HOME > Tateiwa >

もの:薬

新書2のための連載・14

立岩 真也 2020/11/16 『eS』37

Tweet


 この文章は、2020年中には出したいと思っていた本・2の草稿として準備を始めたものです。
 『介助の仕事』のための連載と異なり、順不同で書いていきます。今のところ、以下に記す取材時の記録を切り貼りしているだけのものです。だんだんと整理し、かたちを作っていきます。
 ここにおく註と文献表は、新書では大幅に減らされます、というよりなくすと思います。紙の新書をご購入いただいた方に有料で提供する電子書籍版には収録しようと思います。
 2021年の刊行になりました。7月には刊行していただきます。『eS』に連載?した文章(というか、方々で話したものの記録の抜粋)はそのままでは使えないので、大幅に書き直し書き足すます。〈Webちくま〉での連載をお願いしようと思っています。

◆立岩 真也 2021 『(本・2)』,ちくま新書,筑摩書房

 ここにおいた註と文献表は、新書では大幅に減らされます。紙の新書をご購入いただいた方に有料で提供する電子書籍版には収録しようと思います。


◆2017/07/15 「高額薬価問題の手前に立ち戻って考えること」
 『Cancer Board Square』3-2:81-85(253-257)
◆2019/02/02 「少子高齢化で「人や金が足りない」という不安は本物か? 社会的弱者に不寛容な言葉が広がる日本」
 https://www.buzzfeed.com/jp/shinyatateiwa/tarinaifuan-1
◆2019/02/23 「少子高齢化のせいで「もの」は足りなくなるのか?――一人あたりで考えてみる」
 https://www.buzzfeed.com/jp/shinyatateiwa/
\ ◆2019/03/25 「人工透析を中止し患者が死亡 提案する医師とその選択を支持する声に反論する」
 https://www.buzzfeed.com/jp/shinyatateiwa/
◆2020/04/14 「だいじょうぶ、あまっている・1」
 https://gendai.ismedia.jp/articles/-/71768
◆2020/04/21 「「自己犠牲」や「指針」で、命をめぐる医療現場の困難は減らない――だいじょうぶ、あまっている・2」
 『現代ビジネス』 https://gendai.ismedia.jp/articles/-/71974
◆2020/05/02 「新型コロナの医療現場に、差別なく、敬意をもって人に来てもらう――だいじょうぶ、あまっている・3」
 『現代ビジネス』 https://gendai.ismedia.jp/articles/-/72304
◆2020/06/23 「COVID-19から世界を構想する」(仮)
 科学技術振興機構・社会技術研究開発センター戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発),科学技術の倫理的・法制度的・社会的課題(ELSI)への包括的実践研究開発プログラム


■薬・続き
○ていうようなことを考えてほしいなと思って書いたわけです。これもホームページに全文載っけてるので見てほしいんですけど。一粒何十万円とか、もっと高いやつとか、そういうものすごい高い薬がぽつぽつ、抗がん剤系だよね、ここのところ出てきたじゃないですか。それで医学書院の『Cancer Board Square』って雑誌から取材があって、「こんな高い薬がある」と、「『そんな薬を誰でも使っていいことになったら、国の財政が、医療財政がだめになって破綻しちゃう』って言ってる人がいる、どう考えたらいいんでしょう?」みたいな取材があって、インタビューがあって、しゃべった、しゃべったように書いた記事があります★。基本は同じなんです、検査機器にしても薬にしてもね。そうして考えてくと、「できるはずのことができてない」っていうことは、すなわち「できるはずだからできればいい、作ればいい」っていう、言ってしまえば、ものすごい単純な話なんだけれどもね。
★2017/07/15 「高額薬価問題の手前に立ち戻って考えること」,『Cancer Board Square』3-2:81-85(253-257)

 さあ今回はどうなるでしょうね。日本でも人工呼吸器作り始めたんだそうです。うまいことこれが波が引いて、要らなくなるのかな? いや、要らなくなったらいいことですよ。「足りない、足りない」って言ってあたふたしてるよりは、バーッと作ってあまらせて、あまったらどうするかって言ったら、さっきアフリカの話をしたけれども。今、僕はテレビを見ていないんだけれども、ネットで日本経済新聞かな、で世界でどこの国に何人感染者がいるのかっていう地図みたいなのは一応1日1回ぐらい見てるんです。南アメリカのブラジルはかなり出てる。中央アメリカ、メキシコとかね、そういうとこ、それからアフリカがどうなってくのかなと思って。今んとこ、少ないですね。だけどどうなのか、本当かな?って思ってるわけで。それがちょっと気になる、気になるっていうか、なところです。世界中すぐに収まるなんてことはない。で、日本で仮に非常にうまい具合にことが収まったら、それであまったら、あげちゃえばいいんだ。ていうだけの話じゃないか、何をぐちゃぐちゃ言ってんの?って。
 で、そうやって考えてみると、なんか遅いなと。そんなに難しいリクエストじゃないと僕は思うんです。無理難題を押し付けるって、政治に押し付けるっていうのはなんか愚かだって、愚かっていうか、別に政治家だって何でもできるわけじゃない。そんなことはわかってるんだけれども、「簡単にできることやってないじゃないか」っていうことです。
 これは倫理の話なのかどうかわかりませんけど、少なくとも関係しますよね。倫理を語らなくていい具合に社会が回ってくのは、僕はいい社会だってさっきも言いましたけど、思っていて。そのためには「足りない」って言ってるものが足りないのか、足りないのはなぜなのか、足りないんだったらどうすればいいのかって考えればよい、そういう話です。
○それで「みんな作りゃいいんだ」っていう話で。それは僕が言ってるだけじゃなくて、みんな言ってんだよ、わかってる人はね、あるいは困ってる人はね。だからいろんな人たちが今、「そういうの急いでやれ」、「言うことを聞け」と。「まず話を聞け」と、それから「その話どおりにやれ」と、それだけの話だということです。消毒用のアルコールが足りないとか話あるじゃない。ただのアルコールですよ。アルコールってどうやって作るか知りませんけど、とにかく超単純なものですよ。希少金属とか使ってるわけじゃないじゃない。三元素か何か知らないけども、なんかそういうもんじゃないですか。聞いた話だと、どっかの酒造メーカーが消毒用アルコールを作ることじたいは禁止されてるのかな、何か免許が要るのか。そういうことで、消毒用アルコールって言っちゃいけないけどアルコールを作る、提供する、みたいなことを始めたとかって話は聞きましたけど。ちょっとおもしろいっちゃおもしろいですけどね。
○だからさっきの話で、世の中にものすごい貴重なものってのもあるだろう、それは。あるだろうけれども、たいがい人間の体に入れるものってのは自然にあるもののはずだと。だから足りないことのほう、そういう意味での絶対的な希少性というものがあることのほうが少ないはずです。ワクチンだってそうだですよ。

○今、感染防止っていう話じゃないですか。もちろんそれは大切なことだと、ある程度は思ってます。けれども、では「100パーセントって可能か?」って言ったら、やっぱり生身の人間、生身の人間って言い方もいいかげんですけど、が生きて、完全に一人一人が隔絶された状況で無菌状態のっていうのは無理だしね。そういう意味で言えば、もちろん感染は防止しつつ、でも「なっちゃう人もいるだろうね」っていう二段構えっていうか両方考えとかないと、よくないよねと。で、その後者のほうですね、「なっちゃったらどうしようか」って、「感染しちゃったらどうしようか」っていうことをパスして「防止しましょう」ってやると、やっぱりなんか極端なことをしがちなんですよ、人間とか人間の社会ってものはね。
 それは実は今までのいろんな感染症、たとえば昔は癩病って言ったハンセン病ってあるよね。であるとか、結核もそうだし、ポリオっていうのもそうだし、もっといろいろなものがあると。それから10年20年前だとエイズ、HIV/エイズ(AIDS)ですよね。そういう時に、「とにかくかかったやつを排除しろ、隔離しろ」、はたまた「殺せ」っていうふうにもなるわけじゃないですか。そうした時に両方を、「かかんないようにする」「でもかかっちゃったらどうしよう」ってことを。で、「かかっちゃったらどうしよう」ってのをうまくやっとかないと、かかっちゃったやつを放り出せとか、すごい敵意を向けてしまうっていう、そういうことにもなるからねっていう、これだって当たり前でしょ。誰だって知ってるしわかってるはずのことなんだけれども。でも、そこのところの手当てっていうか準備っていうか、そういうものを僕らの社会は、世界はちゃんとできてるだろうか?っていうふうに、考えましょうよっていうことですよ。


■文献→『本・2』文献表


UP:2020 REV:
『eS』  ◇立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa  ◇生を辿り道を探る――身体×社会アーカイブの構築 
TOP HOME (http://www.arsvi.com)