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続・介助者として働いてみようという本の話

何がおもしろうて読むか書くか 第14回

立岩 真也 2021/04/25 『ちいさい・おおきい・よわい・つよい』129:156-160 http://japama.jp/chio129/
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『ちいさい・おおきい・よわい・つよい』129:156-160 2021年4月25日刊行 特集:「過敏さ・繊細さ」解体新書
 http://japama.jp/chio127/

『おそい・はやい・ひくい・たかい』129表紙

『ちいさい・おおきい・よわい・つよい』/『おそい・はやい・ひくい・たかい』

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『ちいさい・おおきい・よわい・つよい』
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◆立岩 真也 2020/04/25 「話してもらう――何がおもしろうて読むか書くか 第12回」
 『ちいさい・おおきい・よわい・つよい』127
◆2020/10/25 「介助者として働いてみようという本の話――何がおもしろうて読むか書くか 第13回」
 『ちいさい・おおきい・よわい・つよい』128:164-168

◆立岩 真也 2021/02/10 『介助の仕事――街で暮らす/を支える』,筑摩書房,ちくま新書,238p. 820+
◆立岩 真也 2021/02/11 『介助の仕事――街で暮らす/を支える 補注・文献Kyoto Books

 ※校正済のもの

『介助の仕事』出てます
 前回、昨年「八月一〇日に最終の原稿を送った」と書いた本が、その時にはまったくそんなことを思っていなかったのだが、なかなか出ず、ようやく、この三月一〇日、ちくま新書から出版された。題名は『介助の仕事――街で暮らす/を支える』。値段は八二〇円+税。
 すぐに出るものと思っていた。そしてやはり前回書いたように、続けて何冊か新書を出してもらうつもりだった。だが、ひどく時間がかかった。私が何冊かでお世話になっている生活書院なんかだと、社員=社長さんという会社だから、会議のしようもないのだが、大きな会社では△156 ちがう。当初出してもらう予定だった岩波書店なんかだとそういう手続ぎに手間がかかることは、二〇〇四年の本
『自由の平等――簡単で別な姿の社会』でも経験はしていた。ただ、本の内容についての編集者の反応はよかったのだが、なかなかその会議にかけてもらえないようだった。
 どうやらそのわけは、研修での話を録音して文字にしたその記録をもとにしたことによるのだろうと思った。実際にはかなり編集を加えたのだが、それでもあえて話したままのようにしたのだった。それがふつうでないことと受けとられたようだ。
 そのことに気づくと、たしかに、岩波新書もほかの古くからある新書も、安くて薄いものの、じつは「きちんとした」ものであることに気づいた。私のはそうでないのがいけなかったようだ。
 それで、とにかく急いでいたので、別をあたることにして、結局、『良い死』(二〇〇八)、『唯の生』(二〇〇九)でお世話になった筑摩書房の石島さんに受けてもらい、ちくま新書から出してもらうことになった。さらに予想外に時間がかかって、ようやくというところだ。

立岩真也『自由の平等』表紙   立岩真也『良い死』表紙   立岩真也『唯の生』表紙   立岩真也『介助の仕事――街で暮らす/を支える』表紙

表紙クリックで紹介頁&HP経由で購入すると寄付されます

短いものを出す・長いものも残す
 こういうことは私にとってははじめてだった。出してもらいたい本はいつも大切なことを言っていると私は思っているが、それでもというか、だからこそとい△157 うか、かなりややこしく、長く、厚く、そして値段の高いものになる。しかし、ほぼ普通の誤字脱字のなおし(校正)だけで、ときには手ちがいでそれもうまくなされず、本は出してもらった。
 それはありがたいことだ。私自身は、難しいことを書いたことは一度もないと思っている。私は難しいことを考えられるような人間ではない。しかし、なぜあることが言えるのか、それを説明するのが、ものを書く者の仕事(のひとつ)だとは思っていて、その仕事をすると長く、いくらかはややこしくなってしまう。そういうものを出してもらってきた。
 ただそれだけではだめだ、「要するに」とか、「すぐ使える」とか、そういうものを書いて出してもらおう。ずっとそう思ってきて、意外に苦労してようやく、かなった。時間がかかり、ペースがおかしくなったが立て直さねばと思っている。
 話すようにと書けば、わかりやすくなるなんて思っていない。しかし、ふつうの文章では長くなるところを、ちょっとした言い回しで、なんとなく、まずは、短く、伝えることはできると思う。
 それにしてもほんとうは長い話だ。いろいろな本で書いたこととか、いままでに知った人たちとか、そんなさまざまがあってできている。それは割り切ろうというのが今度の本なのだが、知りたい、知ってもよいという人にはやはり知ってほしい。
 そこで、長い註と文献表を付し、そこからこちら(生存学研究所)の膨大な数の△158 ファイル(ページ)にリンクさせた電子書籍版をつくった。ただのHTMLファイル。というのはHPでみなが毎日見ているファイルと同じもの。クリックすれば開ける。文字量でいうと紙の本の三倍ある。そういう版も出すと、最初からはっきり原稿に書いてもいる。しかし結局、出版社的に無理ということになった。
 新書が出た後は、本文なしの註と文献表というかたちで出し続けるしかないかもしれない。もったいないことだと思う。値段の高い専門書だったら、安い電子書籍が出たらそちらを選ぶということが(実際には意外にめったにないのだが)あるかもしれない。しかし、薄くて安い紙の新書とより立ち入った細々とした情報を得る電子データのファイルは、まちがいなく、競合しないはずだ。それぞれの利点があり、電子書籍版(のお知らせ)をみて紙の本を買う人もいる。そして私の基本方針は、紙の本を買った人にファイルを送るというものだから、紙の本が売れなくなる心配は最初からない。
 しかし…、ということだ。こういうこともこれからだんだんとよくなっていくと私は思う。思うことにしている。

実用書を使い実業もする
 そしてとにかく、今度の本は実用のための本だ。ヘルパー・ケアワーカー・介助者・介護者、名前はなんでもいいが、足りない。大きくは政治が変わらないとその状態は変わらない。しかしそれもほ△159 んとうは簡単なのだというのがこの本のメッセージなのだが、もうひとつ、自分たちでももうすこしなんとか手のうちようはあると思ってきた。
 例えば私が住んでいる京都には専門学校や大学がたくさんある。私たちが学生だったときには、制度がなかったから無給の仕事だったが、今は生活費や学費を得る仕事にもできる。しかしあまりそういうことは知られていない。残念だ。そこでこの本を書いた。研修のときにも使ってもらえると思う。
 さらに、じつは、会社の立ち上げと運営を手伝っている。以前からNPO法人の「ある」という名称のものはあったのだが、それと別に、二〇二〇年の末、合同会社の「ある」を作った。京都には実績もあり気合も入っている組織がいくつもあるがそれでも足りない。私は大学の教員で、同業者の知人もいる。まずはそういうルートも使って、声をかけようと思い、かけてみて、そして始まった。正確には事業の認可はまだで、いまは他の法人の「ひさしを借りる」かたちなのだが、とにかく始まった。その話は次回に。ヘルパー募集中。立岩〔tae01303@nifty.ne.jp〕まで連絡ください。


 
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※お送りした原稿

◆立岩 真也 2021/04/25 「『介助の仕事』――何がおもしろうて読むか書くか 第14回」,『ちいさい・おおきい・よわい・つよい』129 [18×134]

■『介助の仕事』出てます
 前回、昨年「八月一〇日に最終の原稿を送った」と書いた本が、その時にはまったくそんなことを思っていなかったのだが、なかなか出ず、ようやく、この三月一〇日、ちくま新書から出版された。題名は『介助の仕事――街で暮らす/を支える』。値段は八二〇円+税。
 すぐに出るものと思っていた。そしてやはり前回体に書いたように、続けて何冊か新書を出してもらうつもりだった。だが、ひどく時間がかかった。私が何冊かでお世話になっている生活書院なんかだと、社員=社長さんという会社だから、会議のしようもないのだが、大きな会社では違う。岩波書店なんかだとそういう手続ぎに手間がかかることは、二〇〇四年の本『自由の平等』でも経験はしていた。ただ、本の内容についての編集者の反応はよかったのだが、なかなかその会議にかけてもらえないようだった。
 どうやらそのわけは、研修での話を録音して文字にしたその記録をもとにしたことによるのだろうと思った。実際にはかなり編集を加えたのだが、それでもあえて話したままのようにしたのだった。それが普通でないことと受け取られたようだ。そのことに気づくと、たしかに、岩波新書も他の古くからある新書も、安くて薄いものの、実は「きちんとした」ものであることに気づいた。私のはそうでないのがいけなかったようだ。
 それで、とにかく急いでいたので、別をあたることにして、結局、『良い死』(二〇〇八)、『唯の生』(二〇〇九)でお世話になった筑摩書房の石島さんに受けてもらい、ちくま新書から出してもらうことになった。さらに予想外に時間がかかって、ようやくというところだ。

短いものを出す・長いものも残す
 こういうことは私にとっては初めてだった。出してもらいたい本はいつも大切なことを言っていると私は思っているが、それでもと言うか、だからこそと言うか、かなりややこし、長く、厚く、そして値段の高いものになる。しかし、ほぼ普通の誤字脱字のなおし(校正)だけで、ときには手違いでそれもうまくなされず、本は出してもらった。
 それはありがたいことだ。私自身は、難しいことを書いたことは一度もないと思っている。私は難しいことを考えられるような人間ではない。しかし、なぜあることが言えるのか、それを説明するのが、ものを書く者の仕事(の一つ)だとは思っていて、その仕事をすると長く、いくらかはややこしくなってしまう。そういうものを出してもらってきた。
 ただそれだけではだめだ、「要するに」とか、「すぐ使える」とか、そういうものを書いて出してもらおう。ずっとそう思ってきて、意外に苦労してようやく、かなった。時間かかり、ペースがおかしくなったが立て直さねばと思っている。
 話すようにと書けば、わかりやすくなるなんて思っていない。しかし、普通の文章では長くなるところを、ちょっとした言い回しで、なんとなく、まずは、短く、伝えることはできると思う。
 それにしても本当は長い話だ。いろいろな本で書いたこととか、今までに知った人たちとか、そんな様々があってできている。それは割り切ろうというのが今度の本なのだが、知りたい、知ってもよいという人にはやはり知ってほしい。
 そこで、長い註と文献表を付し、そこからこちら(生存学研究所)の膨大な数のファイル(ページ)にリンクさせた原子書籍版を作った。ただのHTMLファイル。というのはHPでみなが毎日見ているファイルと同じもの。クリックすれば開ける。文字量でいうと紙の本の三倍ある。そういう版も出すと、最初からはっきり原稿に書いてもいる。しかし結局、出版社的に無理ということになった。新書が出た後は、本文なしの註と文献表というかたちで出し続けるしかないかもしれない。もったいないことだと思う。値段の高い専門書だったら、安い電子書籍が出たらとそこちらを選ぶということが(実際には意外にめったにないのだが)あるかもしれない。しかし、薄くて安い紙の新書とより立ち入った細々とした情報を得るHPのファイルは、まちがいなく、競合しないはずだ。それぞれの利点があり、電子書籍版(のお知らせ)をみて紙の本を買う人もいる。そして私の基本方針は、紙の本を買った人にファイルを送るというものだから、紙の本が売れなくなる心配は最初からない。
 しかし…、ということだ。こういうこともこれからだんだんとよくなっていくと私は思う。思うことにしている。

実用書を使い実業もする
 そしてとにかく、今度の本は実用のための本だ。ヘルパー・ケアワーカー・介助者・介護者、名前はなんでもいいが、足りない。大きくは政治が変わらないとその状態は変わらない。しかしそれも本当は簡単なのだというのがこの本のメッセージなのだが、もう一つ、自分たちでももうすこしなんとか手のうちようはあると思ってきた。例えば私が住むでいる京都には専門学校や大学がたくさんある。私たちが学生だった時には、制度がなかったら無給の仕事だったが、今は生活費や学費を得る仕事にもできる。しかしあまりそういうことは知られていない。残念だ。そこでこの本を書いた。研修の時にも使おってもらえると思う。
 さらに、実は、会社の立ち上げと運営を手伝っている。以前からNPO法人の「ある」という名称のものはあったのだが、それと別に、二〇二〇年の末、合同会社の「ある」を作った。京都には実績もあり気合も入っている組織がいくつもあるがそれでも足りない。私は大学の教員で、同業者の知人もいる。まずはそういうルートも使って、声をかけようと思い、かけてみて、そして始まった。正確には事業の認可はまだで、今は他の法人の「ひさしを借りる」形なのだが、とにかく始まった。その話は次回に。ヘルパー募集中。立岩まで連絡ください。


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