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Wiseman, Frederic
フレデリック・ワイズマン



■人物紹介

1930年、ボストン生まれ。法律を学び、イエール大学大学院を出るとマサチューセッツ州弁護士会会員となり、弁護士として活動をはじめる。やがて軍隊に入り、除隊後、大学で教鞭をとるようになる。その一方、シャリー・クラーク監督作品『クール・ワールド』(1963)をプロデュースしたことから、映画界との関係ができた。67年にマサチューセッツ州の犯罪者を収容する精神病院を題材にして本格的なドキュメンタリー『チチカット・フォーリーズ』を発表、マサチューセッツ州で公開禁止処分となるが(91年上映許可)、以後、ワイズマンは制作意欲を掻き立てられたかのように、アメリカ社会構造を見つめるドキュメンタリーを発表。1971年に、現在も拠点とする自己のプロダクション、ジポラ・フィルムを設立。以後も長編劇映画『セラフィータの日記』(1982)をはさみ精力的にドキュメンタリーをつくり続けている。
(2003 Frederic Wiseman Retrospective フライヤーより)

ジポラ・フィルム(Zipporah Films)URL:http://www.zipporah.com/

■映像作品 (作品名の翻訳については鈴木(2007)を参照)

◇1967 Titicut Follies=チチカット・フォーリーズ
◇1968 High School=高校
◇1969 Law & Order=法と秩序
◇1970 Hospital=病院
◇1971 Basic Training
◇1972 Essene
◇1973 Juvenile Court=少年裁判所
◇1974 Primate=霊長類
◇1975 Welfare=福祉
◇1976 Meat=肉
◇1977 Canal Zone
◇1978 Sinai Field Mission=シナイ半島監視団
◇1979 Manoeuvre=軍事演習
◇1980 Model=モデル
◇1982 Seraphats Diary *劇映画
◇1983 The Store=ストア
◇1985 Racetrack=競馬場
◇1986 Blind=視覚障害
◇1986 Deaf=聴覚障害
◇1986 Adjustment&Work=適応と仕事
◇1986 Multi-handicapped=多重障害
◇1987 Missile=ミサイル
◇1989 Near Death=臨死
◇1989 Central Park
◇1991 Aspen
◇1993 Zoo=動物園
◇1994 High school
◇1995 Ballet=バレエ
◇1996 La comedie-Francaise=コメディ・フランセーズ
◇1997 Public Housing=パブリック・ハウジング
◇1999 Belfast,Maine =メイン州・ベルファスト
◇2001 Domestic Violence DV=ドメスティック・バイオレンス
◇2002 La Derniere Lettere=手紙
◇2003 Domestic Violence 2DV=ドメスティック・バイオレンス2
◇2006 The Garden
◇2007 State Legislature

■作品紹介
 
◇「競馬場」RACETRACK 1985年/白黒/114分
サラブレッドの競馬場として世界でも指折りのニューヨークのベルモント競馬場についてのドキュメンタリー。厩舎での馬の出産から始まり、調教師や飼育係、馬主、獣医たちの活動、レースをとりまく人々、観客たち、騎手たち、この競馬場の経営を支えるオーナーたちの巨大なパーティーとその舞台裏まで、競馬というビジネスのあらゆる側面が写し出される。

◇「モデル」MODEL 1980年/白黒/129分
ニューヨーク市でも最高のモデル事務所であるゾリ・マネージメント社を舞台に、CMやファッションショー、雑誌、広告写真、デザイナーズブランド等の仕事をする男女のモデルたちを追っている。彼らを取り巻くカメラマンやエージェント、撮影スタッフやデザイナーなどの姿を通してファッションビジネス界のありさまが描かれている。

◇「チチカット・フォーリーズ」TITICUT FOLLIES 1967年/白黒/84分
マサチューセッツ州ブリッジウォーターにある精神異常犯罪者のための州立刑務所マサチューセッツ矯正院の日常を克明に描いた作品。収容者が、看守やソーシャルワーカー、心理学者たちにどのように取り扱われているかが様々な側面から記録されている。合衆国裁判所で猥褻罪または国家保安罪以外の理由で一般上映が禁止された唯一の作品である。四半世紀にわたる裁判の末、91年にようやく上映が許可された。

◇ 「高校」HIGH SCHOOL 1968年/白黒/75分
フィラデルフィア郊外にある「模範的な」高校の日常を追っている。朝のホームルーム、授業の風景、生活指導、父母を交えた進路相談、男女別に行われる性教育や家庭科の授業、クラブ活動etc。高校を構成する教師、生徒、親、管理職たちの関わり合いの中で、イデオロギーや価値観が醸成され、伝えられて行く様が映し出される。

◇ 「ドメスティック・バイオレンス」Domestic Violence
2001年/カラー/195分
一貫してアメリカ社会の日常生活を撮り続けるワイズマン31作となる最新作。これまでの作品同様、一切のナレーション、解説を拝し、被害者、加害者、カウンセラーや地元の警察などの活動を追い、「家庭内暴力」の実像に迫る。

◇ 「動物園」Z00 1993年/カラー/130分
マイアミにあるメトロポリタン動物園の日常を記録している。世界中から訪れる入場者、飼育係による動物の世話、獣医の仕事などを捉える。表面には現れない、寄付を募るパーティー、広報活動、調査・研究活動などを紹介しながら動物園運営のメカニズムに迫る。1993年山形国際ドキュメンタリー映画祭最優秀作品賞。

◇ 「臨死」NEAR DEATH 1989年/白黒/358分
ボストンのベス・イスラエル病院特別医療班についての映画。尊厳死、植物人間、脳死、インフォームドコンセント、インフォームドチョイスなど死と生の境界をめぐる末期医療の新しい問題を臨床現場から掘り起こした6時間に及ぶ超大作。ハーバード大学の付属機関であり先端の医療技術を誇るこの病院の集中治療室で行われる生命維持装置を使った診療をめぐり、個人的、医学的、倫理的、心理的、法的、宗教的諸問題の困難さを浮きぼりにする。患者、家族、医者、看護婦、病院のスタッフなどこの問題に関わる人々の複雑な相互関係が映し出される。


■ワイズマン・インタビュー

◆2006 聞き手:冨田三起子『文学界』3月号 pp.130-147
引用
「「チチカット・フォーリーズ」を取っている最中に、精神異常の囚人用の刑務所の映画を作ったのなら、他の施設についての映画も作れるだろう、それに施設についての映画は新しい試みだったと思うのです。…施設シリーズのアイディアが生まれ、高校がいいと思いつきました。高校は、精神異常の囚人用刑務所と関連するだろうと」(pp131−132)

「わたしはずっと探求することに興味があったし、今でもそうです。自分のことではなく、自分の外側にあるものをね。映画を通して世界を探求しているのです。日常生活の中には、文学のように、きっとおかしなことや、悲しいことや、悲劇的なことがあると、はっきりとわかっていました。それを見つけて認識することが大事なのです。まず見つけないと、偶然行き当たるのでもいいです。そしてそれが何であるかを認識するのです。そしてそれを利用する方法を知っていなければいけない。」(p132)

「わたしの映画では、演出は編集の過程で行われる。撮影中にはできる限りよいものを入手しようとします。やり直しはきかないのですから。やり直しがきく唯一の例は、「肉」のような映画、牛の解体という同じようなことが連日繰り返される映画です。ラッシュを見て、首を落とされる牛のアップが足りないと思ったら、翌日再訪して別の牛の頭が落とされるカットを取れる。」(p133)

「ドキュメンタリー作家としての資質の一つですが、見聞きする事柄に対してできる限り意識的であることが大切です。…認識し、編集中であれ撮影中であれ、何が起こっているのか、自分は何を見ているのか、何を聞いているのか、常に基本的な疑問をもち続けること。一見明白な事柄に対しても、優れた観察者になることです。それは自分が観察されているということを人々に意識させるということではありません。」(p138)

■文献/言及

◆2002 鈴木 一誌 「光の底―フレデリック・ワイズマン論」『画面の誕生』,みすず書房
◆2002 鈴木 一誌 「非対称を渉る―フレデリック・ワイズマン論補足」『画面の誕生』,みすず書房
◇2006 Phillipe Pilard Frederick Wiseman, chroniqueur du monde occidental ,Broca 252p.
◆2006 安辺 宏滋 「ダイレクト・シネマの射程 : ワイズマンとダイレクト・シネマの遺産」『山形大学紀要――人文科学』16(1)pp31−64
◆2007 鈴木 一誌 「話者の消滅――フレデリック・ワイズマンの位置」『現代思想増刊――総特集ドキュメンタリー』35(13) pp108-120
◆2007 港 千尋 「軍事映像人類学」『現代思想増刊――総特集ドキュメンタリー』35(13) pp178−183

■イベント/上映会



フレデリック・ワイズマン ドキュメンタリー・プロジェクト
2003/10/18土〜11/03土>

 この度、先端総合学術研究科開設記念・秋季行事として、フレデリック・ワイズマン監督作品を上映します。監督本人による講演も計画しています。今秋10月後半から11月前半(予定)の開催に先駆けて、フレデリック・ワイズマン作品のビデオ上映会を以下の日程で行います。
 関心をお持ちの方はふるって御参加ください。

7/8(火) 諒友館836教室 13:00-18:00 
      「競馬場」1985年/白黒/114分  13:00〜
      「モデル」1980年/白黒/129分  15:30〜
7/15(火) 諒友館836教室 13:00-18:00 
      「チチカット・フォーリーズ」1967年/白黒/84分  13:00〜
      「ドメスティック・バイオレンス」2001年/カラー/195分 14:40〜 7/16(水) 清心館548教室 16:20-19:30 
      「動物園」1993年/カラー/130分 16:20〜
      「高校」1968年/白黒/75分  18:20〜
7/22(火) 諒友館836教室 12:00-18:00 
      「臨死」1989年/白黒/358分

開設記念事業推進委員会委員長 渡辺公三


◆山形国際ドキュメンタリー映画祭'99(開催期間:10月19〜25日)
 「メイン州ベルファスト」(Belfast, Maine)アメリカ/1999/英語/カラー/16mm/248分
◆フレデリック・ワイズマン映画祭
 2000.7.20から8.6の毎土、日、祝日
 最新作『メイン州ベルファスト』を含む全15作品を上映
 アメリカ社会の真実と虚構
◆フレデリック・ワイズマン映画祭2002年7月25日〜8月10日 アテネ・フランセ文化センター
◆水口町立碧水ホール 2002年10月22日・フレデリック・ワイズマン特集  碧水ホール企画上映VOL.25


作成:近藤 宏
UP:20080715
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