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川島 孝一郎

かわしま・こういちろう


・仙台往診クリニック http://www.oushin-sendai.jp/index.html

https://academy.meiji.jp/shop/commodity_param/ctc/20/shc/0/cmc/07120001/backURL/+shop+mainより
川島 孝一郎 (カワシマコウイチロウ) 仙台往診クリニック院長
1954年山形県酒田市生まれ。北里大学医学部、東北大学医学部大学院卒業、東北大学情報科学研究科修了。医学博士。酒田市立病院等勤務、1996年在宅医療専門の診療所「仙台往診クリニック」開業。東北大学医学部臨床教授、東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター研究教授。日本在宅医学会幹事、NPO在宅ケアを支える診療所・市民全国ネットワーク理事、日本プライマリ・ケア学会評議員、厚生労働省「在宅療法の普及及び技術評価に係る調査」実施委員会委員、厚生労働省「終末期医療に関するガイドライン策定検討会」委員。

伊藤 佳世子川口 有美子・川島 孝一郎・野崎 泰伸 2009/09/27 「ALS――人々の承認に先行する生存の肯定」 障害学会第6回大会・報告要旨 於:立命館大学
◆20080410 「こんなになってまで生きることの意味」,上野他編[2008a:211-226]*
*上野 千鶴子・大熊 由紀子・大沢 真理・神野 直彦・副田 義也 編 20080410 『ケアという思想』 ,岩波書店,ケアその思想と実践1,249p. ISBN-10: 4000281216 ISBN-13: 978-4000281218 2310 [amazon][kinokuniya] ※ c04.

◆川島 孝一郎・伊藤 道哉 200709 「身体の存在形式または、医師と状況との関係性の違いに基づく生命維持治療における差し控えと中止の解釈」,『生命倫理学』17-1:198-206

◆NHK 「患者が自宅で過ごすには〜ある往診専門医の取り組み〜」
 2005年5月5日(木)・8月11日(木)
 http://www.nhk.or.jp/heart-net/fnet/arch/thu/50505.html

 「もしあなたが重い病を経て寝たきりになってしまったら、あるいは、もう治療の手だてがなくなってしまったとしたら、どのように残された限られた日々を過ごしたいとお考えになるでしょうか。長年暮らした自宅で、愛する家族に囲まれて過ごしたいと思う人も多いと思います。
 きょうは、全国でも珍しい往診専門の医師の活動を通し、在宅医療の現状と課題を探ります。

「今後の終末期医療の在り方」より
(2004年7月 厚生労働省)
Q:自宅で最後まで療養できますか?
A:医師の52%、一般の66%が、「実現は困難」
※現実に、高齢者の8割は病院で亡くなっている。

患者が自宅で過ごすには
 宮城県仙台市の医師、川島孝一郎さん(50歳)は、全国でも珍しい往診専門の医師として、毎日10軒ほどのお宅を回っています。その際、「患者の生活にとけ込みたい」と、白衣は着ません。
 この日訪れたのは、昨年5月から週に2〜3度足を運んでいるという末期ガンの患者、今井照さん(76歳)のお宅です。ご主人の信夫さん(80歳)と2人暮らしをしている照さんは、4年前、肝臓ガンと診断され手術。しかし、ガンが転移し、昨年春には「余命3か月」と言われました。
 在宅で病状が安定し、笑顔が戻ったという照さん。今では川島さんに冗談を言うこともたびたびです。この日も、尿の管を取り換えている川島さんに対して

照: 先生。頑張れ、ほら。
川島: 慰められる医者(笑)。

 照さんが在宅療養を始めたころ、心労から夫の信夫さんも脳こうそくで倒れてしまいました。今、川島さんのアドバイスを受け、家事や介護はヘルパーに依頼しています。
 去年、退院する時、ホスピスを勧められた照さんですが、「どうせ治らないなら自宅で死にたい」と、川島さんを紹介してもらいました。川島さんは年じゅう無休、24時間対応で照さんを支えています。照さんが急に発熱などした場合、夜中でも川島さんは往診に来てくれます。いつでも先生が来てくれる。その安心感が在宅で療養する不安を解消しています。

自分がしんどい時に、スッと来てくれることですよね。安心感は。(今井照さん)

 しかし、川島さんのように24時間対応している医師は少ないのが現状です。去年7月に厚生労働省から出された報告書によると、「自宅で最後まで療養できない理由」として、医師の54%、一般の人の57%が、「症状が急変した時の対応に不安である」と答えています。
 川島さんはどのようにして24時間対応の診療体制をつくっているのでしょうか。
 川島さんは全国でも珍しい往診専門医です。外来の診察は行っていません。患者は現在180人、その多くが重症の病気を抱えています。往診しない日でも病状の変化をチェックするため、毎日、患者の家から症状を記したファクスが届きます。
 スタッフは医師4名、看護師4名。いつ、誰から緊急に呼び出しがかかるかわからないため、スタッフ全員が情報を共有することが必要です。朝のミーティングでは、その日定期訪問する患者の症状を全員で確認します。
 患者の家には夜間の担当医と携帯電話番号も伝えており、24時間いつでも駆けつける体制をとっています。

 クリニックを始めてから1,000人以上の在宅医療を行ってきました。その皆さんに、何が一番安心かを伺ったら、「先生が24時間365日、いつでも対応していること」とおっしゃいます。「緊急の場合にはいつでも医師が往診しますよ」という体制をとってさえすれば、医師の行く所はどこでも、居宅でさえも医療がなされる場になります。(川島孝一郎さん)

 末期のガン患者にとってもうひとつ重要なのが、痛みを和らげる治療です。
 2年前、ガンの夫を川島さんの往診を受けながらみとった今井京子さんは、これまで2回の肝臓ガン手術を受けた実の父親、羽田栄蔵さん(88歳)を、ことし1月から在宅で介護しています。
 3年前、京子さんの夫、憲一さん(享年56歳)が、ガンと診断された時には、すでに全身に転移が進み、「余命3か月」と言われました。
 川島さんは、憲一さんをみとるにあたって、「痛みを和らげる」ということに何よりも気を遣いました。ガン患者は、時に耐えられないほどの痛みを感じると言います。憲一さんは、痛み止めの薬の副作用で意識が薄れることもありました。「意識を保ちたい」という憲一さんの希望をかなえるため、川島さんは薬の量を微妙に調節しました。
 初孫の諒華ちゃんの成長ぶりを見ることが何よりの楽しみだったという憲一さんは、痛みをほとんど訴えることなく、およそ半年間、穏やかな日々を過ごしました。

 家族全員一人一人が、主人との時間を持つことができました。わたしの知らないところで娘と主人、息子と主人の時間があって、それぞれにそれぞれの思い出ができたんじゃないかしら。6か月間、お互いがもう一度家族のあり方を見直しながら暮らしたような気がします。(今井京子さん)

 厚生労働省の調査では、ガンの痛みを和らげる世界的な標準になっている治療法について、「内容をよく知っている」と答えた医師は15%、逆に「知らない」と答えた医師は26%もいます。

 痛みを緩和する治療法を知らない医師の多いことが、在宅でのみとりを妨げる1つの要因となっています。
「みとり」には、ご本人の苦痛を緩和できるということが第一に求めらます。治す医療ではなくて、苦しみの緩和が十分にできるということが、われわれにとっては必要なことです。(川島孝一郎さん)」

■言及

◆立岩真也 2009/03/25 『唯の生』,筑摩書房,424p. ISBN-10: 4480867201 ISBN-13: 978-4480867209 [amazon][kinokuniya]Kyoto Books ※ et. [English]

 二〇〇七年「四月二二日 フジテレビ・報道二〇〇一「代理母・延命治療中止――生と死 渦中の医師・当事者が語る」。日曜朝の生番組。私は後半に出た。記憶に残っているのは、番組の後、司会の竹村健一ら出演者が一休みする部屋での、仙台で在宅医療を行なう医師の川島孝一郎(仙台往診クリニック、川島・伊藤[2007]、川島[2008]他)と医師で作家でもある久坂部羊(著書に久坂部[2007]◆24)の対話だ。久坂部が、命を終わらせるしかない具体的な幾つかの状況を語り、大きな病院であればそれでも延命は可能であるとしても、といった趣旨のことを述べ、▽272 それに対して川島が、それは運搬可能な小さな機器を使って在宅医療で容易にまた十分に対応できることだと強く反駁したことだった。」(pp.271-272)

川島 孝一郎 2008 「こんなになってまで生きることの意味」,上野他編[2008a:211-226]〈U:271〉
川島 孝一郎・伊藤道哉 2007 「身体の存在形式または,医師と状況との関係性の違いに基づく生命維持治療における差し控えと中止の解釈」,『生命倫理学』[17-1:198-206]〈U:271〉
上野 千鶴子・大熊 由紀子・大沢 真理・神野 直彦・副田 義也 編 2008a 『ケアという思想――ケア その思想と実践1』,岩波書店

岩崎 航 i2019 インタビュー 2019/12/08 聞き手:立岩 真也 於:仙台市・岩崎氏宅 ※

「岩崎:入院した時はやっぱり具合が悪くて、インフルエンザになったとかで入院とか、経管栄養が入らなくなって点滴打ちますというようなことで、最初は西多賀病院にかかっていたので。途中からちょっと胃ろうをつける…、つけ始めたような時期に、在宅医療の専門の先生にちょっと診てもらうようになったり。まあ主治医を替えたっていうふうなところで、ケアのシンポジウムにも、学会にも来られていた川島孝一郎先生、そこの仙台往診クリニックに今はかかってるんですけど、そこで在宅医療をしっかりやってくれるので。その往診クリニックに関わりを持つようになってからは、ほとんど入院はしないで。在宅で点滴もできますし。

立岩:今の主治医は川島さん、みたいな感じなんですか?

岩崎:往診クリニックっていう。往診クリニックもいろいろ先生がいるので、チーム医療っていうところで。

立岩:川島さんとこもいろいろ医者がいる

岩崎:まあだけど、意思統一というのか、クリニックとしては一応意思統一して治療にあたってくれるので。基本的には川島先生に主治医になってもらって。

立岩:いい感じの先生だよね。

岩崎:そうですね、理解があって。在宅の患者さんに理解が深い先生なので。困った時もいろいろやってくれますし。いい先生ですね。

立岩:東京で何回か会ったことあって、1回はテレビの生番組の時でした◇。だいたい東京来る時も長靴履いてくるよね、ゴム長。
◇立岩真也 2009/03/25 『唯の生』,筑摩書房,424p. ISBN-10: 4480867201 ISBN-13: 978-4480867209 [amazon][kinokuniya]Kyoto Books
 「二〇〇七年「四月二二日 フジテレビ・報道二〇〇一「代理母・延命治療中止――生と死 渦中の医師・当事者が語る」。日曜朝の生番組。私は後半に出た。記憶に残っているのは、番組の後、司会の竹村健一ら出演者が一休みする部屋での、仙台で在宅医療を行なう医師の川島孝一郎(仙台往診クリニック、川島・伊藤[2007]、川島[2008]他)と医師で作家でもある久坂部羊(著書に久坂部[2007])の対話だ。久坂部が、命を終わらせるしかない具体的な幾つかの状況を語り、大きな病院であればそれでも延命は可能であるとしても、といった趣旨のことを述べ、▽272 それに対して川島が、それは運搬可能な小さな機器を使って在宅医療で容易にまた十分に対応できることだと強く反駁したことだった。」(pp.271-272)」

岩崎:ええ、トレードマークみたいな。

立岩:そうだね。あれはたぶん、楽しんでるね。

岩崎:なんかベストみたいなのを着て。

立岩:そう。楽しんでますね。「ああ、また来た」「俺、長靴だぜ」って。でも、ああいうタイプの在宅医療できる人って日本中にいるわけじゃないから、けっこうそれもいい条件だなと思うんですよ、相対的にね。

岩崎:そうですね。そうです。

立岩:今回いろいろ聞いてる人の中では、医療との関係、医師との関係が、工夫したり難しかったりっていう人けっこういて。例えばさっき名前出した古込さんなんかだと、そんなに在宅ですぐ見つかんなくて。そうすると、そんなに好きではなかった医王病院との縁が切れないということもあるし。そこはうまく、結局はうまくなんとかはやって、状態悪くなったら医王病院でヘルパーつけながらっていう状態に持っていったんですけど。でも、であるがゆえに、例えば病院の、旧国立療養所のお医者さんと、あまり強いこと言えないとか、いろいろみんな苦労してるんですけど。そのへんは今、岩崎さんはそんなでもない?

岩崎:今はもう、在宅の問題で言ったらもう、なんでしょう、まあ患者の意思というのか、在宅でこう暮らしていけると、実際あの、医療のケアとか必要なケアがなされれば、介助の手が得られれば十分に在宅で暮らしていけるっていう考えを持ってる先生なので、そこの点についてお医者さんで困るとかは。具合が悪くなったらまず相談をしまして。でまあ在宅でちょっと治療できないような。一度臍の部分から膿が、膿が出てきまして。膿瘍みたいなものができるようなことがありまして、それでちょっと腹膜に広がっちゃったと。外から注射器とか使って洗浄したりとか、まあ臍からですね、まあそういうこといろいろやったけど、ちょっとひどくなっちゃって。それで、「手術しなきゃなりませんね」と。ただ筋ジス患者って手術するとリスクが高くて、麻酔かけると二度と覚めません、かもしれない。あとすごく状態が悪くなっちゃう。ていうリスクがすごく高いです。それでリスクがとてもあるんだけど、それでもやっぱ腹膜炎とか腹膜がくっついちゃうから、まあちょっと命に関わるので、それで入院して治療をっていうふうなことで。その手配についても往診クリニックにかかっていると先生のほうできっちりやってくれるので、だから具合の悪くなった時に医療的にも困らない。実際に考えてくれる人がいるので、まあそのへん、その安心感はとてもでかいと思いますね。

立岩:その時はそれで、手配してくれて、入院して手術してもらったんですか?

岩崎:で、手術すると危ないので、全身麻酔を普通かけるんですけど、全身麻酔しないでやったんですね。

立岩:えっ、できたんですか?

岩崎:部分麻酔でできたんですね。短い、12、3分ぐらいでやってくれたのかな。ほんとは30分ぐらいかかるんですけど。手がいい先生で、腕の立つ先生だったみたいで。まずちょっと見てみて、それで腹膜にちょっときてるなと。開けてみないとほんとのところがわからないので。だけどその場の判断で取ってくれたんですね。最初はちょっと様子見て、ひどいようだったらちょっと全身麻酔かけるのも、そういうリスクもあるので避けましょうという方針が事前にあったんだけど、その場の判断で外科の先生が短い時間で取ろうと思ってくれて、それで部分麻酔のまま取ってくれたんですね。

立岩:部分麻酔ってことは、それを見てたっていうか、「ああ、やってるな」って感じだった?

岩崎:そうですね。だから、痛いのはすごく。普通やらないので、痛みが、

立岩:痛かった?

岩崎:いや、はんぱない痛みでして。それで「手術室の外に叫び声が聞こえましたね」って他の先生に言われりして。まあだけどそれでうまく取れたので。

立岩:でも全身麻酔でリスクっていうよりは、

岩崎:全身麻酔でそのまま目が覚めないとか、それはもうちょっと意味がなくなっちゃうので。それでまあ幸運にもなんとか。ただそういう普通に治療が困るとか、在宅では難しいようなときになるとやっぱり、そういう病院にきっちり繋いでくれて、

立岩:そういうのを、そうか、川島さんとこがやってくれるんだね。

岩崎:それでちゃんと知ってる先生じゃないと、そこまでうまくできないと難しいですよね。

立岩:その手術が何年っていうか、いつ頃だったか覚えてらっしゃいますか?

岩崎:何年だったかなあ。

立岩:川島さんが代わって、主治医的になったっていうのがだいたいいつ頃ですか?

岩崎:胃ろうつけた時と同じなので、29ぐらいかな。

立岩:齢(よわい)29ぐらい。じゃあ川島さん、付き合いけっこう長いんですね。

岩崎:そうですね、もう長くなってますね。途中でそんなこともあったりもしたけど。

立岩:それはけっこう好要因ですよね。けっこう病院とか医療との関係でみんな苦労なさって。

岩崎:病院問題大事ですね。呼吸器の問題とかもあるので、やっぱり。」


UP:20080327 REV:20080329, 0421, 0912, 20140730
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