『人命の特別を言わず/言う』を筑摩書房から出してもらった。それに対応させて『人命の特別を言わず/言う 補註』を作っている。原稿を書きながら作ってきたものではあるのだが、結局、かなり原稿に手をいれたので、結局、できた本をみながら作っていくことになった。その作業を進めていくためにも、毎日毎日の仕事をここに掲載してことにした。今回はその初回ということになる。延々と続いてく、はずだ。
■序章・註
★02 『唯の生』の目次は以下。
第1章 人命の特別を言わず/言う
第2章 近い過去と現在
第3章 有限でもあるから控えることについて――その時代に起こったこと
第4章 現在
第5章 死の決定について
第6章 より苦痛な生/苦痛な生/安楽な死
第7章 『病いの哲学』について
詳細な目次、序文をHP(http://www.arsvi.com/ts/2009b1.htm、「立岩 唯の生」で検索)でご覧になれる。第2章から第4章は,HPで無償公開する『生死の語り行い・3――有限でもあるから控える』(立岩[2022d])に収録する。
★03 その〔『唯の生』の第1章「人命の特別を言わず/言う」の〕冒頭にその趣旨・概要を書いた。
「*この章はいくつかの文章を合わせ再構成したものである。生を奪ってならない/奪ってよいことについて、言われてきたことを検討し、私が考えることを述べる。論理を詰めるべきところはまだいろいろとあるけれども、まず、いくつか、あまりはっきりと言われていないが言えるだろうことを述べる。そして基本的にはこのように考えられるだろうと思うことを述べる。
まず、「延命」のための処置の停止と死のための積極的な処置とは同じであるから、どちらも許容されるという人たちがいる。その議論の前段には認めてよいところがある。しかしそのことは両者を認めることを意味しない。(第1節)
死なせることを是認する積極的な理由としてその人たちが出すのは、α:意識・理性である。なぜそれを言うのか。三つを考えることができる。(1)脱人間中心主義的な倫理を言いたい。(2)人が人を特権化している理由を説明したい。だが、(1)について、それはとても人間中心主義的な主張である。△019 (2)については、その人たちは人を特権化していないし、特権化できていない。すると(3)αという特性を大切なものであると考えたい、それだけが残る。しかしその正当性は不明である。(第2節)
これらの議論と別に、ときにその論に反対して、人と人との関係、というより相手に対する自らの思いを基点とする立場がある。たしかに人の関係は大切であり、社会の現実にも大きく関わっている。しかし、むしろだからこそ、その関係や思いと別のところで判断すべきだと考えられる。(第3節)
では私はどう考えるのか。それを述べてみる。そしてその上で、人間を特別に扱うこと、扱ってしまうことをどのように言うのかを言ってみる。(第4節)」(立岩[2009:16])
「いくつかの文章を合わせ」とある。「人命の特別を言わず/言う」(立岩[2008a])に、シンガー、クーゼ、加藤秀一の本を紹介した『看護教育』での連載「医療と社会ブックガイド」の六回分を加え、構成を変え、加筆した。
目次は以下。
1 新しいことは古いことと同じだから許されるという説
1 伝統の破壊者という役
2 既になされているからよいという話
2 α:意識・理性…
1 α:意識・理性…
2 それは脱人間中心主義的・脱種差別的な倫理ではない
3 それは人の生命の特別を言わない
4 ただそれが大切だと言っているがその理由は不明である
3 関係から
1 〈誰か〉への呼びかけ
2 関係主義の困難△020
3 かつて親などというものはなかったかのように
4 別の境界β:世界・内部
1 世界・内部
2 人間/動物
3 復唱
第1節・第2節は、本章第1章に組み込まれた。第4節は、第2章の一部になった。ただこれには書かなかったこと、すくなくともはっきり書かなかったことを、本書には加えて再構成した。
第3節は、当初、いくらか書き直し本書に組み込もうとしたが、私が言えると思うことをあまに手間どらず、順番に言うことを優先するのがよかろうと考えたため、結局、本書の四つの章には組み込まなかった。ただ、意義のあるものとは思ったので、本書の本体の後に「拾遺」として付すことを考えたその原稿と、もとの『唯の生』第1章全体を、さきに作成・公開することを記した(一八頁)本書の『捕註』(立岩[2022b]〔=本書〕)に収録した。
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◆立岩 真也 2022/12/05- 「寄付お願い・提案」
http://www.arsvi.com/ts/20200037.htm
◆立岩 真也 2020/11/11 「私たちはそういうことにあまり慣れてないのだが」,DPI日本会議,ご寄付、ご支援について
生存学研究センターのフェイスブックにあるこの文章と同じものは
http://www.arsvi.com/ts/20222835.htm
にもある。