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>HOME >Tateiwa 立岩 真也 2007/07/01 『東京新聞』2007-7-1:10 http://www.tokyo-np.co.jp/ Book Web:http://www.tokyo-np.co.jp/book/ *掲載された原稿 これは大変だ、ああすれば治る、なんとかは夢の技術、という本が圧倒的に多い。嘘くさいと思いつつ、どこが怪しいのか確かめることもできず、そのうち一時の熱狂はさめ、また次、となる。忘れてよいことならそれもよいが、それでは危ないこともある。 著者はSARS、鳥インフルエンザ、ES細胞等々、近年話題になった出来事、またストレス、磁気共鳴画像装置(MRI)等、日常に入り込んで久しい言葉や物がどのように入ってきたり変形されたりしたのかを追う。私たちがごく断片的にしか知らないことの全体を整理して示してくれる。意外にそんな本はない。まず本書の価値がここにある。 ただ著者の狙いは「事実」を書き出すところにあるわけではない。言われていることを裏返し、別の見え方があるはずだと言いたいのだ。これにはひねくれた性格とある種の才覚が必要だが著者はそれを備えている。ただ事態はなかなかに複雑だから、その試みは、うまくいっているところと、腰砕けは言い過ぎとして、途中までだったり飛躍があったりするところがある。 では、ただひねくれたあるいはひねくれようとした本なのか。それも違う。まず「アウシュヴィッツの『回教徒』」という本書末尾の文章を読むとよい。また各章の終わりを読むとよい。この社会で「動植物以下」の人間の生が作り出され、死に放棄される。それを受け入れたくなくて著者は文章を書いている。ここで大切なことは、その生の悲惨を言って、その仕組みを批判しているのでなく、その生が肯定されるべきだと考え、そこから現在を見て、放置、死への放棄を批判していることである。 すると、本書のまとまりきらなさも、事態を斜めに捉えてみたからだけではない。著者が信じるものと現実がどう関わり、これからの現実をどう示すのか、それを言うのが難しいからでもある。ただ、その主題を考えるための素材や多くの手がかりがここにはある。私たちは本書をおおいに利用することができる。 <評者・立岩真也(立命館大教授)> *送付した原稿 これは大変だ、ああすれば治る、なんとかは夢の技術、という本が圧倒的に多い。嘘くさいと思いつつ、どこが怪しいのか確かめることもできず、そのうち一時の熱狂はさめ、また次、となる。忘れてよいことならそれもよいが、それでは危ないこともある。 著者はSARS、鳥インフルエンザ、ES細胞、等々、近年話題になったできごと、また、ストレス、がん、MRI等、日常に入り込んで久しい言葉や物がどのように入ってきたり変形されたりしてきたのかを追う。私たちがごく断片的にしか知らないことの全体を整理して示してくれる。意外にそんな本はない。まず本書の価値がここにある。 ただ、著者の狙いは「事実」を書き出すところにあるわけではない。言われていることを裏返し、別の見え方があるはずだと言いたいのだ。これにはひねくれた性格とある種の才覚が必要だが、著者はそれを備えている。ただ事態はなかなかに複雑だから、その試みは、うまくいっているところと、腰砕けは言い過ぎとして、途中までになったり飛躍のあるところがある。 では、ただひねくれたあるいはひねくれようとした本なのか。それも違う。まず「アウシュヴィッツの「回教徒」」という本書末尾の文章を読むとよい。また各章の終わりを読むとよい。この社会で「動植物以下」の人間の生が作り出され、死に放棄される。それを受け入れたくなくて著者は文章を書いている。ここで大切なことは、その生の悲惨を言って、その仕組みを批判しているのでなく、その生が肯定されるべきだと考え、そこから現在を見て、放置、死への放棄を批判していることである。 すると、本書のまとまりきらなさも、事態を斜めに捉えてみたからだけではない。著者が信じるものと現実がどう関わり、これからの現実をどう示すのか、それを言うのが難しいからでもある。ただ、その主題を考えるための素材や多くの手がかりがここにはある。私たちは本書をおおいに利用することができる。 ◇美馬 達哉 20070530 『〈病〉のスペクタクル――生権力の政治学』,人文書院,257p. ISBN-10: 4409040863 ISBN-13: 978-4409040867 2520 [amazon]/[boople] ※ b m/s01 UP:20070617 REV:20070712 ◇身体×世界:関連書籍 ◇書評・本の紹介 by 立岩 ◇BOOK |