last update: 20220310
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■はじめに
まず、私と障害学の出会いは私自身が障がい者となったことから始まります。私は14歳の時、急性糖尿病で倒れ、その際の医療ミスにより四肢麻痺になってしまいました。視覚にも障がいが現れ、立体や色、人の顔はなんとか認識できますが、文字の認識がほとんど出来ない状態です。また、発語はほとんど不可能で、アウトプットには人の何倍もの時間を要します。コミュニケーションの方法は、介助者に自分自身の手を握ってもらい、介助者が五十音で一字一字を確認していく、「拡大代替コミュニケーション」といわれる、私が腕を引くサインによるコミュニケーションです。
前述した私のコミュニケーション方法は聴覚走査法と呼ばれています。聴覚走査法とは、例えば聞き手が「あ、か、さ、、、」と読上げていき、「た」で「Yes」のサインがあれば、今度は「た、ち、つ、、、」と読上げ、「Yes」のサインのあったところで文字を確定する方法です。このように、私の場合は介助者が一字一字解読をしていきます。長文を作成する際は、一人の介助者がメインとなり、作成します。作成方法は、私が単語を挙げていき、介助者がその単語をうまくつなぎ合わせて大まかに文章化していきます。私は介助者が作成した短文を組替えていき、筋道が立った文章になるように整えます。介助者に前後を流して読んでもらいながら、ニュアンスや前後関係、口調などが整合するように私が言葉を選び直していきます。
自らが障がいを負ったことで、障がいについて研究することが私の生活そのものになりました。
■研究テーマ
「障がい者とコミュニケーション」を専門に研究しています。大学院では、「『発話困難な重度身体障がい者』の新たな自己決定概念について――天畠大輔が『情報生産者』になる過程を通して」と題して、博士論文を執筆しました。
現在の研究テーマは、「障がい者と介助者における新『事業体モデル』について」「障がい者の『生産性』を問い直す」などに焦点をあてています。まず、「発話困難な重度身体障がい者」は、その障がい特性ゆえに自己と他者の切り分け難さからくる様々なジレンマを抱えています。しかし、既存の介助モデルでは、彼らの支援を捉える枠組みがありません。そこで、新たな当事者と介助者の関係性モデルを研究し、提案していきたいと思っています。
また、重度訪問介護を利用する障がい当事者が自ら運営する介助者派遣事業所(当事者事業所)の調査を通して、今まで「生産性」の議論から外され、他者に管理されるしか生きる道がなかった重度身体障がい者が「責任を負える主体」になり得ることを論証します。この手法は、当事者への大きなエンパワメントの可能性を持っており、新たな生存保障システムの一助となると確信しています。
これらの研究蓄積を通じて、将来的には「発話困難な重度身体障がい者」の方を支援する財団を設立したいと考えています。また2020年3月には、重度障がい者が介助者とともに地域で自分らしく生きていくための伴走支援を目的に、「一般社団法人わをん」を立ち上げました。当事者事業所経営に加え、この一般社団法人運営という実践を通して、重度障がい者が自由に生きるための福祉政策についても考察していきたいと考えています。
■経歴
- 1981年12月・・・広島県呉市安芸津町にて生まれる。
- 1994年4月・・・千葉大学教育学部付属小学校を卒業後、同中学校入学。
- 1996年2月・・・イギリス留学中に体調不良(ドクターストップ)により帰国。
- 1996年4月・・・ストレスによる精神疾患および過換気症候群と誤診される。
再度救急搬送後、若年性急性糖尿病と診断され、急遽インシュリン投与を受けるが、処置が悪く、心停止(約20分)を起こす。ICUに搬送され、生死の境を迷う。
- 1996年5月・・・ICUにて約3週間の昏睡。
気管切開。横隔膜麻痺の疑いあり。意識は戻らない日々。
- ――― 8月・・・ICUを出て、一般病棟に入る。
四肢麻痺、発語不能、嚥下障がい、視覚障がい等多くの障がいを抱える。
はじめて「あかさたなコミュニケーション」で、自身の意思を母に伝えることができた。この年、一種一級最重度の障がい者と認定され、常時車椅子生活で、24時間介助を必要とする。
- ――― 12月・・・千葉県立リハビリテーションセンターに転院。
併設の千葉市袖ヶ浦養護学校中等部に入学し、病院から学校に通う。
- 1997年4月・・・高等部に進学。
- 2000年3月・・・袖ヶ浦養護学校高等部卒業。
その後平日は、千葉大の家庭教師による勉強、およびドーマン法によるリハビリ、日曜日もリハビリという生活。
- 2003年2月・・・ルーテル学院大学を特別な配慮で受験したが不合格。
しかし大学は、1年間の聴講を勧めてくれた。来年再受験することを期して、1年間の徹底的な受験モードに。
- 2004年4月・・・ルーテル学院大学総合人間学部神学科合格。
念願の大学入学を果たす。
- 2005年4月・・・大学2年。社会福祉学科に編入。
社会福祉、介護等の勉強を本格的に始める。
- 2006年4月・・・大学3年。LSS(ルーテル・サポート・サービス)を設立。
障がい学生の大学生活をサポートする団体。後に、大学の公認団体に成長。
- 2008年9月・・・卒論完成、大学卒業。
- 2009年4月・・・ルーテル学院大学総合人間学部臨床心理学科3年次編入。
- 2009年7月・・・東京都武蔵野市にヘルパー派遣事業所を立ち上げる。
- 2010年3月・・・ルーテル学院大学退学。
- 2010年4月・・・立命館大学大学院先端総合学術研究科入学
- 2012年 ・・・日本学術振興会特別研究員(DC)として、研究開始。
- 2015年10月・・・一般社団法人 日本脳損傷者ケアリング・コミュニティ学会 理事就任
- 2017年10月・・・指定障害福祉サービス事業所として「灰ai-job high」(外部リンク) を立ち上げ、代表取締役就任。
- 2019年3月・・・立命館大学先端総合学術研究科先端総合学術専攻一貫性博士課程修了。「灰ai-job high」代表取締役辞任。
- 2019年4月・・・日本学術振興会特別研究員(PD)として、中央大学文学部にて研究開始。NPO法人「境を超えて」(外部リンク) 理事就任。
- 2019年5月・・・立命館大学生存学研究所客員研究員として、研究に携わる。
- 2020年3月…「一般社団法人わをん」設立。代表理事就任。
■論文
- 天畠大輔,2008,「わが国の肢体不自由養護学校高等部における進路支援のあり方について――障害者の大学進学を進めるためには」ルーテル学院大学総合人間学部社会福祉学科2007年度卒業論文.
- 天畠大輔・立岩真也・井上恵梨子・鈴木寛子,2010,「インターネットテレビ電話を活用した在宅療養者の社会参加について――高等教育における重度障害学生への支援の取り組みから」公益財団法人在宅医療助成勇美記念財団,『平成22年度一般研究助成研究報告書』.[外部リンク:PDF]
- 天畠大輔,2013,「天畠大輔におけるコミュニケーションの拡大と「通訳者」の変遷――「通訳者」と「介助者」の「分離二元システム」に向けて」,『Core Ethics』9:163-174.[外部リンク:PDF]
- 天畠大輔・村田桂一・嶋田拓郎・井上恵梨子,2013,「発話障がいを伴う重度身体障がい者のSkype利用――選択肢のもてる社会を目指して」,『立命館人間科学研究』28,13-26.[外部リンク:PDF]
- 天畠大輔・黒田宗矢,2014,「『発話困難な重度身体障がい者』における『通訳者』の『専門性』と『個別性』について」,『Core Ethics』10:155-16.[外部リンク:PDF]
- 天畠大輔・嶋田拓郎,2017,「『発話困難な重度身体障がい者』における『他者性を含めた自己決定』のあり方――天畠大輔を事例として」『障害学研究』12:30-57.
- 天畠大輔,2019,「『発話困難な重度身体障がい者』の新たな自己決定概念について――天畠大輔が『情報生産者』になる過程を通して」立命館大学大学院先端総合学術研究科 208年度博士論文.
- 天畠大輔,2020,「『発話困難な重度身体障がい者』における介護思想の検討――兵庫青い芝の会会長澤田隆司に焦点をあてて」『社会福祉学』60(4):28-41.
■執筆・賞与等
- 2000年4月・・・一筆啓上賞(日本一短い手紙)佳作入選。
- 2008年9月・・・全国障害学生支援センター機関誌『情報誌 障害をもつ人々の現在』61号
「先輩からのメッセージ」内コラム『「あ・か・さ・た・な」で大学へ』執筆
- 2008年9月・・・ルーテル学院大学卒業論文。
『肢体不自由養護学校高等部における進路支援のあり方について〜障がい者の大学進学を進めるためには〜』
- 2008年12月・・・第43回NHK障害福祉賞・優秀賞受賞。
『「あ・か・さ・た・な」で大学に行く』
- 2008年12月・・・ルーテル学院大学第一回パイオニア学長賞受賞。
- 2010/08/25・・・「『あ・か・さ・た・な』で大学に行く」
NHK厚生文化事業団編『雨のち曇り、そして晴れ――障害を生きる13の物語』日本放送出版協会,pp.180-196.
- 2010年7月・・・全国障害学生支援センター機関誌『情報誌 障害をもつ人々の現在』68号
「先輩からのメッセージ」内にコラム『「あ・か・さ・た・な」で大学院へ』執筆
- 2010年7月・・・DPI日本会議機関誌『DPI 我ら自身の声』26-2号
「書籍紹介」内に書籍『障害があるからこそ普通学級がいい〜「障害」児を普通学級で受け入れてきた一教師の記録〜』紹介文執筆
- 2011年7月・・・全国障害学生支援センター機関誌『情報誌 障害をもつ人々の現在』70号
連載企画「地域で活躍する当事者団体」にて記事執筆
- 『月刊地域保健』6月号(東京法規出版)、「言葉が伝わると、すごくうれしい――意思疎通ができずに悩んでいる人を救いたい」、2012年6月
- 2013年8月・・・「学びはやめられない」執筆、ノーマライゼーション(日本障害者リハビリテーション協会)、18
- 2014年1月・・・「第10回 私の生き方」執筆、すべての人の社会(日本障害者協議会)、14
- 2014年3月・・・天畠大輔、黒田宗矢、「発話困難な重度身体障がい者における通訳者の「専門性」と「個別性」について : 天畠大輔の事例を通して」、Core Ethics 10、155-166
- 2014年6月・・・図書紹介:中村尚樹著「最重度の障害児たちが語りはじめるとき」執筆、リハビリテーション(鉄道身障者協議会)、32
- 2014年6月・・・DPI日本会議機関誌「われら自身の声」内の「言葉の力―障害女性の複合差別調査報告について―」にて書評執筆、vol30-1、47
- 2014年7月・・・「「あ・か・さ・た・な」で学び続ける(特集 さらなる学問のススメ(2))」執筆、リハビリテーション565(鉄道身障者福祉協会)、25-28
- 2014年12月・・・ノーマライゼーション「私が選んだ今年の五大ニュース」執筆、日本障害者リハビリテーション協会、36
- 2015年4月・・・「World Now ロックトインシンドローム患者3人へのインタビューを通して : 天畠大輔inフランス」執筆、ノーマライゼーション:障害者の福祉35(日本障害者リハビリテーション協会)、48-50
- 2015年7月・・・「ダレと行く?からはじまる私の外出 (特集 おでかけ : 私の外出紹介(2))」執筆、リハビリテーション575(鉄道身障者福祉協会)、29-32
- 2015年12月・・・NHK厚生文化事業団「私の生きてきた道50のものがたり」サイト内にて『「あ・か・さ・た・な」より「喋りたい!」』執筆、http://www.npwo.or.jp/50stories/0006/
- 天畠大輔,「1000字提言」『ノーマライゼーション:障害者の福祉』日本障害者リハビリテーション協会,2016年2月,6月,10月.
- 天畠大輔,「生き方わたし流――事業所のすゝめ」『ノーマライゼーション:障害者福祉』日本障害者リハビリテーション協会,2018年2月.
- 天畠大輔,「『あ・か・さ・た・な』で合理的配慮を考える」『リハビリテーション』鉄道身障者福祉協会,11-14,2018年7月.
- 天畠大輔,「甘え甘えられ,そして甘える関係」『季刊 福祉労働』福祉労働編集委員会編,2019年9月.
- 天畠大輔, 2022年2月・・・『しゃべれない生き方とは何か』,生活書院,392p. ISBN-10: 4865001360 ISBN-13: 978-4865001365 3000+ [amazon]/[kinokuniya] ※ w/td01
■発表・講演等
- ◇2008年2月・・・東京都ボランティア市民活動センターでの講演。
- ◇2009年9月26-27日・・・韓 星民・天畠 大輔・川口 有美子 ポスター報告「情報コミュニケーションと障害の分類」
障害学会第6回大会 於:立命館大学
- ◇2010年2月17日・・・「「あ・か・さ・た・な」コミュニケーションと私の生活」講演 重度訪問介護従業者養成研修 主催:川崎市社会福祉協議会
- ◇2010年6月13日・・・「「あ・か・さ・た・な」コミュニケーションと私の移動・外出時の様子」講演 全身性ガイドヘルパー講座 主催:すぎなみ地域大学
- ◇2010年8月19日・・・「しょうがいをもつ人と共に生きるを感じよう連続講座−ヘルパーフォローアップ研修−」
主催:CILくにたち援助為センター
- ◇2012年3月20日・・・「skypeを使った生活―ビデオレンタルと買い物の事例から」講演 ITパラリンピック 主催:ICT救援隊 於:秋葉原ダイビル
- ◇2012年11月23-24日・・・第3回障害学国際研究セミナー(2012年韓日障害学国際フォーラム)、「重度身体障がいのある大学院生の学習と生活〜日本における重度障がい者の在宅生活の一例として〜」、ポスター発表
- ◇2012年8月1日・・・チャレンジセミナー2012 in都立光明特別支援学校、「肢体不自由学生の大学進学について」、講演
- ◇2012年6月25日・・・「聖徳学園小学校 交流教室〜障がいのある人と小学生が出会う場所〜」NHK厚生文化事業団主催 於:聖徳学園小学校
- ◇2012年8月1日・・・「聖徳学園小学校 交流教室〜障がいのある人と小学生が出会う場所〜」NHK厚生文化事業団主催 於:聖徳学園小学校
- ◇2013年8月19日・・・「2013年度 障害のある学生の修学支援に関する講演会」九州ルーテル学院大学主催。 熊本県教育委員会、熊本市教育委員会後援。 於:九州ルーテル学院大学
- ◇2014年1月10日・・・「日野第八小学校 国語科研究課題 伝えるって嬉しいね」 日野第八小学校国語科主催 於:日野市立日野第八小学校
- ◇2014年1月10日・・・「日野第八小学校 国語科研究課題 伝えるって嬉しいね」日野第八小学校国語科主催 於:日野市立日野第八小学校
- ◇2014年1月22日・・・「桃井第三小学校 交流教室〜障がいのある人と小学生が出会う場所〜」 NHK厚生文化事業団主催 於:杉並区立桃井第三小学校
- ◇2014年1月30日・・・「桃井第三小学校 交流教室〜障がいのある人と小学生が出会う場所〜」 NHK厚生文化事業団主催 於:杉並区立桃井第三小学校
- ◇2015年10月26日・・・立教大学社会学部「フィールド実習」授業内にてゲストスピーカー(テーマ:家族について)
- ◇2016・・・天畠大輔・熊谷晋一郎・北山晴一・松本亜砂子,「『発話困難な重度障がい者』2名の事例を通して依存を解く」,脳損傷ケアリング・コミュニティ学会,東京医科歯科大学.
- ◇2016年11月2日・・・立教大学社会学部にて講師「しょうがい者の視点からとらえなおす現代社会」(テーマ:しょうがいと誘導について)
- ◇2017・・・天畠大輔・北地智子・黒田宗矢・森香苗,「自立を依存先の分散とすることの再検討――天畠大輔を事例として」,脳損傷ケアリング・コミュニティ学会,とかちプラザ.
- ◇2017年10月31日・・・立教大学社会学部にて講師「しょうがい者の視点からとらえなおす現代社会」(テーマ:しょうがいと税金について)
- ◇2017年12月18日・・・東京薬科大学にて講師「人間と薬学U」(テーマ:「あ、か、さ、た、な」で治療を受けることについて)
- ◇2018・・・伊藤道哉・佐藤安夫・天畠大輔,「厚生労働省『終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン』をめぐって――終末期医療に関する国の考えを学び,備える」DPIに本会議全国集会尊厳生分科会,横浜市技能文化会館.
- ◇2018年1月10日・11日・・・東京薬科大学にて講師「介護論」(テーマ:介護と誘導について)
- ◇2018年11月28日・・・中央大学文学部にて講師「現代社会研究/障害学」(テーマ:当事者研究について)/「現代社会研究/生存の現代史」(テーマ:福祉サービスとモラルについて)
- ◇2019年1月15日・・・立教大学社会学部にて講師「しょうがい者の視点から捉えなおす現代社会」(テーマ:しょうがいと年金について)
- ◇2019年1月18日・21日・・・女子栄養大学にて講師「介護論」(テーマ:介護と誘導について)
- ◇2019年1月31日・・・杉並区立こすもす生活園職場研修講師「重度障がい者の自立生活とは――一緒に考えよう」
- ◇2019年5月14日・・・中央大学にて講師「FLPゼミ」(テーマ:「あ、か、さ、た、な」で論文を書くT・U)
- ◇2019年8月8日:千葉県立袖ヶ浦特別支援学校にて講師(「あ、か、さ、た、な」で学校に行った理由)
- ◇2019年8月21日…「ALS当事者の社会参加が保障される条件――地方在住当事者へのICT活用による遠隔地ヘルパー登録という手法から」,リハ工学カンファレンス,北海道科学大学.
- ◇2019年8月22日「医療法人稲生会みらいつくり大学校」にて講師(テーマ:「あ、か、さ、た、な」で論文を書く)
- ◇2019年9月7日…「『発話困難な重度身体障がい者』の文章作成における実態――天畠大輔を事例として」,障害学会第16回京都大会,立命館大学.
- ◇2019月10月6日…「『発話困難な重度身体障がい者』の文章作成における実態――天畠大輔を事例として」,第92回日本社会学会大会,東京女子大学.(ポスター発表)
- ◇2019年10月13日…天畠大輔・北地智子・斎藤直子,「重度身体障がい者における航空バリアフリーの検討――当事者への聞き取り調査から」,障害学国際セミナー,中国武漢.(ポスター発表)
- ◇2019年11月2日「情報の交差点出前講座」にて講師(テーマ:誰も取り残されないための地域での取り組みを考える!――発話困難な重度身体障がい者の視点から)
- ◇2019年11月23日「ケアリンピック武蔵野2019」(テーマ:介護保険における自薦ヘルパー制度導入のすゝめ――介護保険利用者が在宅でより自分らしく生きるために)
- ◇2019年11月24日「がんカフェ」にて講師(テーマ:医学モデルから社会モデルへの転換)
- ◇2020年9月19日…天畠 大輔・油田 優衣,「当事者研究の新たな可能性について」,障害学会第17回大会報告(オンライン開催)
■紹介・言及等
- ◇柳田邦男 2010/11/20 『人生やり直し読本――心の涸れた大人のために』「第1章 自分の地平を拓くことが他者をも変える」9p~26p.
- ◇今川敢士 2010/04/07 「意思疎通方法 自ら研究――視力や発語能力失い大学院へ」 『京都新聞』夕刊:1p
- ◇原 昌平 2012/03/31 「1字1字紡いだ16万字」,『読売新聞』(夕刊 大阪本社版) 11p. [PDF]
- ◇読売新聞 東京本社版、「独自『話法』で16万字 障害抱え『修士論文』」2012年4月10日
- ◇朝日新聞朝刊 東京本社版社会面「まひの病床、涙のサイン 武蔵野の天畠さん、意思疎通の研究者へ」、2013年3月17日
- ◇朝日新聞朝刊 東京本社版社会面「話せずとも、通じた気持ち 東京・台湾、重度障害の2人の対面 互いの「話法」で」、2013年3月25日
- ◇朝日新聞朝刊 東京本社版地域面「(生きる 天畠大輔さんの台湾訪問記:上)文字紡ぐ、声なき会話」、2013年4月9日
- ◇朝日新聞朝刊 東京本社版地域面「(生きる 天畠大輔さんの台湾訪問記:下)24時間体制で介助を受ける生活」、2013年4月10日
- ◇毎日新聞夕刊 東京版「読書日記:上野千鶴子さん「コミュニケーション保障」が重要」にて拙著の書評
- ◇朝日新聞朝刊 熊本版「わがまま言っていいよ 重度障害の大学院生 天畠さん講演」、2013年8月20日
- ◇朝日新聞朝刊 「ひと」欄、2013年10月23日
- ◇ノーマライゼーション2014年4月号 「HOPE!!:立命館大学大学院生 天畠大輔さん」
- ◇日経新聞朝刊 「「当事者研究」広がる」、2014年7月28日
- ◇ブックガイド 天畠大輔著『声に出せないあ・か・さ・た・な:世界にたった一つのコミュニケーション』前田拓也書評、2014年
- ◇黒田宗矢,2015,「天畠大輔と私の利用し利用される(Win-Winの)関係性」(特集ボランティアについて考えてみよう(2))」『リハビリテーション』鉄道身障者福祉協会,571:27-30.
- ◇深田耕一郎,2017,「第3章「その人らしさ」を支援するとはどのようなことか」岡部耕典編,『パーソナルアシスタンス――障害者権利条約の新・支援システムへ』生活書院,86-115.
- ◇立岩真也,2018,『不如意の身体――病障害とある社会』生活書院.
- ◇黒田宗矢,2018,「『先読み』と『想像』の世界――『あ、か、さ、た、な』に耳を傾けて」『支援』生活書院,8:139-46.
- ◇朝日新聞社,2019,「聴覚だけ頼りの37歳、博士号を取得 話せず読めずとも」『朝日新聞』2019年4月12日
- ◇朝日新聞社,2019,「耳すまし 博士号――発話困難な重度身体障がい男性、「通訳」と」『朝日新聞デジタル』2019年4月12日.
- ◇朝日新聞社,2019,「フロントランナー 中央大学で研究する日本学術振興会特別研究員PD・天畠大輔さん」『朝日新聞土曜日版「be on Saturday」』2019年11月16日
- ◇朝日新聞社,2019,「apital医療・健康・介護 医療ミスで重度障害 14歳が絶望の先に見つけたもの」『朝日新聞デジタル』2019年11月20日
- ◇読売新聞社,2020,「『あ,か,さ,た,な』中央大学に行く」『読売新聞オンライン Chuo Online』2020年1月16日
- ◇武本花奈(写真・文),2020,「連載 インクルーシブに生きる「ふつう」の人 第2回天畠大輔さん」『季刊 福祉労働』166:1-6.
■研究・活動助成
- ◆2010/**/** 2010年度立命館大学大学院特別奨励奨学金B 採用
- ◆コミュニケーション・通訳研究会 2010/**/**~2011/03/** 立命館大学大学院 2010年度先端総合学術研究科調査研究プロジェクト支援助成
- ◆天畠大輔(代表)2010/07/**~2011/08/**「インターネットテレビ電話を活用した在宅療養者の社会参加について――高等教育における重度障害学生への支援の取り組みから」
勇美記念財団2010年度在宅医療助成
- ◆2011/06/** 2011年度立命館大学大学院特別育英奨学金A 採用
- ◆2012/04/**〜2015/03/** 独立行政法人日本学術振興会 特別研究員DC-1(社会科学領域)
- ◆2019/04/**〜現在 独立行政法人日本学術振興会 特別研究員PD(社会科学領域)
- ◆令和2年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)「若手研究」,「『当事者事業所』という新たな生存保障システムの考察――福祉経営論の視点から」,2020年4月〜.
- ◆令和2年度科学研究費助成事業(研究成果公開促進費・研究成果公開発表B)「ひらめき☆ときめきサイエンス〜ようこそ大学の研究室へ〜KAKENHI」,「アニメ映画から考える社会学――私の障がいって誰が決めたもの?」
- ◆令和2年度公益財団法人日本生産性本部「生産性研究助成」,「『当事者事業所』という新たな生存保障システムの考察――重度身体障がい者の『生産性』を問い直す」
- ◆令和2年度WAM助成(社会福祉振興助成事業),「富山県の医療的ケアが必要な重度身体障がい者への伴走支援事業」※「一般社団法人わをん」で採択
■
◆立岩 真也 2018 『不如意の身体――病障害とある社会』,青土社 文献表
■3 存在証明という方角もあるが
このように見ていくと、それと対照的な方向であると気づくのだが、もう一つ、自分が作ったと言いたい思いが(すくなくとも一方では)あることがある。そしてそれも言われればもっともな思いではある。天畠大輔がそういう思いの人である(自伝として天畠[2012]、論文として天畠[2013]、天畠・村田・嶋田・井上[2013]、天畠・黒田[2014、天畠・嶋田[2017])。彼は、世界で一番?、かもしれない身体障害の重い大学院生で、発話できず、身体の細かな動きはできないので、通訳者が「あかさたな」と唱えるのを聞いて身体を揺するのを通訳者が読み取り、次にあ行なら「あいうえお」と唱え、「う」で確定といった具合に話す。想像するよりはずっと早く進むが、しかし時間はかかる。視覚障害もある。長い文章、とくに博士論文といった長く面倒な文章を書こうとなると、どうするか。
彼には長い時間をかけて育ってきたきわめて優秀な通訳者が複数いる。普通の意味での通訳にも熟達しているが、長年付き合ってきて、何を天畠が考えているかもわかっているし、この通訳という仕事がどんなものであるかもよくわかっている。だから、このコミュニケーションを主題に書かれるその博士論文について、本人の意を察するという以上のことができることがある。それで天畠はかなり助かっていて、それがないよりはるかに楽ができていると思うとともに、そして依存する気持ちの△088 よさを味わうとともに、自分の仕事が自分の仕事として認められたいと思う。そういうジレンマを抱えているのだと書く。
それをジレンマと言えるのかどうか。自分でやっていると言いたいが、手伝ってもらってもいる。そしてそれはそれで心地よく、楽でもある。他方、彼自身が寄与しているのも間違いない。そもそものアイディアを出すということもあるし、そのチームを作ったのも、彼、彼の身体である。どれだけと確定はできないが、彼は寄与している。同時に手伝ってもらってよくなっている。それだけのことである。だから共著ということにしたいのであれば、すればよい。論文も学会報告も、ほとんどすべてがそのようにして発表可能である。
ただ学位は個人に対して与えられる。個人を評価したその結果が学位であって、その成果には、もちろん環境があり、人との関係があったうえであること等々を承知しつつ、一人に一つ出すというものである。その合理性はあるか。例えば職を得る/与えるための指標であるとしたらどうか。普通は、人は一人採用するということになるから、その際の指標は、一人について一つということになりそうだ。このように一人につき一つが必要とされる場合があり、そのように求められることにつきあってもよいという人はその世界の流儀に従うことになる。これ以上つついても仕方がない。他方、同時に、仕事は共同で行なったといって何も問題はない。
ときに自分がやっているか誰がやっているかが曖昧になる。それは当然のことであり、それ自体はよいことでもわるいことでもない。主体性が常に大切であると決まったものではない。本人と介助者の間のそんな、自律であるとか依存であるとかのマイクロな部分を記述することがなされてきたが、もうだいたいのことはわかっているように思う。たいがいのことはまかせてなんとかはなる。その範囲で支障なく生活が成り立っているなら、問題はない――ということは他方では、自分の身体の痛みが他人には△089 看過されやすいといった看過すべきでないことがあることも認めるということだ。それをさらに繰り返すことにどれほどの意味があるだろうか。
ただ天畠の場合は、言語が関係しているから一定の複雑さがあり、種々の工夫もなされているだろう。それは十分に稀少な珍しいできごとではある。それを調べて書き出すことにまず意義はあるだろう。それをきちんと行なえば、それはそれでよい。
そこでいったんこの話は終わり、止まるだろう★15。ただ、仕組みをどのようにしていくかという問題は残るはずだ。誰かと組むことによって仕事ができるという場合はある。教員の場合であれば、客である学生に伝わるものとしては一人分のものである。学位取得においては、仕方なく一人が取り出されるとしても、二人で一人分なのであれば、二人を一人分の仕事をする二人として雇ってもよいはずだ。それは二人でいっしょの方が、他の一人ずつの人たちよりも勝っているからだと言うことになるか。そこまでがんばって言う必要はないだろう。一人分ができればそれでよしとする。すると、二人なら雇う費用が倍かかることになる。それを雇用主の側が支出することになると、そうした場合の雇用差別を禁じても、密かに、差別は実行されるだろう。とするとどうするか。一つには、もう一人分の給料は雇い主が支出しなくてすむように別途公金から支出するといったやり方だ。するとこの場合には、本人がいて誰かがその介助者でいる――すると、介助に対する費用は、現在の制度はとても不十分にしか対応していないが、出させることはありうる――というより、二人(以上)で一つであることを十全に示せた方が説得力が増すということになる。そしてその時、天畠(たち)の論文で示される、その仕事の製造過程の記述は人々の理解を助けることになり、再び意味を有することになる。それは、天畠が(一方で)望んだ自らの名誉と自尊心を獲得するという方角とは少々異なるかもしれない。その気持ちはわからないではないが、それは自分で言いたいように言えばよい。わかってくれる人はいるだろう。それも言いな△090 がら、傍目からは不思議に見える共働を詳細に描いた方がまずおもしろいし、職に結びつくかもしれない。ではこのような仕事の仕方、させ方は、あらゆる職種に及んでよいことであるのか。簡単にはそうは思えないとするとどうしてか。次にそうした問いを考えていくことになる。
★15 「(介助者)手足論」がしばしば取り上げられてきた。まず、この言葉がどんな文脈にあったかについて小林敏昭[2011]。そして、後藤吉彦[2009]、熊谷晋一郎[2014]、石島健太郎[2018]、等。日常の生活において自律をどれほど求めるかと、社会運動において誰が主体となるべきかはまずは分けられる。後者について、あくまで本人たちが主体であるべきだという主張と行動がなされる由縁は理解できるしあってよいだろうし、同時に、それと異なる方針の組織・運動もあってよいとまず言えるだろう。前者については、専ら手段として位置づける場合とそうでない場合と、これも両方があってよいとまずは言える。そして一つ、いちいち細かに指図すること自体がとりわけ大切だというわけではない。また天畠のように、そんなことをしていたら手間がかかってよくないという場合もある。その上で、一つ、介助者自身が人であり、手段に徹することが困難であること、またそのように振る舞うことを求めてはならないこともある。△096
UP: 20100318 REV: 20100416, 0519, 0728, 0905, 20110412, 0912, 0503, 0518, 20120521 1115, 20130416, 20151215, 20180910, 1107, 20190615, 0617, 20200417, 1122, 20210819, 1122, 20220310
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博士号取得者
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