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松田 博幸

まつだ ひろゆき
http://sswe.osakafu-u.ac.jp/%E6%9D%BE%E7%94%B0-%E5%8D%9A%E5%B9%B8%EF%BC%88%E3%81%BE%E3%81%A4%E3%81%A0-%E3%81%B2%E3%82%8D%E3%82%86%E3%81%8D%EF%BC%89/


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last update:20210124

大阪府立大学 地域保健学域 教育福祉学類

■論文

◆松田博幸(2009)セルフヘルプ・グループの原理に根ざした精神障害当事者ビジネスの展開――カナダ・オンタリオ州におけるオルタナティブ・ビジネスの現状.社會問題研究,58, 185-191.[外部サイト]
p. 185
 カナダのオンタリオ州においてはconsumer/survivor initiativeと呼ばれる、精神障害当事者による事業が展開されている。本稿においては、それらの事業に含まれるビジネス活動(オルタナティブ・ビジネス)においてセルフヘルプ・グループの原理がどのように働いているのかを述べる。最後に2つの事例を通してオルタナティブ・ビジネスの団体と専門機関との関係に焦点をあてることで、オルタナティブ・ビジネスの課題を浮かび上がらせたい。

p. 185
 【オンタリオ州における当事者事業】精神障害者の脱施設化と再入院を繰り返す回転ドア現象を背景に、1988年、行政の報告書(グラハム報告)において、精神障害当事者自らがコントロールする組織による活動が精神保健システムの基本的な機能の一つとして位置づけられた(Graham,1988)。1991年には、不景気対策プログラムの基金310万カナダドルを精神障害当事者の雇用を促進するためのプロジェクトに対して支給することを発表し、公募がおこなわれた。選考の結果、42のプロジェクトが選ばれ、その半数以上が独立した当事者当事者組織によっておこなわれていた。また1993年の時点では、36のプロジェクトのうち、33のプロジェクトが当事者組織によっておこなわれていた。一方、当事者事業を技術的にサポートし、モニタリングをおこなう組織として、「精神障害当事者開発イニシアティブ(CSDI)」〔現「オンタリオ・ピア開発イニシアティブ」(OPDI)が結成された(p. 185)。そして、1993年に、オルタナティブ・ビジネスをサポートする当事者組織である「当事者ビジネス協議会」〔現「オンタリオ・オルタナティブ・ビジネス協議会(OCAB)]が設立された(p. 186)。

pp. 188-190
 【オルタナティブ・ビジネスと専門機関との関係】オンタリオ州における当事者事業の困難のうちの一つは、オルタナティブ・ビジネスが専門機関に吸収される危険があるということである。以下、2つの事例で示したい(p.188)。今後の研究に向けて:精神障害当事者が経営していたオルタナティブ・ビジネスが精神保健領域の専門機関である「カナダ精神保健協会」(CMHA)など、精神保健の専門機関に就労プログラムの一つとして吸収されるという現象は、本稿で示した団体以外についても生じている。なぜ、そのような現象が起きているのか、また、従業員も含め、さまざまな立場の人びとがそのような現象をどのように意味づけているのかについては、今後、それぞれの事例ごとにていねいに調べていく必要がある。けっして、”病気を持っている人びとにはビジネスは無理である”という医学モデル的な言説にとらわれることなく、社会的な視点を持って分析をおこなう必要があるだろう。そして、その際に、当事者事業の団体と専門機関との間で活動の主導権をめぐる政治的なせめぎあいが生じており、当事者事業が専門機関の勢力下に置かれることに対する抵抗が存在するということを見落としてはいけないと考える。”パートナーシップ・モデル”という耳障りのよい言葉で覆い隠されがちな側面に目を向けて研究を進める必要がある(p.190)。

◆松田博幸(2013)当事者組織をめぐる連携が精神障がい者のリカバリーに及ぼす影響に関する研究.科学研究費助成事業 研究成果報告書(基盤研究C).[外部サイト]
p. 1
 1980年代より、北米やわが国のセルフヘルプ・グループ(以下、SHGとする)研究において、SHGと援助専門職者の組織とがパートナーシップを形成することが重要であるとされてきたが、それらのパートナーシップが当事者にどのような影響を及ぼすのかという点については明らかにされてこなかった。

p. 4
 本研究がたどりついたのは、組織における本人を中心にした対話の文化の重要性であった。現在、わが国の精神保健福祉領域においては、ACTに見られるように、専門職者によるチームアプローチが注目されつつある。しかし、そのようなアプローチが本人を中心にした対話の文化を欠いたものであれば、それは本人を傷つけ、孤立を強いるものになるだろう。




*作成:伊東香純
UP:20210125 REV:
精神障害/精神医療 障害者と労働  ◇障害学  ◇WHO
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