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「精神障害者社会復帰施設運営要綱」

厚生省 20000331 障第247号

萩原 浩史 20191210  『詳論 相談支援――その基本構造と形成過程・精神障害を中心に』,生活書院,資料

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last update:20200719


障第247号
平成12年3月31日
都道府県知事
指定都市市長 殿
厚生省大臣官房障害保健福祉部長


精神障害者社会復帰施設の設備及び運営に関する基準の施行について

 精神保健及び精神障害者福祉に関する法衣率等の一部を改正する法律(平成11年法律65号)による改正後の精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に基づき創設することとなった精神障害者社会復帰施設の設備及び運営に関する基準(平成12年厚生省令第87号)については、本時付で公布され、平成12年4月1日から施行されるところであるが、その施行に当たっては、下記に掲げる事項に十分留意の上、関係制度の円滑な実施が遺憾なきを期されたい。
 なお、精神障害者社会復帰施設における設備及び運営については、この基準によるほか、別紙のとおり「精神障害者社会復帰施設運営要綱」を定め、平成12年4月1日から実施することとしたので、施設の適正かつ円滑な運営を図られたい。
 これらについて、貴職におかれては、貴管下市町村を含め関係者、関係団体に対する周知方につき配慮されたい。
 おって、これに伴い、昭和63年2月17日健医発第143号「精神障害者社会復帰施設の設置及び運営について」、平成8年5月10日健医発第573号「精神障害者地域生活支援事業実施要綱」及び昭和63年5月13日健医精発第17号「精神障害者社会復帰施設の設置及び運営の留意事項」については廃止する。


「精神障害者社会復帰施設運営要綱」

第1 精神障害者の社会復帰施設の処遇について
 精神障害者社会復帰施設の設備及び運営に関する基準(平成12年厚生省令第87号。以下「設備運営基準」という。)に規定する処遇とは、利用者の依頼や相談に応じて、助言、指導、訓練その他の利用者に必要な援助を提供することである。本要綱における「援助の提供」の用語は、精神障害者社会復帰施設の在り方に鑑みて、設備運営基準おける「処遇」の用語に代えて使用するものである。

第2 「顧問医」について
 設備運営基準第16条第1項第3号、第26条第1項第3号、第33条第1項第2号及び第37条第1項第5号に規定する医師(以下「医師」という。)は、昭和63年2月17日健医発第143号「精神障害者社会復帰施設の設置及び運営について」において規定された「顧問医」に当たるものである。
 従前、「顧問医」は、利用者の医学上の相談に応じるため、利用者の心身の状況を把握し、必要に応じて社会復帰施設の長に助言を行う、精神科の診療に相当の経験を有する非常勤の医師とされていたが、今後においても、医師の期待される役割は、「顧問医」に期待される役割と同様である。

第3 精神障害者社会復帰施設の設置
 医療法人等が精神障害者社会復帰施設を病院の敷地内に設置する場合にあっては、施設の独立性を保つため、病院と施設の境界及び施設専用の出入り口を設けるものとする。

第4 精神障害者社会復帰施設の職員
 1 精神障害者社会復帰施設の職員のうち利用者に対する援助の提供に係る業務に従事する者は、精神障害者の福祉に熱意のある者であって、できる限り精神障害者の福祉の理論及び実際について訓練を受けたものとする。
 2 精神障碍者社会復帰施設の長は、職員の管理並びに業務の実施状況の把握及び管理を一元的に行うものとする。
 3 精神障害者社会復帰施設の長は、設備運営基準において職員に係る事項を遵守させるために必要な指揮命令を行うものとする。

第5 秘密の保持、利益供与等の禁止
 1 精神障害者社会復帰施設の職員は、正当な理由がなく、その業務上知り得た利用者又はその家族の秘密を漏らしてはならないものとする。
 2 精神障害者社会復帰施設は、職員であった者が、正当な理由がなく、その業務上知り得た利用者又はその家族の秘密を漏らすことがないよう、必要な措置を講じなければならない。
 3 精神障害者社会復帰施設は、利用者の援助の提供に係る事業者又はその職員が利用者に当該社会復帰施設を紹介することの対償として、これらの者に対し金品その他財産上の利益を供与してはならないものとする。
 4 社会復帰施設は、当該社会復帰施設の利用者を紹介することの対償として、利用者の援助の提供に係る事業者又はその職員から金品その他財産上の利益を収受してはならないものとする。

第6 利用の方法
 1 精神障害者社会復帰施設は、あらかじめ利用申込者又はその家族に対し、運営規定の概要、職員の勤務の体制その他利用者の援助の提供に係る重要事項を記した文書を交付して説明を行い、当該援助の提供の開始について利用申込者の同意を得、書面によって契約を締結するものとする。
 2 精神障害者社会復帰施設は、利用の申し込みに当たって、利用者に対し、主治医により当該施設利用時の留意事項等が記載された別記様式1による意見書の提出を求めるものとする。
 3 精神障害者社会復帰施設は、利用の開始に際し、利用者の意向、心身の状況、環境及び病歴等の把握に努め、適切な援助の提供を行うこととし、正当な理由がなく、援助の提供を行うことを拒んではならないものとする。
 4 精神障害者社会復帰施設は、利用の終了に際し、利用者からの求めがある場合には、地域生活支援センター等関係機関に対して利用者に関する情報を提供し、密接に連携するよう努めるものとする。
 5 精神障害者社会復帰施設は、利用の開始に際し、2の意見書の写しを添えて、速やかに当該施設の所在地を管轄する保健所長にその開始を別記様式2により報告するものとする。
 6 精神障害者社会復帰施設は、利用の終了に際し、速やかに当該施設を管轄する保健所長にその終了を別記様式3により報告するものとする。
 7 精神障害者社会復帰施設を利用している利用者の状況について、当該施設の所在地を管轄する保健所長に年に一回、別器様式4により報告するものとする。

第7 利用者の負担
 1 精神障害者社会復帰施設は、当該施設の維持管理等に必要な経費として当該施設が定めた利用料を利用者から徴収することができる。
 2 精神障害者社会復帰施設は、飲食物費、日用品費、光熱水量その他個人に係る費用を実費として利用者から徴収することができる。
 3 精神障害者社会復帰施設は、利用料を徴収する場合、利用者個人の負担能力に配慮するよう努めるものとする。

第8 利用期間
 1 精神障害者生活訓練施設の利用期間は、原則として2年以内とする。ただし、設備運営基準に規定する医師(以下「顧問医」という。)等の意見を聞いた結果、利用期間の延長が真にやむを得ないものと認められる場合は、1年を超えない範囲内で、1回に限り利用期間を延長できるものとする。
 2 精神障害者授産施設の利用期間は、利用者各人の作業能力、顧問医等の意見等を勘案して、当該施設において決定するものとする。
 3 精神障害者福祉ホームの利用期間は、原則として2年以内とする。ただし、顧問医等の意見を聞いた結果、利用期間の延長が認められる場合は、利用期間を延長できるものとする。

第9 その他運営に関する事項
 1 精神障害者社会復帰施設は、施設及び居室の定員を超えて、利用者に利用させてはならないものとする。ただし、災害その他のやむを得ない事情がある場合は、この限りではない。
 2 精神障害者社会復帰施設は、当該施設の見えやすい場所に、運営規定の概要、職員の勤務の体制、利用料その他の援助の提供に関する重要事項を掲示するものとする。
 3 精神障害者社会復帰施設は、当該施設について広告をする場合は、その内容が虚偽又は誇大なものであってはならないものとする。
 4 精神障害者社会復帰施設は、利用者に対する援助の提供の内容その他の施設の運営に関する情報を開示し、運営の透明性を確保するよう努めるものとする。
 5 精神障害者社会復帰施設は、受付者を明確にすること、施設内に窓口を設置すること等、利用者の苦情処理に対する態勢を整えるものとする。
 6 精神障害者社会復帰施設は、利用者に援助を提供するに当たって事故が発生した場合は、速やかに保健所等関係機関及び利用者の家族等に連絡を行う等必要な措置を講ずるとともに、利用者及びその家族に対して誠実に応対するものとする。
 7 精神障害者社会復帰施設は、当該施設が本来的な業務として行う事業の会計をその他の事業の会計と区分するものとする。
 8 精神障害者社会復帰施設は、利用者に対する援助の提供に当たって、常に利用者の心身の状況、環境等の適確な把握に努め、利用者及びその家族に対して相談に応じるとともに、必要な助言、指導等を行うよう努めるものとする。また、利用者に対して、生活技術の習得、対人関係、通院等に関して必要な助言、指導等を行うとともに、利用者相互間の交流に配慮するよう努めるものとする。
 9 精神障害者社会復帰施設は、施設において感染症が発生し、又はまん延しないように必要な措置を講じるよう努めるものとする。
 10 精神障害者社会復帰施設は、食事の提供を行う場合にあっては、利用者の心身の状況及び嗜好を考慮したものとするとともに、適切な時間に行うものとする。

第10 精神障害者ショートステイ施設の運営
 精神障害者生活訓練施設においては、精神障害者ショートステイ施設(以下「ショートステイ施設」という。)の運営を行うことができるものとする。
 1 利用対象者は、在宅の精神障害者であって、家族が疾病、冠婚葬祭、事故等の事由により、在宅における援助の提供が一時的に困難となったものとする。
 2 ショートステイ施設の利用に当たっては、施設の特性に鑑み、簡便な方法で利用希望者が利用対象者として適当であるか同課の確認を行い、迅速に契約に応ずるものとする。
 3 利用期間は、7日以内とする。ただし、ショートステイ施設を運営する生活訓練施設の長は、当該生活訓練施設の顧問医の意見等を聴いた結果、利用期間の延長が真に止むを得ないものと認める場合には、必要最小限の範囲で延長することができるものとする。
 4 ショートステイ施設は、利用者の意向を尊重しつつ、必要に応じ、利用者の居住地を管轄する保健所、利用者の主治医等との連絡調整を行うものとする。

第11 経費の補助
 国は、地方公共団体又は非営利法人が設置する精神障害者社会復帰施設の整備又は運営に要する経費について、別に定める国庫補助交付基準により補助するものであること。



*作成:松本 彩見
UP:20191129 REV:20200719
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