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『谷川俊太郎詩集』
立岩 真也
20200600
河合文化教育研究所 編 『2020 わたしが選んだこの一冊――河合文化教育研究所からの推薦図書』,河合塾教育開発研究本部,52p. p.23
http://bunkyoken.kawai-juku.ac.jp/publish/post_53.html
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長く、もう30年ぐらい本を読まない生活をしているので、どんなよい本があるのか知らない。この本でいろんな人から推薦されるだろう本、とくに歴史に関わる本はとても大切だと思うから、なんでもたくさん読んだらよいと思う。しかしそういう本を私は、知らないから、推薦できない。ただ、なんでもいいから詩集をもっていて、ちょっと開いてみるのはよいことだと思う。私がまだ本を読んでいた高校生の時だったか、買って今でももっているのは、『谷川俊太郎詩集』・『続』(1965・1979、思潮社)。そしてやはり思潮社からかつて安い値段で出ていた「現代詩文庫」で、
吉本隆明
、岩田宏、鮎川信夫、片桐ユズル、黒田三郎といった人たちの。谷川のは箱に入っていて、私のにはシミがあるが、厚くてかっこい。もう新本では買えないが、文庫とかでいろいろと出ている。
私がこれまで買った本で自宅に残っているのはこうした詩集が何冊か、あとは映画・音楽関係、そして料理の本だけ数十冊。ただそんなことを言って、私はおしゃれな読書家みたいな人になることを薦めているわけでない。硬い、ちゃんとした本を読むことがよいことだと思う。そういう本を捨てたわけでなく、大学(院)生に読んでもらうためにすべて勤め先にもっていってある。実際にこれから読んでいくその「基盤」として、そんな本があると言いたいのだ。
映画だったらマキノ雅裕(『マキノ雅裕女優志・情』、1979、草風社)とか『映画となると話はどこからでも始まる』(淀川長治他、1985、勁文社)とかまだ手許にある。音楽では『ビートルズ革命――ジョン・レノンの告白』(1972、草思社者、片岡義男訳)は勤め先にもって行ったようだ。他にデビッド・ボウイやローリングストーンズの写真集とか。社会について語られること、語っている本のたいがいを信じることはあまりない。そんな「構え」があってよいのだろうと思う。そのためにもそんな本たちがあるとよいと思う。
もちろん古今東西詩人という人たちの本はたくさんあって、もしかすると、中原中也とか今でも読まれているかもしれない。たいへんけっこうなことだ。そして谷川がとてもすごい人なのかといえばそれはわからない。そうでもないような気もする。しかし私はよいと思う。谷川(1931生)は17才頃の時から詩を発表しだして1952年に出た詩集『二十億光年の孤独』が『詩集』の最初には入っていて、いいなと思う。20世紀の後半にもよいものがたくさんあった。この人やそして、一冊をこれにしようかなと思った武満徹(1930〜1996)の最初のエッセイ集『音、沈黙と測りあえるほどに』(1971、新潮社)がある。最初は高校の図書館で借りた。高2だったかの夏休みにその本を読んだ。まだ音を聞く前だった。きっとよいと思って、『MiniatureX』というLP※を買った(CDにはなっていない)。なかでも「Garden Rain」(1974)という曲が好きだった。谷川も武満もとても有名な詩人で作曲家で、名前をあげるだけ恥ずかしいところはある。だから青年にありがちなことだが、もっと変なものを読んだり聞いたりしていくことにもなった。ただここでは恥ずかしがらずにあげておく。そしてこの冊子だからわざわざ書くが、谷川も武満も大学とか行かなかった人だ。そんなことを言うと、特別な才能をもっている人はそれでよいかもしれないが、普通の人間は大学ぐらい行かないとならないのだ、と返されるかもしれない。しかしそういう返しは、もっともだが基本的にはつまらない、どうせみなさんは学校に行くだろう、だがせめてそういう返しがくだらないことをわかって行けばよかろう。この本たちはそういうことも言っている。
社会学者。1960年佐渡島生。現在立命館大学大学院先端総合学術研究科教授。『私的所有論』(1997・勁草書房、第2版&文庫版:2013・生活書院)他著書たくさん〜名前で検索→http://www.arsvi.com/ts/0.htm に各種一覧あり。1980年代を通して河合塾で稼がせてもらいました。千駄ヶ谷校・駒場校・立川校・横浜校・仙台校で「現代文」の講師・フェロー、模試問題作成・採点・講評等。その時のことは
「立岩真也 悪文」
で検索すると出てきます。
※1975
http://stereo-records.com/detail.php?itemCd=81386
売り切れ
■cf.
◆立岩 真也 2014/08/01
「悪文」
,『群像』69-8(2014-8):200-201
◆立岩 真也 2017/07/01
「非文化的」
,『文學界』71-7(2017-7):114-115
UP:2020 REV:20200731
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立岩 真也
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Shin'ya Tateiwa
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生を辿り道を探る――身体×社会アーカイブの構築
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