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佐々木 美智子

ささき・みちこ


・日本民俗学会会員・女性民俗学研究会前代表・國學院大學兼任講師

■著書

◆198503 『日光街道千住宿民俗誌―宿場町の近代生活―』 名著出版
◆200108 『21世紀のお産を考える−2000年男性助産婦導入問題から−』 岩田書院  
 http://www.iwata-shoin.co.jp/bookdata/ISBN4-87294-022-9.htm
◆201602 『「産む性」と現代社会―お産環境をめぐる民俗学―』 岩田書院
 http://www.iwata-shoin.co.jp/bookdata/ISBN978-4-86602-947-4.htm

■論文

1984 「産神と穢れ」『女性と経験』第9号 女性民俗学研究会
1999 「産育儀礼の時代性」『母たちの民俗誌』 岩田書院
1999 「助産婦の現代―永沢寿美の記録―」『日本民俗学』第219号 日本民俗学会
1999 「助産婦と儀礼」『女性と経験』第24号 女性民俗学研究会
2000 「着帯の風習と腹帯論争」『現代訳産家やしなひ草』 産科文献読書会 私家版
2000 「現代社会と民俗学―男性助産士導入問題をめぐって―」『女性と経験』第25号 女性民俗学研究会
2000 「近代を駆けぬけた女性―ある助産婦の軌跡―」『女性と経験』第25号 女性民俗学研究会
2001「第三次お産革命−男性助産婦導入問題その1−」『女性と経験』第26号 女性民俗学研究会
2002 「男性助産婦導入問題と出産観」『日本民俗学会』第232号 日本民俗学会
2003 「近代化と地域度−茨城県龍ヶ崎市の産育儀礼をめぐって−」『明治聖徳記念学会紀要』復刊第37号 明治聖徳記念学会
2003 「児やらいのコスモロジー」『子産み・子育て・児やらい−大藤ゆき追悼号−』 女性民俗学研究会
2004 「女人講における『聖』と『俗』−茨城県南地域の事例から−」『茨城県立医療大学紀要』第9巻
2004 「出産環境と産育儀礼の変容−茨城県龍ヶ崎市の事例から−」『茨城県における女性の生涯にわたる健康支援に関する研究』プロジェクト研究報告書
2006 「避妊ということ」『女性と経験』31号 女性民俗学研究会
2007 「アメリカお産事情―異文化圏での出産に立ち会って―」『女性と経験』32号 女性民俗学研究会
2008 「今に生きる厄年・年祝い」『悠久』112号 おうふう
2008 「現代民俗学の方途を求めて―助産における会陰保護術の成立と展開―」『女性と経験』33号 女性民俗学研究会
2009 「現代の民俗学の視点と方法」 『女性と経験』34号 女性民俗学研究会
2010 「女の会の伝統と創造―600回記念例会を迎えて―」 『女性と経験』35号 女性民俗学研究会
2011 「産む性の現在―現代社会と民俗学―」 『日本民俗学』第265号 日本民俗学会
2011 「平成のお産環境づくり」 『女性と経験』36号 女性民俗学研究会
2012 「婚姻研究をめぐる『話』と『覚書』の融合―柳田國男と瀬川清子―」 『女性と経験』37号 女性民俗学研究会
2013 「現代社会研究への道標―お産をめぐる研究史から―」 『女性と経験』38号 女性民俗学研究会
2014 「お産環境とフェミニズム―ラマーズ法の普及と『お産の学校』―」 『女性と経験』39号 女性民俗学研究会
2015 「近代民俗学と現代社会―民俗研究の立ち位置をめぐって―」『女性と経験』40号 女性民俗学研究会

■共訳

200003 『現代訳産家やしなひ草』 産科文献読書会 私家版
200801 『平成版 産論・産論翼』 産科文献読書会 岩田書院
 http://www.iwata-shoin.co.jp/bookdata/ISBN978-4-87294-495-2.htm

 

 ※2001年に掲載したもの

◆佐々木さんによる佐々木さんの紹介

著書に『日光街道千住宿民俗誌』(名著出版)、論文に「お産と穢れ」、「産育
儀礼の時代性」、「助産婦の現代」、「助産婦と儀礼」、「着帯の風習と腹帯論
争」、「現代社会と民俗学―男性助産士導入問題をめぐって―」などがある。
都市民俗研究のフィールド調査をきっかけに、産育儀礼や助産技術、さらには
助産婦と産婦との関わりなどから、助産婦の役割を位置付けつつ、これからの
助産のあり方を考えてきた。
 現代の大きな社会的課題の一つである「男性助産婦導入問題」に対し、民俗
学的視点から同時進行問題に対するフィールドワークを試み、社会に少しでも
貢献できればと願っている。

◆20000930 「現代社会と民俗学――男性助産士導入をめぐって」
 『女性と経験』(女性民俗学研究会)25:81-87 ※
◆20011001 「第三次お産革命――男性助産婦導入問題その1」
 『女性と経験』26号(女性民俗学研究会)

 

■男性助産婦導入反対からみえる女性の声

佐々木 美智子 20010708
シンポジウム 女性にとってお産とは―女性に寄り添うお産の復活―

 2001年6月29日通常国会閉会の日、朝日新聞朝刊には「『男性助産士はイヤ』女性反発」という見出しによる記事が掲載された。助産婦の国家資格を男性にも開放し、男性助産士を導入することなどを目指していた与党3党の議員有志は、導入に反対する世論の高まりなどもあり、今国会の法案提出を断念したというもの。つまり一般市民の声が法案の提出を阻止したのである。
 男性助産婦反対運動は、これまで幾度となく繰り返されてきた。法案が提出されそうになると反対運動が起こり、阻止できれば運動体はいつの間にか自然消滅していた。そのたびに運動体の担い手は変わってきた。
 今回の男性助産婦反対運動の口火を切ったのは2000年7月1日のシンポジウム「みんなで話そう!!“助産婦”ってなあに?」である。それを契機に各地で同様のシンポジウムが続発し、「男性はイヤ」という産む側の生理的な声がごく自然に発せられるようになる。
 女性が本来もつ自然に産む力を引き出す助産には、多大のそして長期にわたる精神的かつ肉体的ケアの重要性が認識されることになった。出産という自然のからだの営みを支える助産婦、その助産婦が女性であるということを含めて自然分娩という概念の範疇にあると、徐々に自覚されるようになったのである。
 とりわけ情報機器を介しての議論の高まりは、これまで出産や男性助産婦導入問題に関心をもつ機会のなかった多くの老若男女の参加をみた。メールによる仲間同士の連絡はもとより、ホームページの掲示板への書き込みなど見ず知らずの人との意見交換も可能になったからである。メディアに対しても気軽に発言できるようになった。出産が人間本来の自然の営みであるとするなら、それに関わる多くの人々が産む側の声を発するのは自明のことであった。
 かつて、朝日新聞に藤田真一による「お産革命」が連載された。出産と出産を取り巻く環境の変化を多面的な取材から見つめるものであった。藤田は資格を身につけた開業産婆による分娩介助の普及を「第一次お産革命」、男性の医師が〈安全管理〉という名目において正常分娩に立ち会うようになった時期を「第二次お産革命」と名付けた。前者の担い手が女性であったのに対し、後者の主役は男性であったとする。そして、連載の最後には自主的自然分娩法としてのラマーズ法を紹介し、これからは産む側が第三次お産革命の主役になるであろうと見通しをたてた。
 ラマーズ法は「自分のお産を取り戻したい」という産む側の声とともに日本国中に普及する。そして、1990年代には出産の医療化に対する反省のもと、多くの自主グループが次々と誕生した。医療化への道をたどり始めた出産環境を自らの手で取り戻そうという人々の願いが多くの自主グループを生み出し、産む側の女性たちやより良い出産環境を考える医師や助産婦たちが、そうした願いを共有することになっていった。
 そして今、男性助産婦導入問題を契機に多くの人々がお産のあり方を語るようになった。強制された議論ではない自らの意志による参加である。これこそ第三次お産革命を担う人々の登場であろう。男性助産婦導入問題が、第三次お産革命の胎動を促すという推進する側にとっては皮肉な事態を引き起こすことになったのである。



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