HOME > Tateiwa >

新山智基『世界を動かしたアフリカのHIV陽性者運動』に・03

「身体の現代」計画補足・788

立岩 真也 2022


787 < / > 789

Tweet


『世界を動かしたアフリカのHIV陽性者運動』表紙画像


 私の勤め先の大学院で博士号をとったりした人たちが出した本におまけのようなものを幾つか書いてきた。
立岩が関係した博士論文:http://www.arsvi.com/ts/dt.htm(現在整理中)
 それを紹介していきます。

新山 智基 2011/12/01 『世界を動かしたアフリカのHIV陽性者運動――生存の視座から』,生活書院
 http://www.arsvi.com/b2010/1111nt.htm
 に入っている
■立岩真也 2011/12/01 「補足――もっとできたらよいなと思いつつこちらでしてきたこと」
 を再掲していきます。新山さんの本買ってください。
 『なぜ遠くの貧しい人への義務があるのか――世界的貧困と人権』は
 http://www.arsvi.com/b2000/0800pt.htm


 ついでにもうすこし大きなことについて。すくなくとも、HIV/エイズはなんとかなる。しかし現在ある貧困の全体を変えることはたしかにもっと厄介ではあるだろう。しかしまず、ではそれはよいこと、仕方のないことであるかといえばそうではない。では実際にどうするか、できるか、ということになる。
 例えば、こんなことが「グローバル・ジャスティス」といった看板のもとで、考えられたり、書かれたりもしている。私たちは、本書の出版社である生活書院から、2010年に、その領域では著名なトマス・ポッゲの『なぜ遠くの貧しい人への義務があるのか――世界的貧困と人権』を出してもらった。(原著の題名は訳本の副題 World Poverty and Human Rights。2008年の第2版を訳した。)著者は、そうたいした負担なく世界の最悪の貧困は解消可能だと述べる。そして訳された第2版に新たに収録され、その書の最後に置かれる第9章「新薬開発――貧しい人々を除外すべきか?」では、まさにそのことが論じられている。彼の案は、必須薬品向けのグローバル特許を新たに設けて、その特許の有効期間中は、それが与える効果・影響に比例した報酬を公的で国際的な財源から与えられる権利を有するようにするというものだ。これもよい案だろう。
 ただ、全体としてそのポッゲの本は、世界全体の流れから見れば十分に「ラディカル」なのだろうが、私から見るとずいぶん控えめな慎ましやかなことを言っているようにも思える。そのことについて、訳書が出た後、著者が来日した時に私たちの大学院で研究会をしたその後の居酒屋で通訳を介して伺ってみたところ、私が受けとったところでは、米国で出版された米国人(だけでないにしてもそういう傾向の人たち)向けの本なものなんで(こんな程度の書き方で仕方がないのだ)、というような応答であったと思う。それに比べると、私の立場は、慎ましくない、「極貧」のラインを決めて、そこをなんとかしましょうというのでなく、もっと「上」を目指してよいのだというものである。そして、さしあたりの実現可能性を別にすれば、その方が筋は通っているはずである。(そのことは、Aその本の末尾に付した「思ったこと+あとがき」他に書いた。ウェブ上で読んでいただくことができる。)


 [広告]
◆立岩 真也 2022/**/** 『人命の特別を言わず*言う』,筑摩書房
◆立岩 真也 2021/03/10 『介助の仕事――街で暮らす/を支える』,ちくま新書,筑摩書房,238p.
◆立岩 真也 2020/11/11 「私たちはそういうことにあまり慣れてないのだが」DPI日本会議,ご寄付、ご支援について


 生存学研究センターのフェイスブックにあるこの文章と同じものは
http://www.arsvi.com/ts/20222788.htm
にもある。


UP:2021 REV:
博士号取得者  ◇立命館大学大学院先端総合学術研究科  ◇生を辿り道を探る――身体×社会アーカイブの構築  ◇『介助の仕事――街で暮らす/を支える』  ◇立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa 
TOP HOME (http://www.arsvi.com)