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甲谷 匡賛

こうたに・まさあき

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last update:20201103


■新着

◆立岩 真也 2021/03/10 『介助の仕事――街で暮らす/を支える』,ちくま新書,筑摩書房,238p. ISBN-10 : 4480073833 ISBN-13 : 978-4480073839 820+ [amazon][kinokuniya]

 「私が京都に越してきたのは2002年です。京都はその頃はしょぼかったんです。重度訪問の制度そのものがあまり使われていなかったし、それから利用できる時間数が少なかった。1日要らない人は要らないんで、長いほうがいいって私は言ってないです。ただ長い時間必要な人は必要なんです。しかし当時は、必要な人も長い時間使えてなかったんです。2004年にALSを発症した、西陣のあたりに今住んでる甲谷匡賛さん(64頁)が、制度を長い時間使えた最初の人になります。
 甲谷さんは、身体系っていうか、舞踏、体を動かして、踊って、パフォーマンスっていうかアートっていうかする人たちの体をみてあげるっていう仕事をしていたんです。それで、そういう知り合いがいっぱいいて、比較的時間が自由になる人もいて、そういう人たちが最初ボランティアみたいな形で入ったんだけども、でもやっぱ24時間365日いるから、これはたいへんだと。どうかしないとだめだってことになって。それで、彼をサポートするいろんな人たち、舞台プロデューサーの志賀玲子さんとか、舞踏家の由良部正美さんとか、京都新聞の岡本晃明さんという記者とかね★24。岡本さん経由だったのかな、私も少し関わることになって。私、制度が使えないはずはないといったおおざっぱなことは言いましたけど、具体的なことはわかりません。東京で制度使ったり事業をやってる人、当時、私の勤め先の大学院生でもあった川口有美子さん★25とかに教えてもらったりしました。
 2008年の1月、京都市の市役所に、甲谷さん先頭で、そこに彼の支援者がついて行きました。僕も後ろのほうにいました。そして、市役所の障害福祉課長さんに直談判しました。やっぱり現物がいるっていうのは強いもので、見たらこれどっこも動かないよってのわかります。わかるというか、それが現実そのものなわけです。一気にあのときの交渉で、というだけではないのですが、甲谷さんは24時間介助を使えるようになりました★26。その甲谷さん、今でもよく京都の街中のお寺巡りとかしてます。
 そして、役所というのは基本的に先例主義なんで、つまりいっぺんそういうケースが生まれると、同じような条件の人については、同じだけ出すということになるんです。それはよいことでもあります。最初の人は大変ですが、2人目からはそうでもない。」

 「生活保護の生活扶助の加算の一つに介護加算というのがあって、その中に家族介護加算とは別に他人介護加算があります。家族外の介助者に支払う費用として支給されるものです。その特別基準というのがあります★07。以前、京都市役所に甲谷さんに付いて行ったことがあると言いましたけど(88頁)、その時僕は、「そんなことも知らないの」って市の課長さんにちょっと大きな声で言ったんだそうです。忘れていました。この制度は生活保護とっている人にとっては今でも大切なものです。しかしもちろん、生活保護とれない人は使えません。」

◆立岩 真也 2020/03/11 『介助の仕事――街で暮らす/を支える 補注・文献』Kyoto Books

 「★08 甲谷匡賛は2004年にALSと診断された。舞踏家であり甲谷の介助者・支援者であってきた由良部正美へのインタビューに由良部[i2019]。甲谷の生活・介助に「ココペリ121」も関わった。その代表者長見有人へのインタビューに長見[i2019]。」
 「★24 岡本晃明は2006年度の日本新聞協会賞受賞作でもある『折れない葦――医療と福祉のはざまで生きる』(京都新聞社編[2007])の取材に関わる。この時の取材のことは『新聞研究』に掲載された「医療と報道倫理」(岡本[2007])に記されている。甲谷らについて書いた文章に「ALS‐D――勝手に甲開日記」(岡本[2008])、「医療的ケアに踊る ALS‐D」(岡本[2010])。いずれも『現代思想』に掲載。」

◆甲谷 匡賛 2005-2007 『甲開日記』

◆由良部 正美 i2019 インタビュー 2019/10/25 聞き手:桐原 尚之西田 美紀長谷川 唯ユ ジンギョン 於:京都

◆長見 有人 i2019 インタビュー 2019/10/09 聞き手:立岩 真也 於:コモンズ紫野(旧杉江邸)

◆2009/10/01 チームALS-D「ダンススタジオ兼ALS患者独居住宅 [スペースALS-D]」
 2009年度 グッドデザイン賞 受賞 (受賞番号:09E16008 領域/分類:ネットワーク領域 パブリックコミュニケーション)
 http://www.g-mark.orghttp://www.g-mark.org/award/detail.html?id=35980
 「受賞企業:京都工芸繊維大学 (京都府)
 概要:京都西陣に残る織屋建京町家は、奥に吹き抜けの織場が設けられた職住一棟型の、京都の歴史文化が根付いた地域資源である。空家だった築80年の建物を、四肢機能全廃、気管切開し言葉も話せない重度ALS患者の独居住宅と彼の支援者である舞踏家のスタジオとして、支援者達のセルフビルドで再生した。そして現制度では困難な24時間完全介護環境を、研究者らによる行政への働きかけや舞踏関係者がヘルパーとなることにより構築した。ケアとアートと学問の協働で生まれたこの場では、舞踏活動の拠点のみならず地域の重度障害者のケア環境向上も目指し、患者とヘルパー間のコミュニケーションツール開発やヘルパー育成の研修会なども進める。
 応募対象が達成しようとした目標:全身の筋肉が麻痺していくが五感は保たれるALSは、安楽死問題で焦点となってきた難病である。また社会問題である介護従事者の不足がこうした患者の生を脅かしている。本件はアート(身体表現)と学問(建築、社会福祉)とケアの協働により、空家だった京町家をALS患者の住居とダンススタジオとして再生活用する過程を通じ、医療福祉制度の課題発信、ALS患者の独居モデル構築、アートを介したヘルパー育成の場を目指す。
 プロデューサー:甲谷匡賛、由良部正美、志賀玲子
 ディレクター:阪田弘一、映像・写真:草本利枝
 デザイナー:空間:京都工芸繊維大学阪田研究室、谷本天志、堀川勝史、池上将暢+プロダクト・制度:立命館大学グローバルCOEプログラム「生存学」創成拠点+記録:岡本晃明」



◆HP『スペースALS-D』
 http://homepage3.nifty.com/spacealsd/

◆HP『ALSな日々』
 http://koujyo2005.s1008.xrea.com/
 http://www.geocities.jp/koujyo2005/(旧)

◆ブログ『甲開日記』
 http://koujyo.cocolog-nifty.com/blog/

◆甲谷匡賛コレクション タペストリー・風呂敷
 http://shop.yumetenpo.jp/goods/goodsList.jsp?st=furoshiki-fukusa.co.jp&category=10&action=category
◇ふろしき・ふくさ 彩工房
 http://www.furoshiki-fukusa.co.jp/

◆甲谷匡賛作品展「A−LSD!」ALS(筋萎縮性側索硬化症)の病床におけるHIGHな出来事
 http://www.livingroom.ne.jp/n/kotani0611.htm

◆北村健太郎のHP
 http://www.livingroom.ne.jp/w/kutnmsak.htm

■言及

◆立岩 真也 2020 『(本・1)』,岩波新書


UP:20091014 REV:20200305, 0803, 1103
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