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誰の、は本当はたいしたことじゃない


立岩 真也 2022/03/20
https://bb220520a.peatix.com/
天畠大輔×立岩真也×荒井裕樹「なぜ〈弱さ〉は〈強み〉になるのか――しゃべれない人が語りつくします」
『しゃべれない生き方とは何か』(生活書院)『〈弱さ〉を〈強み〉に』 (岩波書店)W刊行記念
於:本屋B&B(東京・下北沢) https://bookandbeer.com/

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 ※アーカイブ動画視聴できます。〜6月21日
  https://bbarchive220520a.peatix.com/

■その後の鼎談?

◇天畠 大輔・立岩 真也・荒井 裕樹 20200520 「なぜ〈弱さ〉は〈強み〉になるのか――しゃべれない人が語りつくします」,『しゃべれない生き方とは何か』(生活書院)『〈弱さ〉を〈強み〉に』 (岩波書店)W刊行記念,於:本屋B&B(東京・下北沢) https://bookandbeer.com/

表紙写真から注文できます&このHP経由で購入すると寄付されます
天畠大輔『しゃべれない生き方とは何か』表紙   天畠大輔『〈弱さ〉を〈強み〉に――突然複数の障がいをもった僕ができること』表紙   立岩真也『私的所有論  第2版』表紙   立岩真也『介助の仕事――街で暮らす/を支える』表紙

◆立岩 真也 2021/03/10 『介助の仕事――街で暮らす/を支える』,ちくま新書,筑摩書房,238p.
◆天畠 大輔 2021/10/20 『〈弱さ〉を〈強み〉に――突然複数の障がいをもった僕ができること』,岩波新書,252p.
◆天畠 大輔 2022/02/25 『しゃべれない生き方とは何か』,生活書院,392p.
◆立岩 真也 2022/02/25 「誰の?はどんな時に要り用なのか(不要なのか)」天畠大輔『しゃべれない生き方とは何か』,生活書院
◆立岩 真也 2022/05/23 「0519〜0522・東京〜新潟・3:天畠大輔――「身体の現代」計画補足・817」
 https://www.facebook.com/ritsumeiarsvi/posts/3201741493426149

■立岩(最初の)発言
 ※音声ファイルもあり。この後のやりとりの記録もあり。掲載していきます。以下とりあえず。
 ※Twitterでの感想なども後ほど載せていこうと思います。

A:どういう院生だったかとか、そういうことでもいいですし、お願いできますでしょうか?

立岩:はい、立岩です。ビール〔B&BのBはビールのB〕を飲んでる限りはマスクしなくていいと思っているので、ずっと ビール飲み続けながら話します。
 大学院生としての…なんだろ、天畠さんみたいな人が大学院生にいるってぜんぜん簡単なことで、どうってことないんだよっていう話はあとでします。これはかなり実は深い話なんですけど。
 その前に、ひとの本の解題とか、ひとの本のイベントとかで自分の本を宣伝するっていう悪行はもう20 年ぐらいやってきまして、またしますけど、『介助の仕事』っていう本を去年、ちくま新書で出してます。それの121ページかな…には、天畠の写真が出てて。天畠の写真写りがとにかくいいと褒めてる。実際、写真写りよくて。朝日新聞の日曜版だっけ? なんかすごいでっかい写真載ったことあって、えらい写真写りいいんですけど…っていうようなことが書いてあります。かつ、さっき「日本で一番重い身体障害を持ってる大学院生だ」って言っていたけど、ここには「世界一重い」って書いてあって、実際本当にその通りだと思ってます。っていうような、天畠さんの話。彼は経営者として、「こういう障害を持っている人は本当は経営とかそういうのでけっこういけてるんだぜ」みたいなことも書いてある箇所がある、こういう本です。
 そして、これからたとえば天畠くんみたいな人が研究したり学校行ったりするっていうことも含めて、今まで社会福祉の介助のサービスっていうのは、就労の場、それから教育の場っていうのを除外してたわけね。そういうことをしないでみんなつなげちゃって、暮らして働いて勉強して、みたいなことを基本的には同じシステムの中でやればいいっていうの、これ絶対正しいんですよ。そういうふうに社会はなるべきだし、それは政策的な課題でもあるんですよ。そういう大きな話もあるし、それから実際今あったみたいに、意外とみんなわかってないけど、知らないけど、自分ができるとか思ってないんだけど、でも介助の仕事ってあるんだよ、いろんな人が実はやってるんだよって。今日の話は基本いい話でしたけど、そんないい話ばっかりじゃない。ドロドロのぐちゃぐちゃの話もいっぱいあるんですけど、でも、でも、そこの中でこういうことが仕事として成り立ってるんだよ、それで飯食えてんだよっていうことはこの本に書いてあるので、まあよろしく。この本は安いです。天畠の本より…あ、んなことはないか。岩波新書だから負けてるかな?

会場:(笑)

立岩:ちょっと待って。

A:どうでしょうか?

立岩:勝ってますね。天畠の本は岩波新書で880円と税金ですが、僕の本は820円と税金なので僕の本のほうが安い。だから天畠の岩波新書買うよりも僕のちくま新書買ったほうがいい。それが一つね。
 で、あと…なんの話をしてるんだっけ?(笑) 
 大学院生として天畠さん受け入れるのは別にぜんぜんどうってことないっていう話ですけど、それは本当にそうなんですよ。彼は東京に住んでて、僕らがやってる立命館大学は京都にあるんで移動が大変とか、それはもちろんありましたけど、でもzoom使ったり。そのころはSkypeでしたけど。したらまあなんやかんやで、別にどうってことなかったです。本当にどうってことなかったです。
 むしろね、たぶん学部の教育のほうが大変なんですよ。それはなにが大変かっていうと、zoomとかでやるとかやらないとかそういうことじゃなくて、試験とかのときにね、たぶん学生とかが言ってくるんですよ。「あの人はなんかズルして他の人の助けを借りて答案書いてる」とかさ、なんとかかんとかって話になった時に、いわゆる一人一人の能力の差みたいなことを測って、それを以て教育と称してるようなところだと、天畠の位置ってのは難しくなるわけ。
 だけどね、研究っていうのは、本当は…、それはずっと天畠に言ってんだけど天畠最終的にわかってないと思うんだけど、本当は誰がやったっていいわけ。 誰がやろうと、一人がやろうと二人がやろうと三人がやろうと、結果が良ければなんだっていいんすよ、本当に。いい研究ができればいいんだよって、それは誰がやったってこと本当はどうでもいいことですよ。まったくね。っていうのが一番基本なんですよ。
 そういうふうに考えると、研究っていうものをそうだっていうふうにシンプルにとらえるすると、あとは天畠がなんか旗振りながらいろんな人の支援を得て、いいものが出てるのをこっちは手伝えばいいわけだから。むしろ一人の人を支援するよりも手強いパワーのある、賢いっていうか、人たちが周りにいろいろはべってて、ついてて、そういう人たちとやっている人を手伝うほうが楽に決まってるじゃないですか? そういうことなんですよ。そういうふうに物事を考えるってのが大切なことなんですよ。本当にね。研究とかそういうことにおいてね。
 そういうふうに考えていくと、本当は、誰に能力があるとか誰がやったのっていうことが、大切じゃない。大切ではない、というふうに考えてもいいような領域っていっぱいあってね。というふうに今度は考えるんですよ。むしろ、学校の場で単位が取れるとか取れないとか、大学院生であれば学位が取れるとか取れないとか、それは誰のせいだとか、本当にこいつはやったのかとかっていうことをせこくカウントしなきゃいけない世界のほうが異常な…、異常っていうか、大したことのない世界であって。
 たとえばね、経営だってさ、会社の社長さんはそれは偉いかもしんないけど、でもいろんな人と一緒に働いてそれでなんかものができてるんでしょ? というふうに考えたときに、じゃあこれは誰の貢献なのかって測りようがないし、測る必要もないんだ、本来は。本来はですよ。それを一生懸命今測ろうとしてるんだよ。そうやって考えていくっていうことがとっても大切なことで。
 政治だってそうですよ。もちろん今、議員の議席数って決まってて、一議席については一人の人が議員になるしかないんだけれども、だけどそれはそういう仕組みだからそうなんであって、その一人の周りにいろんな人がいて、あるいはそのいろんな人をいさせるって力を天畠は持ってて。そのことによっていいアイデアが出たり、いい政治家が出たら、一人の人が「俺は政治家だ」って言ってもいいに決まってるじゃないですか。っていうふうに物事を考えるっていうのが、社会科学ってものの本筋だと。社会を考えるってことの本筋だと僕は思ってるわけ。
 で、僕のその天畠の本の解題に書いてることはそういうことで、「お前そんなことで悩んでんじゃねえよ」みたいなこと書いてるんだけれども、それは本当にそう思っている。そこでつまずく必要は本当はない。ジレンマでもなんでもない。それを「普通に考えればそうなるはずだ」とも言えるし、僕はそういう、天畠さんが今制度と暮らせてる、いろんな制度、事業、そういうものをつくってきた人たちでもある日本の障害者運動っていうのがね、やっぱベーシックなところで能力主義を否定する、批判するってことができてたときに、それを僕が受け継ぐことによって、「本当はどうでもいいんだ」と、「なんで、どうでもいいことがなんでどうでもよくならなくなってるように社会があるのか」っていうことを、そこを考えるっていうのが学問的におもしろいし、大切なことだっていうふうに思ってるんですよ。そこまでにしとこうかな。(笑)
 そんなことで、なにを言いたかったっていうと、とにかく介助の話は、どういう人がやってるかってこともおもしろいし、どういう制度にのってんのか、それからこれからどうしてくのかってことも大切だと。それはこれから彼も自分で事業所経営したり、いろんなことに関わりながらつくってくことだと思うんだけれども、そこのところで僕もやれることをやってくけれどもよろしくっていう話とね。それからやっぱり社会ちゃんと考えるっていうことはやっぱり、あってよくて。そういうことをしたいんであれば、ぜんぜん、障害があろうとなかろうと重かろうと軽かろうと、んなことは関係ないのであって。僕のところの大学院に限りませんけども、来てくれれば「物事っていうのはこういうふうに考えたらおもしろいんだぜ、正しいんだぜ」っていうことを言えると思うんだよね。一緒に考えるし、アウトプットを作っていけるって思います。
 またなんか、しばらくビールを飲んでからまたお話をします。だから、荒井〔裕樹〕さん、どういう指導関係だったって、どうってことなくて。他のできの…、できの悪いって言っちゃいけないんだ(笑)、院生なんかよりぜんぜん楽。手強い仲間がいっぱいいて、お手伝いさんがいっぱいいて。そいつらに…そいつらにっていうか(笑)、任せてりゃいいわけだからさ。ちゃんとそうしたらちゃんとした博士論文が出てくるわけですよね。こんな楽なことはないとは言わないけれども、どうってことなかったよっていうのが、「どういう大学院の二人の関係だったんですか」っていうことの答えになります。
 はい、以上でした。汗かきました、なんか。よくわかんないけど。以上です。9分38秒しゃべりました。


◇2022/**/** 「天畠大輔の本に「誰の?は…」」・01――「身体の現代」計画補足・801」
 https://www.facebook.com/ritsumeiarsvi/posts/3145247342408898
◇2022/**/** 「天畠大輔の本に「誰の?は…」」・02――「身体の現代」計画補足・802」
 https://www.facebook.com/ritsumeiarsvi/posts/3147230928877206
◇2022/**/** 「天畠大輔の本に「誰の?は…」・03――「身体の現代」計画補足・803」
 https://www.facebook.com/ritsumeiarsvi/posts/3148798255387140
◇2022/**/** 「天畠大輔の本に「誰の?は…」・04――「身体の現代」計画補足・804」
 https://www.facebook.com/ritsumeiarsvi/posts/3150285318571767
◇2022/**/** 「天畠大輔の本に「誰の?は…」・05――「身体の現代」計画補足・805」
 https://www.facebook.com/ritsumeiarsvi/posts/3151618561771776
◇2022/**/** 「天畠大輔の本に「誰の?は…」・06――「身体の現代」計画補足・806」
 https://www.facebook.com/ritsumeiarsvi/posts/3155645704702395
◇2022/**/** 「天畠大輔の本に「誰の?は…」・07――「身体の現代」計画補足・807」
 https://www.facebook.com/ritsumeiarsvi/posts/3158540257746273
◇2022/**/** 「天畠大輔の本に「誰の?は…」・08――「身体の現代」計画補足・808」
 https://www.facebook.com/ritsumeiarsvi/posts/3163559510577681
◇2022/**/** 「天畠大輔の本に「誰の?は…」・09――「身体の現代」計画補足・809」
 https://www.facebook.com/ritsumeiarsvi/posts/3166521036948195
◇2022/**/** 「天畠大輔の本に「誰の?は…」・10――「身体の現代」計画補足・810」
 https://www.facebook.com/ritsumeiarsvi/posts/3167299586870340
◇2022/**/** 「天畠大輔の本に「誰の?は…」・11――「身体の現代」計画補足・811」
 https://www.facebook.com/ritsumeiarsvi/posts/3174361856164113
◇2022/**/** 「天畠大輔の本に「誰の?は…」・12――「身体の現代」計画補足・812」
 https://www.facebook.com/ritsumeiarsvi/posts/3188973511369614


UP:20220508 REV:20220523
Shin'ya Tateiwa  ◇立岩 真也  ◇生を辿り途を探す――身体×社会アーカイブの構築 
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