HOME > WHO >

久保寺 一男

くぼでら かずお


Tweet
last update:20210212


■著書


■論文

◆久保寺一男,2018,「障害者就労支援制度におけるA型事業の課題と可能性を考える(特集:働くことの意義と支援を問う)」『精神医療』91:41-48.
p. 41
日本政府はようやく2014年1月に、国連の障害者権利条約を批准した。先に批准したドイツでは、障害者作業所が廃止の勧告を受け、一般就労へ統合していく方向が打ち出された。日本においては、一部の就労継続支援A型事業の不正受給、障害当事者への不利益、人権無視など、事業のあり方を危惧した同志でA型事業所の全国組織として全Aネットが2015年2月に設立された。

p. 42
【A型事業ができた経緯】就労継続支援A型事業の前身は旧法(措置制度)の福祉工場制度であり、その法的根拠は、「福祉施設の一種である。ある程度の作業能力があるが、職場の設備、構造、通勤時の交通事情等のために、一般企業にに雇用されることの困難な重度障害者を雇用(労働契約を締結)し、社会的自立を支援する施設である」というものであった。2006年障害者自立支援法の検討では、福祉サービス体系改編に伴う「福祉工場」の扱いについて議論された。厚労省の原案では就労継続支援は雇用型のみであったが、障害者団体等の強い要請のもと、非雇用型(B型)が設定された。また、福祉サービス契約は必須とのことで、雇用契約の二重契約、A自己負担金の発生(当時は応益負担)であった。

pp. 44-45
【A型事業所の閉鎖と利用者の大量解雇】A型事業を利用した貧困ビジネスは名古屋から始まった。2009年愛知県の元私設秘書が取締役を務めていた福祉事業会社「ジョブスマイルサービス」がA型事業所の設立。運営のコンサルタント事業を始め、県内の約10事業所と約500万〜1千万円で契約、県への事業申請を支援するなどした。その後、元秘書は北海道へ渡り、同じ手口で貧困ビジネスを始め、同じ手法のビジネスが全国に広まった(p.44)。 全Aネットでは、悪しきA型を以下のものと考えている。●継続的に収益の上がらない簡単な、達成感のない仕事を提供し続けている。 ●利用者の要望にかかわりなく、一律短時間雇用としている。 ●不十分な職員配置、施設環境で経費を節約し、サービス報酬費を賃金に充当している。 ●助成金(特開金)が切れる時期に退職に追い込む。(p.45)

pp. 44-45
昨年(2017年)にマスコミを賑わしたA型事業所の閉鎖と利用者の大量解雇について、以下3件の報告をする。 @倉敷・高松市の「あじさいグループ」 2017年7月31日、一般社団法人「あじさいの輪」(2013年設立)と株式会社「あじさいの友」(2015年設立)が倉敷市5か所と高松市1か所の軽6か所のA型事業所を一斉に閉鎖し、280名の利用者を解雇した。ウナギの養殖と飲食店では障害者をほとんど働かせておらず、ダイレクトメールの封入などの軽作業をさせていた。採用見舞金と送迎付きを売りとして利用者を集め、銀行から融資を得て、ウナギの養殖に投資し、経営に行き詰まり、負債総額14億?千万円で破綻した。 A名古屋市などの「株式会社障害者支援機構」 2017年8月31日、運営する名古屋市2か所(2013年設立)、埼玉県2か所、千葉県1か所、大阪府1か所の計6か所ののA型事業所を閉鎖、153名の利用者を解雇した。引っ越し作業用資材の洗浄、シャンプーの箱詰めなどの軽作業をさせていて、利用者と職員の3か月分の給与が未払いであり、負債総額1億300万円で破綻した。経営者が私的趣味に運営費を流用していた。 B福山市・府中市の「しあわせの庭」 2017年11月17日、広島県の福山市と府中市で運営するA型事業所2カ所を閉鎖、利用者106名を解雇した。10月からの給与が未払いであった。作業は、パンの製造販売、パソコンのデータ入力、ポップコーンの販売などであり、負債総額2億?千万円であった。




*作成:伊東香純
UP:20210212 REV:
精神障害/精神医療 障害者と労働  ◇障害学  ◇WHO
TOP HOME (http://www.arsvi.com)