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大日向 雅美
おおひなた・まさみ



『子育てママのSOS』(↓)著者プロフィールより

恵泉女学園大学教授。1950年、神奈川県生まれ。専門は心理学。お茶の水女子大学卒
業。同大学大学院修士課程を経て、東京都立大学大学院博士課程終了。学術博士(お
茶の水女子大学)。1955年〜1996年、オックスフォード大学客員研究員として留学。
東京都知事参与(1997年5月〜1999年3月)、文部省「男女共同参画の視点に立った家
庭教育推進方策に関する調査研究委員会」座長などを歴任。主な著書に。『母性の研
究』(川島書店)、『子育てと出会うとき』(NHKブックス) 、『母性愛神話の罠』
(日本評論者)、『母性は女の勲章ですか?』(扶桑社)、『子育てが嫌になると
き、つらいとき』(主婦の友社)、『のびのびしつけブック』(主婦の友社:監
修)、『さみしいママにさよなら』(主婦の友社:監修)、訳書(共訳)に『母性愛
神話のまぼろし』(大修館書店)『母親』(朝日新聞社)ほか多数。


◆20000410 『母性愛神話の罠』
 日本評論社 p.231 1700円+税

 *以下は立岩のデータベースに入っていたものだけ。

◆1982 「母性を問い直すとき――母親の心理的安定と充足を求めて」
 佐々木保行・高野陽・大日向雅美・神馬由貴子・芹沢茂登子『育児ノイローゼ』,有斐閣
◆1986 「教師と幼児の人間関係――幼児期の母子関係偏重の問題点」
 寺田晃・竹下由紀子・佐々木保行編『教師の心理(一)』,有斐閣
◆19880605 『母性の研究』
 川島書店,337p. 3800 ★三鷹143
◆19861115 「我が国の父権に関する歴史的検討」
 『女性学年報』07:001-010
◆1989 「日本における母性概念の特性――日本の社会的変動と家族問題を解くキーワードとして」
 『平成元年度女性学国際セミナー・性役割を考える――地球的視点から』,国立婦人教育会館:084-092
◆1990 「日本社会の変遷と母性
」 小嶋秀夫・大日向雅美編『こころの科学30 特別企画=母性』:085-091
◆1990 「日本社会の変遷と母性」
 『こころの科学』30(小嶋秀夫・大日向雅美編 特別企画=母性):85-91,日本評論社
◆1990-1991 「母親考」
 『まいんど』31〜36,神奈川県児童医療福祉財団小児医療相談センター
◆1991 「子産み・子育てをめぐる新たなる分断――小産化時代を迎えて」
 『平成二年度家庭教育国際セミナー』国立婦人教育会館:070-076
◆1991 「<一・五七ショック>を分析する」
 『助産婦雑誌』45-05:364-372
 1991 「1.57ショックを分析する」
 『助産婦雑誌』45-05:008-016
◆19910930 「「母性/父性」から「育児性」へ」
 原ひろ子・館かおる編[1991:205-229]*
*原 ひろ子・館 かおる 編 19910930 『母性から次世代育成力へ――産み育てる社会のために』,新曜社,355p. 2884 ※
◆19920420 『母性は女の勲章ですか?』
 産経新聞社,310p. 1500 ★三鷹367.2

◆大日向 雅美 「3歳児神話を検証する・2――育児の現場から」
 日本赤ちゃん学会HP
 http://www.crn.or.jp/LABO/BABY/SCIENCE/OHINATA.HTM
 

◆『子育てと出会うとき』
 日本放送出版協会 NHKブックス
 1999年2月25日発行

 紹介:山内理恵子(立命館大学政策科学部3回生)
 掲載:20020731

 <目次>
  はじめに
 第T部 子育てに虚しさを感じるとき
  第一章 今どきの母親症候群
  第二章 互いに孤独な夫と母親たち
  第三章 子育ては母親の至福の喜びか?
第4章 母性神話からの解放と未成熟な父母たち
  第U部 再び、子育てと出会うとき 
第5章 母性神話にふりまわされないために
第6章 新しい子育てを求めて
第7章 性を超えた子育ての時代に
  終わりに
   (ページ数:249)  

 3歳未満のこどものいる女性の約80%は専業主婦である。調査をしてみると、育児を楽しみ、母親としての生活に喜びを感じている専業主婦も認められる。だが、ほとんどの場合、専業主婦は育児の負担に苦しみ、社会から排除されているような不安や焦りを覚えているのである。仕事と育児を両立している母親もいろいろな問題を抱えているようだが、育児に苛立ちを感じたり、母親としての自分を受け入れることができずに悩む女性は少なく、このような現象は専業主婦特有の苦悩なのである。
 どうして現代の専業主婦は母親としての暮らしに不満を抱えているのだろうか。
 現代の女性は「男女は平等である」という教育を受け、結婚前には仕事を持ち、趣味や余暇を楽しんでいる。しかし、こどもが産まれ母親になった途端、家庭の中で専業主婦になり育児に明け暮れる日々を送ることになってしまうのである。女性も仕事をしていた時は、経済効率というものさしで努力を図ることができ、目標を持ち、それを達成することによる満足感も得られていた。一方、育児は将来を託すこどもを育てる重要な仕事であり、こどもの育っていく姿には大きな喜びや感動があるはずである。しかし、育児は精神的にも肉体的にも大変なものなのだ。手がかかる割にこどもの成長はゆっくりしていて、社会で働くことと比較すると、自分の努力の成果や目標の達成が目に見えにくい。毎日こどもと向き合う時間が長く続くと、育児の単調さや忙しい毎日に、母親としての役割を受け入れることがむなしく感じてしまうのだろう。
 だが、日本の社会には、「女性には母性があるのだから、女性が子育てをするのが当たり前で、こどもにとってもそれが一番良いのだ」という考えが根強くあり、先ほど述べた、専業主婦の育児に対する不満に目が向けられていないのが現状である。それどころか、母親一人に育児を押しつけて、その重すぎる負担の軽減に努めようとする社会体制も整っておらず、母親の努力に対しても十分に評価されないのである。それは、もっとも身近な存在である夫も例外ではない。社会から排除されているという孤立感と毎日の暮らしに満足できない思いを抱えながら育児に追われる専業主婦の胸のうちは寂しさや虚しさでいっぱいなのである。
 この本では、乳幼児をもつ女性の圧倒的に多数の専業主婦の思いに注目し、その原因と対策を考えている。
 第T部では、育児に専念している母親たちの苦悩を紹介し、それが女性一人に押しつけられている従来の母性観によってもたらされた弊害であることを指摘する。まず最初に、「今どきの母親症候群」について述べられている。ここでは調査研究や子育ての相談を例として取り上げ、最近の若い母親たちの言動を紹介し、母親をそうした窮地に追い込んでいる様々な原因を探っている。そして、育児に専念する母親の苦悩を見ぬふりをしてきた従来の母親観の問題点を取り上げ、母親観からの本当の意味での解放について考えている。
 第U部では、人々が母性神話から解放されて、人間らしいゆとりをもって子育てができる道を模索する。まず、従来の母性観がどのような歴史的経緯で作られてきたかについて明らかにしている。そもそも一般的には育児は女性の仕事であり、とくに3歳までは母親が面倒を見なければならないとする考え方が支配的であるが、はたしてそれは正しいことなのだろうか。3歳児神話の是非を問うだけではなく、歴史をたどり、また同時に育児に必要な新たな理念を提案する。また、この本の中で最も強調して主張されている「母親一人で担う子育てからの脱却」をめざす動きについても書かれている。乳幼児をもつ女性に専業主婦としての生活を強いる社会の体制を変えていくためには問題が山積みだが、身近なところから少しずつ問題に取り組んでいくことも重要だと述べられている。そして最後には、男女みんなで育児を共有していくために必要な考え方を若い世代へのメッセージとしてまとめている。従来の母親観からの解放は、性差にとらわれず男女が自分らしい生き方をもとめ、ともに協力し生きていける社会のなかでこそ実現していけるものであり、そうした理念をこれから親となっていく若い世代に伝えていく必要性をうったえている。

◎紹介:加納 亜沙美(立命館大学政策科学部4回生)
 掲載:20020801

T.子育てに虚しさを感じるとき 〜母親たちの声から
 子育てに専念している母親たちの苦悩を紹介する。まずは、いまどきの母親症
候群についてであるが、地味ではあっても母親であることにどっしりと腰を落ち
着けていた、かつての母親のような安定感が今の母親にはない。むしろ、母親で
あることに満足できない苛立ちの雰囲気を彼女たちの多くは漂わせている。いま
どきのママは限りなくさみしいのだ。かつて、女性は母親であることで社会から
も家庭からも認められていた。結婚して子供を産み、母として生きることしか女
性の生き方はなかったといった方が正確かもしれない。母となることは女性とし
ての存在意義を自他ともに認めさせる唯一の道だった。かつての母親の安定感は
そうしたところから生まれたものだった。それに比べて今の時代は女性であって
も社会で活躍することは可能であり、多様な生き方ができるとされている。社会
と関わるような生きがいを持たなければ、生きている意味が見出せないという心
理にかき立てられる時代だ。そうしてみると子育ての中の母親の焦りや苛立ち
は、小さい子をかかえて家庭に閉じこもらざるを得ない状況を余儀なくされて、
社会との接点をもてない焦りであり、苛立ちではないだろうか。自分の子育てぶ
りをマスメディアに取り上げてもらいたいと必死になる母親、飢餓状態のように
友達を求める母親、子供の早期教育に狂う母親、子育てに使用説明書を求めた
り、自分の非は一切認めようとしない母親…、いずれも今の自分の空虚さを埋め
ようとする必死のあがきであり、空虚さを紛らわすために自分の子育てに完璧さ
を追求せざるを得なくなっている姿なのである。一見非常識に見えて理解しがた
い思いにさせられる最近の母親の言動であるが、それは単に母性を失ったからと
いう理由づけで説明のつく問題ではなく、現代に生きる女性たちに共通の心の問
題がそのなかに垣間見られている。母親たちが直面しているさみしさや苛立ちの
問題の源は、日本社会が長くもってきた母親観の歪みにほかならない。子育て
は、女性の母性にこそ適正があるとする母性観のもとで、女性に子育て負担の大
半が課せられただけではなく、夫婦が向き合う必要性に目を閉ざさせ、社会的に
疎外された女性は母子密着状態の中で、自らも子供化していかざるを得ない。そ
うした不安定な状態が最近の母親たちの言動の根源にある。
 次に前文で、夫婦間という言葉をだしたが、夫との関係について触れる。母親
たちの日々のさみしさ、虚しさの一因のなかには、夫との間に対等な人間関係を
築くことができない苦しみもある。昔、男性は家事育児に関わらなかった。もっ
ぱら妻が家事や育児を担ってきたのだ。それに比べてれば最近の男性は非常に家
庭的になっている。子供の世話をこまめに見る育児パパも多いではないか。しか
し、はたして最近の男性はそんなに家事をこまめにするようになったのであろう
か。また子育てに明け暮れる母親の日常は、それほど安楽なものになったのだろ
うか。実際に多くの母親に夫の家事育児参加状況をただしてみても、男性たちは
一般にいわれているほどには家事育児をしていないのが実態である。

U.再び、子育てと出会うとき
 母親は母性本能を持っているのだから、その母親が子育てを担うのが当然だと
する理念にも、近年ようやく変化の兆しがあらわれて、社会が積極的に子育てを
支援する必要があるという政策が打ち出されつつある。そのきっかけは少子化で
ある。1989年の合計特殊出生率が1・57%であったと発表された。以来、
出生率は低下を続け、1997年には1.39にまでなった。現在の人口を維持
するためには2.08の合計特殊出生率が必要だといわれている。それから比べ
ると大幅な落ち込みであるという危機感もあって、この数年、各方面で少子化対
策が打ち出されている。もっとも、そうした少子化対策の中には、あからさまな
産めよ増やせよ政策があったり、実効性に疑問をもたざるを得ないもの、あるい
は経済的発想が優先されすぎているものなど、問題点も多々指摘できる。しかし
ながら、少子化が議論される過程で、子育ての重要性とともに、母親の負担の大
きさに社会が気付き始めたのはかなりのプラスといえよう。
 こうした少子化に対する危機感の高まりの中で、母性愛強調路線は顕著に認め
られる風潮である。その結果、人々の性別役割分業観にも大きな変化が見られな
いのが現状だ。例えば、「男は仕事、女は家庭」という性別役割分業を肯定する人
の比率は低下しているものの、他方で「女性は仕事をもつのはよいが、家事・育
児はきちんとするべきである」という考えについて、男女とも8割前後が賛成し
ている。ここにも子育ては母親が担うべきだという意見が、人々の間で依然とし
て根強い実態が示されている。こうした人々の意識の背後には、少子高齢社会へ
の危機感が作用していると考えられる。この少子化によって、世間の意識も変化
し女性だけでなく男性も子育てに積極的に関わろうとする動きが見られだした。
 これからの社会を考えていった場合、男女共同参画社会の実現を目指していか
なければならない。「男は仕事、女は家庭」ではなく「男も女も、仕事も家庭も」
という方向である。つまり、男女ともにこれからは家庭と社会の両方に基盤を持
った生活が必要である。そして、そうした男女共同参画社会に向けた人々の意識
改革は、家庭を持ったり親となってからでは実際のところ手遅れであり、もっと
早い時期から行われることが大切である。
 
V.まとめ
 子育てが困難になっている現状は、女性や母親の問題ではなく、男性の生き方
や、職場、地域など、日本社会全体に関わる問題である。問題の多さ、根の深さ
に、解決に積極的に取り組んでいかなければならない。男女が対等なパートナー
シップのもとで子育てに励める社会を現実するには、先ほども述べたようにまだ
多くの課題がある。しかし、男女共同参画社会のようにこれからの社会を生きる
私たちは何を目指すべきかの方向性は示されたといえよう。あとはそれをいかに
実現化していくか、私たち一人ひとりの取り組みが問われているときだ。各自が
自分の足元の問題から取り組み始める大切さは、いうまでもない。幼い子供をか
かえる母親の日々の不満や寂しさの背後には、満たされない夫婦の関係がしばし
ばみられる。パートナーの言動に不満を覚えたとしても、将来とも夫または妻が
同じことを思い、同じ行動をとるとは限らない。むしろ、相手も自分も代わる可
能性を信じて、あきらめずに互いの生き方を確かめ合う努力を続ける必要があ
る。同様に、現在の自分自身の生き方に満たされないのであれば、寂しさを子供
にあらわすのではなく、自身が仕事への復帰や社会との接点を見出し、動き始め
てみることが大切だ。

・コメント
育児はすばらしい経験であり、多くの喜びと発見を分かち合う営みだが、なぜ母
親だけが犠牲になり、生活の全てを子育てに捧げねばならないのか。子どもが可
愛く思えないときもある。社会で働く夫に比べて、自分だけ取り残され、子育て
に束縛されていらいらするときもある。しかし、行き場のない不全感、閉塞感に
苛まれ、自分を見失ってしまいそうな人が増えている。この本は六千人の聞き取
り調査をはじめ、母性研究の成果から、子育ての実態と母親の苛立ちに迫り、母
子と社会とのつながりのネットワークや、男と女が仕事と家庭を、対等に担う新
たな子育てを模索している。これらをふまえ、子育てはまだ経験したことがない
ため想像だけの世界であったが、たくさんの問題をかかえていることを思い知ら
された。現在は少しずつではあるが、子育ての見方、考え方が変わってきてい
る。(女性だからという考えではなく男女一緒にという考え方の変化)これから
は、コミュニケーションが重要であると考える。夫婦間でしっかりとコミュニケ
ーションが取れていれば、何でお互い悩んでいるのかがわかり、不満が解消され
る。そして、前文で男女共同参画社会に向けた人々の意識改革は早いほうがよい
と触れたが、学校で学ぶことも必要であるが、一番は家庭の中で学んでいくのが
よい方法であると考える。よって、あきらめずに、焦らずに家族や社会との接点
を求めつづけることが、夫婦間にも子供にもいい影響を与えていくと感じた。

 

◆『子育てママのSOS――育児をしなくとも「父」という「夫」にわかって欲しい』

 大日向 雅美 (おおひなた まさみ)
 20001220
 法研,238p.,1300円

 紹介:ST(立命館大学政策科学部3回生)
 掲載:20020806

はじめに 夫と妻の心のずれ−ルーツは子育て期に

  子どもが独立し、長い間連れ添った夫婦が再び夫婦2人の時間を過ごそうとする
とき、妻と夫との間には大きなギャップができてしまっていることが多い。著者は、
そのようなみぞができる大きな要因の一つが、子育て期の妻の夫に対する落胆と悲し
みからきていると指摘している。さらに、「なぜ子育て期に夫と妻の間に差に心のず
れがしょうじてしまうのか、その原因を掘り下げていくと、育児は女性が担うものと
いう母性観が、日本社会に根強く蔓延している状況に大半の責任を求められる。」
(p6)として、夫が妻の子育て期の思いを理解する重要性とともに、社会の責任を
問うている。


第一章  「子育てがつらい」という妻の愚痴を聞いた事がありますか?

  全国の母親6000余名を対象としたアンケート調査の結果、8〜9割が「子育てをつ
らく思い、子どもが可愛く思えない事がある」と答えている。しかし、多くの夫たち
は「母親にとって子育てが喜びのはず」という思い込みからこの結果を信じらず、子
育てに対する妻たちのSOSをキャッチできないでいる。1999年に東京の文京区で起き
た「女児殺害事件」も子育ての辛さを訴えるSOSを誰にもキャッチしてもらえなかっ
た母親の悲劇の一例である。この事件が報道されると、新聞社やテレビ局に「一つ間
違えたら、私も同じ過ちを犯しかねない」という手紙やFAX,電話が何百通を寄せら
れたという。

第二章 妻がどんな一日を過ごしているか知っていますか?

  赤ちゃんは、可愛い存在である。しかし同時に、世話和する相手の都合などお構
いなしに、自分中心のリズムで生き、欲求がかなえられるまで最大限主張し続ける。
そのような存在と毎日、24時間つきあわなければならないため、母親たちは疲労して
いる。いくつかの事例がある。例えば、トイレに入るとお母さんが消えてしまったと
思って赤ちゃんが泣きわめくので、一人でゆっくりトイレに入る事もできない。
(p34)また、抱いていないと泣き止まないため、一日中抱き続けなければなら
ず、腱鞘炎になって腕が上がらなくなった。それでも、育児は続けなければならな
い。(p35)
  また、母親は、子どもの将来が自分の子育てのしかた一つにかかっているという
プレッシャーを常に抱えている。子どもが起こした事件や問題の親、とりわけ母親の
しつけが悪いとして、全責任を押し付ける社会の風潮にも問題がある。1997年に起き
た神戸市須磨区の小学生連続殺人事件など、子どもの非行や犯罪関係の報道のたびに
母親は過剰な育児不安を募らせている。(p39)
  多くの母親が、24時間の育児の中で社会との接点を失い、孤独と疎外感にさいな
まされている。「接続詞を使って、ぶんせつのある長い日本語を何日も話していな
い」「日本語を話したい。できれば夫と話したい」という母親たちの声は切実であ
る。(p42,43)また、子育て中は、女性たちが子育て以外のことに携わる機会
を社会や周囲の人が奪っている。(44,45,49)さらに、母親になった途端、
「○○ちゃんのお母さん」としか呼ばれなくなり、母親も子どもとともに子ども扱い
を受けがちで、誰にも一人の大人の女性として見てもらえなくなる虚しさを感じてい
る。(44〜48)
  子育てが母親の唯一の仕事になってしまっているがゆえに、子どもの成長が母親
の唯一の自己実現の手段になってしまう。そのため、母親が子に対して過剰に期待を
かけたり、子どもをコントロールしようとしたりするということがおこる。例えば、
用事に化粧をしたり、お受験をさせたりと、子どもが母親の自尊心を満たすためのブ
ランド品となってしまっている事がある。(50〜61)

第三章 やはり夫はわかってくれない

  妻の訴えを夫がどう受け止めているかという観点から夫婦のずれを見る。すると
妻の育児ストレスに対する夫の無理解が、母子を窮地に追い詰めていることが分か
る。夫は、「子育てはいついかなる時でも、何があっても女性の喜びのはず」とう母
性愛信仰から、妻の訴えを重く取っていない。(70)また、妻とともに育児をし、
しつけを考えていこうという夫が少ない。さらに、妻の孤独や閉塞状況を理解できて
いない。そして、社会とつながりを持ち、仕事をしたいという妻の願いを理解できて
いない。(99〜108)

第4章 夫の言い分と妻の不満

  夫の立場を理解し、その上で夫婦が再考すべき事を考察する。育児を手伝う気の
ある夫でも、具体的に言われないと何をしていいか分からない事が多く、それがか
えって妻をイライラさせることがある。(117〜119)また、夫の母親が、息子
に育児を手伝わせている嫁を非難したり、ベビーカーを押して買い物をしたりしてい
ると近所の人が「奥さん、ご病気なの?」と聞いてくるなど、周囲の人や夫の手伝い
にくさの原因のひとつになっている。(128,129,152)
  夫が育児をしたくてもできない、もう一つの大きな原因が仕事である。育児をし
たくても出張や残業などの長時間労働で働かざるを得ない現状がある。さらに、男性
が周りに気兼ねなく育児休暇をとれる職場環境が整っているのはまれである。
(144〜149)同時にこれは、ほとんどの女性が直面している障害であり、女性
は育児休暇をとるため企業側が責任ある仕事を任せないという問題もある。男性が安
心して育児に参加できない職場環境は、女性が一人の職業人として評価してもらえな
い職場環境でもあるのだ。(149〜150)

第五章 子育てにまつわる「神話」から抜け出そう

  性差によって子育ての適正に違いがあり、父親よりも母親が子育てをする方が良
いという考え方について考察する。このような考え方の代表である「三歳児神話」を
発達心理学的観点から分析すると、赤ちゃんを育てるのは必ずしも母親である必要は
なく、愛情と責任感の有無が大事であることがわかる。(162〜164)子どもの
幼児期に母親が働いている事も、
母親が働く事を肯定的に受け止めていて、子どもに対して愛情を持って、配慮がなさ
れていれば、子どもに対する悪影響はなく、むしろ良い影響を与える。(166〜
178)

第六章 男が本当に子育てできる社会とは

  子どもを育てる日々の生活のずれが夫婦の心に亀裂をもたらす原因になってい
る。それは、子どもを育てるために妻が育児に専念し、妻子を養うために夫が外で働
いて生計を担うという性別役割分業に起因している。そのため、性別役割分業を問い
直さなくてはならない。
  少子化対策として、行政が子育て支援のために、新エンゼルプランという育児支
援サービスの計画を実施している。(204〜206)また、仕事と家庭の両立支援
をしていくために、働き方の多様性を認めていくべきである。オランダではパートタ
イム労働を促進する事で、子育てもできて経済も成長するという快挙をなしとげた。
このように、育児休暇をとったり、短時間労働従事者が差別されないような法整備が
必要であると同時に、企業もそれを認めていくべきである。(215〜217)

  *コメントはこの紹介の作成者の希望により略。


REV:20080414
母性  ◇WHO

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