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千葉大学21世紀COEプログラム「持続可能な福祉社会のための公共研究拠点」2005
http://www.shd.chiba-u.ac.jp/21coe/index.htm



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 《公共研究通信 ReCPA−Letters》

  〜千葉大学21世紀COEプログラム
    「持続可能な福祉社会のための公共研究拠点」メールマガジン〜
     Research Center on Public Affairs(ReCPA)

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*目次*********************************
 

 ▼3/18(金)開催 国際シンポジウム
 「中国・アジアにおける〈持続可能な福祉社会〉の構想」
 
 ▼3/19(土)開催 国際公共比較第4回研究会
 「日本の女中はどこからきたか―家事使用人の出身地の国際比較―」

 ▼機関誌『公共研究』創刊とご投稿のお知らせ

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▼国際シンポジウムのご案内

タイトル:「中国・アジアにおける〈持続可能な福祉社会〉の構想」
    Vision of Sustainable Welfare Society in China and Asia

 3月18日(金)千葉大学マルチメディア会議室 9:40〜

プログラム:

セッション1:福祉政策(9:40〜12:00)

「中国における社会変動と社会保障改革」劉暁梅(中国・東北財経大学教授)
「韓国における社会保障改革」角田由佳(韓国・漢陽大学校国際学大学院客員教授)
「アジアの社会保障とアジア福祉ネットワーク」広井良典

セッション2:環境政策(13:00〜15:20)

「中国における環境政策の動向と課題」
            張軍濤(中国・東北財経大学公共管理学院院長・教授)
「日本の環境政策の動向と東アジアでのパートナーシップ」倉阪秀史
「東アジア環境エネルギー共同体」の構想」
  田邉敏憲
  (富士通総研経済研究所主席研究員・東京大学大学院非常勤講師(MOT担当))


セッション3:全体展望(15:40〜17:40)

――アジアにおける公共性と〈持続可能な福祉社会〉の構想
           〜「アジア福祉・環境ネットワーク」の構築に向けて

「中国における公共政策のパターンの変化―サーズ(SARS)を視点として」
              張向達(中国・東北財経大学大学院長・教授)
「日本と中国・アジアの国際協力のあり方」
      渡辺雅人(国際協力機構(JICA)中国事務所・中国技術協力調整専門家)

 (コメント)「中国・アジアにおける公共性と日本」小林正弥
      「EU統合とアジアの連携への示唆」雨宮昭彦

全体ディスカッション(17:40〜18:10)
懇親会(18:30〜20:00)



▼国際公共比較第4回研究会のお知らせ(3/19[土]開催)

テーマ:
「日本の女中はどこからきたか―家事使用人の出身地の国際比較―」
 報告者: 荻山正浩(千葉大学法経学部助教授)
 
 この研究会は、千葉大学社会文化科学研究科COEプログラム「持続可能
な福祉社会に向けた公共研究拠点」のサブ・セクションとして活動している
「国際公共比較」研究グループが運営するものです。
 本研究グループは、その設立趣旨に沿った比較史的なパースペクティヴを
もちつつ、同時に幅広い研究の枠組みのなかで、グローバル化のもとに必要
とされる新たな「公共性」のあり方を過去の経験から照射していくことを目
指します。
 
日時:3月19日(土) 14:00〜16:00
場所: 千葉大学 法経学部・第一会議室
時間: 14:00-16:00

≪前回の研究会のご報告≫
 3回目を迎えた今回の国際公共比較研究会は、研究報告が主だった過去2回
の研究会と異なり、若手スタッフを中心に国際公共比較セクションの今後の方
向性などをワークショップ形式で議論しました。

 まず、リサーチアシスタントの浅田、黒羽根、折原がそれぞれの研究と最近
のテーマなどを手短に報告し、その後、創刊されたばかりの『公共研究』第1
号を題材に、公共研究における国際公共比較セクションの方向性、公共研究と
歴史学研究との関係、さらにCOEプログラムの中心課題である「持続可能な
福祉社会」・「公共研究」のあり方などについて議論を進めました。

 中でも、「市民」とは誰なのかという問題は、外国人や市民権の問題などに
も話題が広がり議論が深まりました。また、COEプログラムのビジョン自体
にジェンダーに関する問題意識が希薄なのではないかということなどが指摘さ
れました。

 フリートーク形式での進行だったため、各参加者が忌憚なく意見を述べ合い、
議論が大いに盛り上がりました。今後も『公共研究』が刊行されたら、今回の
ような書評を兼ねた議論の場を作っていきたいと考えています。(折原淳一)


▼『公共研究』創刊

 公共研究センターの機関誌『公共研究』第1号が創刊されました。
 創刊号の内容は以下のとおりです。

公共研究創刊を祝う(磯野可一)
「公共研究」創刊にあたって(広井良典)

特集:
 21世紀COEプログラム 公共研究センター設立記念シンポジウム
   「持続可能な福祉社会に向けた公共拠点研究」
 三浦佑之/広井良典/山脇直司/倉阪秀史/雨宮昭彦/小林正弥

研究ノート:
 EUの公共機関における環境マネジメントシステム(伊藤佳世)

書評:
 Geschichte der Globalisierung. Dimensionen, Prozesse, Epochen(浅田進史)
 Republicanism(吉永明弘)

報告・紹介:
 Indicators for Location-specific Information and GRI Biodiversity
 Indicators (倉阪秀史)
 学生との連携による市民社会に開かれた「学び」の創造
 −−「在宅での看取り」から持続可能な福祉社会を捉える(藤田敦子)
 市民が検証する参加型会議−−三番瀬「評価ワークショップ」の実践報告
 (三上直之)
 新しい平和運動への希求――地球平和公共ネットワーク紹介(宮崎文彦)

創刊号の送付を希望される方は、以下までご連絡いただければ幸いです。
※公共研究センター
 電子メイル cpp1@shd.chiba-u.ac.jp(担当:浅野)もしくは
 TEL/FAX 043−290−2337(担当:小原)

▼『公共研究』ご投稿のお知らせ

 公共研究センターの機関誌『公共研究』(季刊)は、「持続可能な福祉社会」
「公共性」に関連する研究者、NPO等に開かれた媒体です。研究論文、活動
報告等ぜひご投稿いただければ幸いです。なお、ご投稿は採用可否の査読をい
たしますので、掲載できない場合もあります。予めご了承ください。締め切り
・分量等の目安は以下です。

■締め切り
*第2巻第1号に掲載の場合:2005年4月5日(18:00まで)
*第2巻第2号に掲載の場合:2005年7月12日(18:00まで)

■分量の目安
*研究論文:4万字を上限
*研究ノート:2万字を上限
*書評論文:1万字程度
*活動報告・活動紹介:8000文字程度

 ご投稿を希望される方には見本誌を送りますので、下記までお知らせください。
TEL/FAX 043−290−2337(担当:角田〔つのだ〕)



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発行:千葉大学21世紀COEプログラム
    「持続可能な福祉社会のための公共研究拠点」
    Research Center on Public Affairs(ReCPA)
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 編集担当:宮崎 文彦(COEフェロー)

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 《公共研究通信 ReCPA−Letters》

  〜千葉大学21世紀COEプログラム
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*目次*********************************
 

 ▼公共政策セクション対話研究会
 「中国におけるNPOの展開―市民的公共性の日中比較に向けて―」ご報告

 ▼公共政策セクションWorkshop Series 2005のご案内(5/27開催)
     
 ▼新刊案内『ネクスト』
     (アミタイ・エツィオーニ著、小林正弥監訳、吉永・田久保・工藤訳)

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▼公共政策セクション対話研究会 第3回<福祉環境交流センター 連続セミナー
第22回>「中国におけるNPOの展開―市民的公共性の日中比較に向けて―」ご報告

 日本でも社会活動の担い手としてのNPOの活動が、ようやく事業体として位置付
けられるようになりました。今回は中国におけるNPOの展開について、浦和大学総
合福祉学部から沈潔教授をお迎えして、その法的な根拠や改革開放という社会変動の
なかでどのようにその活動が変化してきたかについて、日中両国のNPOの調査比較
を交えてお話をうかがいました。

 はじめに中国におけるNPOについて、非営利的・公益的組織として行政補完の役
割を果たすという定義や、その組織や活動を1)法的な根拠、2)法人格の有無、3)活動
範囲、4)活動領域という分類から、データを交えながら説明されました。
 次にコミュニティ・サービスの供給が、改革開放という大きな社会変動の前後でど
のように変化し、NPOによる公益サービスが展開されてきた背景や期待されている
役割について説明されました。社会主義的計画経済から市場経済への移行や「大きな
社会、小さな政府」という行政改革によって、政府機関や国営企業から切り離された
事業が、社会団体NPO・民弁非企業単位NPO・基金会NPOとして継続されてい
るという形態としての特徴や、社区NPOによるコミュニティによる公益事業や福祉
サービスが急増した失業者の受け皿になり、NPOは福祉サービスの供給だけでなく、
地域開発や地域の組織化の役割も期待されているという特徴を示されました。
 
 市民公共性の視点から日本の福祉NPOと中国の社区NPOの特質について、高知
県と武漢市の調査データを比較しながら、日本の福祉NPOは地域と行政の間を埋め
る市民活動組織の発展型で、事業というより活動とみなされる傾向にあること、一方、
中国の社区NPOは政府や企業と同様に「広義の公益事業」の担い手として事業体と
しての性格が強いと指摘されました。中国では草の根の市民活動や民主運動のプロセ
スを経ていないため住民の自発的な参加が少なく、今後の社区NPOの発展については、
公益事業体としての非営利性や公益性、効率性を維持しながら、地域住民の連帯を目
指した住民主体の連合体の構築が重要であるとコメントされました。

 参加者からは中国が準市場の形成という最新のトレンドを取り入れていること、互
助的な明朝・清朝時代の民間の社会福祉活動などとの関連、中国における公共意識な
ど幅広い質疑があり、予定時間を大幅に延長して活発な対話がかわされました。
(野村眞弓、COEフェロー)

▼公共政策セクションWorkshop Series 2005のご案内

 Workshop Series 2005 
 「Public Policy and Asia
      : A Vision for an Asian Welfare and Environment Network」
 (国際ワークショップ・シリーズ 2005
     「公共政策とアジア:アジア福祉・環境ネットワークへの構想」)

 
 報告者:Michael Hill(ニューカースル大学名誉教授)
     小川哲生(千葉大学助教授)
     小林正弥(千葉大学教授)

 開催日時:2005年5月27日(金) 14:30-16:30
 場所:千葉大学法経学部第1会議室

 ※このワークショップは英語で行われます。

  イギリスの公共政策研究の第一人者であるMichael Hillニューカースル大学名
 誉教授が来日されるのを機に、公共政策研究の方法と欧州におけるネットワーク
 の展開についてお話をうかがうワークショップを企画しました。千葉大学からは
 アジアのおける公共政策について、小川哲生助教授が東アジアにおける公共政策
 研 究ネットワーク促進、小林正弥教授が東アジアにおける公共性をテーマにコ
 メントします。公共政策研究、アジアでの研究ネットワークの形成など、興味深
 い議論が展開されることが期待されます。

▼新刊案内『ネクスト』
     (アミタイ・エツィオーニ著、小林正弥監訳、吉永・田久保・工藤訳)
 
 公共哲学センターの「コミュニタリアン翻訳プロジェクト」で、2002年6月から
続けてきた翻訳本『ネクスト』(アミタイ・エツィオーニ著、小林正弥監訳、吉永
・田久保・工藤訳)が、今年3月に刊行されました。
 アミタイ・エツィオーニは、アメリカの社会学者にして、コミュニタリアン運動
(共同体主義)の第一人者と目されている人物です。

 この本の前半では、国家と市場に加えて「コミュニティ」(地域社会から大きな
社会まで)の役割を重視すべきであるということや、法と経済に加えて「道徳」の
役割を重視すべきであるということが、平易な言葉で述べられています。
 後半では、クリントン政権が実際にそのような方向(中道路線)に向かっていた
ことをふまえて(そもそもエツィオーニの議論がクリントン政権に大きな影響を与
えていた面があります)、クリントン時代の政治や政策を総括し、反省すべきとこ
ろは反省して、「善き社会」にむけて進もうということが、具体的に述べられてい
ます。
 前半の「コミュニティ」についての議論は、地域の問題や社会問題を考える上で
多くのヒントを与えてくれます。後半のクリントン時代を総括した部分は、昨年刊
行されたクリントンの自伝『マイライフ』と合わせて読むと面白いかもしれません。
 原著が書かれたのは2000年のブッシュVSゴアの大統領選挙運動中で、古くなって
いる情報もありますが、基本的な論点は現在でも通用するものです。

 また、監訳者の解説においては、ブッシュ政権におけるアメリカの変容について
詳しく述べられています。この解説は本の注釈を超えて、より広い観点からの「コ
ミュニタリアニズム」の論考となっています。原著にはない、翻訳の「特典」とい
えるかもしれません。

 御関心のある方はぜひどうぞ。(吉永明弘、リサーチ・アシスタント)

---------------
この本は、
麗澤大学のHPでも紹介されています。 
http://www.rup.reitaku.jp/ 

ライブドアニュースに書評が出ています(評者:菊池理夫氏)。
http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__1077080/detail

また、以下で読売新聞掲載の書評(評者:佐伯啓思氏)を見ることができます。
http://www.yomiuri.co.jp/book/review/20050509bk06.htm

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発行:千葉大学21世紀COEプログラム
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 編集担当:宮崎 文彦(COEフェロー)


 
 
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 《公共研究通信 ReCPA−Letters》

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*目次*********************************
 

 ▼「狂った」時代?―ベルリン雑感(浅田進史)
                      
 ▼書評会のご案内:渋谷望著『魂の労働―ネオリベラリズムの権力論』
   
 ▼『公共研究』第二号刊行

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▼「狂った」時代?―ベルリン雑感(2005年2月20日〜3月10日)

                      浅田進史(COEフェロー)

 2005年2月20日から3月10日まで、ドイツ連邦共和国の首都ベルリンを訪れた。
個人的にはそれほど好きな街ではないのだが、2000年10月よりおよそ2年の間、
ベルリン自由大学に留学し、海外ではほかにそれほど長く滞在した経験はないの
で、ヨーロッパの都市のなかでいちばんなじみがある。
 今回は、脱植民地化に関するある研究プロジェクトより助成を得て、同市に所
在する連邦文書館と外務省政治史料館を訪れた。その成果については、プロジェ
クトの活動のなかで公表する予定である。訪問期間中、ドイツの政局について見
聞きし、感じたことを気ままに書くことをお許し願いたい。

 ベルリンに到着し、さっそく文書館に通う間、留学時代にかならず目を通して
いた週刊誌『シュピーゲル Der Spiegel』誌(第8号2005年2月21日)を買うこと
にした。その表紙は、「ヨシュカ・フィッシャー/スーパースター/現実との不
快な出逢い」であった。
 驚いた。現代ドイツ政治を専門にしている訳ではないので、しばらくの間、ド
イツの政局を押さえてはいなかった。ご存知のとおり、ヨシュカ・フィッシャー
は、現在の2期目に入ったシュレーダー政権の外相であり、社会民主党(SPD)
と連立政権を組む所属政党の90年連合・緑の党(Buendnis90 Die Gruenen)の顔
である。それ以上に、シュレーダー政権(赤緑連合)の顔と言っていい。ドイツ
ではもっとも人気のある政治家の一人である。留学中には、彼が学生運動の闘士
であることが槍玉に挙げられたこともあったが、支持者からは今さら何を、それ
を知った上で投票したのだと言った声が聞かれた。
 すでに日本でも報道されたが、問題となっているのは、ウクライナ経由でドイ
ツに入国する際のヴィザ発行の手続きが緩和され、それによって東欧から非合法
の移民が大量に入国することになっているという疑惑であり、その緩和措置につ
いてのフィッシャーの責任と関与である。フィッシャーの政治家としての大きな
危機として報じられている。

 さて、翌々週の『シュピーゲル』誌(第10号2005年3月7日)。その表紙には
「『もし私たちが失業率を実感するほどに下げることがなければ、ふたたび選出
されるに値しない』/ゲルハルト・シュレーダー、連邦首相/1998年12月」とい
う文字が並んでいた。2005年2月にドイツの失業者数は500万を突破した(2
月時点で521万人、失業率は12.6%)。1998年シュレーダー政権発足時には、
失業者数は394万人であり、失業率は10.2%であった。同誌の特集記事では、
失業後にSPDに入党した支持者が紹介されていた。彼は1998年にSPDと緑の
党の連立政権ができたとき、大きな期待を抱いていた。このシュレーダー政権の
発足以後、7年経ち、失業者数は減少するどころか、増加しつづけた。シュレー
ダー政権が無策であった訳ではない。歯止めのかからない失業者数の増加に対し
て、次々と政策を打ち出していた。しかし現時点でその結果を見るかぎり、厳し
い判断が下されるほかないだろう。
 シュレーダー政権の危機は、2002年9月の連邦議会選挙ですでに明確に現れて
いた。国内経済の状況が好転していなかったため、選挙予想は、保守政党キリス
ト教民主/社会同盟(CDU/CSU)有利であった。これが覆った大きな原因
の一つは、イラク戦争をめぐる両陣営の主張の違いである。シュレーダーがイラ
ク戦争に明確に反対を表明し、CDU党首のメルケルはアメリカとの共同歩調を
訴えた。選挙結果は、ドイツ国内世論のイラク戦争への反対を示していたといっ
てもよいだろう。
 つけ加えるが、シュレーダー政権は、1999年のNATOのコソボ空爆を支持し、第
二次世界大戦後はじめてドイツ兵を国外の戦闘に参加させた政権である。そのと
きの外相はフィッシャーであり、このことはオルタナティヴを期待した多くの支
持層に深刻な亀裂を生んだ。また9.11後、シュレーダー政権はアフガン空爆の際
も反対してはいないし、部隊を派遣・駐留させた。
 いずれにせよ、シュレーダー政権、そしてドイツ経済はかなり危機的状況にあ
ると言ってよいだろう。先の『シュピーゲル』誌の特集記事によれば、失業者数
の増加の原因は、ドイツ国内の産業の空洞化である。ドイツ企業が不調なわけで
はない。むしろ自動車メーカーなどは生産コストの安価な東欧にプラントを移転
させることによって好調を維持している。しかしその結果、ドイツ国内の雇用が
削減されているということである。労働者側から見れば、シュレーダー政権は、
経済のグローバル化による挑戦にこれまで対抗できていないと言えるだろう。こ
れは一国内でのオルタナティヴな政治のあり方の限界を示しているのかもしれな
い。

 今回の滞在中、部屋を貸してくれたシュライバーさんの父親と歓談した際、や
はり失業者数の多さが話題にのぼった。旧東ドイツ市民の彼にとっては、この失
業者の多さは考えられない事態のようで、現在を「狂った」時代と表現していた。
彼のこの表現は、印象深かった。「狂った」時代。主権国家の原則の破壊を「正
戦」によって正当化したブッシュの再選も考えがたかったし、「自衛隊のいる地
域が非戦闘地域だ」などと言う人間が首相をつとめているのも理解しがたい。
 イギリスの著名な歴史家エリック・ホブズボームは20世紀を「極端な時代」と
表現したが、10年後あたりに2000年前後の世界を省察するとき、「狂った時代」
と表現されるかもしれない。私は歴史研究者として自分のアイデンティティをも
っているが、史料と向き合い、その「狂い」の地点を明らかにすることが歴史研
究者としての社会的貢献となることを期待している。


▼書評会のご案内:

渋谷望著『魂の労働―ネオリベラリズムの権力論』青土社、2003年11月

日時: 5月19日(木)17:00〜19:00
場所: 千葉大学社会文化科学研究科棟4階 共同研究室2
  (JR西千葉駅・京成みどり台駅徒歩10分)
  http://www.shd.chiba-u.ac.jp/map_j.html

主催:千葉大学21世紀COEプログラム
 「持続可能な福祉社会に向けた公共研究拠点」国際公共比較セクション
TEL/FAX: 043-290-2337

※参加費無料  ※事前申し込み不要
※どなたでも参加できます

主旨:
本プログラム国際公共比較セクションの第6回研究会は、グローバル化のもとで
労働形態がいかなる変容を遂げてきたか/遂げているかを問うために、本学文学
部助教授渋谷望氏をお迎えして、ご著書『魂の労働』の書評会を企画しました。
本著は、脱工業化社会へと転換する過程で、<労働>のあり方を根本から問い直す、
きわめて示唆に富むものです。企画者は、著者をまじえて、参加者の方々と積極
的な対話を期待するものです。ふるってご参加ください。

本書構成:

序章 敗北の考古学
I ネオリベラリズム
 1 魂の労働
 2 <参加>への封じ込めーネオリベラリズムの権力論
II グローバリゼーション
 3 消費社会における恐怖の活用
 4 ポストモダンの宿命論
III 公共圏
 5 反転する公共圏
 6 世代と対抗的公共圏
IV 権力
 7 ポスト規律社会と予防テクノロジー ―ネオリベラリズムの権力論(2)
 8 主権と統治の不分明地帯 ―ネオリベラリズムの権力論(3)
終章 <生>が労働になるとき

▼『公共研究』第二号刊行

「公共研究」第1巻第2号が刊行されましたので、目次を紹介します。送付を希望
される方は、FAX:043-290-2337(公共研究センター)までご連絡ください。

また、現在、第2巻第2号(9月下旬発行予定)の原稿を募集中です。受付締め
切りは7/12です。投稿規定等詳細は、上記FAXへお問い合わせください。

【特集】21世紀COEプログラム国際シンポジウム
「持続可能な福祉社会の構想−−日本とスウェーデンを含む国際比較の視点から」
 磯野可一/ペール・グンナル・エデバルク/スタファン・ブロンベリー
 多田葉子/広井良典/トーマス・リンドクウィスト/倉阪秀史
 水島治郎/秋元英一/雨宮昭彦

【論説】
「もうひとつの平和」は可能か?
 ――コスタリカと日本の平和政策に関する比較研究」(上村雄彦)
「トマス・ペインのフロンティア論
 ――豊かな資源を供給するアメリカの自覚」(黒羽根貴之)

【研究ノート】
「自治体環境計画の目標管理の現状」(増原直樹)
「地方自治体の化学物質対策の現状と課題をふまえた国の制度改善提案
 ――PRTR法の情報活用に関するアンケート調査結果概要」(角田季美枝)

【報告・紹介】
「環境エネルギー政策研究所でのインターン体験について」(中尾敏夫)
「千葉の環境パートナーシップを担う
 ――環境パートナーシップちばの活動紹介」(加藤賢三)
「『9.11』以後の平和憲法のあり方
 ――シンポジウム「平和憲法と公共哲学」報告」(宮崎文彦)
「『霊性』の論理と公共性
 ――公共哲学部門対話研究会(第6回平和公共哲学研究会)報告」(一ノ瀬佳也)
「現代における「ちんじゅの森」の再生
 ――新しいコミュニティーの拠点として」(広井良典・中尾伊早子)
「学生主体で取り組んだ千葉大学西千葉キャンパスの環境ISO取得」(岡山咲子)


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*目次*********************************
 

 ▼各種対話研究会のご案内(7/20、7/27開催)

 ▼「公共研究」バックナンバーのリポジトリ登録ご案内

 ▼「公共研究」第2巻第3号 投稿受付期限は9月15日

 ▼国際ジャーナル原稿募集のご案内

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▼各種対話研究会のご案内

*公共研究センター公共政策部門対話研究会第8回
(福祉環境交流センター連続セミナー第27回)

 7月20日(水)14:30〜16:00
 法経学部 第二会議室

 伊藤佳世(COEフェロー)
 「公共機関における環境マネジメントシステム」
 
 日欧米の公共機関における最新の動向と、水俣市における実証研究により、
環境マネジメントシステム(EMS)とEMSを用いた政策により、組織内外の利害
関係者(Stakeholders)に対してどのようなメリットがもたらされたか検討する。


*国際公共比較研究会 第8回

 7月27日(水)17:00〜19:00
 社会文化科学研究科棟4階 共同研究室2

【書評会】
 雨宮昭彦著『競争秩序のポリティクス―ドイツ経済政策思想の源流』
 (東京大学出版会、2005年4月)

国際公共比較部門の対話研究会も8回を数えました。今回は、本部門の事業
推進者である本学教授雨宮昭彦氏の近著『競争秩序のポリティクス―ドイツ経
済政策思想の源流』(東京大学出版会、2005年4月)の書評会を企画しました。
同書は、両大戦間期にかつてない経済危機に直面したドイツに現れた多様な経
済思想を丹念に、かつ斬新な視角で論じるものです。参加者のみなさんと著者
を交えた積極的な対話を期待しています。
 本書を部分的に複写した資料を準備しております。ご希望の方は、公共研究
センター(千葉大学総合校舎E号棟4階405)および雨宮昭彦研究室(同法
経学部棟5階)にてお渡しします。
 ※東北大学教授小田中直樹氏のブログで同書が紹介されています(5月24日)。


▼「公共研究」バックナンバーのリポジトリ登録ご案内

 本COEのウェブサイト「公共研究」の項目から、バックナンバーの特集、論説等
のダウンロードができるようになりました。
http://www.shd.chiba-u.ac.jp/~coe21/results/kokyokenkyu_top.htm

 これは千葉大学「学術成果リポジトリ」※へ、「公共研究」のバックナンバー
の記事ごとにPDFで登録し、インターネットでアクセスできるようにしたため
です。「公共研究」は市民社会に開かれた研究の情報プラットホームとして位置
づけられておりますが、なにぶん発行部数が限られておりますので、電子媒体で
ご提供できるようにいたしました。どうぞご活用ください。

※学術成果リポジトリ
千葉大学内で生産された電子的な知的生産物を蓄積、保存し、学内外に公開する
ためのインターネット上の発信拠点。詳細は以下をごらんください。
http://mitizane.11.chiba-u.jp/curator/about.html


▼「公共研究」第2巻第3号 投稿受付期限は9月15日

 「公共研究」第2巻第3号(2005年12月末発行予定)に投稿記事(論説・研究
ノート・書評・活動報告など)の掲載を希望される方は、9月15日までに原稿を
ご提出ください。
 投稿規定、提出方法等につきましては、下記ウェブサイトをご参照ください。
http://www.shd.chiba-u.ac.jp/~coe21/results/kokyokenkyu_top.htm

 なお、査読が入りますので、12月発行予定号に掲載できない場合もございます。
あらかじめご了承ください。



▼国際ジャーナル原稿募集のご案内

"The International Journal on Public Affairs" is accepting contributions
for the next issue

The Editorial Committee of the International Journal on Public Affairs
welcomes your article related to public affairs and sustainable welfare
society.

For those who are interested in submitting your paper, please send the
Committee a mail showing a tentative theme, name of your organization,
together with your contact address by 31 August 2005. The final due date
is 31 October. For further details, please see the Instruction to Authors.

We look forward to having as many contacts and excellent papers as possible.

Best regards,

The Editorial Committee of the International Journal on Public Affairs
Phone & Fax: +81-43-290-2337
e-mail: recpa@restaff.chiba-u.jp


♯このメールは「まぐまぐ」のシステムで配信をしています。登録の
変更・解除は下記ページからご自由に行えます。
http://www.mag2.com/m/0000145216.htm

♪このメールマガジンに対するご意見・ご感想を下記アドレスまで、
お寄せください。
recpa@restaff.chiba-u.jp


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発行:千葉大学21世紀COEプログラム
    「持続可能な福祉社会に向けた公共研究拠点」
    Research Center on Public Affairs(ReCPA)
http://www.shd.chiba-u.ac.jp/~coe21/


 編集担当:宮崎 文彦(COEフェロー)
   
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          Copyright(c)2004 ReCPA. All Rights Reserved.


 
>TOP

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 《公共研究通信 ReCPA−Letters》

  〜千葉大学21世紀COEプログラム
    「持続可能な福祉社会に向けた公共研究拠点」メールマガジン〜
     Research Center on Public Affairs(ReCPA)

    http://www.shd.chiba-u.ac.jp/~coe21/

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/第9号(2005.09)_/



*目次*********************************
 

 ▼対話研究会のご案内(9/28開催)

 ▼「トマス・ペインのアメリカ独立論:平等な社会の実現に必要なロック解釈」
  について(対話研究会報告:一ノ瀬佳也)

 ▼公共研究」へのアクセスご案内

************************************

▼対話研究会のご案内(国際公共比較部門対話研究会 第9回)

日時:9月28日(水)17:00〜19:00
場所:社会文化科学研究科棟4階 共同研究室2

報告:鹿住大助(公共研究センター/学振)
報告題目:18世紀リヨンのギルドについて―地方都市の産業と社会編成―

 近年のフランス史研究において、スティーヴン・L・カプランらを中心に
フランスにおけるコルポラシオン、コルポラティスムの検証がすすめられて
いる。彼らが対象とする時代は18世紀から現代までの長期にわたるが、フラ
ンス革命期のコルポラシオン廃止後も、近代以降のフランスにおいて、コル
ポラシオンやコルポラティスムが資本主義下の階級対立の解消を唯一実現で
きる制度としてイデオロギー化されたり、その反対に偏狭な利己主義として
断罪されるなど、社会のあり方をめぐってコルポラシオンが議論の的となっ
てきた。彼らの基本的姿勢は、そこで表象されるコルポラシオンと社会の実
態、社会的実践とがどのように関係していたのかを論じるものである。

 カプラン自身は、コルポラシオンやコルポラティスムが争点となるときに、
常に想起されるアンシャン・レジーム期(特に18世紀)のギルドについて、
ギルドが構成する手工業社会の実態と、チュルゴのギルド廃止論などをめぐ
って浮かび上がるフランス王国の編成理念を論じるなかで、かつて実在した
コルポラシオンとその変化を描き出す。しかし、彼の議論では、アンシャン
・レジーム期フランスでは手工業ギルドなど特権団体の位置が王権による統
治とその理念に深く関わっていたことが示されるが、地方都市におけるギル
ドの実態についてはあまり取り上げられていない。当時の各地方都市には独
自の産業構造が存在しており、これがギルド制度と手工業者の社会編成にい
かなる影響を与えたのかを分析しなければならないと考える。

 そこで本報告では、18世紀フランスの地方都市リヨンにおけるギルド制度
と手工業社会の編成を論じる。報告は以下の構成で行う予定である。第一に
リヨンの都市、産業、ギルドの特色を示し、第二に具体的なギルドについて
その規約から制度的な構造を明らかにする。分析対象とするギルドは、リヨ
ンにおいて相対的に小規模な車大工のギルドと、相対的に大規模な製靴・靴
修理工のギルド、そしてリヨンの中心的産業である絹織物業のギルドである。
第三に、18世紀リヨンの社会階層構造をふまえて、これらのギルドがリヨン
の手工業社会の構成にどのように関係していたのかを論じる。最後に、アン
シャン・レジーム期のフランス王国におけるリヨンのギルドの特徴を述べた
上で、今後の研究の見通しとして、フランス革命期や19世紀リヨンでおこっ
た絹織物工の労働争議についてふれながら、ギルドがその後のリヨンの歴史
にどのような影響を与えたのかを展望したい。


▼国際公共比較部門対話研究会 第7回対話研究会 報告

「トマス・ペインのアメリカ独立論:平等な社会の実現に必要なロック解釈」
について

一ノ瀬佳也(千葉大学公共研究センター COEフェロー)

 国際公共比較部門の第7回対話研究会が、2005年6月29日に、千葉大学の社会
文化科学研究棟4階の「共同研究室2」において開かれた。今回の研究会では、
千葉大学の公共研究センターのリサーチ・アシスタントである黒羽根貴之によっ
て、「トマス・ペインのアメリカ独立論:平等な社会の実現に必要なロック解釈」
についての報告が行われた。この報告は、黒羽根が執筆中である博士論文の一部
に当たるものであり、トマス・ペインの理論についての斬新な理解が示された。

 黒羽根の報告は、アメリカの革命期におけるペインの理論に対するジョン・
ロックの思想の影響の特質を明らかにするものである。黒羽根によると、アメリ
カ革命期の思想においては、「二人のロック」が存在していた。一方が、新来の
ヨーロッパ移民を代表するトマス・ペインであり、他方が、メイフラワー号以来
の入植者を代表するジョン・アダムズ、アレクサンダー・ハミルトン、ジェイム
ズ・マディソンなどである。前者は、名誉革命体制を否定し、クロムウェルの革
命の精神の下、一院制の代議制統治をもって平等を目指したのに対して、後者は、
名誉革命体制を支持した上で、抑制均衡型統治を目指した。両者は、イギリスか
らの独立には賛同していたものの、建国のビジョンにおいて大きく異なっていた
のである。ペインは、前者の立場から、ロックの「自然権として移住論ならびに
労働所有論」によって本国からの独立を主張していた(大森雄太郎『アメリカ革
命とジョン・ロック』慶応義塾大学出版会、2005年)。アメリカの植民地は、植
民地人自身の労働の所産として成立したものであるから、もはやイギリスの本国
の一部でない。こうして、アメリカの植民地は、イギリスの本国に対して対等な
政治的地位を要求することができるようになった。黒羽根は、この発想が、さら
にアメリカにおける平等な社会の実現に結びついていたことを指摘した。ペイン
の労働=所有論は、これまでの大土地所有に対して、自らの労働力と技能以外に
は何も持たない職人や小商人(土地を持たない新来の移民)の利益を重視するこ
とによって、社会的な平等の実現を目的とするものであったのである。ペインは、
社会階層の差別化を認める抑制均衡論を認めることはできず、人民主権を念頭に
した代議制統治(一院制議会)を主張した。

 ペインは、平等な個人を想定したが、全ての人が政治へと参加できると考えて
いたわけではない。ペインにおいても、社会の複雑化・広域化に伴って、代表者
を選出する代議制統治が必要となることが見出されていた。但し、この代表者は、
人民大衆からみて絶対的な上位者ではなく、世襲制という形での所与の地位でも
ないと解された。ペインは、全ての人が、人間の内面の同質性において平等であ
ると主張したのである。黒羽根は、「一人の人間を他の人間よりも非常に高い地
位におくことは自然の平等権からしても聖書の権威からもみとめられない」とい
うペインの引用を示した。ペインにとって庶民は、エドモンド・バークの言うよ
うな無知で愚鈍なものではなく、豊かな知識を持ち、人格の陶冶も進んだ理性的
な存在とみなされた。黒羽根が言うところ、当時のアメリカの庶民層は、独立戦
争前から新聞やパンフレットなどの印刷媒体の発信・受信者となる機会が多く、
政治や経済問題に関する関心は高かったのである。ペインは、難解で抽象的な哲
学よりも、日常の規範や商慣習、および作物の増産を可能にする農業学や土木・
機械工学や建築学に応用できる幾何学などの「実学」を奨励した。これは、勤労
層の主体をなす民衆の知的な向上を図るものであったのである。このようにして、
ペインの理論においては、社会的に平等な主体として個人が導出されるようにな
った。黒羽根の報告は、アメリカ革命におけるペイン理解を通じて、彼の理論の
実践性を描き出したのである。

 上記のように黒羽根の報告は、アメリカ革命を通じて、急進主義者としてのペ
インの理論が持つ政治的な企てを問うたものである。黒羽根は、社会的に平等な
主体を創出するための論理をペインに見出したのである。一般に急進主義の発想
においては、個人の平等を前提として議論をする場合が多いが、この点を問うた
ところに黒羽根のペイン解釈の独創性があるといえる。次の課題としては、平等
な主体からなる社会経済についての理論を示すことが求められることになるが、
そこまでは論じられていない。これについては、今後の研究の進展に期待する。

▼「公共研究」へのアクセスご案内

「公共研究」は、発行部数が限られておりますので、送付のご希望に添えない
場合がございますが、以下の公共図書館で閲覧ができます。また、バックナン
バーの記事につきましては、千葉大学図書館のHP(「学術成果リポジトリ」)
あるいはCOEのホームページ(季刊「公共研究」)からPDFでダウンロー
ドも可能です。どうぞご活用ください。
http://www.shd.chiba-u.ac.jp/~coe21/results/kokyokenkyu_top.htm


【公共研究を所蔵している公共図書館】(2005年9月1日現在)

●北海道・東北

秋田県立図書館

●関東

千葉県立中央図書館
千葉市中央図書館
船橋市中央図書館
流山市立中央図書館
習志野市立大久保図書館
八千代市立大和田図書館
木更津市立図書館
君津市立中央図書館
袖ヶ浦市立中央図書館
松尾町図書館
横浜市立中央図書館

●中部・甲信越・北陸

山梨県立図書館
岐阜県図書館
愛知芸術文化センター愛知県図書館
名古屋市鶴舞中央図書館

●関西

滋賀県立図書館
京都市中央図書館
奈良県立奈良図書館
大阪府立中央図書館

●中国・四国

岡山県立図書館
山口県立山口図書館
愛媛県立図書館
徳島県立図書館

●九州・沖縄

福岡市総合図書館


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発行:千葉大学21世紀COEプログラム
    「持続可能な福祉社会に向けた公共研究拠点」
    Research Center on Public Affairs(ReCPA)
http://www.shd.chiba-u.ac.jp/~coe21/

 
 編集担当:宮崎 文彦(COEフェロー)
   
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UP:2005
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