『人命の特別を言わず/言う』を筑摩書房から出してもらった。それに対応させて『人命の特別を言わず/言う 補註』を作っている。原稿を書きながら作ってきたものではあるのだが、結局、かなり原稿に手をいれたので、結局、できた本をみながら作っていくことになった。その作業を進めていくためにも、毎日毎日の仕事をここに掲載してことにした。今回はその初回ということになる。延々と続いてく、はずだ。
■序章・註
★01 『良い死』の序より。全文はHPでご覧になれる。
「死/生について論じるといったことは、できもしないし、気がすすまない。にもかかわらず、『ALS――不動の身体と息する機械』(立岩[2004f])という、重いといえば重い話も出てくる本を書いてもしまったから、もうしばらくはやめておこう、遠ざかっていようと思っていた。
けれども、「尊厳死」してもよいという法律を作ろうという動きが出てきたことを聞きつけた人から、それはとても困ったことだ、これでますます死ななくてよい人が死んでしまうと、だから何かせよと言△017 われた。すぐに法律ができるということになるとは思わなかった。ただその心配な気持ちにはもっともなところがある。
言うべきことは、ことが起こる前にきちんと考えておいて、言っておくべきなのだが、そう思って見渡してみると、すぐに使える言葉がない。つまり私たちは、ものを書く者たちはだめなのだ。すぐに取り出せる道具を揃えられていない。だから泥縄になってしまうのだが、それでもその場で考えて言うしかないということになる。
そんなことがあって、そして原稿の依頼があったり、本の企画があったりして、結局、二年、三年と文章を書き続けることになった。とくに本にする段階で、幾度も構成が変わり、文章もかなりなおしたり書き足すことになった。結果、ずいぶんな時間がかかった。そして一冊で終わらず、二冊になり、そして三冊になってしまった。」(立岩[2008b])
一冊めが『良い死』、二冊めが『唯の生』。三冊めは本をたくさん紹介する本にしようと思ったが、きりがないことになりそうだった。そこで、まず二〇一二年に、有馬斉(有馬については本書一三六頁)との共著で『生死の語り行い・1――尊厳死法案・抵抗・生命倫理学』を刊行した。この年、生命倫理学会の大会があり、私がその大会長ということであったのだが(その時の大会長講演が「飽和と不足の共存について」)、「会員のみなさんはこれこれを知ってますか、知らなければ知ってほしいです」というつもりもあった。知ってほしい、種々の団体が出した声明の類を再録し、いくらかの本の紹介をした。これは私が担当した。それに有馬の論考を加えた。たくさんの本を紹介する本としては、その五年後、二〇一七年に、電子書籍(といってもただのHTMLファイル)で『生死の語り行い・2――私の良い死を見つめる本 etc.』(立岩[2017]、http://www.arsvi.com/ts/2017b2.htm)を作った。本書の『捕註』〔本書=本頁〕と同様、サイト上のページにリンクされたほうがよいと思ったことにもよる。ただ、驚くほど売れてはいない。
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◆立岩 真也 2020/11/11 「私たちはそういうことにあまり慣れてないのだが」,DPI日本会議,ご寄付、ご支援について
◆立岩 真也 2022/12/05- 「寄付お願い・提案」
生存学研究センターのフェイスブックにあるこの文章と同じものは
http://www.arsvi.com/ts/20222834.htm
にもある。