HOME > WHO >

大塚 淳子

おおつか あつこ


Tweet
last update:20210212


■論文

◆大塚淳子,2018,「真に多様な働き方が実現できる社会づくりに向けて(特集:働くことの意義と支援を問う)」『精神医療』91:2-9.
p. 8
以前から、各地で精神障害者の居場所作りに力を注いできた方々の存在や活動があったが、法外施設であったそれらは、障害者自立支援法によって、法内施設へ移行することとなり、多くが就労継続B型を選び(えらばざるを得ず)、居場所機能は縮小された。福祉的就労から一般就労への掛け声とともに、就労移行支援事業所への期待が高まった。しかし、日額や人数割りの個別給付方式は、精神障害者の特性を配慮した運営には厳しいものとなった。特に矛盾を抱えたのは就労継続A型事業所である。障害者総合支援法の事業メニューとして、利用料を払う福祉サービスの位置づけでありながら、雇用契約を結び最低賃金の支給対象となり、ハローワークによる斡旋先にもなる。障害者総合支援法のサービスであるので、実施主体は市町村であり、障害者の雇用について所管でもある都道府県の労働局との間で責任が曖昧である。利用者なのか労働者なのか、福祉政策なのか雇用政策なのか?位置づけの中途半端さは、多数解雇された人々への、または倒産した事業所運営への、監督責任の不明ぶりにもよく窺える。人を護るための政策自体に、構造的な問題や矛盾が多くある。

pp. 8-9
多く生産するだけが労働ではない。社会との関係を築き、社会的役割を得て地域社会に貢献し、生きがいを得る、人々が協働して社会活動を行い、社会資源を生み育てる。その中で賃金を得ることにつながるものもあるし、そうでない働きもある(p.8)。障害のある人が働くということを、労働と福祉の一体的な政策として取り組むことで、もっと豊かな知恵や工夫が生まれるのではないだろうか。既に日本には、福祉的就労か雇用における障害者支援の場かを問わず、先駆的な取り組みが行われ、また成功し発展している事業所や企業や組合は幾つもある。人は何故働くのかという問いは、昔から節学的に重ねられているが、障害や性別等にかかわらず、誰もが働きがいのある人間らしい仕事のできる社会、労働者の尊厳が護られる社会の実現について、本特集を通して考える機会となることを願う(p.9)。




*作成:伊東香純
UP:20210204 REV:
精神障害/精神医療 障害者と労働  ◇障害学  ◇WHO
TOP HOME (http://www.arsvi.com)