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かなざわ・たかゆき 群馬大学 ◆20071231 「書評:亀井伸孝著『アフリカのろう者と手話の歴史』」,『社会学評論』58-3(2007):386-387 ◆金澤貴之 編 200108 『聾教育の脱構築』(↓) 明石書店(FAX:03-5818-1174,TEL:03-5818-1171) http://www.akashi.co.jp 四六判 上製 352頁 ISBN4-7503-1456-0 定価本体3200円+税 [amazon] ※ ** ◆20010317 「インクルージョンと聾教育」(↓) 障害学研究会関東部会 第14回研究会 ◆2001 「コミュニケーションと抑圧」 ◆19990331 「聾教育における「障害」の構築」 石川准・長瀬修編 『障害学への招待――社会、文化、ディスアビリティ』 ,明石書店,第7章 1 社会的構築物としての聾/185 2 マスメディアにおける聾の構築/187 3 聴者両親にとっての聾/191 4 聴者両親と専門家/193 5 聾教育のめざすもの/196 6 口話法の擁護システム/198 7 「遊びが大事」というレトリック/203 8 聾教育と手話/206 9 聴者による「障害」の構築/211 10 「擁護システム」を乗り越えるために/ 213 ◆199604 「聴者による、聾者のための学校」 『現代思想』1996年4月臨時増刊・ろう文化総特集 →2000 現代思想編集部編『ろう文化』 ◆1998 「聾文化の社会的構成」 『解放社会学研究』 vol.12,43-562頁 >TOP ◆『聾教育の脱構築』 金澤貴之編著 上野益雄,中野聡子,市田泰弘,八木治,池頭一浩,岡本みどり,南村洋子,佐伯英一, 木村晴美著 2001年8月刊行 明石書店(FAX:03-5818-1174,TEL:03-5818-1171) 四六判 上製 352頁 ISBN4-7503-1456-0 定価本体3200円+税 聾者の言語=日本手話を解することなく進められる聾教育とは何なのか。「聴覚口話 法」という聴者の理論に立って構築されてきた日本の聾教育を、聾者主体の聾教育に 再構築すること。この問題意識に立って、聾者、親、教員、研究者が聾教育の歴史と 現状を検証し、本質的転換を迫る必読の書。 目次 第1章 聾教育のパラダイム転換 一 聾教育のパラダイム転換[金澤貴之] 1 聾者を知らない聾教育 2 「聾者の声を聞こう」という誤り 3 「ロールモデル」としての聾者 4 「聴者が聾児に教える」から「聾者が聾児に教える」へ 5 「手話法」の空虚さ 6 論議のズレのもとは 第2章 聾教育・聾研究の社会的構成 一 歴史解釈の違い[上野益雄] 1 歴史の真実は 2 アメリカへの手話導入は一般にどう考えられたか 3 もとになった著書 4 口話聾学校設立時の論争 5 手話導入についての相反する意見 6 真実はどうか まとめ 二 聾教育におけるリアリティのズレ[金澤貴之] 1 論議以前の問題 2 聾者と聴者の価値観のズレ 3 聴者にとっての「聾」 4 聾者にとっての「聾」 5 聾の人口学的構成――九〇%ルールの意味するところ 6 聴者の親の願いと専門家の願い 7 誰に対する、誰の責任か 8 IT革命と聾教育 さいごに 三 聾の心理学的研究の再構築に向けて[中野聡子] はじめに 1 聾児を評価することの難しさ 2 言語発達研究の移り変わり 3 これまでの聾児の認知・知的発達における通説とその検査法について 4 聾児を対象とした認知発達、知能検査における問題性 5 ろうと記憶 6 新しい試み――手話で認知発達言語発達を評価しよう さいごに 四 ろう教育は手話を言語として認知できるか[市田泰弘] はじめに 1 手話には助詞がない 2 NMS(非手指動作) 3 主語と目的語 4 終助詞にあたるもの 5 従属節 6 関係節 7 使役構文 8 助動詞 9 ろう教育は手話を言語として認知できるか 第3章 指導法で求められてきた価値観 一 聴覚障害者の理想像[池頭一浩] 1 聴覚障害教育の現状 2 聴覚障害と聴覚障害者 3 聴者が描く聴覚障害者の理想像 4 「理想像」となるための条件 5 「理想像」の実態と、彼らが問われてこなかったもの 6 聴者は「理想像」をどのように扱っているのか 7 「ややこしさ」をこえて 二 見えてくるものがある[八木治] 1 見えてくるとしんどくなる 2 永遠に見えない人たち 3 願っているのは誰なのか 4 しんどいとは言っていられない 第4章 聾児を育てている親として 一 インテグレーション、龍の子学園、そしてろう学校[岡本みどり] はじめに 1 告知 2 知られざる事実 3 現在のろう教育 4 インテグレーションを選択した理由 5 インテグレーションから得られるもの 6 「龍の子学園」との出会い 7 ろう教育の矛盾 8 親の役割 おわりに 二 聾の娘を持つ立場と手話との出会い、そしてトライアングルでの実践[南村洋 子] はじめに 1 聴こえない子どもとの出会い 2 聴こえる世界と聴こえない世界 3 トライアングルでの教育実践 おわりに 三 聾教育とインターネット[佐伯英一] はじめに 1 私が“本当に必要な情報”を得るまで 2 手話への偏見 3 知らなかった聴覚口話法の問題点 4 幼児期に大切なこと 5 聞こえない子をもった親に伝えたいこと 6 情報を得た親の反応 7 最初から情報を得た親の反応 8 聾学校での手話 9 多くの議論 10 二年がすぎて 第5章 聾児にとってのリアリティ 一 ろう学校のリアリティ[木村晴美] 1 ろう者が語ることの意味 2「できる子ども」とは? 3 「聴能訓練」のリアリティ 4 口話法の「成果」と現実 5 教科学習のリアリティ 6 授業時間以外の活動について 7 日本語の獲得をめぐって 8 最後に 二 インテグレーションのリアリティ[中野聡子] 1 今も見る夢 2 現在の障害児のインテグレーション状況 3 インテグレーションに向かわせるレトリック 4 専門家の想定する「サポート」――その虚と実 5 話し相手と目を合わさない聴覚障害児 6 いつまでも「子ども」ではない――「わからない」ことがわかるとき 7 「努力」からは逃れられない 8 専門家が作った「もう一つの世界」 9 どこに「アイデンティティ」を見いだすか あとがき 著者紹介 金澤貴之(かなざわ・たかゆき) 群馬大学教育学部専任講師。 主な著書・論文に「聴者による聾者のための学校」(『現代思想』24(5)、青土 社、1996年4月臨時増刊)、(『ろう文化』(青土社、2000年)に再録)、 「聾教育における「障害」の構築」(『障害学への招待――社会・文化・ディスアビ リティ』長瀬修・石川准編、明石書店1999年)など。 上野益雄(うえの・ますお) つくば国際大学教授。 主な著書・論文に『19世紀アメリカ聾教育方法史の研究』(風間書房、1991年) 。『聴覚障害児教育の革新』(井原栄二・上野益雄・草薙進郎編、コレール社、19 97年)など 中野聡子(なかの・さとこ) 心身障害学博士・国立身体障害者リハビリテーションセンター学院手話通訳科非常勤 講師。 主な著書・論文に「聾幼児における3次元物体の手話表現と描画表現」(吉野公喜と の共同執筆『特殊教育研究』38(1)2000年)、「聴覚障害児のインテグレー ションに関する一考察――トライポットモデルの事例から考える」(相良啓子・吉野 公喜との共同執筆『ろう教育科学』39(2)1997年)など 市田泰弘(いちだ・やすひろ) 国立身体障害者リハビリテーションセンター学院手話通訳学科教官 主な著書・論文に『はじめての手話』(共著、日本文芸社、1995年)、「誤解さ れる言語・手話」(『現代思想』24(5)、青土社、1996年4月臨時増刊)、 (『ろう文化』(青土社、2000年)に再録) 八木 治(やぎ・おさむ) 三重県立稲葉養護学校教諭。 主な著書・論文に『聴覚障害教育情報ガイド』(共著、コレール社、1996年)、 『聴覚障害児のコミュニケーション指導』(共著、保育出版社、1998年)など。 池頭一浩(いけとう・かずひろ) 広島県立広島ろう学校教諭。 主な著書・論文に「手話がもたらしたもの――ろう児にとっての“当たり前”とは何 か」(『ろう教育科学』42(4)、2001年)、『第12回ろう教育を考える全 国討論集会号稿集』(「第12回ろう教育を考える全国討論集会」実行委員会発行、 2000年)など。 岡本みどり(おかもと・みどり) 全国ろう児をもつ親の会会長。 南村洋子(みなみむら・ひろこ) 聴覚障害児と共に歩む会・トライアングル教育部主任。 主な著書・論文に『タンポポの道』(共著、財団法人聴覚障害者教育福祉協会、19 98年)など。 佐伯英一(さいき・えいいち) 聞こえない子を持つ父親。 木村晴美(きむら・はるみ) 国立身体障害者リハビリテーションセンター学院手話通訳学科教官。 『はじめての手話』(共著、日本文芸社、1955年)、「ろう文化宣言」(市田泰弘 との共同執筆(『現代思想』23(3))(『現代思想』24(5)、青土社、19 96年4月臨時増刊、『ろう文化』青土社、2000年に再録)など。 >TOP ◆インクルージョンと聾教育 群馬大学 金澤貴之 20010317 障害学研究会関東部会 第14回研究会 1.インクルージョンとは? インクルージョンをめぐる誤解。 1)インクルージョンは,十分にサポートが用意された,「理想的なインテグレーショ ン」である。 2)福祉の進んだ,先進国だから実現できる。 3)障害関係者の「統合化」への運動の成果である。 1)について。インテグレーションとインクルージョンは概念が根本的に異なる。 インテグレーションだからサービスが用意されない,という問題ではない。インテグ レーションは,「障害児」と「健常児」の関係性について二元論的に論じたもの。イ ンクルージョンは,多様化への対応としての一元論。「特別なニーズ」は多様であり, その程度に応じて,インクルージョン学校において,「特別なサポート」を用意する。 ハードを一本化させ,ソフト的に多様化に対応するということ。 2)について。国連で採択されているということに注目すべき。まだ教育が行われ ていない発展途上国で,これから学校を作る場合,通常学校とその他のニーズに応じ た学校を別々に作るよりは,最初から1つのハコで教育をすることを前提とする。→ インクルージョンだからサポートが充実しているという保障はない。 3)「特別なニーズ」概念は,障害児の問題よりもむしろ,通常学級に在籍してい る「学習困難児」への対応から。「共生」を求める障害関係者の運動とは別次元。ま た,「特別なニーズ」の対象は,「障害児」だけでなく,さまざま。例えば,ストリー トチルドレンや遊牧民なども。 2.聾教育とインクルージョン サラマンカ宣言の21条。聾児については,分離教育が望ましい場合があり,母語 としての手話を保障することが明言されている。→しかし,意外にこの条文は,日本 でのインクルージョン議論では,重視されていない。…というか,ほとんど扱われて いない。 ・教育制度を論じる研究者のほとんどが,聾について専門としていない。聾コミュニ ティの望む要求については,「当事者の話にも耳を傾けなければ」と感じながらも, 聴者との分離を望むことについては,理解を示しにくい。手話の重要性については, 一定程度理解を示しながらも,分離教育については,否定的になる。→聴児が手話を 覚えて,みんなが一緒に楽しもう!…という主張になる。(「インクルーシヴ教育促 進法(案)」国民教育文化総合研究所) ・聾教育関係者の場合,専門機関としての聾学校の重要性は理解するし,十分なサポー トが与えられないインテグレーションについては懸念する。しかしそれは聾者がイン テグレーションに反対する主張とは全く意味が異なる。聾教育関係者は,(聴覚活用 を中心とした)専門性の必要性を主張しているのであり,母語としての手話の必要性 について理解しているわけではない。 →どちらにしても,教育関係者の間で,サラマンカ宣言の21条の持つ意味につい ては,十分に咀嚼されて論じられていない。 3.聾児にとってのインテグレーション ・親の期待…聞こえる人たちの中で「社会性を身につけさせる」→数が多ければ,社 会性は身に付くのか? 40人クラスであったとしても,仲良くなれるのは,せいぜい2〜3人。その2〜 3人の子どもの気まぐれで情報が左右されてしまう。つねに人より一歩遅れて,伝達 者のフィルターを通してしか情報が入ってこない。「今何話しているの?」「いや, 別につまらない話だから…」 逆に,「聾学校に転校してから,社会性を身につけられた」と語る聾者もいる。通 常学級ではいつも「おミソ」だったが,聾学校では,全体の集団の数は少ないながら も,その分先輩,後輩の関係は密であるし,主体性を発揮できる。 実際は,両者を十分に比較する以前に,聴者の先入観で通常学級が選択される。裏 を返せば,聾児のリアリティへの接近が極めて難しいということ。インテグレーショ ンのまっただ中にいる聾児に聞いても問題の本質はつかめない。→「わからない」こ とがわからない。「わかる」ことを経験して初めて,「わからない」状況について語 ることができる。 インテグレーション経験者にとっての「手話」…「わからない」ことがわかる。 インテグレーション状況…「わからない」ことがわからない。 ・聴児との関係の難しさ 聾児が一生懸命頑張れば頑張るほど,「やなヤツ」になる。「わからないことをき ちんと聞く」と,「うざったいヤツ」になる。頑張って予習復習をしっかりして,授 業に望むと,補助的な情報もあり,聞き取れてしまったりする。しかし休み時間の騒 がしさでは,補聴器は役に立たなかったりする。すると,「先生の前だけ,いいかっ こして…」となる。こうした不快感は,その場その場で感じるものである以上,教師 が理屈で諭しても通じるものではない。「それは(一般論としては)そうだけど,あ いつはやっぱし,変なヤツだ。」 ・専門家の想定するサポート…「聴覚障害者」としての聾児。「一人前の聾者」とい う概念はない,→「少しでも,わかる手段を」→補助手段としての板書の多様,指文 字,手話の使用。言い換えれば,完全にわかる方法を,想定していない。 4.「聾」の社会的構成…聴者が作る「聾」 なぜ聾者の主張が聾教育に反映されないのか?…鍵を握るのが,90%ルール ・90%ルール ・聾者の約9割は聴者の親のもとに生まれる。 ・聾者の約9割は聾者同士で結婚する(Shein & Delk(1974)によれば,正確には 8割)。 ・聾者の約9割は聴者の子どもをもつ。 ・聾児の親の9割は聴者であり,さらに教員の圧倒的多数は聴者。 →聴者の親及び教育者は,聾児を聴者に近づけようとして教育し,手話からできるだ け遠ざけようとする。 ・しかし聾コミュニティは血縁関係を離れて結束し,そこで手話や聾文化が継承され る。 ・親や周囲の聴者は,結婚相手は聴者であってほしいと願ったとしても,多くは聾者 同士で結婚する。 ・聾者同士の強い結びつきの中でも,生まれてくる子どもはといえば,たいていは聴 児。 ・聾の子どもをもった1割の親で,自分の子どもには手話で教育をしてほしいと願い, そのことを学校に訴えても,学校からすれば,その親は全体の1割の意見でしかない ため,「一部の親」の願いの域をでない。 聾児は聴者のもとに生まれた時点では,文化的には聾ではない。聾者同士のコミュ ニティにつかることで,「聾者」になっていく。だからこそ,インテグレーションこ そが聾者にとって最大の脅威となる。聴者にとっては,「障害を持った子どもを分け 隔てせずに,普通の子どもと一緒に過ごさせる」ものであるが,聾者にしてみれば意 味が逆であり,聾の子どもを他の聾児から分離させ,聴児集団の中で孤立させる方法 となる。 聾というコミュニティが血縁関係を離れて構成され,そこに90%ルールが存在す るがゆえに,聾者の主張は聾学校という言説空間において常に少数意見に押しとどめ られてしまう。 「望ましい」教育について語ろうとするとき,語る者の望ましさが,語られる者の 望ましさと一致しているとは限らない。そして聾の場合,聾者は常に語る場において マイノリティでしかなく,常に語られる場に置かれ続ける構造がある。 ◇障害学 ◇聴覚障害・ろう(聾) ◇WHO |