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おもしろくなくても書く

何がおもしろうて読むか書くか 第8回

立岩 真也 2019/04/25 『ちいさい・おおきい・よわい・つよい』123:http://japama.jp/chio123/
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■『ちいさい・おおきい・よわい・つよい』No.123 2019年4月25日刊行 熊谷晋一郎 著 本体価格1,600円
 特集 小児科の先生が車椅子だったら――わたしとあなたの「障害」のはなし
 私の体、「ふつう」でないところはどこでしょう?――2018年、読者の親子に語った講演をもとに1冊に。こどもが目を輝かせた「授業」のヒミツは?
 http://japama.jp/chio123/


■『Chio通信』/『ちいさい・おおきい・よわい・つよい』/『おそい・はやい・ひくい・たかい』

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『ちいさい・おおきい・よわい・つよい』
『おそい・はやい・ひくい・たかい』

■→◆2019/06/01 渡辺一史さんとの対談
 於:西宮市

 ※以下草稿(全文)

「■『こんな夜更けにバナナかよ』
 『こんな夜更けにバナナかよ――筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち』 (渡辺一史、北海道新聞社)――これは業界ではかなり有名な本だ。二〇〇三年に刊行された。今は文庫版になっている。「講談社ノンフィクション賞」と「大宅壮一ノンフィクション賞」をダブル受賞したが、この本を最初に(『看護教育』という雑誌だったが)紹介したのは私だ、というのが私の自慢話だ。それが昨年映画になって上映された。じつはまだ観たいない。観た人はよい映画だったと言うので、機会があったら観ようかなとは思っている。鹿野靖明さんという筋ジストロフィーの人の話である(映画の主演は大泉洋)。夜中に介助者が起こされバナナがほしいと言われ、それに応えてやれやれと思ったら、もう一本と言われて、という話がもとになっている。『夜バナ』と略される。
 渡辺さんはその後もよい本を出している。数が少ないのは丁寧に取材しているということでもある。今度の『なぜ人と人は支え合うのか』(ちくまプリマー新書) 新書はすこし性格が違うが、『夜バナ』の次の『北の無人駅から』(北海道新聞社)は八年の取材に基づく本だという。本の中味についてはいつものようにHPで。ここでは書いてもお金が稼げないという話。先日も宮下洋一というジャーナリストをこちらの企画にお呼びしてその後の飲み会で話したのはジャーナリスト、フリーライターの収入の話だった。
 私がこれまでたくさん書かせてもらってきた『現代思想』という雑誌の稿料は簡単で、四〇〇字(詰原稿用紙一枚)千円。それで私は連載をさせてもらっていた時は毎月四〇枚書いていた。よくもそんなに毎月書くものだとあきられていた。たしかに、月にその二倍以上書くのは無理だったと思う。二倍として、その原稿だけが収入だったら月給八万円。これでは厳しい。もう少しメジャーな雑誌ならもう少し高いが、それでも厳しい。私らの場合は、基本的に給料をもらっていて、それに原稿料なり印税なりが加わることになる。多くはないが、それで生活に困るわけではない。だから出版社の側も、安い稿料で依頼できるということもあるのだが、筆一本でという人にとってはたいへんだ。
 以前、立花隆だとか沢木耕太郎だとか柳田邦男といった著名な(著名になった)人たちが食べられたのは、『文藝春秋』といった媒体が、『世界』(岩波書店)といった雑誌の稿料の十倍(以上?)は出して原稿を書かせたからだという話を聞いたことがある。実際そうだったのだろうと思う。だからといってその出版社・雑誌の肩をもとうとまでは思わないが、それでも、大きな貢献があったことは認めよう。ただ、そういう媒体は少ないしさらに少なくなっているという。オンラインの媒体の稿料も安いという。ではどうしたよいのか。わからない。ウェブ上のものでも、文章一つひとつに、少なくてもいいからお金を払うようにしらたよい、などと思いはするが、私自身がほとんど無料の文章しか読まないわけで、難しいだろうなと思う。

■対談させてもらう私としては
 その渡辺さんと六月一日に兵庫県西宮市で対談をさせてもらうことになった。最初は、前回紹介した私の新刊の宣伝企画でということだったのだが、新刊ということでもなくなったのが一つ、そしてもう一つ、やはり前回紹介した、(旧)国立療養所で長く暮らしてきた筋ジストロフィーでそこから出たい人は出られるようにしよう、同時に、その施設での生活をよくしようという動きがあって、それに積極的に関わっている「メインストリーム協会」の企画の一部ということにしてもらった。その前後には京都で企画を考えるなりして、合わせてなんぼかの収入にはなるようにとは思っている。と続けると、今回はお金の話から離れらないのだが、それにも関係して、今度は私サイドのことを。
 別に収入源があるという楽な場にいてものを書けている私は何を書くか。開きなおって、それが昨年末の二冊だと言うことにする。二冊目の『病者障害者の戦後――生政治史点描』には『夜バナ』の主人公鹿野靖明が出てくる。そこにも書いたのだが、私が最初に鹿野さんの文章を呼んだ時、私は彼(一九五九〜二〇〇二)が私より一つしか年上でなかったことに気づかなかった。その人も国立療養所に入院・入所して暮らし、その後「ケア付き住宅」建設の運動に加わり――その時期の文章を私はかつて読んだのだった――、後に多くのボランティアを得ての一人暮らしを続ける。その時のことが『夜バナ』に、とても生き生きと、書かれている。他方私が今度の本で書いたのは、その鹿野たちが十年、そしてこのところようやく出てきたという人では四〇年以上という人もいるその施設・病院が、どのようにしてその人たちを、一九六〇年代のことなのだが、受け入れたか、そのことを家族が望み、施設の経営者・医学者たちが肯定し、という長いといえば長い流れだ。なにか感動するような話は――人によったら親たちが政治家に涙の陳情とかした話は感動するのかもだが、私はしないので――ここにはない。こうして、悪い人はおらず、善意と善意の人たちとともに、その空間が作られ、うちわで肯定され合いながら、閉じられ、外からはほぼ存在すら気付かれない、そんな具合になっていって何十年もが過ぎていった経緯、その他様々を辿った。それを感動的に書いたら――私には書けないのでその心配はないのだが――それはだめだと、私は思う。こうして現実は作られてしまう。基本は苦い話だ。だがそれはそれとして書いておいた方がよい。そういう退屈な(と人によったら思うかもしれない)、長い、だから高くなってしまう本も、しかし絶対に要ると私は思っている。その収入(だけ)で生きていかなくてすむ人間がやるべき仕事にはそんな仕事もあると思う。
 というのはすこし卑下しているかもしれない。いや十分におもしろい本(たち)です。渡辺さんの本と一緒に読むとなおすばらしい。と、結局宣伝でした。」

◆宮下 洋一 20171218 『安楽死を遂げるまで』,小学館,348p.ISBN-10: 4093897751 ISBN-13: 978-4093897754 1600+ [amazon][kinokuniya]

◆立岩 真也 2018 『不如意の身体――病障害とある社会』,青土社
◆立岩 真也 2018 『病者障害者の戦後――生政治史点描』,青土社

立岩真也『不如意の身体――病障害とある社会』表紙 立岩真也『病者障害者の戦後――生政治史点描』表紙 立岩真也『不如意の身体――病障害とある社会』表紙 立岩真也『病者障害者の戦後――生政治史点描』表紙

UP:2019 REV:2019
『ちいさい・おおきい・よわい・つよい』  ◇『おそい・はやい・ひくい・たかい』  ◇病者障害者運動史研究  ◇立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa 
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