HOME > Tateiwa >

やまゆり園事件から3年 「生きる価値」の大切さ問う

立岩 真也 2019/07/20 『朝日新聞』2019-07-20
https://www.asahi.com/articles/DA3S14104472.html

Tweet


https://www.asahi.com/articles/DA3S14104472.html

2016.7.26に起こった事件

 ※今年になって書いた(話したように書いた)関連する長くない文章
◆立岩 真也 2019/02/02 「少子高齢化で「人や金が足りない」という不安は本物か?――社会的弱者に不寛容な言葉が広がる日本」
 https://www.buzzfeed.com/jp/shinyatateiwa/tarinaifuan-1
◆立岩 真也 2019/02/23 「少子高齢化のせいで「もの」は足りなくなるのか?――一人あたりで考えてみる」
 https://www.buzzfeed.com/jp/shinyatateiwa/

 ※以下は担当編集者との1度めのやりとりの後の原稿です。そのあとも変更しましたので、実際に掲載されたものとは異なります。[…]はここに掲載するにあたって省略しました。時が経ったら掲載することがあるかもしれません。

         2016年7月26日、相模
        原市の「津久井やまゆり園」で
        46人が殺傷される事件が起こ
        ってもうすぐ3年になる。多く
        の本が出ている。16冊の関連
        情報を生存学研究所のサイト
        おいたので、ご覧になれる。
         あれはいったいどんなできご
        とだったのか。『妄信』は事件
        から約1年間、記者たちが取材
        したその記録から作られた。
        『開けられたパンドラの箱』
        その1年後に出版された。容疑
        者の話、文章やマンガも収録さ
        れている。出版には反対する声
        もあったという。これからのこ
        と等、補足すべき情報もある。
        精神障害と治安・医療の関係も
        重要だ。だが略す。
         他の本も含め、皆とても怒り
        悲しんでいる。しかし私はなに
        か「引けている」感じがした。
        不可解な基準で生きてよい人/
        死ぬべき人を分けるのはなぜか
        言ってみろと詰問し強く「圧」
        をかければよいと思った。
         本を読んで理解可能な理由は
        一つだ。つまりある人たちを生
        かしていくと社会はやっていけ
        ないと容疑者は思っている。そ
        れは自明の出発点になっていて
        今も取り下げていない。
         もしその認識が当たっている
        なら、[…]
        だがもし当たっていないなら、
        容疑者が人を殺してよいとする
        理由は、なにもなくなる。
         しかし、容疑者も記者たちも
        今は既に大変でこれからの社会
        はもっと大変になるという話を
        聞いて育った。それで容疑者は
        信じ込み、辺りは言いよどんで
        しまっているという感じだ。
         すると人がしてしまうのは
        「いいところ」を探してくるこ
        とだ。障害者「でも」こんな楽
        しい暮らしをしていると書く。
        実際、おもしろい人もいるし楽
        しい暮らしもあるから、知らせ
        たらよい。しかし、それをもっ
        て生の否定を否定するのは間違
        っている。容疑者は、「そんな
        いいことばかりでない」と言う
        だろう。私たちもそう思う。
         だが今は暗く未来はなお暗い
        という認識が間違いなら、悲愴
        になることもない。私は間違っ
        ていると考える。お金の集め方
        と使い方をかなり前からまた今
        も間違っていだけだと考える。
        それを直し、暮らしに必要なも
        のを堂々と受け取ればよい。
         しかし暗い予想を、もっと上
        の世代、私が多くを学んだ最首
        悟
も共有しているように書いて
        ある(『妄信』125頁)。私
        と意見が違ってかまわないが、
        […]今の
        政治・経済を分析することが、
        このできごとに対して報道・言
        論がすべき大きな一つだと思う。
         そして、こうした暗い不安の
        もとで、病・障害を得て、生き
        る困難を思い生きる価値がない
        と信じて、自ら死ぬ人がいる。
        むろん、殺人と自殺とはまった
        く異なる。しかし、生きる価値
        がないというもとにある理由は
        同じではないか。だが前者は責
        められるが、後者は美しいこと
        として描かれる。こないだもそ
        うしたテレビ番組があった。
         それは不思議なことではない
        か。他人の命より自分の命をた
        いがいの人は大切にする。その
        大切な命を捨てて、障害者でな
        くなろうというのだから、その
        否定の思いはむしろより強いと
        さえ言える。人をそんな思いに
        させてよいのか。それを肯定す
        るような描き方をするのがよい
        のか。それに気づき考えるのも
        報道・言論の課題・仕事だ。
         『生きている!殺すな』は[…]
        →◆https://www.asahi.com/articles/DA3S14104472.html

■3冊

◆朝日新聞取材班 20170630 『妄信――相模原障害者殺傷事件』,朝日新聞出版,238p.ISBN-10: 4022514779 ISBN-13: 978-4022514776 1400+ [amazon][kinokuniya]
◆「生きている!殺すな」編集委員会 編 20171020 『生きている!殺すな――やまゆり園事件の起きる時代に生きる障害者たち』,山吹書店,発売:JRC,208p.
◆月刊「創」編集部 編 20180720 『開けられたパンドラの箱――やまゆり園障害者殺傷事件』,創出版

■自分(たち)が書いたものは取り上げないというルールになっている

◆立岩 真也・杉田 俊介 2017/01/05 『相模原障害者殺傷事件――優生思想とヘイトクライム』,青土社 ISBN-10: 4791769651 ISBN-13: 978-4791769650 [amazon][kinokuniya] ※

立岩真也・杉田俊介『相模原障害者殺傷事件――優生思想とヘイトクライム』表紙

『現代思想』2016年10月号 緊急特集:相模原障害者殺傷事件



○今度の記事では、精神医療関係のことにはふれられない
 〜分量的にまったく無理。
 →

○理由を問い、答えられない相手を、端的に否定すればよいと思う

○他に書いてなく、書いたこと。

・ナチスのことは一つのことであること。
 〜例えば20世紀初頭の米国
・容疑者が資源のことを恐れていること→これに対する(べき)こと
 最首もまたたいへんだという見方を共有している。→ほんとにそうであっても、……という構えは大切だ(最首はそういう構えの人である) しかし


UP:2019 REV:20190720, 27
2016.7.26に起こった事件  ◇立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa  ◇生を辿り道を探る――身体×社会アーカイブの構築 
TOP HOME (http://www.arsvi.com)