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もの:人工透析の機械

新書2のための連載・13

立岩 真也 2020/11/16 『eS』

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 この文章は、2020年中には出したいと思っていた本・2の草稿として準備を始めたものです。
 『介助の仕事』のための連載と異なり、順不同で書いていきます。今のところ、以下に記す取材時の記録を切り貼りしているだけのものです。だんだんと整理し、かたちを作っていきます。
 ここにおく註と文献表は、新書では大幅に減らされます、というよりなくすと思います。紙の新書をご購入いただいた方に有料で提供する電子書籍版には収録しようと思います。
 2021年の刊行になりました。7月には刊行していただきます。『eS』に連載?した文章(というか、方々で話したものの記録の抜粋)はそのままでは使えないので、大幅に書き直し書き足すます。〈Webちくま〉での連載をお願いしようと思っています。

◆立岩 真也 2021 『(本・2)』,ちくま新書,筑摩書房

 ここにおいた註と文献表は、新書では大幅に減らされます。紙の新書をご購入いただいた方に有料で提供する電子書籍版には収録しようと思います。


◆立岩 真也 2020 『(本・2)』,ちくま新書,筑摩書房

◆2017/07/15 「高額薬価問題の手前に立ち戻って考えること」
 『Cancer Board Square』3-2:81-85(253-257)
◆2019/02/02 「少子高齢化で「人や金が足りない」という不安は本物か? 社会的弱者に不寛容な言葉が広がる日本」
 https://www.buzzfeed.com/jp/shinyatateiwa/tarinaifuan-1
◆2019/02/23 「少子高齢化のせいで「もの」は足りなくなるのか?――一人あたりで考えてみる」
 https://www.buzzfeed.com/jp/shinyatateiwa/
\ ◆2019/03/25 「人工透析を中止し患者が死亡 提案する医師とその選択を支持する声に反論する」
 https://www.buzzfeed.com/jp/shinyatateiwa/
◆2020/04/14 「だいじょうぶ、あまっている・1」
 https://gendai.ismedia.jp/articles/-/71768
◆2020/04/21 「「自己犠牲」や「指針」で、命をめぐる医療現場の困難は減らない――だいじょうぶ、あまっている・2」
 『現代ビジネス』 https://gendai.ismedia.jp/articles/-/71974
◆2020/05/02 「新型コロナの医療現場に、差別なく、敬意をもって人に来てもらう――だいじょうぶ、あまっている・3」
 『現代ビジネス』 https://gendai.ismedia.jp/articles/-/72304
◆2020/06/23 「COVID-19から世界を構想する」(仮)
 科学技術振興機構・社会技術研究開発センター戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発),科学技術の倫理的・法制度的・社会的課題(ELSI)への包括的実践研究開発プログラム


■人工透析の機械
 機械っていろいろあるけど、それから比べたら人工透析の機械のほうがもっと大仰っていうか、大げさっていうか、でかいよなっていう話で。さっきの昨年の福生病院の人工透析の話で、実はこれちょっと、紹介してるのはうちの大学院で、有吉さんっていうんだけど、看護師です。京都市内の透析のクリニックで、もう20年とか働いていて、いま師長さんみたいなのやってるんじゃないかと思いますけれども、そういう人が「だんだん、年取って透析するってなんか肩身が狭い的な状況になってるんだけど、それってどうなの?」っていう思いがあって、それで博士論文書いて、『腎臓病と人工透析の現代史』★っていう本になってます。大切な本です。現役の看護師さんの書いたものです。読んでください。「足りない」に関わる話だからね。
 人工透析の機械って1960年代の後半に実用化されていくんです。使えるようにはなっていくんだけど、数も少なく足りなかったし、なにより高かったんです。保険適用はあるんだけど、ちょっと制度的にはややこしいんだけど、保険で払えない人もいて。するとものすごいお金がかかったんです。だから田畑を売って、お金にして治療費を賄う。だけどお金がなくなってとか、貯金を使い果たしてとか。言葉どおり「金の切れ目が命の切れ目」というか、死んだり、自殺したりというようなことが起こったんです。1960年代の末ぐらいかな。それでどうなったか、ってなことが書いてある本なんだけどね。実は読売新聞がキャンペーン張ってくれたりってこともありました。「こんなえらいことになってる」と、「みんながんばろう」みたいな。「みんながんばろう」というか、「お金作ってちゃんと使えるようにしよう」みたいなキャンペーンを張った。大阪の読売ですね、やってくれたりしたってこともあって、紆余曲折はあるんですけど、実質的に公費で負担するようになったっていう歴史があるんですよ。それを書いた本です。
 だからあの時は「足りない、でもがんばって増やそう」ということだったんだよ。「なんだろね?」っていう、そういうことって大切なわけよ。「あん時はみんな『足りない、がんばって増やそう』ってなったのに、今回はなんか弱気だなあ、なんでかな?」みたいなね。「その時より今のほうが厳しいんだろうか?」みたいなことを考えるって必要なんだよ。そうやって考えていくと、今のほうが楽なはずなんだよ。みたいなことを考える時に、「あの時はもっと今よりものも少なかったし、貧乏だった日本でやれた。『やろう』って言ってやれたのに、今回けっこう弱気だよね。なんでだろう?」って考える必要はあるってことですよ。
○2019年に東京の福生にある公立福生病院って病院で、人工透析してきた人が「やめたい」っていっぺん言っちゃったんだな。そしたら「はい、そうですか、わかりました、じゃ止めましょう」ってなって。そしたら、やっぱ痛いし、体の調子悪くなるし、本人は「もういっぺんつけてください」って言ったらしいんですよ。らしいじゃなく、確実に言ったんです。言ったんだけど、「いっぺんやめるって言ったから」みたいなことで、使えなくて、それで死んじゃったっていう事件が起こりました。で、それについて、やっぱ書かなきゃって思っちゃったんだ★。関係当然あるじゃないですか。
 今は「呼吸器足りない」みたいな話ですけど、「透析だってお金かかる」みたいな。年間何兆円かかってるみたいな話があって。この事件が起こる何年か前、2016年かな、私が今勤めている大学の卒業生らしいんだが、長谷川豊っていうテレビのアナウンサーだった人が、「税金いっぱい使う透析やってる人は、自分で金払え」みたいなこと言ったことがあってね。やっぱり「足りないから」ですよ。「こんな国が借金抱えてるって時に金がかかることを」っていう話ですよ。だからもうこれももろ「足りない話」なんだよね。それで書きました。
○なんか疲れちゃって。僕にとって新しい話じゃないんですよ。その「はい、死にたいから死にます」「じゃあはい、死んでもらってOKですか?」って言うことを、もうなんだかんだ言って僕は10何年書いてきて、本も4冊も書いた、そういう暗い話をね★。なのでもう考えられることはみんな考えたっていうつもりもあるんです。だから何か新しいことを書くわけじゃないんだけど、「誰か書いても聞いてくれるんだろうか?」とか「言っても聞いてもらえるんだろうか?」みたいなことを考えながら書くって、なんかつらいんだよね。で書いて、それでなんか力尽きちゃってっつうか、疲れてしまって、その連載が止まったんです。で結局去年はそれで終わっちゃって。
 で、講談社のサイトで再スタートっていうことです。ですので背景説明っていうかな、中身はここにあるから、中身はうち帰って読んでもらうとして、「なんでこういうことを書いてるのか」っていう話をしました。

■文献

有吉 玲子 20131114 『腎臓病と人工透析の現代史――「選択」を強いられる患者たち』,生活書院,336p.
◆立岩 真也 2019/03/25 「人工透析を中止し患者が死亡 提案する医師とその選択を支持する声に反論する」https://www.buzzfeed.com/jp/shinyatateiwa/
◆立岩 真也 2016/11/25 「長谷川豊アナ「殺せ」ブログと相模原事件、社会は暴論にどう対処すべきか?」(インタビュー,聞き手:泉谷由梨子),『The Huffington Post』2016-11-25,,◎


■文献→『本・2』文献表


UP:2020 REV:
立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa  ◇生を辿り道を探る――身体×社会アーカイブの構築 
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