川瀬 貴之
かわせ・たかゆき
■法哲学専攻
■所属・職名 京都大学大学院法学研究科・研究員(科学研究・学術創成)(2009年現在)
■研究活動
以下の外部リンクを参照(2009年現在)
http://kaken.law.kyoto-u.ac.jp/gakuso/j/org/researcher.html#kawase
・上記のリンクより引用
法哲学の一分野である現代正義論では、一方において個人が究極的な価値観を伴う問題に関して自ら選択する自由を享受すべきであり、そのような個人の選択に対して他者は寛容にならねばならないと論じられてきた。他方で個人が自律能力を行使するためには一定の共同性が前提にされなくてはならないという見解も有力に主張されている。個人の自由と共同性が、哲学的にどのように調和可能なのかは、長く論じられてきた問題であり、本研究もこのような議論と関心を同じくするものである。そこでここでは、特にナショナルな文化に基づく共同性に注目し、個人の自律とナショナリズムの和解を目指すリベラルナショナリストと呼ばれる論者の見解を検討する。そして、基本的にはリベラルナショナリズムを支持するという立場から、ネイションという共同体が文化的に多元的であるという事実を重視する多文化主義や、グローバルな視点から移民の受け入れや途上国への援助を主張するグローバルな正義の議論に対して、リベラルナショナリズムがどのように応答できるのかを明らかにすることを試みる。
■研究業績 【論文】
◆200709 「リベラリズムとナショナリズム(1)道具的ナショナリズムのリベラルな正当化」
『法学論叢』161(6):131-143
◆200806 「リベラリズムとナショナリズム(2・完)道具的ナショナリズムのリベラルな正当化」
『法学論叢』163(3):138-155
■研究会報告(以下は外部リンクより引用)
◆平成21年度 第1回エンフォースメント部会研究会 (開催日時 2009年9月17日(木) 14:00〜18:00
http://kaken.law.kyoto-u.ac.jp/gakuso/j/activity/21record_gr_enforce.html
川瀬 貴之氏(学術創成研究員)「ジョセフ・カレンズの多文化主義――文化批判の観点から」
「ジョセフ・カレンズの多文化主義――文化批判の観点から」
川瀬報告では、カナダの政治学者であるジョセフ・カレンズの議論を土台として、文化的に多元的な世界において、我々に固有の規範に基づいて、それを共有しない他者の文化的実践を批判することの是非が問われた。そして、社会内在的な解釈的営為としての道徳を主張する共同体主義者のマイケル・ウォルツァーが、他者への批判に対して消極的であり、コスモポリタンの立場から普遍的人権を説くマイケル・イグナティエフが他者への批判に積極的であるのに対し、カレンズは両者の中間的な立場を取っていることが確認された。そして、同心円としての正義というモデルを提唱するカレンズの文化批判の作法が、特にイスラム社会と西欧社会との対立という具体的文脈に即した事例において、文化規範の尊重・身体的危害防止の重視・独善性の回避という指針として現われていることが説明された。
質疑応答においては、カレンズの理論の法哲学的意義、文化批判と人道的介入の関係、それらの問題を多文化主義の文脈に位置づけることの問題性などについて、活発な討論がなされた。