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伊勢田哲治初登場:人命本捕註10

「身体の現代」計画補足・842

立岩 真也 2022/12/00
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立岩真也『人命の特別を言わず/言う』表紙    立岩真也『良い死/唯の生』表紙   立岩真也『私的所有論  第2版』表紙

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◆立岩 真也 2022/12/05- 「寄付お願い・提案」
 http://www.arsvi.com/ts/20220023.htm
◆立岩 真也 2020/11/11 「私たちはそういうことにあまり慣れてないのだが」DPI日本会議,ご寄付、ご支援について


 『人命の特別を言わず/言う』を筑摩書房から出してもらった。それに対応させて『人命の特別を言わず/言う 補註』を作っている。原稿を書きながら作ってきたものではあるのだが、結局、かなり原稿に手をいれたので、結局、できた本をみながら作っていくことになった。その作業を進めていくためにも、毎日毎日の仕事をここに掲載してことにした。今回はその第7回。延々と続いてく、はずだ。

■第2章・註
★17 「シンガーは実は邪悪な哲学者として非常に強硬な批判をあびている。殺すことの是非をめぐるシンガーの議論は、種差別を否定する以上、人間にもあてはまる。ということは、「死」という概念が理解できない幼児や認知症の患者も、幸福の大化のために殺してよい場合があるということになる。シンガーはこれを積極的に認め、重度障害新生児の安楽死を場合によって認める議論をしている。重度障害新生児は苦痛に満ちた短い生涯を送る。快楽をより多く苦痛をより少なくという考え方からは、重度障害児の苦痛を減らすために安楽死を行うことは場合によって容認される(ただし、そうした安楽死がほかの人に与える影響も考えなくならないので全面的に「容認される」と言い切ることはできない)。成人の場合は死ぬこと自体への本人の嫌悪という別の要素が入ってくるが、新生児の場合、そもそも「死」という概念を持たないので、「死にたくない」という欲求を持つこともない。シンガーはこの主張のために、世界各国の障害者団体から「障害者生きる権利を認めていない」として強く批判されている。シンガーの主張を支持するにはそれなりの覚悟が必要である。」(伊勢田[2008:41])
 「一つは功利主義を使ってシンガーの路線で全体の整合性をとるやり方である。「限界事例の人たちにも人権があり、危害を加えてはならない」という部分を修正して、動物の命(とある種の限界事例の人たちの命)は奪ってもよいということにするということだった。この路線は障害者差別だと△321 いってごうごうたる非難をあびたから、あえてシンガーの後に続くのほかなりの覚悟がいる。」(伊勢田[2008:321-322])
 功利主義について『功利主義入門』(児玉聡[2012])、功利主義と生命倫理について『生命倫理学と功利主義』(伊勢田・樫編[2006])、安楽死・尊厳死との関わりでは「功利主義による安楽死正当化論」(有馬[2012])、それをさらに増補し他の論点と合わせた検討した『死ぬ権利はあるか――安楽死、尊厳死、自殺幇助の是非と命の価値』(有馬[2019])。

有馬 斉 2012 「功利主義による安楽死正当化論」,立岩・有馬[2012:89-172]
○―――― 2019 『死ぬ権利はあるか――安楽死、尊厳死、自殺幇助の是非と命の価値』,春風社
○伊勢田 哲治 2008 『動物からの倫理学入門』,名古屋大学出版会
○―――― 2015 『マンガで学ぶ動物倫理』,化学同人
○伊勢田 哲治・井上 太一 2022 「なぜ私たちは肉を食べることについて真剣に考えなければならないのか」(対談),『現代思想』50-7(2022-6):8-22
○伊勢田 哲治・樫 則章 編 2006 『生命倫理学と功利主義』,ナカニシヤ出版\

 生存学研究センターのフェイスブックにあるこの文章と同じものは
http://www.arsvi.com/ts/20222842.htm
にもある。


UP:202212 REV:
『人命の特別を言わず/言う』  ◇『人命の特別を言わず/言う 補註』  ◇立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa  ◇生を辿り道を探る――身体×社会アーカイブの構築 
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