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臼井 正樹
うすい・まさき


・神奈川県立保健福祉大学教授 http://www.kuhs.ac.jp/prof.htm


◆臼井 正樹 200007 「自己決定と福祉――自己決定概念の福祉分野における意義と限界」
 『社会福祉学』41-1(62):135-150 限定掲載
◆臼井 正樹 200108 「障害者文化論――障害者文化の概念整理とその若干の応用について」
 『社会福祉学』42-1(64):87-100 限定掲載
◆臼井 正樹 200205 「福祉コミュニティ形成における文化概念の役割――福祉文化概念に関する再考察」
◆臼井 正樹 200805 「図書紹介『母よ!殺すな』」
 『リハビリテーション』503号:32-33(社会福祉法人鉄道身障者福祉協会)


 
 
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■臼井 正樹 200805 「図書紹介『母よ!殺すな』」
 『リハビリテーション』503号:32-33(社会福祉法人鉄道身障者福祉協会)

  *『母よ!殺すな』のページにも全文を掲載。

  「昨年の一月七日、私は小田急線のある駅で待ち合わせをしていた。相手は高橋淳氏、生活書院という小さな出版社の編集者兼経営者である。
  それより三か月近く前、打ち合わせをしているところに一本の電話がかかってきた。立命館大学の立岩真也氏から紹介されてということだった。用件は、故横塚晃一氏の本を復刊したい。ついては横塚氏のご遺族と連絡を取りたいのだが間に入ってくれないかというものだった。その電話の相手が高橋氏であり、何度かメールでやり取りをし、引き受けることにした。
  青い芝の会神奈川県連合会は、間違いなく一九七〇年代からの障害者運動の中心にあった。横塚晃一氏は、青い芝の会の主要メンバーの一人であり、三十年前に胃がんで亡くなっている。この青い芝の会は、小山正義氏がその行動力で組織化を図り、横塚晃一氏と横田弘氏が運動の理論化を担った。他にも何人かが主要な役割を演じているが、この三人がいなければ、あの青い芝の会は存在しなかった。そして、日本の各地に出かけていって青い芝の会の支部を組織化していったのは、横塚氏の政治力だったといえよう。
  青い芝の会のことは、立岩真也氏をはじめ少なからぬ方が論じている。しかし、現時点で青い芝の会と恒常的に接触がある大学教員(私のことを教員と呼ぶのがふさわしいかどうか疑問が残るが)は、間違いなく私であろう。
  私が地方公務員の立場から大学教員に転じるきっかけとなったのは何人かとの出会いであるが、そのうちの一人は青い芝の会神奈川県連合会代表としての横田弘氏である。
  青い芝の会神奈川県連合会の横田氏に連絡を取り、直接お会いして趣旨を説明し、ご遺族の方の連絡先を伺った。ご遺族に連絡し、お訪ねする日程を調整した結果、正月明けの七日にご自宅を訪問することになった。
  新婚間もない横塚氏のご子息のお住まいを住所を頼りに探し、真新しいアパートの一室で高橋淳氏、横塚氏のご子息と三人でやり取りをした。高橋氏の『母よ!殺すな』復刊にかける熱意を理解しこれを受け止め、ご子息は復刊の企画を承諾してくださった。あわせて、障害者運動の伝説の闘士である横塚氏が、大変に家族想いであったことを教えていただいた。
  『母よ!殺すな』は、すずさわ書店から一九七五年に出版され、一九八一年に同じくすずさわ書店から増補版が出ている。一九八一年版が絶版となって以来、手に入らないものとなって久しい。日本の障害者運動を学ぶ者にとってこの『母よ!殺すな』と横田弘氏の『障害者殺しの思想』は必読書といってよいものだが、どちらも手に入らない本となっていた。近年、多くの公立大学に社会福祉を学ぶ学部、学科が新設されてきたが、当然のこととして、この二冊の本はほとんどの公立大学の図書館に入ることがなかったはずである。私が勤務する神奈川県立保健福祉大学も、青い芝の会の活動の中心である神奈川県にありながら、やはり蔵書とすることはできなかった。
  二〇〇三年に、横田弘氏は『否定されるいのちからの問い』を著わし、この本がある意味で『障害者殺しの思想』の代わりを果たしている。今回、『母よ!殺すな』が復刊されたことで、貴重な二冊の本を三十年の時を経てまた読み継ぐことができるようになった。
  今回の復刊で『さようならCP』のシナリオをはじめとする貴重な資料が付け加えられるとともに、立岩真也氏の思いのこもった解説がついた。このことにより、復刊された『母よ!殺すな』と、『否定されるいのちからの問い』を併せ読むことで一九七〇年から九〇年代にかけての日本における障害者運動の基本部分が把握できるようになった。
  アメリカの自立生活運動やイギリスの障害者運動が日本に紹介されるようになって久しい。しかし、アメリカやイギリスの障害者運動とは別に、日本には独自の障害者運動が存在した。それはある意味で生きることへの根源的な問いかけであった。そのことをこの本から改めて読み取っていただきたい。
  二つの本の出版に陰ながら関わることができたのは、私にとって大きな誇りである。昨年の暮れの青い芝の会神奈川県連合会の勉強会の席で、今度は私が青い芝の会について書こうと思うと述べた。横田氏からは、「俺ももう長くない。生きているうちに読ませろ」と励まされたのを記憶している。
  『さようならCP』のシナリオを掲載するにあたって、横田氏から注文がつき、オリジナルのシナリオを二か所ほど修正した。ここでは詳しいいきさつは控えるが横田氏の家族への思いが伝わる出来事が復刊に際しての秘話として残った。
  私が青い芝の会についてまとまった文章を書く際には、このこともきちんと書き残したいと思っている。
  (うすい・まさき 神奈川県立保健福祉大学教授)」(全文)


UP:20080619 REV:
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