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千葉 華月
ちば・かづき



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・千葉 華月
・ちば・かづき
・横浜国立大学大学院

●履歴

1971年5月17日生
1997年4月横浜国立大学大学院国際経済法学研究科修士課程入学
(1999年3月、国際経済法学研究科修士課程は、国際社会科学研究科博士前期課程の1専攻になる)
1999年3月横浜国立大学大学院国際経済法学研究科修士課程終了(修士:国際経済法学)
1999年4月横浜国立大学大学院国際社会科学研究科博士後期課程入学
2002年3月横浜国立大学大学院国際社会科学研究科博士後期課程終了見込


●T.学会報告

◆「最善の利益」基準を考える――イギリスにおける成人の精神無能力者に対する医
療上の処置と同意―」
 第11回日本生命倫理学会 一般演題H

◆「医事法に関する問題 事前の表明(Advance Statements)の範囲と法的有効性――
イギリスの事前の表明をめぐる議論から」
 第12回日本生命倫理学会 一般演題2

●U.論文 

◎修士論文

◆「精神無能力患者の自律と保護―英国法律委員会報告書(Law Commission Report
No231)をめぐる議論から―」(1998)

◎紹介(共同)

◆「ミティゲイション・バンキング:理論と実際」
 『横浜国際経済法学』6巻2号165頁(1999)。

◎研究ノート

◆「『最善の利益』基準を考える――イギリスにおける成年の精神無能力者に対する医療上の処置と同意」
 『生命倫理』10号167-175頁(2000)

◆「シャム双生児分離手術事件控訴院判決」
 『年報医事法学』(2001)

◆「医的処置に対する事前の意思表明」
 『生命倫理』11号(2001)

□「意思決定能力がない患者の輸血拒否と最善の利益――イギリスの判例の検討」
 『横浜国際社会科学研究』7巻(2001)

◎X.その他

◆「シャム双生児分離手術事件判決――誰が何に基づいて判断するべきなのか」
(2001)
 『生命倫理ニューズレター』
◆「子どもに対する治療と親の輸血拒否」

 

※精神無能力者(mentally incapacitated)に対する医療上の処置の合法性→代理決定の合法性について
 →「最善の利益(the best interests)」と「代行判断(the substituted judgment)」という2つの基準
 →イギリスでは「最善の利益」基準→その「基準」について

◇はじめに
「2000年4月にいわゆる成年後見法が施行されたが、医療上の処置への同意に関する立法措置は、さらなる議論が必要だとして見おくられた。しかし、医療上の処置への同意の問題は、代行意思決定全体に係るものであり、今後、一層重要になるだろう。」168
「しかし、痴呆高齢者、精神障害者等の場合、同意能力判定基準はどのようなものか、同意能力を有していない場合、誰が、いかなる基準に基づき、どのような手続きによって、医療上の処置に同意または拒否できるのか、は明らかになっていない。」168
→※イギリスにおける精神無能力者への医療上の処置をめぐる諸問題
→1985年持続的代理権授与法−財産管理に限定
 1983年精神保健法−精神障害者に限定、後見人の権限を制限。医療上の処置の代行権限は有していない
 →議論の中の重要な論点が「最善の利益」基準

◇「最善の利益」基準と「代行判断」基準
@定義
※「最善の利益」
→「『最善の利益』基準は、後述のように、判例法でも法律委員会報告書でも、明確に定義されていない。しかし、ここで一応の定義を与えるならば、『最善の利益』基準とは、代行意思決定者が、精神無能力者にとって『最善の利益』だと信じる医療上の処置を選択するという基準である」168
→「『最善の利益』基準」の長所
(1)過去に一度も意思決定能力を有したことがない者(重篤な障害新生児)にも適用可能
(2)精神無能力者の過去の意思を擬制する必要がない
(3)代行意思決定者によって、患者が不当に侵害されることが少ない
→反面・・・
(1)医療上の利益に反する本人の意思(宗教上の理由による輸血拒否など)が尊重されにくくなる
 (2)「生命の質」を考慮せざる得ない場合がある

※「代行判断」
→「『代行判断』基準とは、代行意思決定者が、患者の周知の見解や価値観に照らして、もしその患者に能力があったならば選択したであろうと予想される医療上の処置を選択するという基準である」168
→「『代行判断』基準」の長所
 「本人の過去の『意思(と思われるもの)』が尊重されるため、医療上の利益が強制される事態を回避できる」
→しかし・・・
 「過去の『意思』は現在の意志と同一だとは限らず、本人の現在の感情が軽視される、一度も能力を有したことがない者への適用が難しい等の問題点が指摘されている」168

A由来
「『最善の利益』基準は、イギリスで、子どもの判例(養子、医療上の処置等)によって確立され、その適用範囲が、次第に成人の精神無能力者に拡張されてきた」169
→「親責任」の同意について、Gillick competentについて・・・

「他方、『代行判断』基準は、イギリスの無能力者の財産管理に関する判決に起源がある。当初、『代行判断』基準の範囲は財産管理の領域に限定されていたが、その後、この基準は、患者の見解や価値観を反映させるために、アメリカのStrunk事件(1969年)といった臓器移植の判決で復活し、Quinlan事件(1976年)といった末期医療に関する判決、ショック療法や精神外科手術といった議論のある治療に関する判決に拡張された。」

B学説
(1)「最善の利益」基準賛成説
※ある時点での意思は患者の生涯に及ぼす意思とは異なる。
※子どもに適用できない。
※人生を通じて完全に首尾一貫して行動する人はいない。
169


(2)「代行判断」基準賛成説
「『代行判断』基準賛成者は、『最善の利益』基準の適用が、『医師が推薦する医療上の利益がある治療』を強制するものだと批判する。」169

(3)両者に違いはないとする説
ドゥオーキン:「・・・『代行判断』は、『能力のない患者が、もし能力があったならば、何を決定したであろうかを評価しようと試みる困難ゆえにではなく、その評価が、主観的であるべきか客観的であるべきか、そして、もし客観的ならば、(『代行判断』基準)は、実際にどのくらい『最善の利益』アプローチと異なりうるのかは議論の余地がある概念である』・・・」170

◇イギリスにおける『最善の利益』基準の展開
1.判例法とそれに対する学説
「イギリスの判例法は、成人の精神無能力者の医療上の処置のための基準を、『代行判断』基準に求めず、『最善の利益』基準を採用し、その基準の実質的判断をBolam testに求めてきた。Bolam testとは、医師が『医療上の見解をもつ責任ある集団(a responsible body of medical opinion)』がその当時受容していた慣行にしたがって行動したことを立証すれば免責されるBolam事件で示された治療および診断の過失の判断基準である。」170
 →しかし、明確な定義・基準がないため、「エホバの証人」の輸血拒否、精神障害者の不妊手術、PVS(植物状態)患者の生命維持処置の打ち切り、臓器移植の判例でばらばらの判例が示される。170

2.法律委員会報告書231号「精神無能力」
「・・・『最善の利益』基準に基づく判断において、代行意思決定者等が考慮すべき4要素を提示し、法律草案の形で『最善の
利益』基準を初めて明確化した。・・・4要素とは、第1に、本人の過去と現在の希望・感情・もし能力があったら考慮したであろう要素、第2に、本人の参加の促進、参加能力を向上させる必要性、第3に、本人にとっての『最善の利益』について相談すべき他者の見解、第4に、ある行為または決定が、本人にとって最も制限的でない選択(the least restrictive option)により達成されるか、という要素である。」171
 →第3の相談すべき他者として、@本人に指名された者、A配偶者、友人等ケアに参加する者、B本人より継続的代理権を授与された者、C裁判所に任命されたマネージャー

3.報告書231号に対する各種意見
※国会・医の倫理に関する特別委員会報告
「・・・意識が全くなく、回復の見込みがないPVS患者の治療を差し控えることは適切かもしれないが、そのような場合、『生命の質』は、低いのではなく存在しないと考えることが合理的であり、『生命の質』の判断が、能力のない者への差別を導くべきではない・・・」172
「また、SPUC(障害者団体)は、能力のない者のためにおこなわれる『生命の質』の決定は、厳格なものでも倫理的なものでもなく、その生命に一旦価値がないと判断されると全ての医療上の処置が減じられるため、人間をグレード化することは、危険なことであると主張する」172

※保健省国務大臣緑書「1983年精神保健法の改革」および同省専門委員会報告書「1983年精神保健法の再検討」
「・・・かりにその患者の希望を確かめられなかった場合、『最善の利益』は、臨床専門家の見解に基づいて決定されるべきである、・・・」172

◇私見
「・・・特に、第1の要素(本人の過去と現在の希望・感情・考慮したであろう要素)を通じて、『最善の利益』基準と『代行判断』基準の融合が図られており、・・・」172

「類型化は、今後の課題であり、ここでは、類型化にあたって考慮すべき3つの指標、つまり、@精神無能力者本人の同意能力の程度、A精神無能力者を取り巻く環境、B症状と処置の内容・結果を指摘するにとどめたい。」173

「もっとも、いずれの類型でも、@精神無能力者の自己決定権の尊重とA精神無能力者の保護を共通の原則・理念として、『最善の利益』を判断すべきである。たとえば、精神無能力者の治療拒否がその死や永続的損傷もたらす可能性がある場合は、厳格な要件を充たす事前の意思表明(リビング・ウィル等)がない限り、子どもの判例と同様に、『最善の利益』に基づき、その拒否は覆されるべきであろう。」173

「・・・つまり、能力の有無と自己決定権の尊重は、決して連動しているわけではない。このように考えると、精神無能力者への医療上の処置についての代行意思決定の議論は、能力がある者の医療上の処置への同意または拒否についての議論にも有益であると言える。」173

「日本の成年後見法は、高齢者や障害者の医療上の処置への同意に関する立法措置を時期尚早として見送り、問題を先送りにした。しかし、本法は、欧米諸国と同様、自己決定権(自律)の尊重の理念(残存能力の活用、ノーマライゼーション等の理念を含む)と本人の保護の理念との調和を基本方針としている。成年後見制度は、自己決定権の尊重という理念を最もよく実現するために、イギリスの1985年持続的代理権授与法をベースに、任意後見制度を導入した。また、同法は、成年後見人等や任意後見人の権限の行使にあたっては、本人の意思を尊重すべき旨の明文の規定を設けている。つまり、『最善の利益』という文言こそないが、残存能力を生かし、できる限り自己決定権を尊重しようという理念は、イギリスで詳細に論じられている『最善の利益』基準をめぐる議論と共通である。」173



法・法学  ◇医療と法  ◇生命倫理[学](bioethics)  ◇WHO 

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