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福田 幸弘

ふくだ・ゆきひろ



1924 熊本県生まれ
1981 主税局長
1982 国税庁長官
1983 退官
1986 参議院議員・自由民主党
1988 死去

◆木下 和夫 198902 「福田幸弘さんの急逝を悼む」,『税経通信』44(02) (通号 602) 号(税務経理協会)
 http://bizlaw.jp/search/article_detail/228713

◆参議院会議録情報 第114回国会 本会議 第3号 平成1年2月10日
 http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/114/0010/11402100010003a.html

○議長(土屋義彦君) これより会議を開きます。
 議員福田幸弘君は、昨年十二月二十三日逝去されました。まことに痛惜哀悼の至りにたえません。
 同君に対しましては、議長は、既に弔詞をささげました。
 ここにその弔詞を朗読いたします。
   〔総員起立〕
 参議院はわが国民主政治発展のため力を尽くされました議員正四位勲二等福田幸弘君の長逝に対しつつしんで哀悼の意を表しうやうやしく弔詞をささげます
    ―――――――――――――
○議長(土屋義彦君) 安永英雄君から発言を求められております。この際、発言を許します。安永英雄君。
   〔安永英雄君登壇〕
○安永英雄君 ただいま議長から御報告がありましたとおり、本院議員福田幸弘君は、昨年十二月二十三日、都内関東逓信病院において急性心不全のため急逝されました。余りにも突然の訃報は、耳を疑うばかりでありました。御家族の方々のお悲しみ、地元の皆様のお嘆きはもとより、同僚議員としてまことに痛惜哀悼の念にたえません。
 私は、ここに、議員各位の御同意を得て、議員一同を代表し、正四位勲二等故福田幸弘君のみたまに対し謹んで哀悼の言葉をささげたいと存じます。
 君は、大正十三年熊本県人吉市に生をうけられました。長じて福岡県中学明善校から海軍経理学校に進み、太平洋戦争末期の昭和十九年三月、第三十四期生として卒業、軍艦「長門」に乗り組んでレイテ沖海戦に参加されるなど、実弾の下をかいくぐられました。
 終戦後、東京大学法学部に入学、司法試験、国家公務員試験に合格、二十七年三月卒業の後直ちに大蔵省に入省され、以後ほぼ一貫して税の分野で活躍してこられたのであります。すなわち、在カナダ日本国大使館一等書記官、福岡国税局長、大臣官房審議官、日本銀行政策委員、主税局長の要職を歴任、五十七年六月に国税庁長官に就任されました。
 翌五十八年六月国税庁長官を退官された後の君は、しばらく野にありましたが、六十一年の参議院通常選挙に関係者の輿望を担って福岡県から出馬し、見事当選を果たして身を政界に投じられたのであります。
 君は、議員在職中、大蔵、逓信、決算の各委員会、産業・資源エネルギーに関する調査会、税制問題等に関する調査特別委員会に所属され、広範な国政の審議に熱心に参加されますとともに、議員同志と税制に関する私的な勉強会をつくり、税制改革への提言を発表するなど真摯な勉強家でありました。特に、在職中を通して籍を置かれた決算委員会においては、理事として、決算審査の充実のため苦心されていた君のお姿が昨日のように思い出されます。また、自由民主党にあっては、全国組織委員会都市局、農林水産局、通信情報局の各次長として特段の尽力をなされたと伺っております。
 君は、また、肥後もっこすの豪気とロマンを求める若々しい心をあわせ持った、大きな風格を感じさせる人でありました。君の優しいまなざしは、すべての人を包み込む温かさにあふれていました。マージャンもゴルフも時間のむだとしてこれらをたしなまれなかった君は、映画をこよなく愛し、多くの映画評を物された玄人はだしの映画評論家であり、さらに戦記、随筆等にも健筆を振るい、すぐれた著作を残された日本文芸家協会の会員でもありました。
 君が大蔵省の広報誌「ファイナンス」に長年にわたって連載された映画評の最後は「敦煌」についてのものでありました。君は、その中で、砂に埋もれたロマンと歴史の中に戦乱と文化、一生と永遠、権力と宗教の問題を感じ取られ、また、「反乱は、人間の持つ最高のエネルギーの爆発である。映画の終り近く、砂煙に包まれた乱戦の遠景には哀愁が漂う」と述べておられます。
 君は、このとき、かつて若き海軍士官として激しい戦闘の中で常時死と対面し、人の生と死の意味を問い詰められた青春の日を思い返しておられたように思われてなりません。太平洋戦争において、陸軍と海軍との違いはあれ、君と戦争体験を同じくする私は格別の感興を持って拝読したのであります。君の人生観に裏打ちされた映画評は、これまで多くの人の感動を誘ってきたに違いありません。
 さらに、君は、何よりも税の専門家として意義ある業績を多く残されました。「税制改革への歩み」と題する正・続二巻千四百ページに及ぶ君の対談集も、恐らく君のこの面での広範な活動の一端を示すにすぎないものでありましょう。君は、常に税の公平確保を強く主張された正義の人であり、君の理論は、単に税制問題にとどまらず、より根源的な我が国政治のあり方を問い、多くの示唆と感銘を与えてくださいました。
 政界に身を置いてわずか二年有半、大成を期待されながら志半ばにして倒れた君の心中の御無念は察するに余りあるものがあります。
 今日、参議院が自主性の発揮を強く求められているとき、君のごとき高潔な人格と豊かな識見を備えた大器を失ったことは、本院のみならず、国家にとっても痛恨のきわみと言わなければなりません。
 今、君と幽明境を異にし、再び君の温顔にこの議場で接することができないことに改めて深い悲しみを覚えます。
 ここに、謹んで君の業績とお人柄をしのび、院を代表して心から御冥福をお祈り申し上げ、哀悼の言葉といたします。」

◆福田 幸弘 19840105 『一大蔵官僚の眼』,東洋経済新報社,285p. ASIN: B000J795LO 1400 [amazon][kinokuniya] ※ t07.
◆福田 幸弘 19841129 『税とデモクラシー』 ,東洋経済新報社,287p. ISBN-10: 4492610103 ISBN-13: 978-4492610107 [amazon][kinokuniya] ※ t07.
◆福田 幸弘 19850510 『税制改革の視点』,税務経理協会,395p. ISBN-10: 4419005491 ISBN-13: 978-4419005498 [amazon][kinokuniya] ※ t07.
◆福田 幸弘 著/新日本税制研究会 編 19870810 『税制改革への歩み――福田幸弘対談集』,税務経理協会,705p. ISBN-10: 4419009535 ISBN-13: 978-4419009533 2300 [amazon]/[kinokuniya] ※ t07.
◆福田 幸弘 著/新日本税制研究会 編 19880825 『続・税制改革への歩み――福田幸弘対談集』,税務経理協会,669p. ISBN-10: 441901167X ISBN-13: 978-4419011673 2000 [amazon]/[kinokuniya] ※ t07.

 ※のある本は生存学研究センター資料室所蔵

■言及

◆立岩 真也 2008-2009 「税制について」,『現代思想』 資料

◆立岩 真也 編 2009 『税を直す――付:税率変更歳入試算+格差貧困文献解説』,青土社 ※


UP:20081214 REV:20081215, 20090628,0731
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