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嶋津 千利世

しまづ・ちとせ


1914年 茨城県に生まれる
1949年 日本大学法文学部社会学科卒業
1980年 群馬大学教授退官

労働者教育協会理事、新日本婦人の会中央委員、女性労働問題研究会名誉会長、労働運動総合研究会理事

「家事労働は主婦の天職ではない」(1955/06)
「合理化反対闘争と婦人労働者」(1965)
「「合理化」と婦人労働――差別・労働強化・無権利」(1966/01)
「今日の「男女差別」と平等の要求」(1972/04)
「現代の貧困と婦人労働」(1970)



■「合理化反対闘争と婦人労働者」
 (『「合理化」と婦人労働者』労働旬報社,1965 →『嶋津千利世著作選集V』pp.196-208)


婦人労働者にたいする攻撃の強化は、既婚者、高齢者の首切りと、従来の男子労働部門への女子の導入というかたちでの搾取の拡大、格下げをともなう配置転換、および、総体としての労働強化によって行なわれる。この労働強化は、新しい労働部門で、従来の事務作業とは比較にならない強度が最初から強制される。(p.198)


「合理化」と労働強化による生産の拡大は、相対的に過剰人口をつくりだすだけでなく、現実に首切り、あるいは人員の縮小という結果をもたらす。「合理化――実態とその問題点――」という富士フイルムのパンフレットによると、「設備改善や作業方法の変更があり、作業量の増大があるにもかかわらず、定員はふやされていません。むしろ定員の削減をしようとしているのが会社の態度です」といい、工程の一部の完全自動制御化と、それにともなう人員削減の例があげられている。そして、ある管理員のことばとして「『完全自動化された時には、いまの四分の一の女の子がいれば充分だ』というような暴言」を伝えている。ここには、女子工員に養われている男子職員の、女子にたいするいわれのない蔑視の態度もうかがえる。
「合理化」は、直接、労働者を労働過程から遊離する一方、機械の操作を簡単化して、より精度の高い製品をより簡単な労働でつくりだすことを可能にし、筋力を要する仕事を機械に代行させて、多くの、ただし相対的にはより少ない女子の労働力を吸引する。(p.199)


 「合理化」が進行するすべてのところで、既得権の剥奪と無権利の状態があらわれ、労働組合活動は、圧殺されるかまたは資本の付属機関にかえる攻撃にあう。
 食事時間以外の休憩時間を廃止したり、生理休暇や有給休暇をとりにくくし、とくに前者は三日を二日に、二日を一日に減らそうとしたり、「仕事をしなくともよいから来るように」と指導し、また、生休、育児時間の行使を理由に、基幹労働過程から排除しようとし、また、離席補充人員を職制の管理下におきかえて、労働者にたいする監視を強化し、転勤を強制し、看護婦などの場合は、「保健婦助産婦看護婦法」の改悪にみられるように、法律を変更して無資格者に看護業務をやらせようとする。これは、バスの運転士の力をよわめるために、無免許者の採用を許可するようなものである。
失対労働者にたいしては、「緊急失対法」を設け「職業安定法」を改悪し、失対労働者の「就業規則」として「運営管理規定」をつくってしめつけ、さらに日雇健保を廃止するという暴力的行政手段を強行するかたわら、ハシカの子どもがいるのに、また基本的人権にかかわる理由があるのに有給休暇を許さず、そのうえ直接の暴力行為が加えられている。(p.201)


 「合理化」による労働強化の結果が、労働者の肉体をそこなうものであるとすれば、反合理化闘争は、何よりもまず労働強化反対でなければならない。そして、労働時間短縮の要求は、賃上げのともなわない労働強化にたいする当然の権利の主張であるばかりか、労働強化による肉体の消磨を補償するものとして、すなわち、正常な健康を維持する条件としても当然の要求であり、労働強化反対の実質的な内容である。しかも、労働時間短縮の要求は、たんに反合理化闘争において重要なだけでなく、搾取に反対する要求であるとともに、労働者にとって、もっとも基本的な要求である。[……]
 労働時間短縮の要求は、右のような深刻な内容をふくんだものであるが、今日的な意味では、すなわち反合理化闘争の内容としては、さらに、首切りに反対し、労働者の就業の機会を保証するという効果もある。これによって、過剰人口の圧迫をよわめることにもなるのである。だから、労働時間短縮の要求は、労働強化反対の内容であるばかりでなく、首切り反対の内容でもある。
 しかし、反合理化闘争としての首切り反対は、時間短縮要求につきるものではない。いま、婦人にたいして、若年定年制が広く実施されようとしている。これは、いうまでもなく若く溌剌とした労働力をしぼりつくし、搾取の結果が肉体のうえにあらわれる前に放り出そうという意図をふくんでいるが、直接には「合理化」の一部としての首切りにほかならない。
また、婦人は結婚をすれば母となるのは必然であり、職場において、この母性にもとづく要求あるいは不満が自覚的におきてくる。母性保護の既得権は、職場の力関係によって左右されつつ行使される。このような見通し >204> のもとでは、資本は、結婚退社制を制度化するであろうし、強力に「合理化」が進められているときはなおさらである。したがって現在では、若年定年制、結婚退社制に反対することは、婦人の権利を守り差別に反対するだけでなく、目前の首切り反対闘争の意味ももつのである。(pp.203-204)


 このような条件の成熟を阻止し、はねかえす闘争の基本的な側面として、労働婦人の母性保護、既得権の擁護と権利の拡大、および同一労働同一賃金の要求、したがって両性の平等の要求を位置づけることができる。
 現在の合理化反対闘争の一部としての生休、保育その他婦人特有のすべての要求は、同一労働同一賃金の要求とともに、平等実現の内容であるが、同時に、いま、ファシズム阻止につらなるきわめて民主的な要求なのであ >205> る。(pp.204-205)


 以上のようにわれわれは、反合理化闘争が、ファシズムの危険に対処するものとしての意義を見い出した。とすれば、この闘争には、どうしても全労働者、全勤労者を統一する条件を見い出さなければならない。そして、そのような条件をつくりあげる中心的要求として、全国一律最低賃金制と社会保障の要求をあげることができる。
 全国一律最低賃金制の要求は、現行の賃金制度の問題とも関連し、とくに差別賃金を固定化する職務給、また、低賃金を固定化する安定賃金の導入が、「合理化」の一環として強行されようとしているとき、労働者の生活を守る闘争として、強く要求されねばならない。とくに、全日自労の精力的な活動によって、日雇労働者の賃金を守りとおしている現在、この実績を中小企業の未組織労働者に浸透させ、合同労組などの地区組織に組織し、統 >207> 一闘争の物質的力に転化することが急務である。また、社会保障制度の要求は、国民的生活水準保障の要求でもある。しかも現在の社会保障制度は、きわめて多岐な内容をもち、救貧的なものから保険制度までふくみ、また失業救済から健康管理におよびすべての国民を対象としている。しかもこれは、本来、いわゆる構造的失業をプールし、低賃金による健康の破壊をいんぺいする独占資本の政策としてとりあげられたものであるが、その反面で、社会保障制度は、微弱ではあるが失業の圧迫をくいとめ、国民的な生活水準の保障となっていたのであった。(pp.206-207)


 以上述べてきたように、合理化反対闘争において、全労働者の共通の要求として、労働時間の短縮および労働者の権利の確保、なかでも婦人労働者特有の既得権の擁護および拡大ということをとらえることができるが、さらに、労働者の賃金水準を引き上げる全国一律最低賃金制の確立の要求は、全労働者を統一する中心的要求である。また、社会保障制度にかんする諸要求、とくに失業保険と健康保険の改悪反対は、労働者のみでなく、出稼 >208> ぎ農民、さらにいっそう広範な住民にたいする生活権の侵害に反対するためのものであり、その利害関係を明らかにすれば、すべての民主主義的要求と政治要求、なかでも日本の核基地化反対、したがって原子力潜水艦の「寄港」絶対反対と、アメリカの軍事基地撤去の要求、安保共闘の再開と結合すべきものである。(pp.207-208)

●〜〜村上の指摘〜〜
《主張の要点と巨視的な限界》
・時短・有休 (本工)
・婦人労働者の「既得権」 (母性保護)
・同一労働同一賃金 (男女)
・全国一律最低賃金制



■I 196601→19780220 「「合理化」と婦人労働――差別・労働強化・無権利」,『婦人労働の理論』,青木書店,pp.14-29

「そして婦人労働者は、超過搾取の源泉として、低賃金のもとにおかれ労働を強化されているばかりでなく、米日独占資 >15> 本による労働者と勤労者にたいする抑圧政策と低賃金政策の結果、過剰人口がたえず創出され、より多くの無権利で安価な搾取材料、すなわちパートタイマーや内職者がつくりだされているのである」(pp.14-15)

「第一に、機械は婦人および児童労働の現実的条件となり、資本の人間的搾取材料=労働者を増加したが、これにより、成年男子労働者の労働力の価値を低下させ、婦人および児童労働の部面で労働 >16> 者と資本家の契約を変更し、精神と肉体を荒廃させた。そして第二に、婦人、児童が職場に大量に導入されることによって、資本の専制支配に向けていた反抗をついに打破し、機械の利用による長時間労働と労働強化が実現した」(pp.15-16)

熟練/未熟練の区別 → 性と年齢による区別

「婦人労働者にたいしては、差別と労働強化を主とする搾取体系を「合理化」の過程で完備し、同時に、低賃金無権利労働者を経済法則としてつくりだす政策が、米日独占資本の「合理化」政策の根幹となっていった」(p.19)

「労働組合がこのような婦人労働者の条件に考慮をはらわないかぎり、資本は、労働と家事の重みに圧倒された婦人労働者を、無遠慮に、しかも容易に職場からしめだすこと >25> になろう。
 かくして、より「従順」な婦人労働者としての労働婦人にたいする搾取は強化されるが、同時に政策的な圧迫も加えられる。「合理化」の進行とともに拡大される男女の差別政策である。それは、婦人労働者にたいする圧迫の強化によってひきおこされ、既得権をとりあげることによって定着される。そして労働者全体の労働条件をひき下げるためのくさびとして用いられる。米日独占資本は「技術革新」と「合理化」の過程で、搾取を強め労働者の抵抗をうちくだく手段として婦人の既得権をとりあげ、差別の拡大をとおして労働者に分裂をもちこんでいる。安定賃金と職務給は、婦人の賃金を最低におしとどめ、差別賃金を固定化しながら労働者を分裂させる政策といえよう」(pp.24-25)

▼五 婦人労働者の無権利化政策
 「技術革新」と「合理化」のなかで、婦人は、追加労働力として吸引され、超過搾取の源泉として過当な労働強化と低賃金を強制されながら、一方では労働者にたいする分裂のくさびとして抑圧されてきた。そして、労働者数の増加と婦人労働者数の増加は、主として農民にたいする系統的な収奪の強化と、都市勤労者、労働者にたいする抑圧の結果でもあった。戦後の独占資本の攻撃は、さきにもふれたように、男女、年齢による差別、および臨時工、社外工の広範な採用による労働者にたいする分裂を軸として推進されたが、さらに内職とパートタイムが広く現象していることを重視しなければならない。
 内職とパートタイムは、一方では、資本のための搾取領域の、無権利で低廉な搾取材料の無尽蔵の拡大であるが、他方では、それは政策的につくりだされるものであり、若年定年制や結婚退社制によって補強され、また、婦人が育児の「義務」を家庭にしりぞいて果たしたあとで、ふたたび搾取される制度として考えられている。
 経済審議会は「人的能力開発の課題と対策」のなかで、このような婦人たちのパート化を計画し、@経営秩序における婦人労働の再評価、A婦人の再就職の問題、Bパートタイム制度の活用、C婦人労働者の職業生活に必要な教育訓練の充実強化、の四点をあげて検討している。この内容を要約すれば、婦人の労働力は活用しなければならないが、婦人は必然的に育児のために一時家庭に帰り、その任務を終えたとき再就職あるいはパートタイムの仕事をするようになる、というのである。この図式が妥当するものとして前提されており、パートタイマーについては、フルタイムの仕事についている男女雇用者の労働条件がひ >27> き下げられることのないよう留意する必要があると付言しているが、ここでは若年労働婦人が育児のために退職することを前提としたうえで、いったん職を離れた婦人が、ふたたび職についたりパートタイマーになったとき、無権利、低賃金でまったく臨時的な地位しかあたえられないという事実が無視されている。
 婦人労働者のパートタイマー化は、彼女らを臨時雇よりもさらに不安定なものにするだけでなく、実質は本雇と同様かそれ以上の長時間労働が強いられる。つぎは、募集広告(一九六五年一一月当時)の一例である。[……]右のように労働日の時間によって時間単価に差別をつけ、皆勤手当をつけ、「皆勤成績良好者には一般従業員に登用」というただし書きをつけて長時間労働を強制しようとするのである。しかもこれは、パートタイマーの多くの人びとが、安定した「雇用関係」と社会保険等の権利を享受できる本雇になることをのぞんでいることを示してさえいる。婦人のパートタイマー化は、事実上、労働者にたいしていっさいの責 >28> 任をおわず、いつでも自由に馘首できる労働者を大量につくりだすばかりか、その労働者を内職の領域においこもうとするものである。じっさい、工場労働者のパートタイマー化とならんで内職仕事もますます増加している。[……]
 現今、婦人労働者の低賃金や内職の悪条件が一般的賃金水準に影響し、夫の賃金をひき下げる結果になっているとしても、婦人労働者や内職者が、安価な労働力としてたえず増加している事実は、労働力の安売りをすべきでないという理由で、社会的生産から婦人をひきあげさせようとする努力がいかに無意味であるかをしめしている。むしろ、社会的生産における婦人の役割の増大という事実にたって、低賃金と差別と劣悪な労働条件にたいする闘争を組織し、内職者の孤立性、分散性を排除してみずからたたかえる態勢をつくりあげるべきであろう。
 米日独占資本の婦人労働にたいする搾取の図式は、旧来の家族生活を仲介として女子労働力のいれかえをたえずおこない、一度家庭においかえした婦人をふたたび生産労働にひきだし、賃金水準と労働条件の錘りとしながら搾取の対象にしようとするのである。この図式は、日本の産業構造を前提としてえがかれた労働者階級にたいする搾取の構図である。しかも婦人労働者をパートタイマー化し内職者化することによって、生産労働にしめる婦人の役割を軽んじ、闘争力を弱めようとするものである。
 婦人労働者にたいする資本の抑圧は、以上のように、被搾取者としての抑圧と、労働者階級にたいする >29> 資本の攻撃点としての抑圧という二重の性格をもち、両者はたがいに相乗的に強めあって「合理化」における主要な手段となっている。そして、労働者階級にたいする資本の攻撃点としての意味では、婦人労働者の問題は全労働者の問題として把握されねばならない。また分裂政策という面からは、臨時工、社外工、下請労働者、パートタイマーなどと同じ地位をみなければならない。
 現在、日本の経済は深刻な自己矛盾におちいっており、米日独占資本は、労働者にたいする抑圧の強化と首切りおよび国家機関を利用した大衆収奪と、対外進出によって矛盾の「解決」をはかろうとしている。これらの資本家的「解決」の過程が、婦人労働者や臨時工、パートタイマーなど差別されている労働者の首切りや抑圧の強化からはじめられているとすれば、この首切りや抑圧の強化に反対してたたかい、米日独占資本によって収奪されているすべての国民を統一してたたかうことはさしせまった課題である。
(嶋津[1966→1978:26-29])



■II 197204→19780220 「今日の「男女差別」と平等の要求」,『婦人労働の理論』,青木書店,pp.30-48

▼二 今日の政府、独占資本の男女差別政策
 1 女子の不安定雇用
「一九五五年から開始された「高度成長政策」の根幹をなすものは、「技術革新」による労働密度の増大、あるいは最新の機械を利用する相対的剰余価値の生産と、その補強策として低賃金労働力維持政策という二つの重点をおくものであった。そして、低賃金労働力を維持し、また創出するための広範な基盤を婦人労働者および賃労働の機会をみいだそうとする「主婦」にもとめた。したがって当然のこと >37> ながら一方では、婦人労働力政策は、主として独占資本のがわから、職務給の導入と、若年定年制、結婚退職制の企業内への導入にはじまり、他方では、パートタイマー制が問題になりはじめたのである(「今日の婦人労働」前掲、三五ページ)、たとえば五六年にすでに、ある百貨店では二五歳定年制がだされ、五九年には東京電力で結婚退職製制が会社側から労働協約改訂と交換条件にだされている(労働組合の反撃で撤回した)。また、パートタイマーについても、婦人労働者のうち週当り労働時間が三五時間未満の者に限定してみれば、五〇年代後半は五一万人から五六万人の間をしめ、このころはほとんど量的な変化がないといわれている(労働省・道正邦彦「パートタイマーの賃金と雇用」)が、この期間をとおしてすでに婦人労働者の約一割強はパートタイマーであった。
 資本主義的差別のもっとも顕著なものとして職務給賃金をあげることができるが、その土台は新しい機械体系にあり、そのため五〇年代後半は、機械設備の近代化とともに急速に職務給が導入された。それは婦人の労働分野の拡大とも結合して採用された」(pp.36-37)

◇196301 経済審議会答申:
「婦人労働の特色は若年、単純補助的労働、結婚までの短期労働、したがって労働能力の低さをあげ、「将来は現在のアメリカ婦人にみられる如く既婚者の再雇用を含めたより広範な活用が期待される」と、積極的に婦人労働力を「活用」する政策をうちだしている。この政策は、婦人の「特性」を生かし、家庭責任を果たしながら就労するパートタイマー政策であった」(p.38)

◇196912 経済審議会労働力研究委員会『労働力需要の展望と政策の方向』(報告書)
「経済審議会の報告によってしめされている婦人労働力政策の中心課題は、「家庭責任」をはたしつつパ >38→40> ートタイムで労働力の需要に応ずる中高年齢層の低賃金労働力政策である。したがって、男女の生活におけるパターンをあらかじめ設定し、「女性」の「特性」を家庭生活の育児家事におき、とくに育児を重点にしながら政府、独占資本の要請にこたえさせるという内容のものであるから、労働力の対象は家庭の「主婦」であることはいうまでもない。家庭の「主婦」は、社会的訓練は欠如しているが安価な労働力である。また、なによりも景気の安全弁的な存在(いわゆる「ドルショック」以後、婦人労働者の解雇がおこなわれているが、その対象はまずパートタイマーであり、ついで既婚婦人である。それにもかかわらず一方ではパートタイマーの募集がたえずおこなわれている)であるとする。このような婦人労働者にたいするかれらの差別認識が、今日の資本主義的差別観の基本をなしていると思われる」(pp.38-40)

◇196807 東京商工会議所『明年度の労働政策に関する要望』
「そのなかで、「主婦その他の潜在労働力の有効労働力化に一段と努力されたい。なお、主婦労働力の雇用促進については別に『主婦労働力の雇用に関する政府への要望と企業・主婦への提言』を行なっているので、この線に即して努力されたい」とのべ、「主婦パートタイマーに適用する労働基準の解釈の明確化」をうちだし、婦人労働にかんする見解を明らかにしている。同会議所は六九年七月「労働基準の全面的洗い直し作業を早急に開始されたい」との「要望」をおこない、「女子の各種就業制限の緩和等につき考慮されたい」という具体的提案をおこなっている。その後、七〇年一〇月には『労働基準法に関する意見』を発表し、「とくに女子については、体位の向上と職場環境の整備に伴い、これに対する労働基準法を改めて、女子の能力を充分に発揮させる必要性も増大しつつある」として、早急に検討すべき諸点の第一に「パートタイマーの労働基準の明確化」をあげ、休憩時間についても「家事労働との両立を容易にするため」休憩時間を短縮して早く帰宅できるように配慮したいなどの点をあげている。この「意見」にはまた、「女 >41> 子の時間外労働の制限緩和について」「女子の危険有害業務の就業制限の緩和について」などをあげ、「長期的に研究、検討すべき諸点」のなかでも「女子の深夜労働禁止の緩和について」「生理休暇の規定の削除等について」をあげて、母性保護規定は「過保護」であるとし、労働者がかちとってきた権利を剥奪しようとしているのである。すなわち一方では、資本主義的「平等」のたてまえから母性保護の権利まで奪い、他方では、育児家事など「家庭責任」をになう婦人の狩りだしによる搾取体系の完備がこの「意見」によってうかがえる」(pp.40-41)

◇197005 経済企画庁『新経済社会発展計画』
「労働力の有効活用」:「主婦としての責務や労働能力」など、この層の「特質」が強調された施策が考慮されている。
◇197008 自民党労働問題調査会『七〇年代の労働政策』――「勤労婦人福祉対策五ヵ年計画」「勤労婦人福祉法」:婦人労働力政策の有効実現の手段。

◇19720218 婦人少年問題審議会→労働大臣宛『勤労婦人の福祉に関する立法の基本構想について(答申)』
「すなわち、「勤労婦人が職業生活と育児等の家庭責任とを調和させようとすることから生ずる特殊な問題の解決を図ることを容易にするとともに、勤労婦人の能力を有効に発揮して充実した職業生活を営むことができるようにするために、国、地方公共団体及び事業主が協力して適切な措置を講ずる」という趣旨の内容で、その「基本的理念」は、@「次の世代を生育するという重要な役割を有しつつ」、A「社会・経済の進展をささえる者であることにかんがみ」「職業生活と育児等の家庭責任を調和し」「能力を有効に発揮」できるように >42> する施策であるという。育児を中心に家庭責任を強く意識づけた法案であるとともに、従来、かちとってきた権利を大きくしりぞけて、国、地方公共団体および事業主が一方的恩恵的に与えようという法案であり、中高年齢婦人のパートタイマー対策でもある。したがって、勤労婦人のための育児については、「事業主は、育児のための休業及び授乳のための設備等乳幼児の保育のための便宜を供与する」など、設備にかぎられた内容になっている。この施行にあたって「憲法に規定されている男女平等の趣旨を生かし」など表現上も矛盾を露呈した法案といわざるをえない。日本における婦人の労働力政策は、OECD、ILOをとおしてアメリカの影響を強く受けていった」(p.41-42)

▼三 平等要求と民主主義の課題
「今日の国家独占資本主義のもとでの一連の婦人政策は、「高度成長政策」を遂行するうえで大きな役割 >46> をになってきたが、同時にその破綻をしめすものであった。それは二つの面から認められる。一つは、高搾取を実現するために、体系化された資本主義的差別政策によって権利を侵害し、いっそう反動化の正体をあらわにし、そのためますます広い層の民主主義的平等要求を、なかでも婦人労働者の平等にたいする権利要求をかきたてていることであり、二つには、すべての婦人をたとえ安価であるにせよ、労働力としてかりたてる政策によって労働者階級の物質的力を量的に増大したことである。一面では母性破壊などのきわめて憂慮すべき事態により、プロレタリア家族の解体をもひきおこさずにはおかないにしても、その量的増大は物的力として無視できない大きさにまで発展していることである」(pp.45-46)



■III 1970→19780220 「現代の貧困と婦人労働」,『婦人労働の理論』,青木書店,pp.49-75

40〜54歳の女子労働力率:1966年頃から上昇 =中高年齢婦人の労働力化

「「家庭婦人」の労働力の定在化と拡大傾向は、成年男子労働者の価値分割を推進するものであり、賃金水準を悪化させる現代的貧困の指標なのである。
 「家庭婦人」の労働力は、一方では、婦人の人間的水準の向上と社会的地位の向上をもたらすが、その反面では、現代的貧困の指標でもあるし、また、資本の超過利潤の源泉ともなっているのである」(p.63)

▼三 現代における中高年婦人労働の問題点
 1 パートタイマー
「『婦人と年少者』季刊第九号(一九六九年七月)所載「日本におけるパートタイム雇用の特徴について」(小林巧)によると、日本のパートタイムは「戦後まもない一九五〇年、電電公社がかつて電話局で働いたことのある既婚女子一四一名を採用したことに端を発し」、一九五四年秋には東京大丸デパートが二五〇名のパートタイマーを募集し、「ついで銀座松屋が土曜、日曜、祭日だけ勤務するパートタイマーの募集を始めた」ということであるが、パートタイマー政策が米日独占資本の婦人労働力政策として自覚的積 >64> 極的にうちだされたのは、一九六三年一月、池田内閣における経済審議会の答申としてまとめられた「経済発展における人的能力開発の課題と対策」においてであった。そして、このころは、まだふろたきの時間などが計算にはいっていたにしても、いわゆる耐久消費財やインスタント食品の普及によって、「家庭婦人」の家事労働時間の短縮が指摘されはじめた。そして、家事育児だけでは満足できない婦人の存在が、労働力政策の対象として注目されはじめ、また、それらの婦人からも、「社会見学を兼ねてのパートタイムのアルバイトを求」(『朝日新聞』一九六二年一二月二八日)める意思が傾向としてあらわれはじめていた。
 一九六五年までに、パートタイマーという言葉は日常的となっていた」(pp.63-64)

◇196606 労働省「既婚女子労働者に関する調査」
「これによると、当然のことながら、死離別者の大部分が生活をささえており、全体としてみると生活の支え、生活費のたし、子どもの学費にするというものが多い。有夫の既婚婦人の六二・五%が生活費のたしにすると答えており、「生活を支えている」と合計すると八二・一%が生活のために働いていることになる」(p.66)

「数年来、日本における資本蓄積は急激におこなわれた。その結果、生活欲求の増進にともなう青少年の上級学校への進学率の上昇とあいまって、いわゆる「労働力不足」の現象がおこり、パートタイマーにたいする需要が急増した。そして、はやくも「主婦」労働力は限界に近づいたことを示すきざしがみえはじめた」(p.66)

「パートタイマーは、いま、その限界に近づきつつある状態を反映して、一面では社員待遇になる傾向を示しながら、他の面では、新卒以外の婦人労働者のすべてをパートタイマー化しようとする、きわめて悪質な資本家的衝動を示している」(p.68)

「今後、このような恒常的な「戦力」としてのパートタイマーの労働条件を監視し、五年、一〇年という勤続のパートタイマーは、個人加入の組合に組織し、労働時間短縮の要求と結合して、基本的には正規の社員にしていく方向を明示することが必要であろう。パートタイマーを大量に使用する政策は、日本では「高度経済成長政策」における積極的労働力政策として本格的に採用されたが、家庭責任との両立という観点ではすでにILO、OECDによって世界の資本主義諸国で促進されていた」(p.69)

▼おわりに
「一九七〇年代の婦人労働は、米日独占資本の積極的労働力政策によって、いっそうの低賃金で「活用」され、搾取が強化されようとしているが、より本質的な側面は、婦人労働者が、資本によって鍛えられ、訓練され、男子との「平等」の労働と労働意欲を要求され、広範な婦人労働者のあいだに、母性保護その他の諸権利の意義の自覚や、民主主義的志向の強化があらわれる現実的条件が整えられることである」(p.75)


*作成:村上 潔(立命館大学大学院先端総合学術研究科)
UP: 20081226 REV:
WHO  ◇女性の労働・家事労働・性別分業  ◇主婦論争関連文献

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