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葛城貞三『難病患者運動』に・1

「身体の現代」計画補足・562

立岩 真也 2019/
https://www.facebook.com/ritsumeiarsvi/posts/2236041956662779

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『難病患者運動――「ひとりぼっちの難病者をつくらない」滋賀難病連の歴史』表紙イメージ

[表紙写真クリックで紹介頁へ]

◆葛城 貞三 20190125 『難病患者運動――「ひとりぼっちの難病者をつくらない」滋賀難病連の歴史』,生活書院

 葛城さんの博士論文が本になった。たくさん売れてほしいので、そこに書かせてもらった「ここから始めることができる」を小分けして、ゆっくりと掲載していく。終わるまでに買ってほしい。

■何がわかりそうだと思えるか

 こんなことをしてはならないことはわかっているが、拙著から引用させてもらう。二〇一八年十二月に青土社から刊行された『病者障害者の戦後――生政治史点描』の第4章「七〇年体制へ・予描1」第3節「民間」より。たいへん長いが、それでもかなり――[…]の部分を――略した。註(☆)も文献も示すが、その中身・書誌情報は略す。有吉[2013]は有吉玲子の『腎臓病と人工透析の現代史』(生活書院)。【 】内は――拙著より著者(は以下葛城さんのこと)のこの本(以下、「本書」および葛城[2019]は葛城さんのこの本)が少し遅く出たので――このたび付した。

 この体制の創始、維持に関わった「民間」の側の動きも一通りではない。どんなに大きく括っても、まず、二つはある。それをさらに極端に単純化してしまっている言説、「研究」があると述べた。かなりの部分ただの無知によって、ただの怠惰によって、単純にすぎる話が作られ、継承され、反復されてきた。
 まず、結核その他の本人たちの多くはわりのよい仕事につけず、その前に就労できず、貧しいことが多い。療養所での暮らすその条件はよくないし、やがて立ち退きを迫られることにもなる。それは不当であると思い、またともかく生活に困るから、「革新」の側に行くことになる。その人たちは正義を語る。「朝日訴訟」はその代表であり象徴である[…]。そこでは生存権が主張される。それはまったく正当で当然なことであると私は思う。それを革新政党が支援する。とくに日本共産党は熱心であってきた。専門職者にもその動きに連なる人たちがいる。
 そして組織があること、組織の活動があることは、ときに、自らが有する資源が乏しいなか新たに活動を始めようという人たちにとって有益だった。それ以前に、組織を作り運動するという道があるとわかった。先に活動を始めた人たちが、方法を教えることがあったし、それ以前に、闘い要求するという道があること自体を知らせた。結核療養者の組織であった日患同盟がその役割を果たした部分がある。七〇年の前後にはスモン病があり、その被害者たちの運動があった。また腎臓病で、人工透析があれば生きられるが高額の費用がかかり払えないので死んでしまうという状況下でその公費負担を求める運動が起こる。有吉玲子の研究(有吉[2013])がある☆08。
 とくにしばらく時が経った後に見れば、結核も、スモン☆09も、腎臓病も各々異なる。スモンは原因がわからなかったが、一九七〇年にわかった。「難病」指定はわかった後のことだ。腎臓病についても機序がわかり対応法もわかっている。そしてたいへん多くの人の病であり、すこしも稀少なものではない。だからこの二つが「難病」であると言われてもよくわからない。しかし、その範疇のもとに動きがあった時期がある。精神疾患・障害関係の団体もその動きに入っていたことがある。まず、とにかく暮らしていくのが難しく社会の対応を求める人たちが集まり、つながりをもった。ある活動が別の活動の開始を促し、そこで方法などが伝承された。
 地域によってそのつながり方も一様でなかった――だからこそ、各地域についての研究・記述の意義もある。京都について前田こう一[1982]があり、それを引きつつ自らが関わった「滋賀県難病連絡協議会」について葛城貞三が記している。京都の難病連の結成は七四年八月。スモンの会とベーチェット病京都府支部がよびかけた。他にリウマチ友の会、重症筋無力症友の会、腎炎ネフローゼ児を守る会、筋ジストロフィー協会、腎臓病協議会が加わった。個々に運動をしていても成果が上がらないこと、また京都府としても「窓口」が一本化されることを望んだことが連絡会の結成に関わるという(葛城[2019【:21,24-25,60】])。
 例えば結核療養者の運動では本人の多くに経済的困難があり、それで運動する。他方、障害児の親たちは、[…]


◇有吉 玲子 20131114 『腎臓病と人工透析の現代史――「選択」を強いられる患者たち』,生活書院,336p. 3200+160 ISBN-10: 4865000178 ISBN-13: 978-4865000177 [amazon][kinokuniya] ※ a03. h.

 生存学研究センターのフェイスブックにあるこの文章と同じものは
http://www.arsvi.com/ts/20182562.htm
にもある。


UP:2019 REV:
立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa  ◇病者障害者運動史研究 
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