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「この本はまず実用的な本で、そして正統な社会科学の本だ」3

「身体の現代」計画補足・540

立岩 真也 2018/11/
https://www.facebook.com/ritsumeiarsvi/posts/2190595121207463

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仲尾 謙二 20180930 『自動車 カーシェアリングと自動運転という未来――脱自動車保有・脱運転免許のシステムへ』,生活書院,300p. ISBN-10: 4865000860 ISBN-13: 978-4865000863 3000+ [amazon][kinokuniya]
 本センター客員研究員の仲尾謙二さんの本『自動車 カーシェアリングと自動運転という未来――脱自動車保有・脱運転免許のシステムへ』が刊行された。この本のもとになった博士論文の主査(大学院における主担当)を務めた私は、この本に「この本はまず実用的な本で、そして正統な社会科学の本だ」という短文を書かせてもらっている。この本がたくさん売れてほしいので、それを何回かに分けてここで掲載していく。



 そうして現状を記述し、過去を辿って現在を明らかにするのだが、著者には、さてこれからどうするのがよいかという関心がある。自動車を最初から愛している人と、交通政策を考える人、著者は、その真ん中にいることにした。最初からそういう位置どりだったのかもしれないが、さらに自覚的にそういう場にい続けることにしたのだと思う。おもに第3部から第4部がそういう話になる。
 すると話はしょうしょう面倒なことになる。最初から、二つの一つを切り捨てるということはしないということが、話を面倒にするということがまずある。そしてなにより、二つしかなく、そのうちの一つをとるしかないというふうにはなっていない。自家用車を所有・保有する、公共交通機関を使う、そしてカーシェアリングの自動車を使う。使い方にしても、自動車を使わない、使わなくてもすむという人がいる。他方、毎日通勤に使い、職場の駐車場においておく人とか、一日中仕事で使うとか、車が空いている時に使うという使い方ができない人もいる。カーシェアリングに適合的な使い方をする人、できる人もいるしそうでない人もいる。そして、大きな都市があり、中規模小規模の都市があり、そして田舎がある。そうしたなかで有意味なことを言うのはかなりたいへんだ。それがうまくいっているかどうか。もとになった博士論文を筆者が書いたとき、私はどのようなことを言ったのだっただろう。忘れてしまった。もうすこしうまく言える道筋があったのかどうか。あらためて検討しようかと思ったが、そして半日ぐらい考えてみたが、途中で終わった。またの機会にしよう。なお著者の文章はそっけなく思えるかもしれないのだが、それは著者が長年、公務員をしてきて、こういう文章が書けるようになってしまったことによる。そしてこういう文章は、話がうまくいっているかどうかを点検していくのにはよい文章でもある。
 ただ、まず一つ、カーシェアリングが、ある人々、ある使い方をする(しうる)人にとって合理的であることは十分に本書で言えている。その実用化に寄与したのが一つにIT技術だ。簡単に借りられないと、使いたい時間に空いているか、空いている時間はいつか、簡単に確認できないと、いやだ。ドアをあけるのも、しめるのも、金を払うのも、簡単でないと、気軽に使う気にならない。それが簡単になった。そして、自動車の所有・保有の価値が減った。するとカーシェアリングはありになる。
 そしてそれは、(公共交通機関以外の)自動車の使用を増やす場合もあるし減らす場合もあるとする。これもそのとおりだと思う。使うだけ支払いが多くなっていけば使用は抑制される。他方、金をかけて買い取ったものは使おうとする傾向が、とくにけちな私のような人には、ある。カーシェアリングは抑制の方向に働く。ただなにぶん便利だから、ちょくちょく使おうということになるかもしれない。もし――もし、だが――今までカーシェアリングが肯定される際、使用が減ることだけを言っているのだとすれば、そんなことはないという筆者の指摘はもっともだろう。そして、本人がよければよいと考えるなら、減っても増えてもどららでもよいということになる。ここまでもその通りだ。
 ただ他方でもう一つ、[…]」


 生存学研究センターのフェイスブックにあるこの文章と同じものは
http://www.arsvi.com/ts/20182539.htm
にもある。


UP:2018 REV:
仲尾 謙二  ◇立岩 真也  ◇Shin'ya Tateiwa  ◇病者障害者運動史研究 
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