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松尾 陽
まつお・よう


■法哲学専攻

■所属・職名 京都大学大学院法学研究科・研究員(科学研究・学術創成)(2009年現在)
■研究活動

 以下の外部リンクを参照(2009年現在)
http://kaken.law.kyoto-u.ac.jp/gakuso/j/org/researcher_2008.html#matsuo
・上記のリンクより引用
これまでの研究で、アメリカの憲法解釈方法論の展開の検討を通じてその背後にある「裁判と政治」観の展開を抽出すること(「裁判と政治」の視角)と、広く社会に遍在する規制の性質とその意義を分析すること(「ポスト規制国家」の視角)とを進めてきており、この二つの研究を通じて秩序形成の理念と手段を探求してきた。学術創成のプロジェクトのひとつの目的は、中央集権的な国家を要請した福祉国家と分権化を徹底しようとした新自由主義との止揚を図るものと理解できる。この止揚の意義を明らかにするために、「裁判と政治」の視角においては、近時登場した「民主的実験主義」の理念とその制度論を研究し、「ポスト規制国家」の視角においては、近時提唱されるアーキテクチャによる規制を、法または社会規範による規制と比較しながら、研究していく。いずれの視角からの研究も、論文を公表予定であり、また、さらなる論文執筆のための研究をしているところである。

■研究業績 【論文】

◆2007 「アーキテクチャによる規制作用の性質とその意義」
 『法哲学年報』2007:241-250
◆200904 「法解釈方法論における制度論的転回(1)近時のアメリカ憲法解釈方法論の展開を素材として」
 『民商法雑誌』140(1):36-58
◆200905 「法解釈方法論における制度論的転回(2・完)近時のアメリカ憲法解釈方法論の展開を素材として」
 『民商法雑誌』140(2):197-232
◆2009** 「原意主義の民主政論的展開」
 『法学論叢』**:**-**

■研究会報告(以下は外部リンクより引用)

◆平成19年度 第7回エンフォースメント部会研究会 (開催日時:2008年2月22日14:00〜18:00)
http://kaken.law.kyoto-u.ac.jp/gakuso/j/activity/record_gr_enforce.html#7

奈須祐治氏(佐賀大学経済学部准教授)「キャス・サンスティンの憲法論の全体像」 松尾 陽氏(京都大学大学院学生、COE若手研究員)「C.サンスティーンの『不完全に理論化された合意』の意味とその論拠に関する一考察」

 本研究会は、アメリカの代表的な憲法学者キャス・サンスティーン教授の憲法理論・法理論の検討を通じて、海外研究の動向を紹介し明らかにしていくことを目的とする。
 奈須報告においては、憲法学の観点から、多岐にわたるサンスティーンの憲法理論の重要論点が余すところなく取り上げられ、それぞれの論点におけるアメリカ憲法学におけるサンスティーン教授の見解の位置づけが簡潔明瞭に示された。まず、サンスティーンの憲法理論の全体像(現状中立性批判、熟議民主政論、司法ミニマリズム、法解釈論)が紹介検討されたうえで、それが、彼の統治機構論、権利論(特に、表現の自由、平等)でどのように具体化されているのか(表現の自由の二層理論・反カースト原理など)が明らかにされた。
 松尾報告においては、法哲学の観点から、「ウォーレン・コート」期に支配的であった法思想とサンスティーンの法思想を対比させるという目的のもと、彼の司法ミニマリズムの基礎にある「不完全に理論化された合意」という概念を手がかりとして、(@)プリュラリズムから熟議民主政へ、(A)原理に基づいた司法判断から不完全に理論化された合意へ、(B)政治と司法の非対称な問題設定から対称的な問題設定へという3つの理論展開がしめされた。
 両報告に対しては、憲法学・法哲学のみならず、行政法学・刑法学・法社会学をも含めた多様な観点から、数多くの質問やコメントがなされ、活発に議論が繰り広げられた。議論がなされた主なテーマは、@サンスティーン憲法理論の核となる部分はあるか否か、具体的には、ニューディールを擁護するという目的によって彼の理論を説明できるのか、それとも、核となる部分はなく、ケースに応じてさまざまな理論を用いるプラグマティストであるか否か、Aミニマリズムの射程の問題、つまり、ミニマリズムの発想は司法を超えて通常の政治過程にまで拡張されるのか、Bベースライン論と現状中立性批判とはどのような関係を有するのか、すなわち、彼の現状中立性批判はベースライン論を全面的に否定するものなのか、あるいは、彼の現状中立性批判の眼目はニューディール以前の財産権理解を否定し、また、現在の表現の自由論を批判する目的でなされたのであり、一般的にベースラインを否定するものではないのか否か、C民主政論の内容の問題、具体的には、「市民」の境界をどのように確定していくのか、行政過程における人々の参加をどのように評価しているのか、D比較法的問題、具体的には、日本の判例の実践(法令違憲の多用)はミニマリズムの観点からどのように評価されるのか、東欧への憲法輸出の問題についてどのように評価しているのか、E リスク評価の問題、具体的には、予防原則が否定されてどのような対案が示されているのかなどである。

◆平成20年度 第2回エンフォースメント部会研究会 (開催日時 2008年5月17日(土) 14:00〜18:00)
http://kaken.law.kyoto-u.ac.jp/gakuso/j/activity/20record_gr_enforce.html

稲葉一将氏(名古屋大学大学院法学研究科准教授) 、瀧川裕英氏(大阪市立大学大学院法学研究科准教授)、大森秀臣氏(岡山大学社会文化科学研究科准教授)、大屋雄裕氏(名古屋大学大学院法学研究科准教授)、松尾陽(京都大学大学院法学研究科研究員(科学研究・学術創成))

 本研究会は、サンスティーン教授の見解を紹介検討するものであり、稲葉報告においては、行政法学の観点からの位置づけとその評価についての報告がなされ、準備会においては、6月の名古屋セミナーに向けて、教授の「司法ミニマリズム超えて」という講演に対する、4人のコメントの概要が報告された。
 稲葉報告においては、行政機関の法解釈に対する司法審査の謙抑の問題に対するサンスティーン教授の見解が紹介され、その意義と限界が指摘された。まず、アメリカ行政法学・実務できわめて重要な地位を占め、かつ、その理解が分かれている1984年のChevron判決に対するサンスティーン教授の理解が取り上げられ、連邦議会における熟議を重視している点、行政の専門性を重視している点が指摘された。次に、20世紀の行政法学における「行政」理解の展開の中におけるサンスティーン教授の位置づけが問われ、教授の見解が参加を重視している点で多元主義的理解と共通点があるものの、その質を問うている点で相違するという点、また、公私の峻別論に立つことによる限界があるのではないかということが指摘された。本報告に対しては様々な質疑がなされて、そこで議論された主題は、(1)公私の協同的統治を唱え、近時注目されているJody Freeman教授の見解とどのような異同があるのか、(2)立法過程における熟議と行政過程における熟議との異同とりわけ司法審査の謙抑の対象となるべき行政固有の専門性、(3)日米の相違を前提としてもサンスティーン教授の主張に含まれている価値が日本においてどのように反映されているのかなどである。
  準備会においては、名古屋セミナーのコメンテーター予定者からその概要が紹介され、大森報告においては、ミニマリズムにある二つの制度的前提「司法不信」と「立法信頼」が抽出され、「狭い」「浅い」判決が立法と司法という二つの機関を上手く機能させるのかという問題が、大屋報告においては、@サンスティーンのいうagreementとdisagreementというものが本当に存在するのかという問題とA日米における司法の役割についての理解の相違の問題が、瀧川報告においては、サンスティーンの法理論が司法ミニマリズムを超えてどこへ向かうのかを考察するために彼の理論前提は何かという問題が、松尾報告においては、アメリカ憲法理論からの司法ミニマリズムがどう位置づけられるのかという問題(理由付与との相違、司法の優越性の問題)が批判的に紹介され、四人を含む研究会参加者の間で意見が交換された。

◆平成20年度第5回市場秩序形成部会研究会 (開催日時 2008年9月26日(金) 14:00〜16:00)
http://kaken.law.kyoto-u.ac.jp/gakuso/j/activity/20record_gr_market.html

松尾 陽氏(学術創成研究員)「原意主義の民主制論的展開−アメリカの法解釈方法論争の一断面−」

 原意主義は、憲法は憲法制定時の意志ないし意味にしたがって解釈されるべきと主張し、主として一九六〇年代に司法積極主義としてリベラルな価値を体現したといわれるウォーレン・コートの諸判決ないしその背後にあるといわれる「生ける憲法」の思想を批判して登場したアメリカの憲法解釈方法論の一つである。本報告は、原意主義をその最近の展開を含めて、民主政論的な観点から捉えなおし、また、一九八〇年代後半からその議論が深化している(「原意主義の民主政論的展開」)と分析する。この展開を辿ることで、現代における民主政論の現在を見ていこうとするものである。
 その登場背景からして原意主義は保守主義と政治的につながっており、裁判官の裁量の制約、立法府の判断の尊重を特質としていた。しかし、原意とは何か、ひいてはなぜ原意かという問題について深い考察を与えてこなかった。この点が強く批判されて、一九八〇年代後半からこれらの問題が議論されてきた。なぜ原意かという問題について一つの解答を与えたのが、Bruce Ackermanの二元的民主政論、これを別様に展開するKeith Whittingtonの原意主義である。
  Ackermanの二元的民主政論は、憲法を制定し改正していく人民の決定を「創憲政治」、そこで出来た憲法枠組みの中で政策が生み出されていく政府の決定を「通常政治」と呼び、そのうえで、形式的な手続によらない実質的な憲法修正を認め、創憲政治の役割を大きく認めるのがその特徴となっている。従来の原意主義者が実質的な憲法修正を認めない点で大きく異なるのであるが、しかし、通常政治期における司法の役割を創憲政治によって産出された憲法枠組みを守る「保護主義者」として位置づけている点で、原意主義に位置づけられる。問題は二つの時期の区別根拠であるが、その論拠は、人民の熟慮が稀な時期にしか起こらないということ(熟慮の希少性)を前提にしつつ、現代人の幸福追求のあり方は政治参加に限定されるものではないということである。
  Whittingtonは、Ackermanの二元的民主政の基本的枠組みを継承しつつも、そこにおける、通常政治の役割の過小評価、司法の優越性を強く認めているという点を批判し、裁判所による「憲法解釈」に対して政治部門による「憲法構築」の重要性を説き、また、司法の優越性の相対化を図ろうとする。そこでは、原意主義と「生ける憲法」との調和が図られ、また、諸部門が各々の部門の特性を生かして協働して憲法を実現していくということが説かれている。
  本研究会では、立憲主義の意義、憲法制定権力論、法解釈方法論と民主政論との関係、解釈学論的転回と法解釈方法との関係、Ackermanの実質的憲法修正論における憲法修正の瞬間の認定の問題とそこにおける司法の特権化の問題をめぐって、議論がなされた。

◆平成20年度 第8回市場秩序形成部会研究会 (開催日時 2009年 2月23日(月) 10:00〜12:00)
http://kaken.law.kyoto-u.ac.jp/gakuso/j/activity/20record_gr_market.html

松尾 陽氏(学術創成研究員)「法解釈の制度論的アプローチの意義と限界」

 法的判断を明らかにするためには、判断の実体のみならず、その判断が形成される過程を分析しなければならない。この判断形成過程としての制度への関心(制度的アプローチ)は、アメリカの公法学者ヴァーミュールの「制度論的転回」論によってますます高まっているといえる。本報告は、1950年代から1960 年代にかけてアメリカの法学説・教育に多大な影響を与えたとされる『リーガル・プロセス』(Hart & Sacks著)という教科書をアメリカの学説史(リアリズム法学・社会学的法学・フラーの学説・近時の制度論的転回との比較)の中に位置づけることによって、制度的アプローチがどのように形成されてきたのかを明らかにしようとするものである。
   「リーガル・プロセス」の軸にあるのは「制度的解決の原理」と呼ばれるもので、それは、社会に生じる紛争を、それぞれの制度(私的秩序形成、立法、行政、司法など)に適切に割り振ることによって解決していこうとするものであり、紛争解決の実体ではなくそのプロセスに着目するアプローチである。
学説史的にみれば、リーガル・プロセスは、リアリズム法学における実体とプロセスの分離を継承しつつも、プロセスの規範化を試みる点で、リアリズム法学と異なる方向へと展開する。しかしながら、プロセスの規範化といっても、プラグマティックに紛争を解決していく必要性が説かれるばかりで、プロセスがどのような価値に資するのかという問題については曖昧な点を残し、その点は1970年代以後において、例えば「新リーガル・プロセス」の論者(Eskridge Jr.)によって批判されることになった。また、後の制度論的転回との関係では、リーガル・プロセスの制度理解は、制度が固定的に把握され、制度についての人々の理解が黙示的に共有化されるという限界があるという特徴があると分析された。 報告では、このようなリーガル・プロセスの意義は、社会に存在する多元的な利益が多元的な形で吸い上げられる制度メカニズムを探求した点にあると評価しつつも、その限界は、多元的な利益を吸収する制度メカニズムそのものがどのように正統性をもっているのかという問題を扱えていない点にあると指摘した。
 報告に対しては、さまざまな質問や批判が提起され、教科書をどのように学説として扱うのか、「リーガル・プロセス」を可能にした時代状況は何かという問題をめぐって議論が交わされた。


UP:20091118
  ◇WHO 

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