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柳澤 壽男

やなぎさわ・ひさお
1916/02/24〜1999/06/16

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last update:20180531

■新着

◆杉浦 良 i2019 インタビュー 2019/11/08 聞き手:立岩真也 於:徳島市・阿波観光ホテル ※

■略歴

 日本の映画監督。群馬県佐波郡玉村町出身。障害児の生活を追った記録映画で知られる。
 松竹京都撮影所に入社し劇映画『安來ばやし』(1940)で監督デビューしたが、亀井文夫の『小林一茶』(1941)に感銘を受け記録映画に転向。戦後から高度成長期にかけ日本映画社や岩波映画などで多くの記録映画・PR映画を演出した。
 晩年に企業宣伝の仕事を辞め、『夜明け前の子どもたち』から『風とゆききし』までの「福祉映画5部作」の自主製作を始めた。障害者を通して人間が自由に生きることとは何かを問う作品群は、山形国際ドキュメンタリー映画祭などで高い評価を受け、今も観客に感動を与え続けている。看護婦をテーマとした『ナース・キャップ』に取り組んでいた最中の1999年6月16日、83歳で急逝した。
 小川紳介、土本典昭と並ぶドキュメンタリーの巨匠として知る人ぞ知る柳澤だが、その業績は正当に評価されてこなかった。松竹の監督として出発した柳澤は、『どこかで春が』などのフィクションだけでなく、記録映画やPR映画、自主製作福祉映画でもスタジオで培った演出技法を手放すことはなかった。それらの作品群には日本映画の戦後史がそのまま詰まっているのであり、その意味でも柳澤を単なる企業PR映画の監督あるいはドキュメンタリーの監督と定義することはできない。
 詳細は下記参照。
https://ja.wikipedia.org/wiki/柳澤壽男

なお、インターネットでは「柳澤寿男」と表記されることもあるが、同姓同名かつ同表記の音楽家・指揮者がいる。 音楽家・指揮者の「柳澤寿男」は「やなぎさわ・としお」である。

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■書籍

◆岡田 秀則・浦辻 宏昌 編 20180210 『そっちやない、こっちや――映画監督・柳澤壽男の世界』,新宿書房,416p.  ISBN-10: 4880084735 ISBN-13: 978-4880084732 3800+税  [amazon][kinokuniya] ※
『そっちやない、こっちや――映画監督・柳澤壽男の世界』表紙

◆neoneo 編 20170707 『neoneo#09[2017 Summer]完全保存版「いのちの記録 障がい・難病・介護・福祉」』,neoneo編集室,144p.  ISBN-10: 4906960081 ISBN-13: 978-4906960088 1000円+税  [amazon][kinokuniya] ※
『neoneo#09[2017 Summer]完全保存版「いのちの記録 障がい・難病・介護・福祉」』

詳細は「映像資料リスト」を参照。

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■福祉映画5部作

◆『夜明け前の子供たち』(1968年/116〔120〕分/白黒/デジタル上映)
製作=国際短篇映画社
企画:財団法人大木会、心身障害者福祉問題総合研究所
脚本:秋浜悟史
監督:柳澤壽男
撮影:瀬川順一
解説:植田譲
1963年に開設された滋賀県の重症心身障害児療育施設「びわこ学園」の子どもたちと職員たちの記録。単なる医療でもなく単なる教育でもない“療育”の試みの貴重な記録であり、障害者の記録映画に取り組んだ柳澤の原点。職員やボランティアと一緒にプールを作る過程で少しずつ変わっていく子どもたちの姿が生き生きと描かれる。

◆『ぼくのなかの夜と朝』(1971年/96〔100〕分/カラー/デジタル上映)
製作=社団法人西多賀ベッドスクール後援会
製作:今野正己、浮田洋一
脚本・構成:大沼鉄郎
監督:柳澤壽男
撮影:石井尋成、秋山洋、長田勇
監修:近藤文雄
進行性筋萎縮症(筋ジストロフィー)治療に最も早く取り組んだ仙台市西多賀病院で生活する130人の子どもたちの3年間を追った記録で、子どもたちの詩とともに、不治の病に冒された人間の生きる意味や学ぶ意味を問う。本作を作るにあたり、厚生省や企業からの製作費拠出を断られた柳澤は、同窓会や教会など様々な名簿を集め、55,000通もの手書きの趣意書を郵送、3年間で2,500万円を集めた。
cf. 『ぼくのなかの夜と朝』

◆『甘えることは許されない』(1975年/105〔105〕分/カラー/デジタル上映)
脚本:厚木たか
製作・監督:柳澤壽男
撮影:坂本力康
音楽・録音:菊地進平
ナレーター:久米明
編集:青木千恵
監修:近藤文雄
障害者が働きながら学ぶ仙台市の西多賀ワークキャンパスに2年間密着、車椅子や松葉杖の人たちが働くことに生き甲斐を見いだす姿を通して労働の本質に迫った。労働力不足解消のため自治体と企業が福祉工場を建て障害者を働かせるというあり方、自治体による障害者の要望の無視など、様々な問題点もあぶりだされる。

◆『そっちやない、こっちや――コミュニティケアへの道』(1982年/110〔113〕分/カラー/デジタル上映)
製作=記録映画 コミュニティー・ケアへの道 製作委員会
企画:伊藤方文
監督・構成:柳澤壽男
題字:沙羅千春
撮影:塩瀬申幸
スチール:小林茂
解説:伊藤惣一
★山路ふみ子映画賞福祉賞
愛知県知多市の療育グループの2年間の記録で、障害者にとってのコミュニティ・ケア=地域福祉とは何かを考える。新しい共同作業所「ポパイノイエ」を作るにあたり、障害者自らが設計図から改装作業まで参加し、初めての月給を分配するまでを丁寧に追う。当事者の自発的意思を尊重することでしか福祉は実現しないことを力強く表現した一作。

◆『風とゆききし』(1989年/155〔154〕分/カラー/デジタル上映)
製作=財団法人 盛岡市民福祉バンク
製作・監督:柳澤壽男
撮影:瀬川順一、瀬川浩、柳田義和
助監督・スチール:小林茂
解説:伊藤惣一
★キネマ旬報文化映画10位
★日本映画ペンクラブ3位
1970年代にリサイクルと在宅福祉をドッキングさせた障害者福祉運動を始め、その後「いきいき牧場」を開設した盛岡市民福祉バンクの活動を4年間追った作品。障害者と健常者がともに生き生きと暮らす共和国の実現を夢見た柳澤だったが、障害者の意見に耳を貸さない職員とボランティアに幻滅、組織が作り出す支配関係や権力の腐敗などに直面した。

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■戦後映画史を生きる 柳澤寿男監督特集

期間:2018年6月9日(土)〜6月22日(金)
会場:第七藝術劇場(06-6302-2073)(http://www.nanagei.com/
上映作品(全作品デジタル上映)
『夜明け前の子供たち』(1968年/116分)
『ぼくのなかの夜と朝』(1971年/96分)
『甘えることは許されない』(1975年/105分)
『そっちやない、こっちや――コミュニティケアへの道』(1982年/110分)
『風とゆききし』(1989年/155分)
http://www.nanagei.com/movie/data/1254.html

6/09(土) 10:00〜12:35 『風とゆききし』(155分)
6/10(日) 10:00〜11:50 『そっちやない、こっちや』(110分)
6/11(月) 10:00〜11:45 『甘えることは許されない』(105分)
6/12(火) 10:00〜11:36 『ぼくのなかの夜と朝』(96分)
6/13(水) 10:00〜11:56 『夜明け前の子どもたち』(116分)
6/14(木) 10:00〜12:35 『風とゆききし』(155分)
6/15(金) 10:00〜11:50 『そっちやない、こっちや』(110分)
6/16(土) 10:00〜11:56 『夜明け前の子どもたち』(116分)*トークあり!
6/17(日) 10:00〜11:45 『甘えることは許されない』(105分)
6/18(月) 10:00〜11:36 『ぼくのなかの夜と朝』(96分)
6/19(火) 10:00〜11:50 『そっちやない、こっちや』(110分)
6/20(水) 10:00〜11:45 『甘えることは許されない』(105分)
6/21(木) 10:00〜11:36 『ぼくのなかの夜と朝』(96分)
6/22(金) 10:00〜11:56 『夜明け前の子どもたち』(116分)

大阪の後は神戸、京都でも企画中です。よろしくお願いします。

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■戦後映画史を生きる 柳澤壽男監督特集

 小川紳介、土本典昭と並ぶドキュメンタリーの巨匠として知る人ぞ知る柳澤だが、その業績は正当に評価されてこなかった。松竹の監督として出発した柳澤は、『どこかで春が』などのフィクションだけでなく、記録映画やPR映画、自主製作福祉映画でもスタジオで培った演出技法を手放すことはなかった。それらの作品群には日本映画の戦後史がそのまま詰まっているのであり、その意味でも柳澤を単なる企業PR映画の監督あるいはドキュメンタリーの監督と定義することはできない。
 本特集では現時点で上映可能な作品を網羅。あらゆる手法やスタイルが同居する重層的な映画作家・柳澤壽男の全貌に迫る!

期間:2018年2月3日(土)〜2月16日(金)
会場:シネマヴェーラ渋谷(http://www.cinemavera.com/
上映作品:http://www.cinemavera.com/preview.php?no=201


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*作成:北村 健太郎
UP:20180222 REV:20180531, 20191228
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