

厚生省 20000331 厚生省令第87号

萩原 浩史 20191210  『詳論 相談支援――その基本構造と形成過程・精神障害を中心に』,生活書院,資料

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平成12年3月31日
厚生省令第87号
「精神障害者社会復帰施設の設備及び運営に関する基準」

目次

 第1章 総則(第1条−第12条)
 第2章 精神障害者生活訓練施設(第13条−第22条)
 第3章 精神障害者授産施設(第23条−第29条)
 第4章 精神障害者福祉ホーム(第30条−第34条)
 第5章 精神障害者福祉工場(第35条−第38条)
 第6章 精神障害者地域生活支援センター(第39条−第43条)
 附則


   第1章 総則

 (趣旨)
第1条 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号)第50条の2の3第1項の規定による精神障害者社会復帰施設の設備及び運営に関する基準は、この省令の定めるところによる。
第2条 精神障害者社会復帰施設は、利用者に対し、健全な環境の下で、社会福祉事業に関する熱意及び能力を有する職員による適切な処遇を行うよう努めなければならない。
2 精神障害者社会復帰施設は、利用者の意志及び人格を尊重し、常にその者の立場に立って処遇を行うよう努めなければならない。
 (構造設備の一般原則)
第3条 精神障害者社会復帰施設の配置、構造及び設備は、日照、採光、換気等の利用者の保健衛生に関する事項及び防災について十分考慮されたものでなければならない。
2 精神障害者社会復帰施設の建物(利用者の日常生活のために使用しない付属の建物を除く。)は、建築基準法(昭和25年法律第201号)第2条第9号の2に規定する耐火建築物又は同条第9号の3に規定する準耐火建築物でなければならない。
 (整備の専用)
第4条 精神障害者社会復帰施設の設備は、専ら当該精神障害者社会復帰施設の用に供するものでなければならない。ただし、利用者の処遇に支障がない場合は、この限りでない。
 (職員の専従)
第5条 精神障害者社会復帰施設の職員は、専ら当該精神障害者社会復帰施設の職務に従事する者でなければならない。ただし、利用者の処遇に支障がない場合は、この限りでない。
第6条 精神障害者社会復帰施設は、利用者に対し、適切な処遇を行うことができるよう、職員の勤務体制を定めておかなければならない。
2 精神障害者社会復帰施設は、当該精神障害者社会復帰施設の職員によって処遇を行わなければならない。ただし、利用者の処遇に直接影響を及ぼさない業務については、この限りでない。
3 精神障害者社会復帰施設は、職員に対し、その資質の向上のための研修の機会を確保しなければならない。
第7条 精神障害者社会復帰施設は、次に掲げる施設の運営についての重要事項に関する規定を定めておかなければならない。
1 施設の目的及び運営の方針
2 職員の職種、数及び職務の内容
3 利用定員
4 利用者の処遇の内容及び利用料その他の費用の額
5 施設の利用に当たっての留意事項
6 非常災害対策
7 その他施設の運営に関する重要事項
 (医療機関等との連携)
第8条 精神障害者社会復帰施設は、利用者の意向を尊重しつつ、必要に応じ、医療機関、保健所、精神障害者地域生活支援センターその他の関係機関との連絡体制を整備しなければならない。
 (地域との連携等)
第9条 精神障害者社会復帰施設は、その運営に当たっては、地域住民又はその自発的な活動等との連携及び協力を行う等の地域との積極的な交流に努めなければならない。
 (苦情処理)
第10条 精神障害者社会復帰施設は、その行った処遇に関する利用者からの苦情に迅速かつ適切に対応しなければならない。
 (非常災害対策)
第11条 精神障害者社会復帰施設は、消火設備その他の非常災害に際して必要な設備を設けるとともに、非常災害に関する具体的計画を立てておかなければならない。
2 精神障害者社会復帰施設は、非常災害に備えるため、定期的に避難、救出その他必要な訓練を行わなければならない。
 (記録の整備)
第12条 精神障害者社会復帰施設は、設備、職員及び会計に関する諸記録を整備しておかなければならない。
2 精神障害者社会復帰施設は、利用者の処遇に関する記録を整備し、その完結の日から2年間保存しなければならない。

   第2章 精神障害者生活訓練施設
 (規模)
第13条 精神障害者生活訓練施設は、20人以上の人員を利用させることができる規模を有するものでなければならない。
 (建築面積)
第14条 精神障害者生活訓練施設は、利用者1人当たり14.9平方メートル以上の建築面積を有するものでなければならない。
第15条 精神障害者生活訓練施設には、次の各号に掲げる設備を設けなければならない。
 1 居室
 2 相談室
 3 静養室
 4 食堂
 5 調理場
 6 集会室兼娯楽室
 7 浴室
 8 洗面所
 9 便所
 10 事務室
2 前項第1号の居室は、次の各基準を満たさなければならない。
 1 1の居室の定員は、2人以上とすること。
 2 地階に設けてはならないこと。
 3 利用者1人当たりの床面積は、収納設備等を除き、4.4平方メートル以上とすること。
 4 1以上の出入口は、非難上有効な空地、廊下又は広間に直接面して設けること。
3 第1項各号に掲げる設備のうち、同項第6号の集会室兼娯楽室にあっては、同項第4号の食堂と兼ねることができる。
 (職員の配置の基準)
第16条 精神障害者生活訓練施設には、次の各号に掲げる職員を置かなければならない。
 1施設長 1
 2精神保健福祉士又は精神障害者社会復帰指導員 利用者の数が39までは4以上、それ以上10又はその端数を増すごとに2を加えた数以上
 3医師 1以上
2 前項第1号の施設長及び同項第2号の精神保健福祉士又は精神障害者社会復帰指導員は、常勤でなければならない。
3 第1項第2号の精神保健福祉士又は精神障害者社会復帰指導員のうち1人以上は、精神保健福祉士でなければならない。
4 第1項第3号の医師は、精神科の診察に相当の経験を有する者でなければならない。
 (職員の資格要件)
第17条 施設長は、精神保健及び精神障害者の福祉に関する業務に5年以上従事した者又はこれと同等以上の能力を有する者であって、施設を運営する能力を有すると認められるものでなければならない。
2 精神障害者社会復帰指導員は、次の各号のいずれかに該当する者でなければならない。
 1 学校教育法(昭和22年法律第26号)に基づく大学において、心理学若しくは教育学の課程又は社会福祉に関する科目を納めて卒業した者
 2 学校教育法の規程による高等学校若しくは中等教育学校を卒業した者若しくは通常の課程による12年の学校教育を修了した者(通常の課程以外の課程によりこれに相当する学校教育を修了した者も含む。)又は文部大臣がこれと同等以上の資格を有すると認定した者であって、2年以上精神保健及び精神障害者の福祉に関する業務に従事したもの
 3 前2号に掲げる者のほか、精神保健及び精神障害者の福祉に関し相当の学識経験を有すると認められる者
 (利用者の処遇に関する計画)
第18条 精神障害者社会復帰施設は、利用者について、その心身の状況及び病歴、その置かれている環境、その者及びその家族の希望等を勘案し、その者の同意を得て、その者の処遇に関する計画を作成しなければならない。
2 精神障害者社会復帰施設は、利用者の処遇に関する計画について、利用者の処遇の状況等を勘案し、必要な見直しを行わなければならない。
第19条 精神障害者社会復帰施設は、利用者について、社会復帰の促進及び自立と社会経済活動への参加の促進に資するよう、その者の心身の状況等に応じて、その者の処遇を妥当適切に行わなければならない。
2 利用者の処遇は、利用者の処遇に関する計画に基づき、漫然かつ画一的なものとならないよう配慮して、行わなければならない。
3 精神障害者社会復帰施設の職員は、利用者の処遇に当たっては、懇切丁寧を旨とし、利用者又はその家族に対し、処遇上必要な事項について、理解しやすいように説明を行わなければならない。
4 精神障害者社会復帰施設は、利用者の処遇に当たっては、当該利用者又は他の利用者等の生命若しくは身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束その他利用者の行動を制限する行為を行ってはならない。
第20条 精神障害者社会復帰施設は、利用者が生活習慣を確立するとともに、社会生活への適応性を高めるようあらゆる機会を通じて生活指導を行わなければならない。
2 精神障害者社会復帰施設は、教養娯楽設備等を備えるほか、適宜利用者のためのレクリエーション行事を行わなければならない。
3 精神障害者社会復帰施設は、常に利用者の家族との連携を図るとともに、利用者とその家族との交流等の機会を確保するよう努めなければならない。
 (健康管理)
第21条 精神障害者生活訓練施設の医師は、利用者の主治医と相互に密接な連絡を取り合い、常に利用者の健康状況に注意し、必要に応じて健康保持のための適切な措置を採らなければならない。
 (衛生管理)
第22条 精神障害者社会復帰施設は、利用者の使用する食器その他の設備又は飲用に供する水について、衛生的な管理に努め、又は衛生上必要な措置を講じなければならない。
   
     第3章 精神障害者授産施設
 (規模)
第23条 精神障害者授産施設は、次の各号の区分に従い、それぞれ当該各号に規定する規模を有する者でなければならない。
 1 通所による利用者の身を対象とする施設(以下「通所施設」という。) 20人以上
 2 その他の施設 20人以上30人以下
 (建築面積)
第24条 精神障害者授産施設は、次の各号の区分に従い、それぞれ当該各号に規定する建築面積を有するものでなければならない。
 1 通所施設 利用者1人当たり15.8平方メートル以上
 2 その他の施設 利用者1人当たり 23.5平方メートル以上
 (設備の基準)
第25条 精神障害者通所授産施設には、次の各号に掲げる設備を設けなければならない。ただし、通所施設にあっては、第2号、第3号、第6号及び第8号に掲げる設備を設けることができる。
 1 作業室又は作業場
 2 居室
 3 相談室
 4 静養室
 5 食堂
 6 調理場
 7 集会室兼娯楽室
 8 浴室
 9 洗面所
 10 便所
 11 事務室
2 前項各号に掲げる設備の基準は、次のとおりとする。
 1 作業室又は作業場
   作業に従事する者の安全を確保するための設備を設けること。
 2 居室
   イ 1の居室の定員は、2人以上とすること。
   ロ 地階に設けてはならないこと。
   ハ 利用者1人当たりの床面積は、収納設備等を除き、4.4平方メートル以上とすること。
   ニ 1以上の出入口は、避難上有効な空地、廊下又は広間に直接面して設けること。
3 第1項各号に掲げる設備のうち、同項第7号の集会室兼娯楽室にあっては、同項第5号の食堂と兼ねることができる。
 (職員の配置の基準)
第26条 精神障害者授産施設には、次の各号に掲げる職員を置かなければならない。
 1 施設長 1
 2 精神保健福祉士、作業療法士又は精神障害者社会復帰指導員 利用者の数が39までは4以上、それ以上10又はその端数を増すごとに2を加えた数(通所施設にあっては、1を加えた数)以上
 3 医師 1以上
2 前項第1号の施設長及び同項第2号の精神保健福祉士、作業療法士又は精神障害者社会復帰指導員は、常勤でなければならない。ただし、作業療法士及び精神障害者社会復帰指導員のうち1人は、非常勤とすることができる。
3 第1項第2号の精神保健福祉士、作業療法士又は精神障害者社会復帰指導員のうち1人以上は精神保健福祉士、1人以上は作業療法士でなければならない。
4 第16条第4項の規定は、精神障害者授産施設について準用する。
 (授産品目)
第27条 精神障害者授産施設が与える職業(以下「職業」という。)の項目は、地域の実情、製品の需給状況等を考慮して選定するとともに、できるだけ多様な工程を用意し、利用者の作業能力及び適正に配慮しなければならない。
2 精神障害者授産施設は、職業に従事する者の作業時間、作業量等がその者の過重な負担とならないよう配慮しなければならない。
 (工賃の支払い)
第28条 精神障害者授産施設は、職業に従事している者に、事業収入から事業に必要な経費を控除した額に相当する金額を工賃として支払わなければならない。
 (準用)
第29条 第17条から第22条までの規程は、精神障害者授産施設について準用する。
   
     第4章 精神障害者福祉ホーム
 (規程)
第30条 精神障害者福祉ホームは、10人以上の人員を利用させることができる規模を有するものでなければならない。
 (建築面積)
第31条 精神障害者福祉ホームは、利用者1人当たり23.3平方メートル以上の面積を有するものでなければならない。
 (設備の基準)
第32条 精神障害者福祉ホームには、次の各号に掲げる設備を設けなければならない。
 1 居室
 2 集会室兼娯楽室
 3 調理室
 4 浴室
 5 洗面所
 6 便所
 7 管理人室
2 前項第1号の居室は、次の基準を満たさなければならない。
 1 1の居室の定員は、原則1人以上とすること。
 2 地階に設けてはならないこと。
 3 利用者1人当たりの床面積は、収納設備及び調理設備等を除き、6.6平方メートル以上とすること。
 4 1以上の出入口は、避難上有効な空地、廊下又は広間に直接面して設けること。
 (職員の配置の基準)
第33条 精神障害者福祉ホームには、次の各号に掲げる職員を置かなければならない。
 1 管理人 1
 2 医師 1以上
2 前項第1号の管理人は、施設を運営する能力を有すると認められる者で、かつ、常勤でなければならない。
3 第16条第4項の規定は、精神障害者福祉ホームについて準用する。
 (準用)
第34条 第18条から第22条までの規程は、精神障害者福祉ホームについて準用する。
   
     第5章 精神障害者福祉工場
第35条 精神障害者福祉工場は、20人以上の人員を利用させることができる規模を有するものでなければならない。
 (設備の基準)
第36条 精神障害者福祉福祉工場には、次の各号に掲げる設備を設けなければならない。
 1 作業室
 2 更衣室
 3 シャワー室
 4 休憩室
 5 食堂
 6 相談室
 7 静養室
 8 医務室
(職員の配置の基準)
第37条 精神障害者福祉工場には、次の各号に掲げる職員を置かなければならない。ただし、食事の提供を行わない場合は、第4号の栄養士を置かなければならない。
 1 施設長 1
 2 精神保健福祉士又は精神障害者社会復帰指導員 利用者の数が29までは3以上、それ以上10又はその端数を増すごとに1を加えた数以上
 3 看護婦 1以上
 4 栄養士 1以上
 5 医師 1以上
 6 事務員 1以上
2 前項第1号の施設長は、精神障害者の社会復帰に理解と熱意を有し、施設を運営する能力を有するものと認められる者でなければならない。
3 第1項第2号の精神障害者社会復帰指導員は、その指導する業務について相当の知識及び能力を有する者でなければならない。
4 第1項第1号の施設長、同項第2号の精神保健福祉士又は精神障害者社会復帰指導員及び同項第4号の栄養士は、常勤でなければならない。ただし、精神障害者社会復帰指導員のうち1人は、非常勤とすることができる。
5 第16条第3項及び第4項の規定は、精神障害者福祉工場について準用する。
 (準用)
第38条 第17条第2項及び第18条から第22条までの規定は、精神障害者福祉工場について準用する。
   
     第6章 精神障害者地域生活支援センター
第39条 精神障害者地域生活支援センター次の各号に掲げる設備を設けなければならない。
 1 相談室
 2 静養室
 3 談話室
 4 食堂
 5 調理場
 6 地域交流活動室兼訓練室
 7 便所
 8 洗面所
 9 事務室
2 前項各号に掲げる設備のうち、同項第2号の静養室にあっては同項第1号の相談室と、同項第4号の食堂にあっては同項第3号の談話室とそれぞれ兼ねることができる。
 (職員の配置基準)
第40条 精神障害者地域生活支援センターには、次の各号に掲げる職員を置かなければならない。
 1 施設長 1
 2 精神保健福祉士 1以上
 3 精神障害者社会復帰指導員 3以上
2 前項各号に掲げる職員は、常勤でなければならない。ただし、精神障害者社会復帰指導員のうち2人は、非常勤とすることができる。
 (事業計画等)
第41条 精神障害者地域生活支援センターは、年間及び月間の事業計画を定めなければならない。
2 精神障害者地域生活支援センターは、職員の勤務時間を調整することにより、適切な処遇を行うことができるよう努めなければならない。
 (利用者の登録)
第42条 精神障害者地域生活支援センターは、利用者に対し、当該施設の利用に当たって、あらかじめ利用の登録をさせなければならない。ただし、利用者の意志に反して登録を強制してはならない。
 (準用)
第43条 第17条から第20条及び第22条までの規定は、精神障害者地域生活支援センターについて準用する。
 
   附 則
  
 (施行期日)
第1条 この省令は、平成12年4月1日から施行する。
 (経過措置)
第2条 この省令の施行の際現に存する精神障害者社会復帰施設については、第13条、第23条、第30条及び第35条の規定は、当分の間、適用しない。
第3条 この省令の施行の際現に存する精神障害者社会復帰施設の建物(基本的な設備が完成しているものを含み、この省令の施行の後に増築され、又は全面的に改築された部分を除く。次条においても同じ。)について第15条第2項第1号又は第25条第2項第2号イの規程を適用する場合においては、これらの規定中「2人」とあるのは、「4人」とする。
第4条 この省令の施行に際現に存する精神障害者社会復帰施設の建物については、第15条、第25条、第32条、第36条及び第39条の規定は、平成17年3月31日までの間は、適用しない。
第5条 平成17年3月31日までの間は、第16条第1項第2号、第26条第1項第2号、第37条第1項第2号又は第40条第1項第2号の規定を適用する場合においては、これらの規定中「精神保健福祉士」とあるのは、「精神保健福祉士又は精神障害者の保健及び福祉に関する専門的知識及び技術をもって、精神病院その他の医療施設において精神障害の医療を受け、又は精神障害者の社会復帰の促進を図ることを目的とする施設を利用している者の社会復帰に関する相談に応じ、助言、指導、日常生活への適応のために必要な訓練その他の援助を行うことを業とする者」とする。



*作成:坂本 唯
UP:20191129 REV:20200719
萩原 浩史  ◇『詳論 相談支援』  ◇精神障害/精神医療  ◇「社会復帰」  ◇全文掲載

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