SPSNニュースレター・No.9
19971106
last update: 20170427
Social Policy Studies Network
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
◇ ◇
◇ SPSNニュースレター・No.9 (1997/11/6)◇
◇ ◇
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
発行:SPSN (Social Policy Studies Network) 事務局
〒113東京都文京区本郷7-3-1 東京大学文学部社会学(武川)研究室気付
Fax: 03-3815-6672, Email: VZQ12171@スパム対策niftyserve.or.jp
URL: http://www.l.u-tokyo.ac.jp/~takegawa/spsn.index.html
∞∞∞∞∞∞∞∞∞
第8回研究会の報告
∞∞∞∞∞∞∞∞∞
◆1997年9月27日(土)午後,第8回研究会が武蔵大学にて開催されました.報告の
概要は以下の通りです.
(8-1) 多様化する就業形態−−日本と欧米諸国のパート労働を中心として
報告者:上林千恵子(法政大学)
討論者:藤村正之(武蔵大学)
就業形態の多様化の状況を,日本と欧米諸国,とりわけイギリスとの比較の上か
ら考察し,それがもたらされた背景について触れた.
日本の場合,非正規従業員の割合は雇用者の約2割に達し,労働市場で一定の影
響力を持つ.しかもその8割弱が女性であり,周辺労働者としての女性労働者の増
大が就業形態多様化の中味でもある.雇用形態としてはパートタイマーがもっとも
多く,パートの増大はこれまで就労していなかった短時間就業の主婦の労働市場参
入によってもたらされているが,正社員と同じ労働時間でありながらパートという
身分に止められているフルタイムパートの存在も無視できない.
一方イギリスの場合もパート労働は家庭との両立を考える主婦によって担われて
いるものの,法律上,正社員との区別は週30時間未満と決められていて,それを超
える場合は正社員のフルタイマーと同等の権利が発生する.イギリスは他のEC諸
国に比較してパート労働者の保護規定が全く緩やかで,他の国は規制緩和の手本と
してイギリスの労働市場を見ているが,日本はそのイギリスと比較してもパート労
働者に対する保護と規制はまだ始まったばかりの状態である.
就業形態多様化の背景としては,先進国に共通する点として産業構造の第3次産
業化を指摘できるが,欧州各国の場合は特に労働市場の柔軟化政策の一環として,
また日本の場合は日本的雇用慣行の維持の点からの積極的にその進展が図られてい
る.
(8-2) 社会保障と市民の意識
−−公的部門の役割に対する意識を中心とした調査研究−−
報告者:小出昭太郎(東京大学・健康社会学)
討論者:野呂芳明(東京学芸大学)
社会保障分野を中心に,社会政策の分野における公的部門の役割に対する市民の
意識(福祉国家観)を,既存の調査に準じた3つの質問で調べた.(1)公的負担を増
やしても社会政策を充実させるか,社会政策が充実しなくとも公的負担を減らすか,
(2)老後の生活費の望ましいまかない方,(3)介護の望ましい担い手,について尋ね
た結果を,公的部門志向と反公的部門志向に分類した.この意識を規定する要因と
して,価値観(人生価値観と分配公正観),個人的な利害関心,政治意識の3つを
設定した.(1)は主に人生価値観と関連しており,(2)(3)は主に個人的な利害関心,
政治意識と関連していた.また,(2)と(3)の質問の間の相関はやや強かったが,(1)
と(2),(1)と(3)の間の相関は弱かった.世代によって公的部門の役割に対する意識
に差はなかったが,その要因には差があり,問題が身近になると思われる高年層で
は個人的な利害関心との関連が強かった.
討論では,3つの質問の間の相関が低かったことから,3つの質問は福祉国家観
を構成しているのか,そもそも福祉国家観とはどういうものか,といった疑問が提
起された.「福祉国家観」はいくつかの独立した次元から成っており,3つの質問
は福祉国家観のそれぞれ異なる側面をはかっている,という解釈が考えられた.ま
た,公的部門志向と反公的部門志向の二項対立を考えることの適切さに疑問が出さ
れた.
◆参加者は以下の23名でした.順不同.
城戸喜子(慶應義塾大学),小渕高志(明星大学),野呂芳明(東京学芸大学),
深谷太郎(東洋大学),森川美絵(東京大学・相関社会科学),小林理(明治学院
大学),村越功司(明治学院大学),金子充(明治学院大学),遠藤かおり(東北
大学),田村誠(東京大学・健康社会学),武川正吾(東京大学・社会学),鍋山
祥子(中央大学),松村真木子(お茶の水女子大学),許麗津(一橋大学),上林
千恵子(法政大学),三重野卓(山梨大学),藤村正之(武蔵大学),小坂啓史
(武蔵大学),田渕六郎(東京都立大学),三枝麻由美(千葉大学),高木俊之
(専修大学),小出昭太郎(東京大学),山本武志(東京大学)
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
第9回研究会のご案内
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
日時: 1997年11月22日(土) 13:00〜17:00
場所: 東京大学・法文1号館 216番教室
参加費: 300円
1 「工業化と人口転換−−先進20カ国出生率のイングルハート仮説による分析」
報告者:高木 俊之(専修大学)
討論者:三重野 卓(山梨大学)
2 「イギリスのコミュニティケア改革について」
報告者:平岡 公一(お茶の水女子大学)
討論者:中野 いく子(国際医療福祉大学)
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
第10回研究会 1998年1月下旬開催予定
第11回研究会 1998年3月下旬開催予定
第12回研究会 1998年5月下旬開催予定
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
ホームページを構築中です
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
◆SPSN Forum
現在,インターネット上で,SPSNのホームページを構築中です.ご意見を事務局ま
でお寄せ下さい.また,ホームページを開設している方もお知らせ下さい.リンク
をはります.
http://www.l.u-tokyo.ac.jp/~takegawa/spsn.index.html
◆Nifty Serve上のパティオも継続中です.
Nifty Serve上でgo patioで接続できます.ニュースレターのバックナンバーや研
究会のアブストラクトを見ることもできます.IDはVZQ12171です.パスワードは電
子メイルで事務局までお問い合わせ下さい.
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
事務局からのお知らせ
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
◆学会シーズンと重なったため,送信が遅くなりました.申し訳ありません.
◆ニュースレターの送付方法
電子メイル・アドレスおよび/またはファックス番号を登録いただいている方には,
第七号から電子メイルおよび/またはファックスにて送付しています.電子メイルは
インターネット経由の場合,ホスト不明,ユーザー不明でときどき届かないことが
あるようです(ニフティ・サーブの場合はとくに問題はありません).不着の可能
性のある場合はお知らせ下さい.
◆ニュースレターの送付を新たに希望する方は事務局までご連絡下さい.また,不
要な方も同様に願います.
◆研究会の運営について意見がありましたら,事務局までお知らせ下さい(報告者
については自薦他薦いずれも可).
◆ニュースレターで流したい情報(例えば,共同研究者の募集,自著の紹介,研究
会の案内,等々,その他,社会政策研究に関することなら何でも)がありましたら,
事務局までEmail(バイナリー形式ではなくテキスト形式)でお知らせ下さい.
◆現在,運営委員会の構成は以下のようになっています.
下平好博(明星大学),武川正吾(東京大学・社会学),立岩真也(信州大学),
田村誠(東京大学・健康社会学),平岡公一(お茶の水女子大学),三重野卓(山
梨大学),山田昌弘(東京学芸大学)
同報受信者:(略)
REV: 20170427