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メモ

立岩 真也 2019
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■何回か載せていただけるとのことです。

◆01 2019/02/02 「少子高齢化で「人や金が足りない」という不安は本物か? 社会的弱者に不寛容な言葉が広がる日本」
 https://www.buzzfeed.com/jp/shinyatateiwa/tarinaifuan-1

◆02 2019/02/** 「……」

◆03 2019/02/** 「……」

 ※以下はBuzz Feed(https://www.buzzfeed.com/jp)に寄稿する原稿のために作成を始めたものです。

 ■データ ■「終末期」の医療費 ■論理
 ■引用 ■使用しない註 ■文献(別頁)

■■02

■使わない&以前書いた文章の註
★ ものの方については、『希望について』のY「所有について」に収録された幾つかの文章、「所有と流通の様式の変更」([2001f])、「遺伝子情報の所有と流通」([2004d])等でも関連したことを書いている。人については「選好・生産・国境」の一部を含む同書のW「不足について」、X「働くということ」。むしろ国際的な格差を減らすことが、国内における適切な分配の条件になることについては、V「境界について」に収めた「限界まで楽しむ」([2005l]等)。
 この国では分配の正当性の問題が正面きって正義の問題としてとりあげられることは多くなく、純粋に全面的に分配を否定すべきだと公然と主張する人は多くはない。多くの場合、「とは言っても、予算の関係で、ご希望に沿いかねます。」という言いわけをもって要求は拒絶される。所有にかかわる形而上学――その形而上学は形而上学であって底が抜けている――をもたないことは、それはそれで健全なことである。そして、その人たちにお金がないことだけが理由だと言うのなら、それが本当なのかを検討すればよい。本当でないなら、出したいが出せない理由はなくなってしまったのだから、出したくないから出さないと言っていることになる。
◆ 武川正吾の著書で「サービス化によるゼロエミッション」という見出しのもとに記述されている部分(武川[1999 : 172-174])も、ここに述べたことに対応する。ちなみにその次にあげられているのは「情報化によるゼロエミッション」であり、そこでは見田宗介の『現代社会の理論――情報化・消費化社会の現在と未来』(見田[1996])の所論が紹介されている。本章のもとになった文章ではこう記した。
 「まったく本を読むことを怠っていた時期に出版されたこの本の重要性に私ははじめて気づくことになった。まず読んで考えてみて、本稿が素朴であり過ぎる部分、本稿に欠落している部分、うまく論じることができないでいる部分を補うためにも、別の機会に論じてみようと思う。」([2000d])
 どうせ生産するのであれば、そして問題とするべき問題が資源や廃棄に関わる問題なのであれば、資源を使わず廃棄物の少ない生産の方にしようというのはもっともな方向である。ただ基本的には、全体を増やすことが必要であるのか、よいことなのか、必要であるとしたら、あるいはよいことであるとしたら、それはなぜなのか等々を考えることである。
◆ 希少性が高く、それゆえに問題が現実に生じているのは、人間の生きた臓器である。これはもちろん、ここで必要とされる「もの」が、「ひと」の内部にあってその生存を支えているものであるという事情による。何十億かは存在する健康人の臓器を使用可能な臓器とするのでなければ、絶対的な資源不足が起こりうる。というより実際に起こっている。その時には優先順位の問題が厳しい問題として起こる。『私的所有論』第1章註3、第2章4節1に関連した記述がある。本章第2節に記したのもこのことに関わる。


 
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■データ

◆GNP500兆、国家予算100兆。社会保障30兆
 https://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_pol_yosanzaisei20171222j-02-w680

◆『平成30年版高齢社会白書』  https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/html/zenbun/s1_1_1.html
 75歳以上が2065年に4人に1人。現在の65歳以上の割合よりは低い。
 「支える」という把握は妥当か?
 資産の全体。
◆平均寿命
◆「最後の一月」に年に八〇〇〇億円がかかるといったことが言われる。(↓)
◆介護の期間は平均で10年ほど?

失業 日本の2018年末の「完全失業率」は2.5%


 
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■論理

★ 移動である限り(「インセンティヴ」の問題を別とすれば)、それは再分配なのだから、その限りにおいては、例えばGNPの半分であっても、もっと高い割合であっても、問題ない。


 
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■引用

◆「この数十年の息もつかせぬ生産性向上の結果、失業率は上昇し、長期的視点では、社会を発展させるには労働力の二〇パーセントだけが再生産すればよく、残りの八〇パーセントは純粋に経済的な視点からはただの余剰になってしまっている。」(Butler, Laclau & Zizek[2000=2002 : 423]、ジジェクの執筆部分)

 
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■使用しない註

★ 危機を語るあるいは楽観しようとする言説の歴史と現状が具体的にどのようなものであり、どのように解析することができるか。様々に言われてきたことを紹介し個々に検討することはここではできない。だがとても大切なことだと考えている。『唯の生』でいくらかは紹介する。出生率の低下、人口の減少について書かれた書籍は『希望について』([2006e])に列挙し、それらからの引用をホームページに掲載している。
 言われていることは様々であり、ときに互いに矛盾していることが並んでいることもしばしばだ。そしてそれは、たんなる混乱を示しているわけではない。例えば『厚生白書』『厚生労働白書』は、政府の意向をおもてむき否定することもできないが、厚生(労働)省は自らの行なう仕事の正当性を信じてもおり、自らが関わる領域の拡大を願ってもいて、それで両論併記になっている。意図的なのかあるいは自覚しているのか、場合によるのだろうが、分離して論じようとする要素が混在され、曖昧にしかし妙な現実性をもって言われるところに特徴がある。

 「少子高齢化」という、今では小学生でも口ずさめるこの言葉をいつ誰が言い出して、どのようにして、かくも広がってしまったのか。誰もが知っているようで、実はよくわかっていない。知っておいた方がよいはずである。以下、幾つか集めただけを並べる。
 一九八〇年代から九〇年代初頭には川口・川上[1989]、上野[1991]。川口・川上[1989]では、例えば以下のような言明が引かれている。
 「老齢化社会が進み老齢者が人口の多数を占めるようになると、[…]老齢者のための福祉コストが労働者に重くのしかかり、その旺盛な活力を阻害することになる。しかも、政治的な配慮から福祉コストを個人から企業へ転嫁すると、その過重な負担により、企業経営力が脆弱化し国際競争力を著しく弱め、国の経済地位も低下し続け、その結果一億総貧困化へと沈んでいくことになる」(生命保険協会・成熟化社会特別研究チーム[1980:280]、河口・川上[1989:266]に引用))
 「人口構成の高齢化は経済にもさまざまな影響をあたえる。第一に、人口の中に占める生産年齢人口の比率が低下するため、他の条件が等しいかぎり、国民一人当りの実質生産高ないし、実質国民所得の成長が鈍化する。第二に、人口構成が高齢化して高齢の扶養人口の比率が高まると、高齢者のための年金、医療費、社会福祉サービス費などの費用負担が重くなり、[…]この費用負担が経済成長にとってはマイナスの影響を与える」(丸尾[1981:198]、『日本型高齢化社会』中の「高齢化の経済的インパクト」の項、河口・川上[1989:263]に引用)
 ただ、その後これまでに現われてある言説は、危機を語り、「対策」を主張するものだけでなない。むしろ、人口の減少は避けられない与件としておいた上で、自らの経済政策論を展開する、あるいはそれに引き付けるといった書物が多く現われる。そしてそれらは、政府が何を言おうが、いくらかの政策的対応がなされようが、起こることは起こるだろう、ならばその上でどのように立ち振る舞ったらよいかを考えるしかない、といった気分のもとに受容されることになる。
 『人口減少ショック――社会が変わる内需が変わる』(古田・西武百貨店IDFプロジェクト室[1993]、人口減少に対応したマーケティング戦略を提唱)、『人口減少社会、未来への責任と選択』(人口問題審議会編・厚生省大臣官房政策課監修[1998]、少子化の影響を「概ねマイナス面の影響」とする人口問題審議会報告書と、意見聴取された十八人の識者の必ずしも報告書に線に沿っていないものもある意見を意見)、『「少子高齢化」の恐怖を読む――日本の社会はどう変わるのか?!』(木村編[1999]、「二時間でわかる図解シリーズ」の一冊)、『超少子化――危機に立つ日本社会』(鈴木[2000]、現状を紹介、要因を分析)、『ウェルカム・人口減少社会』(藤正・古川[2000]、必然であるとし、制度設定を過たなければ大丈夫だと主張)、『人口減少の経済学――少子高齢化がニッポンを救う!』(原田[2001]、肯定的な面があることを指摘した後、生産性を上げ、負担を減らすことを提言)、『市場中心主義への挑戦――人口減少の衝撃と日本経済』(石水[2002]、与件とした上で、新自由主義の路線を批判)、『人口減少社会の設計――幸福な未来への経済学』(松谷・藤正[2002]、与件とし肯定面もあるとした上で、経営のスリム化、既得権の解消等を提唱)、『少子高齢社会の未来学』(毎日新聞社人口問題調査会編[2003]、現状の分析と未来予測)、『人口減少時代の政策科学』(松原[2004]、「出生率の低下に警鐘を鳴らし続け、財政規律の必要性、民営化・規制緩和の必要性を主張し続けている」(松原[2004:206]))、『「人口減少経済」の新しい公式――「縮む世界」の発想とシステム』(松谷[2004]、「日本は「極大値」に達したのである。[…]極大値後の世界においては、経済も社会も巨大な構造変化を強いられる。」(松谷[2004:23])、『平成十六年版少子化社会白書』(内閣府編[2004])、『子どもが減って何が悪いか!』(赤川[2004]、他に[2005]、「少子化対策」が有効でないことを指摘、育児支援はそれと独立に主張すべきとする。少子高齢化の問題はあるとし、年金制度改革等の必要性に言及)、『「人口減少」で日本は繁栄する――二二世紀へつなぐ国家の道』(日下[2005]、「少子化対策の第一はいい男といい女を増加させることであって、金と暇はその次である。」[26]といったことが書いてある)、『平成十七年版少子化社会白書――少子化対策の現状と課題』(内閣府編[2005])、『人口減少社会は怖くない』(原田・鈴木[20051215]、対策も記しつつ、人口減少を前提に考えるしかなく、そこに肯定的な面もあるとし、高齢社会のコストを削減し、皆で働き、生産性を上げることを提唱)、『図解 人口減少社会は怖くない!――人口減少で日本没落、地方衰退なんてウソだ!』(片岡・川崎・樽・原・福地[2006]、藤正巌・山田昌弘・松谷明彦・木村政雄へのインタビューを中心に構成)。」(「よい社会」より)


UP:20190121 REV:20190122, 27
立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa 
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