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後藤基行・安藤道人・2

「身体の現代」計画補足・690

立岩 真也 2020
https://www.facebook.com/ritsumeiarsvi/posts/2644868242446813

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立岩真也『精神病院体制の終わり――認知症の時代に』表紙   立岩真也『病者障害者の戦後――生政治史点描』表紙   立岩真也『造反有理――精神医療現代史へ』表紙

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 前回は『病者障害者の戦後――生政治史点描』(2018)に後藤基行さんと安藤道人さんが出てくるところを引用した。今回はその3年前、『精神病院体制の終わり――認知症の時代に』
http://www.arsvi.com/ts/2015b2.htm
に記した箇所を。第1章「陰鬱な現況と述べること予め」の終わりの部分とそこに付した註。


 「そして私は、歴史のごく一部を断片的に記すにすぎない。ようやく後藤基行や安藤道人らによって制度的歴史的な研究が始まってもいるから、今後は研究が進むだろうと思う。私は一次資料にあたったりすることはできないが、それでもどこからでも積み上げていくことは大切だと思うから、幾らかのことを本書で行なう★07。また、「本人」たちの行動・発言も、前書に続き、第1章ですこし紹介しまた[補・3]で幾つか本を紹介する以外、記すことはない――ただ前書でも吉田おさみは紹介した【▽】、その後吉田について樋澤[2014]。これは別の人たちの、また別の人たちとの仕事になる★08。そして、本書でその必要性は理解されると思うが、各種団体、業界団体についての距離をとった研究もまた必要だ★09。
 こうして、種々の意味で半端なのではあるが、それでも、歴史のごく一部を見て、そしてそこから言えるごく基本的なところは言ってみようとする★10。」(立岩[2015]:36)

 「★07 「歴史もの」の著作は、歴史研究者のものでやはり前著であげなかったものとして、『治療の場所と精神医療史』(橋本編[2010])、『精神病者と私宅監置――近代日本精神医療史の基礎的研究』(橋本[2011])があるが、他に、変わらず、医師による、古い時期を、それほど詳しくなく描くといったものが多い。前著にあげなかったものとして、『日本の精神医療史――明治から昭和初期まで』(金川[2012])、『近代精神医学史研究――東京大学・合衆国・外地の精神医学』(風祭[2012]、著者【65】は元松沢病院院長)には「東大精神科では病棟の不法占拠のために研究室が使用出来なくなり、精神薬理学の基礎・臨床研究はほとんど行われなくなった」(風祭[2012:69])といった記述(だけ)がある。両者に朝鮮半島・中国での終戦前までの記述がすこし含まれる。『近代日本の精神医学と法――監禁する医療の歴史と未来』(井上[2010])はごく短いがもっと近い時期まで書かれてはいる。実際に松沢病院他の現場にもおり精神医療の歴史を長く研究し、一九六〇年代前半までの歴史の本は書いているが、その後についてはまだ出していない岡田靖雄【92】の講演を冊子化したものとして岡田[2005]。
 他方、近年の成果として、後藤[2012a][2012b]、後藤・安藤[2013][2015]、安藤・後藤[2014]があり、その論文のためにも作成され始めているデータベースとして安藤・後藤[2014-]がある。(よく言われる私的監置とともに)戦前から公的監置があり収容策が進められてきたこと、生活保護(の医療扶助)による入院が、多くは同意入院(本人による同意でなく家族の同意による)の手続きを経て、大きな割合を占めていたことが実証的に明らかにされつつある。
 日本におけるより全般的な病院化の経緯と脱病院化の展望については猪飼[2010]。経時的で数的な情報を用いた分析の意義を示している。その上で、事態の評価に際しての基準・根拠をどこに置くのかをさらに詰めていく必要があるように思える。また、その書では精神病院はなおすための施設としての病院でない病院として例外的に扱われているのだが、そして精神病院がそうした施設であってきたこと自体は事実だが、では精神疾患・障害でない部分については専らなおすための施設であったと言えるのかという問題も残るように思う。」(立岩[2015:38])


※生存学研究センターのフェイスブックにあるこの文章と同じものは
http://www.arsvi.com/ts/20202690.htm
にもある。


UP:2020 REV:
『精神病院体制の終わり――認知症の時代に』  ◇生を辿り道を探る――身体×社会アーカイブの構築  ◇立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa 
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