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2023年度研究書重点プログラム申請調書

立岩 真也 2023/01 →立命館大学

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※ 以下は「2023年度研究書重点プログラム申請調書」で立岩が担当した部分の草稿です。全体の提出版はそのうち掲載します。
そこに書いた「叢書」の企画は次々に実現していきます。 ▽△は太字に
▼▲は注記→入力者様用

■■■■2023年度研究書重点プログラム申請調書

■■■1 2023年度の活動方針

1 研究所における重点プロジェクトの構想

 2022年度は本研究所にとって極めて厳しい年度だった。大幅に減額された予算は秋口にはまったく底をつき、科研費を充当せざるをえないことになった。それは、研究所にとっても、科研費研究にとっても、本学にとっても、さらに人文社会科学の進展にとって、たいへんよくないことだった。
 それは、この「重点」という枠組が、個別の研究課題に対して資金が提供されるということにも、すこし、由来するかもしれない。他方で、私たちの活動は、いくつかの重要的な課題を常に有しながら、院生や修了者の日頃の各々の自発的な研究活動を大切にし、手助けし、成果を出させる、それを研究所の資産ともし実績ともする、そのためにお金を使うというものであってきた。その方針と実績とは、重要で必要なものであってきたと考えるが、私たちは、その開設からでも2007年度に遡る、その活動の意義を理解していただきたいと強く願いながら、「研究所としての」活動をより前面に示し、その成果を知らせ、後世に残すために、この「重点」の枠組みに包摂される課題を加える。
 具体的には2022年度までの3つに、▽「立命館生存学研究所叢書」△の刊行を加える。▽2030年までに20冊▽を刊行する。
 研究所の前身の研究センター発足以来、大学院生・修了者が著者・編者となった書籍は――教員(運営委員)による書籍はさらにずっと多いがそれをここで示す必要は、その人たちが研究し公刊するのはまったく当然でしかないのだから、ない――139冊を数える(http://www.arsvi.com/a/b1.htm)。それは、すくなくともその量としては、本学だけでなく全国を見渡しても、突出している。ただそれは、(多く学内の出版助成をありがたくもいただきながら)博士論文を書籍化する方向に傾かざるをえないものだった。学位を取得した人たちが研究職に就職してもらうことを考えるなら、そこに注力するのは当然のことではあった。しかし、それは一つ、研究所の企画・成果としては見えにくかったかもしれない。また一つ、そうした「業績」の相対的な数の多さにもかかわらず、そんな速度では(速度であったて)、変化し動いていくと同時に記憶・記録を失っていくこの社会にまったく付いていけないという思いを強く感じさせるものでもあった。そしてその思いは、毎日、強くなっている。研究所として、成果をまとめ、その個々の研究のつながりを示し、世に示し、問うていくことを、より積極的に行なう必要があると考える。
 成果の産出・出版の実情を知る人は誰しも、計20冊という私たちの目標の実現の困難を理解するだろう。しかし、私たちはそれを可能にするだけのことをこれまで行なってきた。2023年度はそれをいよいよ実現するための初年度となる。基本的に、教員に加え院生・研究員の2〜3人が編者となり――むろんそれを「業績」としてもらおうという目論見である――、おもに大学院生そして修了者6〜8人ほどが筆者となる。具体的な構想は後述する。
 そしてもう1つ、これは、2の「生存学アーカイヴィング」に含まれることとも言えるが、知を集積し皆のものとする私たちの長年の活動によって得たものをより多くの人に利用してもらえるよう、ライブラリーを拡張し、公開されてよい部分公開する作業を開始する。私たちのもとに届けられる資料は、すでに現在、私たちが提供していただいている空間の限界に達している。大学の社会的使命を果たすために、その空間を拡充し、その整理のための財源を要する。そのことを「生存学アーカイヴィング」の項目で述べる。

 ▼1行あける+
 そのまま1「研究所における重点研究プロジェクトの構想」2「理由・背景・意義」
 cf.2022年度の書類再掲。▲

 以上は2022年度の計画に加えた部分である。その前の、2022年度の計画は変わらず維持される。よって以下再掲する。
 ▼転記▲


■■■別紙 重点ブロジェクト研究計画様式

■■No.1

ブロジェクトの名称:立命館生存学研究所叢書の刊行
新規・継続の別:新規
実施体制:「とりあえず」アーカイヴィングの人員をそのまま転記(もちろん追加は可能・歓迎)

〈目標・計画〉

 2023年度は、以下の20冊のうち、まず◆『生を辿り途を探す――身体×社会アーカイブの構築・1』を刊行する。2022年の日本社会学会大会のテーマセッション「質的データのアーカイブ」(企画・司会:立岩)に続き、2023年秋にも同じ主題でのテーマセッションを企画。その大会までに「1」を刊行する。2022年の報告者を主な筆者としつつ、本研究所がこれまでに行なってきた企画・事業を知らせる。
 これは2「生存学アーカイヴィング」の成果、そして本研究所がこれまで蓄積しそして現在行なっており、さらにこれから行なっていくことを知らせるものである。立岩が代表の科研費研究が2025年度までであり、2023年度・2024年度・2025年度と毎年度1冊刊行し、次の科学研究費獲得にもつなげる。
 そして次の1冊、◆『異なる身体のもとでの交通交信』の1冊めを刊行する。それはもちろん、4「支援テクノロジー開発」の成果も受けたものである。
 さらに、もう1冊、◆『感染・防衛――害さず効けばよい、か、忘却と現在』の1冊目を刊行する。むろんCOVID-19のことがあってのことだが、私たちは、研究所発足当初から、知られず、知られることなることなく忘却された、とくにアフリカにおける、いっときは年に300万を超える人が亡くなったHIV/エイズについて、いくつも資料集・書籍を刊行してきた。その時のことと、このたびのCOVID-19とは何が異なるのか。そのような研究・発信はなされたことがない。私たちは何を経験しそして(予め)忘れたのか。そのことを記録し、考察する。
 こうした規模の出版は、普通は、ありえないほど困難である。しかし、書かれ知らされるべきことはたくさんあり、私たちは長くそのための準備をしてきたのだから、そしてなにより求められているのだから、その出版は可能であると考え、可能にする所存である。

■『生を辿り途を探す――身体×社会アーカイブの構築』1〜3 ※リンクは今のところごく一部。これから増やします。
 cf.生を辿り道を探る――身体×社会アーカイブの構築

 共編者:検討中
伊東香純(学振PD) 欧州における国家的な質的データのアーカイブを巡る議論の検討
◇伊東香純・2
村上潔(修了者・本学非常勤講師) 世界のアクティビズムとアーカイブ
中井良平(後期課程院生) 世界中のブログを収蔵することが可能だ
種村光太郎(前期課程院生) 情報保障とアーカイヴィングを繋げる
鈴木悠平(後期課程院生) 闘病記専門オンライン古書店「パラメディカ」が、日本の「闘病記」文化にもたらしたもの
澤岡友輝(後期課程院生) 病/障害の人たちの生をウェブ上に記録する
山口和紀(前期課程院生) 社会運動のウェブアーカイブ
◇谷合佳代子(エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館) インタビューか寄稿
◇立教大学共生社会研究センター インタビューか寄稿 インタビューか寄稿
◇薬害アーカイブ インタビューか寄稿
川端美季(研究所教員)
岩田京子(研究所専門研究員)
吉野靫(修了者→学振PD・衣笠PD→本学非常勤講師)
後藤基行(本学教員) 医療・医療政策史のアーカイブ
松原洋子(本学教員) 優生保護法下の不妊手術に関わる資料
利光恵子(修了者・客員研究員) 〃
◇宮脇正晴(本学法学部教員・科研費研究分担研究者) 著作権法のもとでアーカイブはどこまで可能か
◇石田佐恵子(大阪公立大学教員・社会学会社会学教育委員会委員) 映像のアーカイブ
◇立岩・1 
◇立岩・2 …以上21本 集まったものから1〜2〜…に収録・刊行。
・資料収集・受け入れについて 以下はウェブ掲載にとどめるかもしれない
柴垣登(修了者・岩手大学教員) 『肢体不自由児教育』
高雅郁(後期課程院生) 「手をつなぐ育成会」の資料
◇高雅郁(後期課程院生) 台湾の資料について

■『異なる身体のもとでの交通交信』1・2・3
 情報アクセシビリティ・障害学生支援・……
 ・立岩・飯田奈美子編/立岩・中村雅也[編]
飯田奈美子(学振PD→衣笠PD) 透明な存在になれない通訳について
◇森下摩利(前期課程院生) 盲ろう者たちの運動史
◇天畠大輔(衣笠PD→国会議員)
◇中村雅也(学振PD)他座談 立命館における障害学生支援
◇栗川治(後期課程院生)
◇石川准(東大最初の盲学生→静岡県立大学・障害学会会長) インタビュー
◇福島智(最初の盲ろうの大学院教員・東京大学) インタビュー
◇種村光太郎(前期課程院生) 聴覚障害をもつ大学生たち
山口和紀(前期課程院生) 視覚障害者専用大学設立反対運動の顛末
安田智博・中井良平(後期課程院生) 学会大会他をアクセシブルにしてきた
◇堀川諭(後期課程院生) 「知的障害とともに選挙に行く」
◇田中多賀子(修了者)人工内耳
◇竹村文子(前期課程院生) 勉強ができなくても高校に行く
◇川端美季(研究所教員) 土曜講座他で
◇立岩・1
◇立岩・2
◇海外から
◇海外から
◇海外から・3……19本

■『感染・防衛―害さず効けばよい、か、忘却と現在』1〜2
 COVID-19/エイズ、とくにアフリカにおける/薬害エイズ/…
◇松枝亜希子(修了者) 大衆薬批判の1970年代
勝村仁司 「薬被連」 インタビュー
◇美馬達哉(先端研教員・運営委員) COVID-19は結局なんだったのか
稲場雅紀(客員研究員) アフリカ
◇野口友康(客員研究員・生存学奨励賞受賞者) 集団接種総括
片山知哉(修了者・医師) 発達障害に対する薬
植村要(修了者・国立国会図書館) SJS
北村健太郎(修了者) 血友病・血液製剤
新山知基(修了者) アフリカにおける「顧みられぬ病」
◇油田優衣(京都大学大学院) 脊髄性筋萎縮症(SMA)に効くという薬
谷口俊恵(後期課程院生) ヤク中であってきた人生
◇立岩・1
◇立岩・2 ……13本

■はたらく本 1・2
 できないとされているが実際には働ける、だから働かせよという主張は多く当然のものであってきた。しかしそれだけを言えばよいのか。そうではないだろう。詰めていけばやっかいな問題だが、しかしそう言って話を先述べにするのもよくない。
 共編者:橋口昌治
◇栗川治(後期課程院生・学振DC) 障害のある教員の就労に関する社会運動
◇中村雅也(学振PD) 視覚障害をもって教員をする
◇駒澤真由美(修了者) 精神障害者の就労・労働
澤岡友輝(後期課程院生) 高次脳機能障害者の就労
森康博(後期課程院生) やくざを辞めて働く
兵頭卓磨(後期課程院生) 1970年代・大久保製壜闘争
◇岩崎(後期課程院生)
◇天畠大輔(修了者→国会議員) 介助を得て働く
◇中嶌清美(修了者) 過労死家族・家族会
◇小林勇人(修了者・日本福祉大学教員)
◇青木千帆子(研究員→早稲田大学教員)
◇田中慶子(醜虜者→広島修道大学教員)
◇村上潔(修了者→本学非常勤講師)
橋口昌治(修了者→大谷大学任期付教員)

■わかる/わからない本 1・2
 病とされない、障害と認定されない病・障害がある。それを認めさせようという運動が、当然のこと、あるし、あるべきだ。ただそのうえでも残る問いはある。認められないと生きていけないのもよくはなかろう。しかしそれは,どのように、可能なのか。
中井平(後期課程院生) 認められない病・障害の人とその傍の人
澤岡友輝(後期課程院生) 高次脳機能障害
◇戸田真里(後期課程院生) 表皮水疱症
◇長島詩織(後期課程院生) アセクシュアル、は何かを定義しないという戦略
◇石川(前期課程院生) 慢性疲労症候群
◇三島亜希子(本学非常勤講師) 科学物質過敏症
 ……

■なおす/なおらない本 1・2
◇植村要(修了者→国立国会図書館) 視覚障害をなおせてもなおさない話
小井戸恵子 脳性まひ者への脳手術
◇増田洋介(後期課程院生) 田中豊たちによる脳性まひ者への手術
◇松枝亜希子(修了者) 抗精神薬
◇戸田真里(後期課程院生) 表皮水疱症
上農正剛 聴覚障害児の治療
◇西岡知香(後期課程院生) 発達障害児の治療・療育に関わる親の責任のこと
中井良平(後期課程院生) わからないなおらない病・障害
◇立岩

■人工の本 1・2
◇田中多賀子(修了者) 人工内耳
有吉 玲子(修了者) 人工透析の歴史と現在
◇高橋初(後期課程院生) 在宅透析
 ……

■運動史/政策史 1・2
■難病の本――京都ALSの人たち・医療的ケア・… 1・2
 …以上でまずは20冊

※予算について
 これらの出版物の一部については、海外の人たち、とくに「東アジア生存学拠点」をともに形成してきた人たちに書いてもらったものを翻訳する。また、全部については不可能だが、英訳を行う。そのために予算を使う。それに100万円
 今回の出版については、刊行前に必要な資金を求めることは期待できないものとする。代わりに、刊行後、関係者に贈呈・配布する。3000円×100冊×3種 90万円
 出版社の負担をいくらでも減らすとともに、研究を文字にする出版物にする。院生他にその過程を経験させ、その作業に習熟させる。また各主題についての書籍・文献は網羅的に収集する(40万円)。それを整理し、詳細な文献表・解題をつける。その作業にも時給1500円を支払う。 1500円×1000時間 150万円
 計310万

〈若手研究者育成のための工夫〉
 これまでずっと述べてきたように、また上記したように、この企画の全体が研究者育成のための企画である。この研究所の活動の全体が若手――年齢的には若くはない人たちもたくさんいる――研究者を育て、その人たちと研究していくものであってきた。運営委員・客員研究員、そしてここ2年は科研費研究者の分担研究者にも加わってもらい、МLを使って情報を流通させてきた。それに院生他が加わり、メンバーの総数は400人を超える。メールの累計は24128通。掛け算すると約1000万のメールがこれまでやりとりされたことになる。「若手」でない職業研究者たちは忙しく、なかなかまとまった時間をとれないのだが、その人たちは主題・歴史・事件、関係者・関係機関・関連業績、等々の情報のありかや研究の手法、こね、つて、こつを知らせる。「若手」はそれを利用し、また自らの研究のことを覚えてもらう。そのようにМLを使ってきた。
 また、研究所のサイトに一人ひとりについてのページを作り、そこに個々人についての情報を置き、更新させてきた。また、各自の研究テーマに関わるページを作り、増補させてきた。情報量としては限界があるメールに、その頁のURLを加えさせ、各自とその研究に関わる情報を多くの人に知ってもらうようにしてきた。それを教員は指導のためにも使ってきた。教員だけでなく当該の言語を解するすべての人が、可能性としては、その人その主題、作業、業績を知り、問い合わせたり情報を提供できるようにしてきた。その作業の一部についてはアルバイトとして作業してもらった。2022年の累計ヒット数は26116421。そうして、例えば、現在所長を務めている立岩が主査を務めた博士論文は累計70となった。そして33冊が書籍として出版された(→http://www.arsvi.com/ts/dt.htm 研究所サイトを「立岩 博士論文」で検索)。
 これらの全体が「若手」の育成のための行ないであってきたのだが、このたびの企画は、まず一つ、もしこのまったくわかりやすく見えやすい営みについての理解が、それでもまだ足りないのであれば、よりはっきりと見えるようにするものである。

〈研究成果の発信・社会還元の取組〉
 以上述べたように、この企画の全体が発信の企画であり、社会還元の企画である。そして、このたびの企画は、すでに多い「発信」の数をさらに多くしようというだけのことではない。就職のためには博士号をとり、その論文を書籍にする、というのは、すくなくとも人文社会科学の分野では慣習化しつつあるようだ。しかし、多くの場合、就職できた人たちも忙しさのなかに埋没し、その「成果」の「先」が続かない。そんなことがいくら続いたとしても、研究の量も質もたいしたものにならないことを、私たちは感じてきた。今回の企画は、ただ仕事=研究をさせて、公表しよう(させよう)というものではない。より重要な一つは、どのようなテーマがこの社会にあり、どのように様々につながっているのかを、まずは「若手」の各々自身に理解させつつ、その人たち自身が一貫した見立てのもとで、ものを調べ、書き、発表してもらうものである。そしてそのようにして作り出される書籍群は、この社会に生きる人々に、この社会にある様々がどのような脈絡のもとにある様々であるか、どのようにつながっているのか、ときに対立しているのか、そこから発して、どのような方角を向いて、人々とその社会が進んでいくのかを示そうとするものである。
 背表紙の共通性においてそれと知れる20冊の書籍のシリーズは、それなりの存在感を有するものとなるだろう。ただ私たちは、それらはなされるべきまた知られるべきことのごく一部であるとも考えている。これまで行なってきた作業を継続し、また資金が得られるなら再開し、各々の主題に関連する情報を研究所のサイトに収録し増補していく。同時に、関連する書籍や機関誌、等々の資料群が、新たに拡張された空間を得て、所蔵され、広い範囲の人々の利用に供される。そうして堆積されたもの、さらに堆積が続いていくもののなかに、どのような脈絡を見込むか、それを書籍によって示す。集積することと、全体を見通しこれからを見晴らすこと、両者を往還させる。その全体のなかの、一部を、しかしよりよく見え伝わるかたちで遂行する。


〈外部資金申請・採択実績〉
 ▼アーカイヴィングのところと同じデータを入力してください。もちろん上記を使い増やしてもらってもよいです。ここは詳細に点検されたりしない箇所です。「てきとうに」。▲

〈予算計画〉
 設備備品費 0
 消耗品費 1300 関連書籍の購入、刊行された書籍3冊の買入→送付
 国内旅費 200 インタビュー
 謝金等 2800 文献・情報整理→サイト掲載・更新、編集作業 150万円+翻訳(英・韓・中→日、日→英)100万円+インタビュー謝金30万円
 合計 4300


■■No.11→2

〈目標・計画〉
 ▼「定めていく」の続き↓▲

 2022年度には6件の寄贈の申し出があり、受け入れた(http://www.arsvi.com/a/gift.htm 「生存学 寄贈」で検索)。そのための空間はまったく足りなくなりつつある。申し出のあったもののすべてを受け入れるつもりはなく、廃棄してよいものもある、とするしかない。しかしそのための選別の作業もせざるをえないし、そのうえでも、受け入れるべきものの量は、今ある空間のその容量を超えていく。それを整理し、所蔵し、公開すべきものは公開し、立ち寄って読んだり見たりしていただくのがよいものは読んでいただき見ていただけるようにする。
 それは大きな規模の事業になるだろう。私学事業団のマッチングファンドを申請することを考える。すでにそのための作業を始めている。また、まったく本研究所だけのものであるのがよいと考えていない。人間科学研究所他といっしょに運営することもおおいにあってよいと思っている。
 具体的な場所として今私たちが考えているのは、創思館の3階にある、日頃あまり使われていない空間である。ここを、より多くの人が書籍・資料に接することのできる空間とする。それは現在の教育・研究をまったく阻害しないで可能であり、大学をより広く人々に開かれたものにするためにも好適な場所である。10000冊ほどの「闘病記」を集積したきた人・組織がその寄贈を望んでもいる。もし実現されるなら、それらを所蔵する空間は上記した新たな空間以外にはない。実現するなら広く市民に使っていただけるものにする。それを運用・管理するための人を置く必要がある。そのための予算執行の実現を強く希望し、期待している。他方創思館4階は、すくなくとも当面、散逸の可能性についてより慎重を期すべき資料を置く。こうした活動について、毎年刊行される「叢書」に記していく。

〈予算計画〉

設備備品費 2000 書架・書架設置
消耗費用 100 収納ボックス等
国内旅費 200 各地のアーカイブ運営の実態調査・聴取
▼以下昨年度と同じ→合計もそれに応じて▲


■■No.1→2
■■No.2→3
■■No.3→4


■■No.1→2


■言及


UP:20230115 REV:20230116
生を辿り道を探る――身体×社会アーカイブの構築  ◇立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa 
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